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BPRの成功事例から見る業務プロセス改革プロジェクト推進の筋道

政府の働き方改革推進によりBusiness Process Re-engineering(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)は注目を集めています。

BPRは組織全体の業務プロセスを根本から見直し変革を起こすといったような大規模な再設計を指しますが、具体的なプロジェクトの進め方がわからないという企業は少なくありません。

『何をもってBPRの成功を指すのかが分からない..』
『他社の成功事例を知りたい』
こんなことを考えている方も多いのではないでしょうか?

BPRの成功の基準は企業によって様々ですが、絶対的な指標として「ビジネス成果への貢献」は外せないものとなります。
ビジネスプロセスを改革しても、売上の増加もしくはコスト削減などの利益への貢献が無ければ、成功、失敗の判断ができなくなってしまうためです。

また逆に上手くいかない時の判断基準なども準備しておく必要があります。
プロジェクト対応において、全てが計画通りに進み、大成功するようなことはあり得ないためです。

そこで今回は、BPRプロジェクトを成功させるための価値基準と成功事例を紹介いたします。


■目次
 1.BPRとは
 2.BPRの成功とは
 3.BPRの成功事例
 4.BPRプロジェクトを進めるうえで重要なこと
 5.まとめ

1.BPRとは

BPRとは、業務におけるプロセスの観点から業務フローや組織構造、情報システムなどを再構築し、業務改革することを指します。
BPRの目的は、業務フローの内容を「改善すること」ではなく、業務フロー「そのものを変える」ことです。

「業務改善」と混合しがちですが、業務改善は既存のプロセスを見直して効率化などの改善を図ることですが、BPRは既存のプロセスを疑うことから始まり、プロセス全体を抜本的に変化させるという意味で異なるため、混合しないように注意が必要です。

2.BPRの成功とは

BPRプロジェクトの成功は冒頭でも述べた通り、企業の状況によって異なるため明確な定義はできないものとなりますが、ビジネス成果への貢献は切っても切り離せません。

BPRの本質が社内のプロセス変革にあるため、「売上への貢献は難しいのではないか」と考えられる方もいらっしゃると思いますが、間接的な売上貢献には繋がる可能性があります。

2-1 ビジネス成果への貢献

たとえば、みずほ情報総研が実施しているBPR研究においては、BPRによって企業の行動速度が倍以上になるという研究結果も出ています。

これは、BPRを適切に実施することで、社内に蓄積されるデータ量が増え、データの分析からくる意思決定のスピードが速くなるため、結果として行動速度も加速度的に飛躍することを意味します。企業全体の行動スピードがUPすることで、間接的な売上増加に繋がる可能性が高いということです。

また売上貢献が少なかったとしても、コストカットに繋がる可能性も多分にあります。

たとえば、BPRの一環でシステムのリプレイスを行ったとします。
旧システムの設備投資費や人件費なども含めた維持運用にかかるコストが、新システムへの移行で半分になるケースもあります。
その場合、売上貢献はしていなくてもコストカットの側面から見ると、十分に利益貢献していると言えます。

ここで一番重要となるのが、何をもってBPRプロジェクトの「成功」とすべきかの基準を明確に定めることです。売上貢献なのかコストカットなのか、その両方なのか、それはどの程度実施できれば成功なのか失敗なのかを具体的に決める必要があります。

BPRプロジェクトにはほとんどの場合、先行投資が発生するでしょう。
その投資をいつどのタイミングまでに回収するのかを含めた綿密な計画が必要ということです。

またBPRプロジェクトの失敗を防ぐためには、業務プロセスを変革する優先順位を決めなければなりません。そこで必須となるのがビジネスインパクト分析です。

2-2 ビジネスインパクト分析

ビジネスインパクト分析では、特定の業務が大規模災害など予期しない事態によって停止、中断した場合、事業全体にどのような影響がどれくらい及ぶかを分析し評価します。

BCP(事業継続計画)の策定やBCM(事業継続マネジメント)の実施でよく用いられる分析手法ですが、BPRにおいてもビジネスインパクト分析は重要であり、想定されるリスクの網羅的な洗い出しを実施することで、企業資産のバランスの振り分けを最適化することができるためです。

BPR推進において、闇雲な業務改革でコストや手間を単に省けば良いというわけではないことは周知の通りですが、短絡的な改善成果を出そうとするとリスクに陥る可能性があります。

まずは、事業継続に与える損失が大きい要素は最初に抽出し、重要業務の優先順位を明確に定めておくことで間違いのない業務改善が実現することになるでしょう。そうした意味で、ビジネスインパクト分析はBPR推進においても有効な手段と言えます。

3.BPRの成功事例

平成22年に政府がBPR導入を検討する際、民間企業の方策としてリサーチ会社から総務省へ調査報告されたBPR成功事例があります。それが1993年に刊行されたマイケル・ハマー&ジェイムズ・チャンピー著の「リエンジニアリング革命」に挙げられている3社の成功事例です。
BPRの成功事例

◆IBMクレジット

当初現場の営業マンが顧客への融資を要請した際、審査完了までのステップに複数の部門で複数の人員が関与し、平均6日程度かかっておりました。

この間に顧客を失うことがありましたが、案件処理にITシステムを導入し、スペシャリストをゼネラリストに代え全作業を担当者1人で処理できるようにしたところ、審査時間が4時間に短縮されました。

◆フォード

支払部門において、注文から受け取り、支払いに至るまでに複数の書類と確認プロセスが存在しておりました。
購買部門が注文をオンラインデータベースに入力し、商品受取窓口がデータベースを確認し自動的に小切手を発行するITシステムを導入することで支払いに携わる従業員が125人にまで削減されました。

◆コダック

製品開発において、製品設計を統合するデータベースの導入により、業務プロセスを改革しました。

使い捨てカメラについては70週間かかっていた業務プロセスを半分の38週までに短縮し、さらに工作機械と製造コストを25%削減することに成功しております。

※参考文献:マイケル・ハマー&ジェイムズ・チャンピー著「リエンジニアリング革命」

4.BPRプロジェクト成功に向けた施策

BPRプロジェクトを成功に導く施策として、実際に日本企業が成功した事例をもとに3点の施策をご紹介します。

・シックスシグマの活用
・シェアードサービスの活用
・SCMの導入

BPRプロジェクト成功に向けた施策

◆シックスシグマの活用

シックスシグマとは、統計学を活用して定量的な分析をしながらデータドリブンに製品やサービスの品質を一定に保ち、顧客の満足度を高める手法です。
顧客の声(VOC)を活動起点とすることやリターンを明確に数値化することなどが特徴です。

とある製造業では、トップダウンによる業務改革を推進するため経営改革推進本部を設置し、シックスシグマを導入しました。

社員にシックスシグマの教育を行ない、DMAICフレームワークを利用した無駄の排除を実現、同時にモチベーション向上のため表彰制度も導入や研修なども実施し、年間数千億円に及ぶコスト削減に成功しております。

◆シェアードサービスの活用

シェアードサービスとは、複数企業の業務を集約して、業務の効率化を図るサービス手法です。
とある企業では、組織力強化とグループ全体の間接業務の効率化を目指し、バックオフィス業務を提供するシェアードサービス専門子会社を設立しました。

グループ会社の業務を含めた横断的な統治による業務標準化を実現し、グループ全体で間接コストの大幅削減に成功しております。

◆SCMの導入

SCMとはサプライチェーンマネジメントの略称であり、製品が消費者の手に渡るまでの流通網を最適化する手法です。
とある企業では、業績が好調な時期に大規模改革を実施し、国際拠点の再編成も含めた事業プロセス改革と、ITソリューションによる個別の業務プロセス改革を同時に実施しました。

主要部門の国際的な拠点再編成に100億円を投資すると同時に、対話や教育、研修も充実させ、同時に国を超えた統一的品番体系の整備も実施することで製造固定費数十億円の圧縮を達成ております。なお、この業務改革における投資は3年で回収しました。

※参照:民間企業等における効率化方策等(業務改革(BPR))の 国の行政組織への導入に関する調査研究

5.BPRプロジェクトを進めるうえで重要なこと

気を付けなければならないことは、IT化さえ行えばBPRプロジェクトが成功すると考えてしまうことです。もちろんBPRプロジェクトの実施にあたってIT戦略を考えることは必須ですが、必ずしも大規模なシステム導入がマストではありません。

前提条件として、IT導入を考えてしまうことは危険です。ITの活用は手段であって、目的ではないためです。業務改革の骨子があってこそ、初めてITソリューションが活きることを再認識する必要があるでしょう。

6.まとめ

今回、BPRプロジェクトを進めるにあたり、成功事例と成功させるための手法をご紹介しました。まず前提として必要なことは「成功」の基準を決めること、そしてプロジェクトを進めるための戦略策定、戦略実行を行うための具体的施策をよく知ることです。

施策としては以下の3点を押さえておいたほうが良いでしょう。
・シックスシグマ:顧客の声を起点とした製品品質の担保
・シェアードサービス:複数企業での業務の集約化
・SCM:複数企業にまたがる製品流通の最適化

また、施策実行にあたり、IT化は重要事項ではありますが、必須事項ではありません。
IT化を前提としてしまうことで、目的がぶれてしまう可能性すらあります。これらを知っておくのと知らないとでは、BPR戦略の成功確率に大きな差が出てしまうでしょう。

もしBPRプロジェクト全体のマネジメントや、戦略の立案、具体的施策実行のフェーズにおいて、自社社員だけでは対応が難しいと考える場合、外部人材の活用も検討事項のひとつです。

なお弊社は、国内最大規模のプロフェッショナル人材データベースの運営企業です。
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(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

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