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アンゾフ成長マトリクスを活用したビジネス戦略とは?4つの成功事業事例も紹介

『自社製品の市場シェアを拡大したい』
『新規事業を成功させたい』
など、自社の成長戦略の方向性でお悩みの方は多いのではないでしょうか。

「アンゾフ成長マトリクス」を活用することで、自社にとって必要な成長戦略を洗い出すことができます。アンゾフ成長マトリクスは、成長の方向性を明確化させ、より効率的な戦略を選定できるため、企業経営には欠かせないフレームワークのひとつです。

この記事を読むことで、アンゾフ成長マトリクスの成長戦略や戦略を採用する際の注意点を知ることができます。自社の事業や製品をどのように展開していけば良いか悩んでいる方は、ぜひチェックしてください。

1.アンゾフ成長マトリクスとは

アンゾフ成長マトリクスは、企業が成長するための戦略を「製品」と「市場」の2軸に据え、さらに「既存」と「新規」の2つに分けることで、市場分析ができるフレームワークです。

市場で既存のサービスを展開する場合は、自社サービスへの顧客ロイヤリティを高めて市場への浸透を図っていく戦略を取っていく必要があります。一方、未開拓市場で新しいサービスを展開することは事業を多角化していくことにつながります。

企業が事業を続けていくために選ぶべき道は、既存製品の売り上げを伸ばすか、新規製品を生み出すか、新規市場を開拓するかのいずれかです。コロナウィルスやウクライナ侵攻など、様々な情勢変化に企業が対応し生き残るためには「どの成長戦略が自社のニーズにマッチしているか」を分析できるアンゾフ成長マトリクスが有効でしょう。

2.企業がアンゾフ成長マトリクスを戦略として活用する理由

各企業がアンゾフ成長マトリクスを活用する理由は、下記の通りです。

  • 自社にあった成長戦略を洗い出すことができる
  • 経営資源を有効的に利用することができる

自社にあった成長戦略を洗い出すことができる

アンゾフ成長マトリクスを活用し、自社が保有しているノウハウや強み、弱みを再確認することで、成長戦略の方向性を洗い出すことができます。海外情勢や市場の環境変化に対応した商品やサービスを展開していくためにも、まずは己を知ることが重要です。

それと同時に、競合他社の動向や市場ニーズなどの外部環境を把握することが欠かせません。自社のみならず、企業を取り巻く外部環境へのリサーチも十分に行いましょう。

経営資源を有効的に利用することができる

アンゾフ成長マトリクスを利用することで、最適な市場や製品、サービスへ、既存の経営資源を活かした上で戦略を立案することが可能です。

手当たり次第に経営資源を投入すると、投資対効果の低い結果しか得られない恐れもあります。しかし、アンゾフ成長マトリクスを利用することで、自社にとって最適な経営資源を洗い出し、経営に投入することが可能です。このように、不要なコストや労力を浪費しないためにも、アンゾフ成長マトリクスは企業の成長にとって非常に役立つのです。

3.アンゾフ成長マトリクスから分かる4つの成長戦略


アンゾフ成長マトリクスは、2×2の4象限からなる成長戦略に区分されます。

  • 市場浸透戦略(既存製品×既存市場)
  • 市場開発戦略(既存製品×新規市場)
  • 製品開発戦略(新製品×既存市場)
  • 多角化戦略(新製品×新規市場)

以下では、各成長戦略の詳細を解説します。

市場浸透戦略(既存製品×既存市場)

市場浸透戦略(既存製品×既存市場)とは、既に存在する市場に、既にある製品をさらに展開、発展させるための戦略です。顧客の購入数量を増やす、顧客一人当たりの購入単価を上げる、製品のリピーターを増やすなど、業界のシェア拡大を狙います。

この戦略のメリットは、次の2点です。

  • 新規製品の開発や市場開拓が必要ない
  • ブルーオーシャン(市場が未成熟)では有効

一方でデメリットは、次の2点になります。

  • 継続的な成長が難しい
  • レッドーオーシャン(市場が飽和状態)では競争激化

労力やコストがかからないため、多くの企業で採用している一般的な戦略です。

市場開発戦略(既存製品×新規市場)

市場開発戦略(既存製品×新規市場)とは、自社が抱える既存製品を全く新しい市場へ売り出す戦略です。たとえば、日本で販売している製品やサービスを導入実績のない海外で販売するケースが該当します。

この戦略のメリットは、次の2点です。

  • 新規市場(海外など)への販路拡大ができる
  • 新規ターゲットの創出が可能となる

一方でデメリットは、次の2点になります。

  • カントリーリスク(政情不安、固有の法律など)に注意が必要
  • 競合他社が把握しづらい

海外で市場を展開するには、海外での販売網を構築したり、事業者とパートナー契約を結んだりする必要があります。日本市場以上の売上増大が見込まれる一方で、販売網を整えるには時間を要するでしょう。そのため、商品の魅力のみならず、商品を売る力が重要になります。

製品開発戦略(新製品×既存市場)

製品開発戦略(新製品×既存市場)とは、既に抱えている顧客(既存市場)に対し、新製品の開発や改良により、市場のシェア拡大を目指す戦略です。具体的には、既存技術を活かした製品開発や、既存製品への新機能追加などが挙げられます。

この戦略のメリットは、次の2点です。

  • 既存製品のシリーズ化に対応できる
  • 拡大している市場で販売が伸びやすい

一方でデメリットは、次の2点になります。

  • 失敗した際の投資回収リスクが大きい
  • 縮小している市場での売上が伸びにくい

既に参入している市場でのシェアを拡大するためには、既存顧客のニーズを把握し、競合他社との差別化が重要だと言えます。そのためには、既存市場での課題をさらに深掘りし、他商品と明確な差別化が可能な新たな商品が必要です。

多角化戦略(新製品×新規市場)

多角化戦略(新製品×新規市場)とは、新しい製品を新しい市場へ投入する戦略を指します。これまで触れてこなかった新たな分野へ参入するため、企業にとっては挑戦的な戦略と言えるでしょう。

この戦略のメリットは、次の3点です。

  • 収益源を分散しリスクヘッジができる
  • プロダクトライフサイクルへの対応が可能
  • 異なる事業により相乗効果が生まれる可能性がある(生産ラインや流通網の共有化)

一方でデメリットは、次の2点になります。

  • 新製品、新規市場開拓のコストが増大
  • 経営の非効率化(単一事業に比べて大量発注ができないなど)

得られるメリットが大きい半面、デメリットも大きいことから、ハイリスクハイリターンの戦略であることへの理解が必要です。

4.多角化戦略(新製品×新ミッション)4つの分類

多角化戦略は4つに分類することができます。

  • 水平的多角化
  • 垂直的多角化
  • 集中的多角化
  • 集積的多角化

それでは4つのパターンを詳しく解説します。

水平的多角化

水平的多角化とは、既に企業が保有している技術を活用し、これまでに主戦場としてきた市場と類似した市場へ新製品を投入する手法です。

たとえば、自動車販売メーカーがレンタカー業界に進出した場合、既存の自動車をそのままレンタカーへ応用できます。また、自動車販売メーカーがバイクを生産しているケースもあります。

上記のように関連のある市場を結びつけることで、製造ラインや流通網を共有化でき、大幅なコスト削減につなげることもできます。

垂直的多角化

垂直的多角化とは、既存製品と関連性の高い製品を開発し、既存製品を展開している市場へ製品を投入する戦略です。たとえば、ワークスーツやアウトドア製品の制作、販売を行っている企業が、ファミリーや女性層をターゲットに商品を販売するケースが該当します。

既存の市場を利用するため、事業同士の相乗効果を生むメリットはありますが、既存技術やノウハウが通用しないため、コストやリスクが高くなる傾向があります。

集中的多角化

これまでに培ってきた技術やノウハウから、関連性のある製品を開発し、新しい市場へ進出する戦略が集中的多角化です。

たとえば、カメラ製造メーカーが既存技術を活かし、他分野の医療用レンズの製造を手がけているケースが該当します。両者の市場には関連性が低いのがお分かりいただけるのではないでしょうか。

ただ、新規市場で優位性を得るには、一定以上の品質が求められるため、想定していないコストが発生する可能性も考慮する必要があります。

集積的多角化

集積的多角化とは、コングロマリット型とも呼ばれ、既存製品、既存市場と全く異なる分野へ参入する戦略です。わかりやすい例としては、コンビニエンスストアが店内にATMを設置して、銀行業務を行うことなどが該当します。

既存の技術やノウハウが通用せず、多額の初期投資が必要になりますが、成功すれば事業拡大の可能性があるため、ハイリスクハイリターンの戦略と言えるでしょう。

5.アンゾフ成長マトリクスを実行する際の4つのポイント

アンゾフ成長マトリクスを実行する際の4つのポイントは、以下の通りです。

  • 施策を洗い出す
  • 自社に合った施策から取り入れてみる
  • 複数部署で連携して取り組む
  • リスクも考慮して慎重に取り組む

上記のポイントを意識することで、より効果的な戦略を構築できるでしょう。

①施策を洗い出す

1つ目のポイントは、ブレインストーミングなどを使い、施策やアイディアをできるだけ洗い出すことです。

その際に重要なのは、コストやリソース面など企業の事情を考慮せず、自由に意見を出すことです。企業の事情を考慮して施策を考えた場合、色々な条件に板挟みにされてしまい、良いアイデアが浮かばないということもあります。そのため、まずは条件や事情を考慮せずに施策を洗い出し、情報を精査することが必要なのです。

②自社に合った施策から取り入れてみる

2つ目のポイントは、自社に見合った施策から取り入れてみることです。身の丈に合わない施策を取り入れると、失敗した場合に企業に与える損失は計り知れません。まずは、コストを抑えつつ、徐々に経営資源を投入することをおすすめします。

③複数部署で連携して取り組む

3つ目のポイントは、複数部署で連携して取り組むことです。一部の部署で属人的に進めると、経営資源の配分が難しくなり、予算不足や人材の確保などの問題が発生する可能性があります。

また、複数部署が連携することで、新たな発見や意見が得られるシナジー効果が期待できるでしょう。

④リスクも考慮して慎重に取り組む

4つ目は、戦略を実行する上で、予めリスクを考慮しておくことです。

新製品開発、新市場開拓は必ずしも成功するとは限りません。リスクを最小限に抑えるためにも、自社の状況を把握し、慎重に取り組むことが重要です。

6.アンゾフ成長マトリクスを活用した事業事例4つ

アンゾフ成長マトリクスを活用し、成功した事業事例を4つご紹介します。

  • イオン株式会社
  • 富士フィルム
  • 株式会社吉野家
  • 日清食品

日本を代表する大手企業が、アンゾフ成長マトリクスを上手に利用している事例です。

イオン株式会社

イオン株式会社は2つの戦略を併用しています。イオンモールなどのモール型ショッピングセンターを世界11カ国に展開する市場開拓戦略と、新規出店やM&Aによる企業買収で国内シェア拡大を狙う市場浸透戦略です。

その結果、イオングループ全体では、2023年2月に売上総収入が約9兆円に達しました。

また、プライベートブランド「トップバリュ」では、低価格ブランドから付加価値型へのブランド転換を図っており、新製品開発戦略にも抜かりはありません。たとえば、サッポロビール製造のもと、プレミアム生ビールを展開したり、卵をまるごと使ったマヨネーズを作ったりと様々な食品でプライベートブランド商品の製造を行っています。年々値上げが続く中、良心的な価格設定により、トップバリュシリーズの売上高は小売り業において日本1位の座を誇り、業界の雄としての地位を確立しています。

富士フィルム

富士フィルムはアンゾフ成長マトリクスを活用し、最も成功した事例と言えます。1990年代後半からのデジタルカメラの急速な普及に伴い、カメラ用フィルムの売り上げが激減したことから、事業の多角化を行い次のような事業成長を遂げることに成功しています。

  • 画像処理技術をCTなどの医療機器事業に転用
  • フィルムの薄膜技術や製造技術を医薬品や化粧品に転用

これまで培ってきた技術を応用することで、新たな技術を生み出し、新しい市場での地位を確立しました。一方で、富士フィルムと同じ業態で世界シェアを奪い合っていたアメリカのコダック社は、企業買収により事業の多角化を図りましたが、フィルム事業の衰退により2012年に経営破綻しています。

富士フィルムは、大胆な事業の多角化(医療や化粧品分野への事業転換)を行ったことで、危機的状況を乗り切ったのです。

株式会社吉野家

株式会社吉野家は、国内牛丼チェーン店で店舗数第2位を誇る老舗企業です。海外ではアジアに新規出店する市場開拓戦略、国内では業態の異なる「はなまるうどん」や「京樽」などの水平的多角化戦略を使い分けています。

なお、コロナ渦では営業利益が赤字へ転落しましたが、2024年2月第1四半期決算によると、前年度の同期に比べて6.9%の売上利益上昇が見られています。海外への出店や都心を中心とした出店により、業績は黒字転換いたしました。

日清食品

日清食品は、即席めん市場において国内のリーディングカンパニーです。しかし国内市場は人口減少による影響で縮小傾向にあるため、販路を海外に求め、市場開拓戦略に力を入れています。

2020年度営業利益における海外事業の比率は約30%までに達しました。さらに2030年度までに比率を約45%まで引き上げ、国内即席めんを追い抜き、海外事業が成長ドライバーとして牽引することを目指しています。

7.アンゾフ成長マトリクスと同時に活用できるフレームワーク

アンゾフ成長マトリクスは、全てのビジネスモデルを網羅できるわけではないため、同時に活用できるフレームワークを組み合わせることが重要です。

  • ファイブフォース分析
  • SWOT分析
  • バリューチェーン分析

それぞれの分析方法を詳しく紹介します。

ファイブフォース分析

ファイブフォース分析とは、市場の競争構造を5つの要素に分解して分析するフレームワークのことです。新たな市場への参入判断や、競合企業への対応策など、業界の収益構造を明確化できます。

業界の収益構造を分析する際の要素として、次の5つが挙げられます。

  • 新規参入の脅威
  • 仕入れ元の影響力
  • 顧客の影響力
  • 競合他社との競争
  • 代替品の脅威

これらの要素を分析することで、利益を増減させている原因を掘り下げることができるため、自社が取るべき対策やポジションを把握することができるでしょう。

SWOT分析

SWOT分析とは、企業の内部環境と外部環境からプラス面とマイナス面を洗い出し、企業の現状を把握することができるフレームワークです。

SWOT分析を4つの要素に分解すると、次の通りになります。

プラス面 マイナス面
内部環境(社内) 強み(Strength) 弱み(Weakness)
外部環境(競合他社市場) 機会(Opportunity) 脅威(Threat)

各要素の内容は以下の通りです。

  • 強み(Strength)とは、競合他社には負けない要素
  • 弱み(Weakness)とは、競合他社に劣っている要素
  • 機会(Opportunity)とは、市場での優位性を担保できる要素
  • 脅威(Threat)とは、競合他社が強く、自力では対応できない要素

これら4つの要素を分析することで、情報整理に役立ちます。また、各要素を掛け合わせるクロスSWOT分析を行うことで、具体的な戦略や事業計画策定に応用できるでしょう。

バリューチェーン分析

原材料の確保から顧客への商品提供まで、一連の企業活動を連鎖として捉えたものがバリューチェーン分析です。各工程ごとに細分化して分析することで、業務の効率化や事業戦略策定に役立ちます。

バリューチェーン分析は、5つの主活動と4つの支援活動から構成され、主活動が直接的な価値創出を目的とし、支援活動は主活動の補助的活動を目的とします。

購買流動からサービスまでの主活動は支援活動に紐づいており、全ての活動が関連しているのが見て取れます。

また、バリューチェーン分析のメリットは、次の3つです。

  • 自社の長所や短所を把握できる
  • 競合他社の戦略予測が可能
  • 非効率な工程見直しによるコスト削減

自社及び競合他社を分析でき、コスト削減にもつながるため、さらなる収益化を目指せます。

実際にバリューチェーン分析を導入している事例として、ニトリホールディングスが挙げられます。世界各国に生産拠点を構え、製造から販売までをニトリが一括管理することで、低価格の商品を提供し、10%以上もの高い利益率を継続しています。

8.まとめ

「アンゾフ成長マトリクス」とは、企業が成長するための戦略を市場分析できるフレームワークです。自社に必要な成長戦略を洗い出し、戦略の方向性を明確化することが企業経営には欠かせません。

なお、アンゾフ成長マトリクスを2×2の4象限に区分すると、次の4つの戦略に分けられます。

  • 既存製品×既存市場→市場浸透戦略
  • 新規製品×既存市場→新製品開発戦略
  • 既存製品×新規市場→新市場開拓戦略
  • 新規製品×新規市場→多角化戦略

企業が事業を続けていくために選ぶべき道は、既存製品の売り上げを伸ばすか、新規製品を生み出すか、新規市場を開拓するかのいずれかです。どの成長戦略が自社のニーズにマッチしているか分析するためにも、アンゾフ成長マトリクスは取り入れてみましょう。

万が一、アンゾフ成長マトリクスを有効的に行えるかわからない、具体的にどのように進めていけば良いか不安であると感じる場合は、外部のプロフェッショナルを頼るのも1つの手段です。

なお、みらいワークスは、19,000名以上のプロフェッショナル人材データベースを運営している企業です。外部のプロフェッショナル人材をお探しの方はお気軽にご相談ください。



(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

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