労働人口の減少に伴う人手不足、働き方改革の流れを受けたワークスタイルの柔軟化、コロナ禍におけるテレワークの推進などの影響を受け、現在の企業では業務の効率化が喫緊の課題です。
ITやAI(人工知能)を活用した業務の効率化が図られるなかで、その一翼を担う存在として期待を集めているのが、「RPA(Robotics Process Automation)」の導入です。
RPAは人間がデスクトップパソコンなどを操作して行っていた定型的な作業をロボット(ソフトウェア)に学習させることで業務を自動化できるという特徴をもっています。
日本企業においても導入が年々進み、2019年の調査では47.5%に到達(ガートナー「企業におけるRPAの推進状況に関する調査結果」、2020年2月21日発表)(※1)しております。
その市場規模は、2020年度には729億円に上ると予測されています(矢野経済研究所「RPA市場に関する調査」、2020年12月7日発表)(※2)。
今回は、RPAの導入で得られる効果について解説します。
■目次
1.RPAの導入で得られる3つの効果とは
働き方改革などの影響で、AIと並んで一躍注目を集めるようになったRPAですが、人間がパソコンを使って操作する作業を自動化できるという点では、Excelなどのマクロ機能に似ています。
しかし、一般的なマクロ機能では自動化できる範囲は一定のアプリケーション内に限られますが、RPAツールでは複数のシステムやアプリケーションを横断した作業の自動化が可能になるのが大きな特徴です。
RPAを導入して業務を自動で対応できるようにすると、企業にさまざまな効果やメリットが生まれます。ここでは、そのなかで特に大きな4つの効果をご紹介します。
(1)人的エラーをなくすことができる
人間が行う作業には、抜け漏れや間違いなどのミスがつきものです。
ヒューマンエラーとも呼ばれる人為的なミスは、初心者の不慣れから、作業担当者の疲労から、操作時のケアレスミスから、あるいは特に理由がなくても起こり得ます。
そして、どれほど万全に準備しても、人間が作業を担当する限りミスをゼロにすることはできません。 そのため、人が担当する作業はダブルチェックが不可欠です。
チェックの結果ミスが見つかれば、その修正対応をとる必要が生じます。
ここまでして初めて作業が完了するということになりますので、相応の人手がかかるわけです。
しかし、RPA製品を導入して作業を自動で対応できるようにすれば、ロボットはあらかじめ指示された内容にしたがって作業を行い、指示にない作業は行うことがありません。
したがって、ヒューマンエラーは起こりません。
単純作業の繰り返しであっても、人間のように集中力が切れたり操作を誤ったりするなどしてミスしやすくなるということもありません。
人的ミスがなくなるということは、作業のダブルチェックやミス発生時の修正処理なども必要なくなり、品質管理にかけるリソースも軽減できます。チェックや修正なく最初から精度の高い成果物を得られるため、業務効率は格段に上がるでしょう。
(2) 人件費を削減できる
人間が行っていた作業を、RPA製品の導入によってコンピュータに任せられるようになれば、それだけ人手がかからなくなります。ということは、それだけ人件費を削減できるということになります。
RPAの導入によって、人間の作業時間をどれだけ削減できるかというのは作業内容によって異なりますが、自動化できる定型業務が多ければ多いほど削減効果は積み上がります。なかには、RPAの導入によって、年間でおよそ2万8000時間の削減効果を上げた企業もあるほどです。
RPAの導入、運用には費用がかかりますし、作業を自動でできるようにするための整備作業も必要となりますが、それだけの人件費を支払い続けることを考えれば、最終的な削減効果は大きいのではないでしょうか。
働き方改革が叫ばれるなか、残業時間の削減という効果も期待できます。
また、1年のうち特定の時期だけ作業量が増えるような業務もありますが、作業量が増えたからといってすぐに人手を増やし、作業が減ったら人を減らすというのも難しいものです。
RPAを導入すれば、一時的な人員を採用するような費用負担もありません。
加えて、RPAを導入して作業を自動で対応できるようにすれば、作業スピード自体が高速になります。人手での作業時は1件あたり数分以上かかっていたような作業も、RPAで自動化すれば1分未満で完了できるということも起こりえます。そのスピードを生かし、クライアントへの納品物を早く提供できるようになる場面もあるかもしれません。そうしたスピードも、企業にとっては大きなメリットでしょう。
(3) 生産的な仕事に集中できる
RPAを導入し、単純作業の繰り返しのような定型作業をロボットに任せることができれば、それまで作業にあたっていた担当者の手が空き、その分、重要度の高い、人間ならではの生産的な仕事、創造的な仕事に集中できるようになります。
単純作業も会社を支える大事な仕事ですが、とはいえパソコンの単純操作の繰り返しのような作業ばかりでは社員のモチベーションは下がってしまいますし、発想する力も衰えがちになってしまいます。そうなれば、ほかの仕事を求めて離職する社員が出てくる可能性もあります。
RPAの導入でロボットに定型作業を任せられるようになれば、そうした離職リスクを下げる効果にもつながるのです。そして、創造的な仕事に集中できるようになった社員はモチベーションが高まり、能力を存分に発揮して、企業の発展に大きな成果を提供してくれるようになるでしょう。それは企業にとって、非常に有用な人材活用のかたちといえます。
(4)業務プロセスが整理され可視化できる
業務プロセスが整理され可視化できることもRPAを導入する効果のひとつです。RPAを導入する際には、社内業務のムダ、ムリ、ムラを洗い出す必要があります。その結果、業務プロセスが明確になり、通常では気付けない無駄な工程や業務フローが可視化(言語化、図式化)されます。また、業務プロセスが可視化されることで、次のようなメリットも期待できるでしょう。
- 属人的作業の把握
一部の従業員への過度な依存や担当者しかわからない属人的作業は、業務効率を低下させる要因となります。業務プロセスが可視化されることで、公平な仕事の配分や急な休みへの対応などがスムーズに行えるでしょう。 - 無駄な作業の削減
部署間での業務の重複やRPAに代替可能な単純作業などを把握することで、無駄な作業を削減し、業務を効率化できるでしょう。 - ミスの削減
同一作業でも作業者によっては、やり方や考え方が異なるケースは多いでしょう。業務プロセスが可視化されると同時に作業工程も可視化されるため、最も効率的で正確性の高い作業を標準化し、ミスを防止することが可能です。
業務プロセスの可視化は、業務効率化への足がかりとなるため、問題の抱えている工程を中心に可視化してみましょう。
2.RPA導入の注意点3つ
RPAは繰り返し行うような定型業務を自動化できるため、業務の効率化に効果を発揮してくれるでしょう。しかし、年々導入する企業が増加する一方で、トラブルやリスクを抱える事例も散見されます。そのため、RPAを導入する前にどのようなリスクがあるのか事前に把握し、対応策を検討しておくのが無難です。ここからは、RPA導入の注意点を3つご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
(1)導入するのにコストがかかる
RPAを導入するには、一定のコストが必要です。RPAは比較的安価なソフトウェアとされているものの、月額100万円を超えるような高額なプランもあります。そのため、自社のニーズにマッチするかを検討し、事前に費用対効果の見通しを立てておくことが望ましいです。
なお、導入に不安のある方は、無料トライアルを実施しているサービスもあるため、ぜひチェックしてみてください。自社のシステムとの連携や操作感、処理速度などを実際に使用してみて確認するのもおすすめです。また、有料版のRPAを利用する場合は下記のコストがかかります。
- イニシャルコスト(初期費用)
- 認証時に必要なIDの盗難
オンライン上のアカウントや個人データ(ユーザー名、パスワード、クレジットカード情報など)を盗む行為です。2020年には、JR東日本が提供するサービス「えきねっと」にリスト型攻撃が仕掛けられ、約3,000人以上のアカウントへ不正ログインが行われています。 - ソフトウェアの脆弱性を狙ったサイバー攻撃(ランサムウェア)
ウィルスに感染したPCやサーバーのデータを、攻撃者しか解読できないように暗号化します。最近では、ゲーム開発会社のカプコンが攻撃の標的にされ、流失した個人情報を質に身代金を要求される事案がありました。
イニシャルコストとは、システムを導入時に使用するRPAツール自体の価格のことです。RPAツールは「デスクトップ型」「サーバ型」「クラウド型」の3つに分かれており、使用する機能を増やすほど価格が上昇します。
クラウド型の場合:30~50万円ほど
デスクトップ型の場合:~50万円ほど
サーバ型の場合:10万円~数千万円ほど
ランニングコスト(月額費用)
サービス提供会社に支払うライセンス料や使用料にあたります。国内でRPAを取り扱っている企業の多くは、年額制のサブスク型ライセンスを提供しています。
クラウド型の場合:5~15万円ほど
デスクトップ型の場合:7~60万円ほど
サーバ型の場合:2~60万円ほど
サポート費用(保守管理)
RPAの導入からメンテナンスなど、サービス提供会社がサポートしてくれる費用です。プランによって内容は変わりますが、自社でITやデジタル技術に精通している人材が少ない場合は、サポートを依頼しましょう。
これらのコストを踏まえた上で、国内でRPAを提供する会社の運用コストを比較していきましょう。
(2)情報漏洩のリスクがある
RPAは様々なシステムと連携しているため、外部からの悪意のある不正アクセスやサイバー攻撃により、情報が漏洩するリスクがあります。情報が漏洩するリスクの具体例は、下記の通りです。
元号が令和に変わってからは、2年連続約3,000件に迫る勢いで不正アクセスが推移しています。RPAやDXなどによって、企業がネットワークへアクセスする頻度は多くなると予想されるため、今後も注意が必要です。
外部からの攻撃に対して、企業が検討すべき対策としては、次の通りです。
- アクセス管理による制限
1人につき1IDだけを付与したり、階層別に扱える権限を明確化したり、アクセス管理を制限することで情報の漏洩リスクを低減させます。 - ネットワークのセグメント化
ネットワークを要素(部門や機能など)に基づき小さなセグメントに分割し、通信不良等が発生しても、個別のセグメント内に制限することで、ネットワーク全体の稼働停止を防止できます。 - スタンドアロン式を導入する
インターネットに接続されていないため、不正アクセスなどはできません。また、通信障害が発生しても影響を受けることがないので、RPAの動作に影響を及ぼしません。
RPAの導入前に、情報漏洩のリスクを考慮したセキュリティ対策を講じておくことが必要と言えるでしょう。
(3)間違いに気づかないリスクがある
RPAは、人間が設定した簡単な業務を繰り返し行うシステムです。仮に人間の指示出しに誤りがあったとしても、RPAは判断ができないため間違いに気づかず、延々と同じ処理を繰り返してしまいます。
たとえば、複数のシステムを連携させているシステムの場合、連携させているシステムの仕様変更があったとしても、初めに設定した条件のまま処理を続けてしまうのです。RPAはAIとは違い、ルール化されていない状況での判断を行うことができないでしょう。
そのため、定期的なフィードバックや判断基準のルール化など、エラーが発生しにくい状況を作ることが肝心です。
3.RPAの費用対効果を測定する2つの方法
企業にさまざまな効果を提供できる可能性を秘めたRPA。その導入に関心を寄せる企業にとって、次に気になるのが費用対効果ではないでしょうか。ここからは、RPAの費用対効果の種類とその測定について解説します。
(1) 定量的効果を測定する「定量的測定」
定量的効果とは、数値・数量で表すことができる効果のことです。
その定量的効果を測定するのが「定量的測定」です。
特にわかりやすいのは、RPAの導入による作業の自動化で人間の作業時間をどれだけ削減でき、その結果人件費をどのくらい削減できたかという効果の測定です。
年間の削減効果は、 「RPA導入前、1件あたりにかかっていた作業時間」 × 「RPA導入前、年間に対応していた作業件数」 × 「RPA導入前の作業担当者の時給」 =「年間で削減できた人件費」として計算することができます。
そして、この「年間で削減できた人件費」と「RPAの導入・運用にかかるコスト」を比較し、前者が後者を上回れば、費用対効果があったとみることができます。
削減効果算出のためには、RPA導入前にその業務にどのくらいの作業時間を要していたのかというデータを記録しておく必要があります。
また、作業担当者が複数人の場合、作業時間や時給が異なる場合がありますので、それぞれのデータを考慮して計算する必要があります。
(2) 定性的効果を測定する「定性的測定」
定性的効果とは、数値、数量で表しづらい質的な効果を指します。
数値で表せないのでデータも取りづらく、効果の測定が難しいですが、総合的に生産性の向上に寄与する要素が多く、RPAの導入を検討するうえで重要な効果といえます。
定性的効果には、以下のようなものがあります。
・ヒューマンエラーの削減や成果物の精度向上とそれに伴う顧客満足度の向上
・作業の自動化による人的ミスが引き起こす売上機会逸失の防止
・人による意図的な情報漏洩またはミスによる情報漏洩のリスク軽減
また、社内リソースを最適配置できるようになることでの従業員満足度の向上や離職防止にもつながる可能性があり、これらも立派な定性的価値と言えるでしょう。
4.RPAの導入で費用対効果を得るための4つのポイント
RPA導入の前に費用対効果を見積もったつもりでも、いざ導入してみると「思っていたより効果を得られなかった」という声があがる、というのは決して珍しくありません。せっかく導入するRPAで最大限の費用対効果を実感するためには、下記のポイントを押さえておきましょう。
(1) RPAの導入・運用にかかる費用を正確に把握する
RPA導入の費用対効果を測るためには、前述のとおり「RPAの導入・運用にかかるコスト」を見積もり把握しておく必要があります。ところが、この見積もりが甘いと、RPAを実際に導入したあとになって費用が膨らんでしまいます。
RPAの導入でせっかく人件費を削減できても、RPAの導入・維持にそれ以上の費用がかかってしまえば、費用対効果を得ることができません。
そうならないよう、RPAの導入・運用にかかるコストをきちんと把握しておきましょう。代表的なコストとしては、次のような項目が挙げられます。
【RPAツール導入時のコスト】
RPAツールのライセンス費用(ツールを実際に使用するライセンス数で計算する)
RPAツールを利用するためのサーバーやパソコンなどのハードウェア取得費用(RPAツールは、大きく分けて「サーバー型」と「デスクトップ型」がある)
RPAツールの選定から、RPAツール導入時のルール策定などを実施するための導入支援費用(社外に委託するか社内で担当するかによっても異なる)
業務の自動化にシステム連携が必要な場合などに生じる、システム開発の費用
【RPAツール導入後のコスト】
- RPAツールのライセンス利用費
- RPAツール用のサーバーやパソコンなどのハードウェア維持
- 管理費用
- RPAツールと関連システムの保守、運用およびその支援費用
- RPAツールのロボットを管理
- メンテナンスするためのコスト
(2) 定性的な効果にも目を向ける
前項で測定できる費用対効果は、あくまで定量的効果の部分です。もちろん、少なからぬ投資をする以上、数値の計算上で費用対効果を得ることも重要ですが、先にも述べたように、RPAソリューションの導入で企業が得るのは定量的効果だけではありません。数値には表れにくい、定性的効果の影響も実は小さくないのです。
単純作業の繰り返しや、ダブルチェックの手間、ミスの修正処理などに大きな負荷を感じ、それによってモチベーションが低下しつつあった社員が、RPAソリューションの導入によってクリエイティブな仕事に集中できるようになれば、モチベーションを取り戻せるかもしれません。あるいは、度重なるヒューマンエラーによる成果物のクオリティの低さに不満を抱いていた顧客が、RPAの導入で品質の高い成果物の提供を受けられるようになれば、その満足度が向上するかもしれません。そうした効果も、RPA導入による費用対効果としては見逃せないものです。
出てきた効果をできるだけデータで可視化したいと考えるのであれば、RPAの導入で期待する定性的効果をリストアップしておき、導入前後の違いを比較できるようなデータを収集したり、社員や顧客の満足度データを得るためのアンケートの実施などを検討するといいでしょう。
(3) RPAが適した業務・適さない業務の違いを理解する
RPA製品を導入したからといって、すべての作業を自動にできるわけではありません。
せっかくRPA製品を導入しても、自動にできる処理が少なければそれだけ削減効果が小さくなります。
つまり、RPA導入のメリットを最大限に高めるためには、RPAの特徴を把握し、自動化に向いている業務とそうでない業務を適切に見極め、自動にできる業務でどれだけの削減効果を見込めるかを見積もることが大切です。
RPAの自動化は、ロボット(ソフトウェア)に行わせる業務のルールを人間が作成することで実現します。したがって、ルール化できない業務は自動で対応することができません。
条件分岐の多い業務など一定のルールを定められない業務は、RPAで自動化しロボットに任せることは難しいでしょう。
そしてRPAではコンピュータ上でロボットに作業をさせますので、コンピュータの外で行うような手作業も自動化できません。反面、RPAは、同じ処理の繰り返しが得意という特徴があります。
人間なら集中力が切れてしまうような何十回、何百回といった同じ作業の繰り返しも、コンピュータなら同じクオリティで繰り返すことができ、疲れてミスをするといったこともありません。
(4) システム連携でより高度な自動化の実現も
さらにRPAの恩恵を受けるためには、システムを連携させIT技術をフル活用することで、より高度な自動化を実現できるということも視野に入れておくといいでしょう。
例えば、RPAを活用してほかのシステムなどから情報収集をすることができます。
RPAには、パソコン上のシステムやソフトウェアの起動操作を行う機能もありますので、ID、パスワードを入力してシステムを操作するといったことも可能です。
企業の受発注システムとRPA、OCRをITで連携させることで、受発注業務に関連して発生する大量の書類を読み取り、その処理を自動化するといったことも可能になります。
ERP(基幹業務システム)を使った業務も定型作業が多いため、RPAと連携させれば業務が飛躍的に効率化することも可能です。
IT技術を活用した業務効率化という点では、AIとRPAが混同して語られることがあります。
RPAとAIにはいろいろな違いがありますが、業務の自動化という観点で違いを挙げれば、RPAはRPAサービス単体で定型作業の自動化を実現できるのに対して、AIはAIサービス単体で何かの仕事をするというよりも、システムやデバイスに組み込まれるかたちでその技術を活用されるケースが大半です。
AIは「人工知能」という名前からもわかるように人間の「頭脳」を代替する存在になり得るツールですが、RPAは人間の頭脳が決めた作業を担当する「筋肉」を代替するツールといえるでしょう。ただ、RPAとAIのシステム連携は可能です。RPAとAIの機械学習を連携させ、会計業務における仕訳処理の自動化を実現したといった事例もあります。(※3)
いずれもシステム開発が必要で、自動化のハードルは少し高くなりますが、煩雑な作業が多く入力ミスや操作ミスなども多くなりがちな業務をITの利用によって効率化できれば、そのメリットは大きいでしょう。
5.RPAの導入効果が高い業務の特徴4つ
RPAの一般的に知られている効果としては、作業時間短縮によるコスト削減や人手不足の解消、人的エラーの防止などがあります。しかし、RPAを成功させるには、どのようなシチュエーションで効果を発揮するのかを事前に想定しておくことが重要です。ここからは、導入効果が高い業務を4つご紹介します。
(1)ルール化されている定型の業務
ルール化されている定型の業務は、導入効果が高いとされています。なぜなら、一定の業務を延々と繰り返す定型業務は、RPAが最も得意とする作業だからです。ルール化された定型業務を行うことで、人的エラーによる時間損失や追加コストの発生を抑制することもできるでしょう。人がいない夜間や休日などにRPAを稼働させることもできるため、更なるコストダウンと生産性向上に寄与できます。
また、ルール化により削減された時間を有効活用し、人間にしかできない業務を行うのもおすすめです。たとえば、新サービスのマーケティング活動や新市場の開拓など、今後の企業収益に直接関わるような業務で更に生産性を高めることもできます。
一方でルール化されていない状況で行う、柔軟な判断が求められる作業は苦手と言えるでしょう。たとえば「会社の利益につながるような有益な情報を探す」という作業には、どのような情報が利益につながるのかという定義がなければ、判断ができません。
(2)膨大なデータを扱う業務
膨大なデータを扱う業務は、人よりも高速で行えるため得意です。特に手間のかかる作業をRPAにより自動化すると、データの処理速度が大幅に向上するため、人件費の削減につながります。また長時間の作業を延々と繰り返しても、ミスが起こらないため、人的エラーによる損失を防止できるでしょう。
自動化することで作業効率化が向上する業務としては、マーケティング業務が該当します。ウェブサイトやSNSの口コミ、回収したアンケートデータなど、大量のデータを収集する場面で力を発揮します。反対に業務量の少ない仕事や短時間で終わってしまう仕事は費用対効果が低い可能性があり、RPAの自動化に不向きとされているため、予め覚えておきましょう、
(3)データの収集や分析の業務
RPAを導入すると、データの収集や分析の業務において、高い導入効果を発揮することができるでしょう。データを収集するには、スクレイピングと呼ばれる手法を使用します。スクレイピングとは、Web上にあるデータから適切な情報を抽出し、分析、加工するプロセスのことです。市場調査や新製品の開発、トレンド予測など多くの分野で貢献します。たとえば、ネットショッピングで任意の商品を購入する場合、自動的に価格の比較やレビューを取得してくれるのも、スクレイピングによる情報の加工です。なお、スクレイピングによるデータ収集の注意点としては、取得したデータの取扱いになります。
あくまでもデータは巡回したウェブサイトのものになるため、著作権に触れるデータを取得する際には、巡回先の同意が必要です。また、個人のプライバシーに関わるデータも同様に注意が必要になります。どちらの場合も事前にデータ収集についてのルール化と周知が重要と言えるでしょう。
(4)複数のシステムを横断する業務
RPAは、複数のシステムを横断する業務を自動化することができます。日常業務で使用しているメールやExcel、ウェブブラウザなど複数のタスクが絡む作業では、RPAによる自動化は効果を発揮できるでしょう。たとえば、以下のような日常業務が該当します。
- 顧客先への案内メール送信
顧客を管理しているシステムから取引先の情報を抽出し、メーラーを起動させ、メールの送信作業を連携させることができる。 - 報告書の作成
複数のアプリケーションからデータを取得し、一括して報告書にまとめる。 - 顧客情報をシステムへ登録する作業
ウェブ上で確認した顧客データを営業管理システムに自動で登録する。
異なるメーカーのアプリやシステムでも、連携して自動化できる点がRPAの強みです。しかし、RPAによる連携にも注意点はあります。エラーやバグが発生すると連携しているシステムが停止する恐れがあることです。エラーが修正できない場合、複数のシステムが稼働できないリスクもあるため、エラーを最小限に抑える対策が必要と言えます。
また、アプリやシステムの仕様変更が頻繁にされる場合には、その都度条件の変更を行うため、メンテナンスのコストを考慮しなければなりません。RPAは、複数のシステムを横断する業務を自動化することができます。日常業務で使用しているメールやExcel、ウェブブラウザなど複数のタスクが絡む作業では、RPAによる自動化は効果を発揮できるでしょう。
まとめ
IT技術の進化を受け、政府によって働き方改革が推進されるようになり、企業ではさまざまな業務の効率化が図られるようになってきました。そうした状況で、RPAの利用は、企業に多くのメリットをもたらします。将来的にAIや多様なシステムと組み合わせれば、より高度な自動化も可能になります。とはいえ、その恩恵を得るためには準備が必要です。まずは自社における業務の現状を把握し、RPAの導入によってどの業務を自動化し、どのくらいの削減効果を見込むことができるか見積もることが重要です。
また、同じRPAソリューションといっても、サーバー型とデスクトップ型があるなど、ソリューションによって提供される機能も多様です。
RPAの導入に際しては、ソリューションの比較検討も合わせて行う必要があります。 しかし冒頭に述べたように、RPAの市場規模は拡大しており、数多くのRPAサービスが参入しています。そのなかから自社に最適なサービスを選ぶのが難しいと感じたら、RPAの導入支援サービスを利用したり、RPAの導入支援製品を提供するようなサービスを利用するのも有効です。なかには無料トライアルを実施している企業もありますので、そうしたサービスも活用しましょう。
RPAで作業を自動化する作業は、プログラミング不要とはいえ難易度は低くありません。
そんなときは、RPAのルール作りなどを支援してくれるサービスもあります。
ツールのライセンスと導入支援サービスをセットで提供している企業に相談するという選択肢もあるでしょう。
最終的に「これなら活用できる」と思えるRPAサービスを選び、RPAの機能や特徴をフルに活用して、適切な自動化および継続的な管理を行うことができれば、企業にとって大きな武器となるでしょう。
この記事にもあったようにRPAの導入には正しい効果をイメージして進めることが重要になります。そこで弊社では、RPAを導入する際に重要なポイントと導入効果を確認できるダウンロード資料を用意いたしました。RPAの導入を既に進めている方も、これから進めようとしている方も、ぜひダウンロードしてご一読ください。
なお弊社は、日本最大級のプロフェッショナル人材データベースの運営企業です。「AI活用戦略の立案に優れたプロフェッショナル」や「AI導入プロジェクトの旗振り経験のあるプロフェッショナル」などビジネス領域におけるプロフェッショナル人材に興味がある方は、お気軽にお問合せ下さいませ。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)
出典
※1:ガートナー、企業におけるRPAの推進状況に関する調査結果を発表(Gartner)
https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20200221
※2:RPA市場に関する調査を実施(2020年)(矢野経済研究所)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2599
※3:AIとRPAの連携(シンクイット)
https://thinkit.co.jp/article/16866