現代のビジネスにおいて、AI(Artificial Intelligence=人工知能)やIoT(Internet of Things=モノのインターネット)の導入はさまざまな場面で不可欠な存在となりつつあります。その勢いは、一種のブームともいえるほどです。
しかしながら、アメリカ、中国、ヨーロッパ主要国などと比較すると、日本ではAIやIoTの導入がまだそれほど進んでいません。実際、AIやIoTを活用して業務の効率化をはかりたい、あるいは新規事業を展開したいと考えているものの、具体的にどのように活用したらいいかわからないと悩む企業も少なくありません。
そこで本記事では、AIを活用したいと考えている担当者の方やAIのことをこれから勉強したいと考えているAI初心者の方などに向けて、AIとはどのようなものなのか、AIで何ができるのかといった基本的な知識について、AIやデータ解析分野のプロフェッショナルが解説します。
※本コラムは、AI(人工知能)やIoT、量子コンピュータなどさまざまな最先端技術に関わり、AIやデータ活用のプロジェクトを多数手がけておられるコンサルタントが監修しています。
■目次
1.今さら聞けない! そもそもAI(人工知能)とは?
「AI」とは「Artificial Intelligence」の略語。日本語に訳すと「人工知能」です。AIの学術な定義は今も確立していませんが、一般的にはその名のとおり、人間の脳がふだん行っているような思考、認識、学習、予測といった活動を、コンピュータを使って再現するシステムを指します。
AI(人工知能)という用語が初めて世に出たのは1956年で、それ以来研究、活用が発展し、さまざまな分野でサービスなどへの組み込みが進んでいます。
身近な活用事例だけみても、AppleのSiri、Googleの音声検索、掃除ロボット、ソフトバンクのロボット「Pepper」など、枚挙にいとまがありません。
AI(人工知能)は導入するだけではその効果を存分に発揮することはできず、学習を繰り返していくことで能力が高度化されていきます。
よく聞かれるようになった「機械学習(machine learning/マシンラーニング)」や「深層学習(deep learning/ディープラーニング)」は、AIの学習方法の一種であり、それらをさらに細分化すると「強化学習」「CNN(Convolution Neural Network)」「RNN(Recurrent Neural Network)」などがあり、用途に適した学習方法を利用することになります。
AIの定義とは
AIは統一的な定義が決まっているわけではありません。数多くのAI研究者が、それぞれ異なる定義をしているのが現状です。
前述の通り、AIとは「Artificial Intelligence」の略称であり、日本語では「人工知能」とされています。1956年に計算機科学者であるジョン・マッカーシー教授によって初めて提案されたものであり「知的な機械、特に知的なコンピュータープログラムを作る化学と技術」と翻訳されました。
現在は「人間の知能をコンピューターで再現する技術」という意味合いで理解されているのが一般的です。ただ、研究者間では以下のとおりさまざまな定義がされています。
研究者 | 定義 |
---|---|
中島 秀之 | 人工的につくられた、知能を持つ実体。あるいはそれをつくろうとすることによって知能自体を研究する分野である |
西田 豊明 | 「知能を持つメカ」ないしは「心を持つメカ」である |
溝口 理一郎 | 人工的につくった知的な振る舞いをするもの(システム)である |
長尾 真 | 人間の頭脳活動を極限までシミュレートするシステムである |
堀 浩一 | 人工的につくる新しい知能の世界である |
上記のようにAIは研究者によって定義が異なり、可能性を秘めた技術であることが定義が統一されない要因の一つといえるでしょう。
2.AI(人工知能)の種類3つ
一口にAIといってもさまざまな種類に分けられます。具体的には以下の3つです。
ここからは、AIの種類3つについて解説します。
特化型人工知能(ANI)
特化型人工知能(ANI)とは「Artificial Narrow Intelligence」のことで、ある領域や作業に特化して能力を発揮するAIです。
特化型人工知能は、囲碁や将棋の対局を行うAIなどのように、決められた課題で力を発揮するのが特徴です。一方で、それ以外の場面で活用することはできません。
なお、人間を超越したパフォーマンスが発揮できるため、さまざまな分野で実用化されています。代表的な技術として、自動運転や音声認識、メールフィルターや医療診断などが有名です。
汎用人工知能(AGI)
特化型人工知能は特定領域に対して能力を発揮するのに対し、汎用人工知能は幅広い課題に対して柔軟に能力を発揮するAIです。「Artificial General Intelligence」の頭文字をとってAGIと略されています。
汎用人工知能は、人間のような問題処理能力を兼ね備えているのが特徴です。人間は、イレギュラーな事態に陥っても、知識や過去の経験から適切に判断しトラブルを解決できます。汎用人工知能も同様に、自律的に判断して問題解決をすることが可能です。
なお、汎用人工知能の研究開発は活発に行われていますが、現時点ではまだ実用化には至っていません。ですが、近年のAIの著しい発展を鑑みると、AGIが実用化される日も近いと考えられるでしょう。
人工超知能(ASI)
人工超知能(ASI)とは「Artificial Super Intelligence」のことで、人間の知能を遥かに超えたレベルの人工知能を指す言葉です。
人工超知能は、特定の領域に特化したANIや広範囲に活用できるAGIと一線を画し、自己学習を通じて知識や能力を劇的に向上させることが可能です。その結果、あらゆる分野で人間では不可能な問題も解決できるとされています。
一方で、ASIが人間の知性を超える「シンギュラリティ」も指摘されています。将来的には、ASIの決定や行動が社会に悪影響を及ぼすようになるかもしれません。
3.AI(人工知能)の学習方法3つ
AIは繰り返し学習することで、判断や行動の精度を高めていきます。学習方法は以下の3つです。
ここではAIの3つの学習方法を解説します。
「機械学習(machine learning/マシンラーニング)」
機械学習とは、人間が学習用に用意したテキスト、画像、音声、数値といった膨大なデータをコンピューターに読み込ませることで、隠れたパターンや特徴を発見していく学習方法です。継続的な学習を通じて自ら予測や判断ができるようになります。
なお、機械学習の代表的な学習手法は、以下3つです。
学習手法 | 詳細 |
---|---|
教師あり学習 | 正解となるデータから正解に紐づく結果を出力できるように学習 |
教師なし学習 | 正解のない入力データからルールや特徴を探し出して学習 |
強化学習 | 与えられた環境下で報酬が最も高くなるように試行錯誤して学習 |
学習手法については、AIを利用する目的や読み込ませるデータの種類に応じて選択する必要があります。自社で行いたいことは何かを考え、適切な学習方法を選択してください。
「深層学習(deep learning/ディープラーニング)」
機械学習の手法の一つですが、こちらは人間が加工していないビッグデータをコンピュータが分析し、その特徴やパターンを見つけられるように学習する技術を指します。 AIの導入に際しては、AIが機械学習するためのデータを用意し、機械学習を可能とする情報処理システムを構築して、ディープラーニングなどを用いて繰り返し機械学習を行うことで、初めて効果を発揮することが可能になるのです。
自然言語処理(NLP)
自然言語処理(NLP)とは「Natural Language Processing」のことです。話し言葉や書き言葉など、人間が日頃使用する自然言語をコンピューターが学習して解析、処理する技術を指します。
自然言語処理は、機械学習や深層学習と組み合わせて使用することで、音声データやテキストデータなどの自然言語を処理し、言葉の意味や発言者の感情などを解析できる点が特徴です。人間と対話できるAIチャットボットやスマートスピーカー、自動翻訳や手書き文字の認識など、さまざまな分野で活用されています。
4.AI(人工知能)の進化に重要な3つのアルゴリズム
AIの進化にあたっては、以下のアルゴリズムが重要な役割を担っています。
ここでは、3つのアルゴリズムについて解説します。
ニューラルネットワーク
ニューラルネットワークとは、人間の脳内にある神経細胞「ニューロン」をモデル化したものを組み合わせたアルゴリズムです。
人間の脳内には、ニューロンと呼ばれる情報伝達や情報処理に特化した神経細胞が何十億個も存在します。人間は情報をニューロンによる電気信号の伝わり方で判断しており、その特徴を人工的に再現したのがニューラルネットワークです。ニューラルネットワークはデータを元に自動的に学習できるため、機械翻訳や株式売買など、幅広い用途で活用されています。
また、ニューラルネットワークを応用した、深層学習モデル「ディープラーニング」も有名です。ニュートラルネットワークは、分析のためのデータを入力する「入力層」と、分析を行う「隠れ層(中間層)」、分析結果を出力する「出力層」の3つで構成されています。それに対しディープラーニングは隠れ層を複数所有しており、より複雑な関数の表現や難解な問題の解明を行うことが可能です。
ディープラーニングについては本記事の『「深層学習(deep learning/ディープラーニング)」とは』内でも詳しく解説しているため、合わせてチェックしてください。
遺伝的アルゴリズム
遺伝的アルゴリズムとは、生物における進化の仕組みをモデル化した最適化を実現するアルゴリズムです。
生物の進化においては、環境に適応したものが生き残り、適応できないものが淘汰されてきました。遺伝的アルゴリズムも、過去のデータや経験から、課題への適応度が高い選択肢を残す手法です。
また、遺伝的アルゴリズムには生物の遺伝と同じような3つの概念が存在します。
- 自然淘汰を再現する「選択」
- 遺伝子を組み替える「交叉」
- 別の個体に変化する「突然変異」
3つの概念を活用しながら、複雑な課題に対しても最適な回答を導き出すのが強みです。
エキスパートシステム
エキスパートシステムとは、特定の専門分野に関する知識を有し、専門家のような推論や判断を実現できるアルゴリズムです。
人間が問題を解決する際には、これまで習得した知識に基づいて決策を検討し、適切な答えを導き出します。エキスパートシステムも、事実を収集する「知識ベース」と「もしAであればBである」という推論から結論を導く「推論エンジン」により、人間の思考を再現しています。
これにより、専門知識を持たない初心者でも、エキスパートシステムを活用することで、専門家と同じような問題解決ができる点が特徴です。
5.何ができる? AI(人工知能)の得意なこと
前項の課題をふまえたうえで、AI(人工知能)を開発・導入し有効に活用するためには、まずはAIに何ができるのかを理解することが大切です。AIは万能ではなく、できることとできないこと、得意と不得意があります。
その特性を理解し、自社の業務のどの部分を任せることができるかを判断したうえで活用することで、初めてAIのメリットを生かせるようになるのです。そこでまずは、AIが得意とすることを解説します。
1)画像認識・分析・処理
人間がコンピュータに提示した画像データをAIが分析し、その分類に基づいて適切な処理をするといったような画像認識は、AIの得意分野の代表例です。
深層学習(deep learning/ディープラーニング)を利用した顔認証システムは、監視カメラなどで活用することができます。Googleで検索キーワードから画像を検索できるサービスも、AIの画像認識を利用した処理が活用されています。
また医療分野では、深層学習(deep learning/ディープラーニング)の代表的な手法であるCNN(Convolutional Neural Network=畳み込みニューラルネットワーク)を用いて、AIに厖大な腫瘍画像データを読み込ませ、患者さんの内視鏡検査などで問題のある腫瘍を検出するといった活用モデルなどがみられます。
人間には疲労もありますし集中力にも限界がありますが、AIは疲れ知らずです。
きちんと学習させ、AIによる高精度の検出が可能になれば、医療分野においてもAIが人間の診療の大きな力になるのです。
画像認識、分析、処理を活かしてできること
画像認識、分析、処理を活かしてAIができることは以下のとおりです。
- 顔認証システム
- 医療画像による診断支援
- 不良品の検出作業
- 自動運転
- 監視カメラの管理
画像認識を活かしたAIは、私たちの身近な場面に存在しています。
2)音声認識・分析・処理
人間の話し声の音声データや機械が発する音のデータをAIが認識・分析し、適切な処理を実行する音声認識は、AmazonのAIスピーカー「Amazon Echo」やAppleの音声アシスタント「Siri」などに音声で指示するシーンを思い浮かべるとイメージしやすいでしょう。
人間の発言を録音した音声データをAIが聞き分けて書き起こし、テキストデータ化するといったシステムは、会議の議事録作成などへの活用が期待されています。
海外では、工事設備や自動車などの機械が発するわずかな異音からその不調を読み取り、故障を予知するといったサービスの開発も進んでいます。
音声認識、分析、処理を活かしてできること
音声認識、分析、処理を活かしてAIができることは以下のとおりです。
- 多言語間の通訳
- 音声での文字入力
- ボイスボット
- 議事録の自動作成
- 通話データのテキスト化
人間の自然な日常会話を理解して、適切に処理できます。
3)文章の画像認識・自然言語処理
文章の画像認識は、前述の画像認識の一種です。手書きした文字を画像化し、その画像データをコンピュータに読み込ませてテキストデータ化します。画像データのテキスト化は従来もOCRという技術がありましたが、近年ではこのOCRにAI技術を組み合わせ、機械学習(マシンラーニング)によって文字認識の精度を高めるといったことが可能になっています。
自然言語処理(NLP=natural language processing)とは、人間が提示したテキストデータに対してAIが形態素解析を行い、文章を名詞、副詞、助詞などに分類する作業を通じて、最終的にAIが文章を理解し、その理解に基づいて適切な処理をするというものです。
このAI技術活用のモデルケースとしては、会話音声やテキスト入力などによる「チャット」と、AI(人工知能)を用いた「ロボット」による自動会話プログラムである「チャットボット」が挙げられます。前述のAIスピーカーも、音声認識と自然言語処理を組み合わせたものです。
文章の画像認識、自然言語処理を活かしてできること
文章の画像認識、自然言語処理を活かしてAIができることは以下のとおりです。
- 自動翻訳機能
- テキストマイニング
- チャットボット
- エンタープライズサーチ
- テキスト要約
難解な日本語でも、人間のような処理を短時間で実施できます。
【関連記事】
国内大手企業での生成AI活用事例とツール12選!!
4)単純作業
単純作業の繰り返しは、コンピュータの最も得意とする分野です。機械学習(machine learning/マシンラーニング)や深層学習(deep learning/ディープラーニング)でAIに学習させ、その学習をもとにコンピュータ上での計算処理や分析処理といった作業、物流業務におけるロボットの制御、農業における農作物のサイズ測定などを行わせるなど、多様な活用が考えられます。
単純作業を活かしてできること
単純作業を活かしてAIができることは以下のとおりです。
- ビッグデータの処理や解析
- 配送業務の制御
- 帳票書類の自動処理
人間では膨大な時間と労力がかかる単純作業を、AIであれば短時間で正確に処理できます。
5)推論
AI(人工知能)は、人間から提示されたデータをもとに学習するとご説明しました。
例えば動物の画像認識であれば、AIは学習したデータの統計的分布から「この特徴をもつ画像は犬」「こういう特徴をもつ画像は猫」といったように、判断基準となる特徴を組み合わせた「推論モデル」を作ります。
この推論モデルに基づいて、新たに認識した画像データを「これは犬」「これは猫」と分析する処理が「推論」です。AI(人工知能)を活用するための第1フェーズが「学習」であるとすれば、その第2フェーズが「推論」といえます。
2010年代には、囲碁や将棋、チェスといったゲームにおいてAI(人工知能)の活用が急速に進み、その能力も大きく飛躍したことがたびたび報じられました。こうしたプログラムは、AIの推論能力・手法が生かされています。
推論を活かしてできること
推論を活かしてAIができることは以下のとおりです。
- 将棋やチェスの対戦
- 売上や受発注の見通し分析
- 株価の将来予測
- 顧客の行動分析
- クレジットカード不正利用の監視
人間ではたどり着かない結論も、AIであれば導き出すことができます。
6.AIができないこと・苦手なこと
学習と推論でさまざまな処理を可能にしてきたAI(人工知能)ですが、できないこと、不得意なこともあります。端的にまとめると、「学習の(でき)ない状態で、ゼロから新しいものを生み出す作業」は、AIの苦手とするところです。以下に、その具体例を解説します。
1)クリエイティブな作業
人間のアーティストが行うように、ゼロの状態から新しい絵画や音楽を生み出すといったことは、AI(人工知能)にはできません。前述のとおり、AIがその能力を発揮するためには、学習の蓄積を経て推論モデルを構築する段階が不可欠だからです。
しかしこれは、裏を返せば「学習できれば“再現”はできる」ということです。
実際、過去の芸術家の作品データをAIに学習させることで、AIがその作風を模倣し、作品づくりを“再現”することはすでに可能で、絵画、音楽、小説といった分野で実例があります。
2)気持ちを汲み取ること・空気を読むこと
人間どうしのコミュニケーションにおいては、発した言葉が本来の意味とはうらはらの気持ちを示していることや、無音の空気の中に人間の気持ちやその場の雰囲気が流れていることがよくあります。そうしたシチュエーションで相手の気持ちを汲み取ったり、空気を読んで行動するときの人間の脳は、非常に高度な情報処理を行っているのです。
この処理をAI(人工知能)が担うのは、なかなか難しい課題でしょう。 とはいえ、ソフトバンクのロボット「Pepper」にはすでに感情認識機能が搭載され、人工知能やクラウドAIによって感情を学習するとされています。
今後、人間の脳の活動のメカニズムの解明がさらに進み、人間の脳においてどのような処理が行われているかがより明確になれば、その処理をAIに再現させる技術の検討も進むようになるかもしれません。
7.企業におけるAI(人工知能)を導入する4つのメリット
ここでは、企業におけるAI(人工知能)を導入するメリットを解説します。なぜ今AIを導入する企業が増えているのか、AIによりどのような効果がもたらされるのか、確認してみましょう。
①生産性が向上し、競争優位性があがる
一定のルールに則った分析作業やルーティンワークをAIに任せることにより、会社全体の生産性が向上します。たとえば、クリエイティブワークなどこれまで人力で実施していた作業を自動化することができ、限られた時間で効率よく業務をこなせるようになるでしょう。
結果的に、新規商材の企画作成や立案など、AIでは難しい作業に人が集中できるようになり、新たな価値を創造できるなど生産性が向上するのです。他社が単純作業に手をこまねく中、頭を使う業務にのみ集中できることでより高いレベル、スピード感をもってで事業を進めていけるでしょう。
さらに、AIを使ってデータ分析することでこれまで気づけなかった共通点が浮き彫りになったり、市場動向や顧客行動の予測が素早くなったりするのもメリットとして注目されています。意思決定が早くなるため、ビジネスチャンスを逃すことなく行動できるようになるのです。
AIを活用することは、業務の効率化をはじめ製品の新たな価値の創出、ビジネスモデルの開発など、企業の経営革新にもつながるでしょう。
最近では「AI経営革新」といって、経営においてAIアシスタントを活用することで、業務効率や競争力を高めることを目指す取り組みが注目され始めています。以下の資料では、AIを経営の中心的な役割に据えた社内体制の構築方法や、実際に導入している企業の事例についてご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
②人材不足が解消する
ルーティンワークをAIに任せることは、人手不足の解消にも繋がります。AIは24時間体制で稼働できるため早朝、深夜や土日祝にも利用でき、効率よく時間を使えます。
「ルーティンワークのために残業する」「書類仕事を進めるために休日出勤する」などの非効率がなくなり、限られた人員でも効率よく仕事を進められるようになるでしょう。結果、業務量自体が減少することから、人手不足の解消施策としても有効です。
近年では、少子高齢化に伴う労働人口減少傾向により、今後業種を問わず人手不足が深刻になるだろうと考えられています。今のうちにAIを導入し、効果的に活用する手段を見出しておくことで将来の人手不足リスクを防ぐことも可能です。
③手動対応でのミスが減少する
AIによる自動化で、手動対応でのミスを減少させることも可能です。AIの確かな作業クオリティによって分析作業におけるミスやヒューマンエラーを解消できれば、ミスの確認、修正に時間を割く必要がありません。これまで手作業で実施していた業務や、人の目でミスの有無を確認していた業務があれば、AIを導入を検討すると良いでしょう。
また、特定の条件を満たした場合にエラー表示をするアラート機能にもAIが役立ちます。人に任せることで発生する「担当者ごとに判断基準が異なる」「正常性バイアスがかかってアラートを見逃してしまう」などの事態も起こらず、常に一定基準での判断ができるのもメリットです。
➃コストが削減される
AIの導入にコストがかかる一方、長期的な活用によってトータルコストは却って削減されることが多いです。たとえば、これまで繁忙期に短期アルバイトを雇って処理していた事務作業をAIに任せることにより、アルバイトを雇う人件費がかからなくなります。書類仕事が多くて発生していた時間外労働に対して支払う残業代もカットできるため、コスト面でのメリットも多いと言えるでしょう。
その他、AIを使った在庫管理を徹底して保管費用を減らしたり、AIを使ったリアルタイムの品質管理を行って不良品の発生頻度を減らしたりすることもコスト削減に役立ちます。AI搭載チャットボットによるカスタマーサポートの自動化、将来予測による適切なコスト分配などに活用する方法もあり、多彩なコスト削減施策が存在するのも特徴です。
⑤顧客満足度の向上につながる
AIにはさまざまな使い道があります。たとえば、ホームページ内にチャットボットを設置することで、お問い合わせから返答への待ち時間を減らすことが可能です。24時間体制も可能となるため、顧客の生活サイクルを崩すこともなく、迅速かつ適格にサポートができます。
AIにより顧客満足度が向上できれば、リピーターの増加や口コミ促進にもつながり、さらなるサービスの発展が期待できるでしょう。
8.企業におけるAI(人工知能)導入の4つのデメリット
企業がAI(人工知能)を導入するメリットは多いものの、一方でデメリットも存在します。以下では主なデメリットについて解説します。
①AIの思考プロセスが読めない
AIは膨大な情報量を分析することで判断を行いますが、これらは人間に理解が及ぶモノではありません。人間がAIの思考プロセスを読めないことにより、たとえば医療診断や自動運転など、人の命が関わる場合に大きなリスクが生じます。
重大な決断を行う場合、何故その判断に至ったかの根拠が重要になるため、AIの活用はお勧めできないと言えます。そのため、現時点では画像処理や翻訳など単純作業でミスが許される場合においてはAIは有効ですが、重要な判断を行う場合は、活用しないよう注意しましょう。
②情報が漏洩するリスクがある
AIは大量のデータを用いて分析、作業するのが得意ですが、データの取り扱いが不適切な場合、情報漏洩のリスクが高まります。特に顧客情報や社外秘情報を一度でもAIにインプットしてしまうと、別の分析作業の際に顧客情報、社外秘情報が活用されてしまい、思わぬ形で社外に公開される危険性もあるため注意しましょう。
たとえば個人ごとに最適なカスタマーサポートを提供するため、AI搭載チャットボットに個人情報の入力を求めた場合、AIが別の顧客に対しその個人情報を開示してしまう恐れがあります。データセキュリティの観点から適切な対策を取ることが重要であり、安心、安全に使える仕組みづくりが欠かせません。
責任がどこにあるか分からなくなるリスクも
情報漏洩はもちろん、その他トラブルが生じた際にも、責任の所在が分からなくなるケースが多々あります。たとえば、AIにルールを設定したシステム部門に責任があるのか、そのAIに業務命令を出していた事業部門に責任があるのかわからず、社内において責任に押し付け合いが発生する恐れもあるでしょう。誰が、いつ、どのような判断で、どうAIを活用したのかわからない限り、責任を問うことが難しくなるのです。
また、AIを定期的に監視する部門がどこなのか決めておかないと、運用が放置されてしまう恐れもあります。最初はルール通りの活用ができていても、AIの得意不得意や特性を理解せず利用してしまうことで、学習内容にズレがおきたり個人情報の流出がおきたりと、思わぬミスや想定外のトラブルが発生する危険性もあるのです。あらかじめ監視部門を制定しておき、間違った使い方をしていないか、定期的にチェックすることをおすすめします。
③データに偏見が含まれる可能性がある
AIによる回答は、訓練データを強く反映したものとなります。そのため、仮に訓練データが偏見や不公平さを感じるものなら、AIが導きだす答えも偏見や不公平さを反映したものになるのです。
たとえば、人材採用の最終決定にAIを用いる場合、学習させる従業員の人材データが男性ばかりだと、女性というだけでAIが不合格という判断をする可能性もあります。そのため、AIを活用する場合は、十分に公平な学習データかどうか十分に確認する必要があると言えるでしょう。
➃リスク管理が大変
AIは、情報漏洩リスクだけでなく、不確実性リスクや倫理的なリスクなども抱えています。どんなリスクがあるか事前に全てリストアップして対策を講じたつもりでも、思いも至らなかった新たなリスクが生じるかもしれません。
メンテナンスや運用のルール作りだけでは対処できなかったり、技術的なトラブルシューティングにどう対応すれば良いかわからなかったりする可能性も出てきます。まずはAIのリスクを理解し、適切な管理と対策を実施するよう意識しましょう。
また、倫理的なガイドラインやフレームワークを策定し、安全に使えるようルールを設けるなどの工夫も必要です。場合によってはAI活用に強いコンサルタントやセキュリティ対策が万全のAIツールを使うなど、既にあるソリューションを利用してみることをおすすめします。
⑤イニシャルコストの増加
イニシャルコストとは、特定のプロジェクトや事業を始める際に最初にかかる費用のことです。
AIを導入するには適切な技術インフラが必要であり、特に高性能なハードウェアや大規模なデータストレージが必要な場合は、イニシャルコストも増大します。AIエンジニアやデータサイエンティストといった専門的な人材を雇用するコストや、外部のコンサルタントと連携するための依頼費用などが追加で発生することも多いです。
その他、AIを活用する始めの段階では膨大なデータ収集、整理、クリーニングが必要であり、多大な時間と労力がかかります。
その分の工数をどうやって捻出するのか、外部の専門職を頼るのか内製化するのか、内製化する場合はその分手が付かなくなる業務をどうするのか、など人的資源の分配に関する課題も出てくるでしょう。メンテナンスするためのランニングコストも視野に入れながら、予算を確保する必要があります。
9.AIをビジネスに導入した企業の成功事例5つ
AIはさまざまなビジネスに導入されており、以下のような成功事例がでてきています。
ここでは、AIをビジネスに導入した企業の成功事例を3つ紹介します。
AIの画像認識機能を活用した自動採寸アプリ
ユニフォームのレンタルやクリーニングを行う株式会社ユニメイトは、AIの画像認識を活用した自動採寸アプリを開発しています。自動採寸アプリは、利用者の画像と基本データから適切なサイズをフィードバックするシステムです。
従来のレンタルユニフォームでは、クライアント側のヒューマンエラーが原因でサイズ違いが頻繁に発生していました。その結果、返品や交換にかかるコストや、サイズ交換に備えた過剰在庫などが問題になっていたのです。
現在は自動採寸アプリの導入により、採寸にかかるクライアントの負担軽減と、サイズ違いによる自社コストの削減を実現しています。さらに、廃棄されかねない余剰在庫を押さえたり、サイズ交換時の運送をなくしたりすることで、環境に配慮したサービスにも繋がっていると言えるでしょう。
AIの画像認識機能を活用し不良検品
四国化工機はAIの画像認識機能を活用し、豆腐の不良検品をしています。
これまで豆腐の検品は、繊細な商品でもあることから目視で行われてきましたが、集中力を必要とすることで1人あたりの限界は2時間程度でした。しかしAIに任せたことで、集中力の途切れによるミスや人員交代の必要性がなくなったことで精度も上がって、24時間体制で検品できるようになったのです。
その結果、10倍もの速度で検品をできることになり、現在では1日20時間で10万パックの検品を可能としています。
AIの音声認識機能を活用した電子レンジ
総合家電メーカーであるシャープ株式会社は、AIの音声認識機能を活用した電子レンジを開発しています。
従来の電子レンジは、あくまで調理器具でしかありませんでした。毎日の献立を考えるのに頭を悩ませたり、レシピをネットや本で調べて調理するのが一般的です。
一方で、AIの音声認識機能を搭載した電子レンジは、話しかけることでメニューの相談ができます。また、相談履歴や利用状況から、その家庭に合ったメニューを学習するのも特徴です。さらに、操作方法の説明や音声でのレンジ操作もできるため、最新家電に苦手意識がある方でも心配いりません。
このように、一見AIのいらない分野であっても、AIを活用することでより充実したサービスをユーザーに届けられるのです。
クラウドAIを活用したヒューマノイドロボット
電気通信事業やインターネットなど幅広い事業を行うソフトバンク株式会社は、クラウドAIを活用したヒューマノイドロボット「Pepper」を開発しています。
従来のロボットは、人間の指示に基づいて人間の代わりに行動するのが目的であり、人間性が求められるものではありませんでした。
一方Pepperは「感情エンジン」と「クラウドAI」を搭載しており、音声や表情、会話のやり取りから相手の感情を読み取ります。また、Pepper自身も、表情や言葉、ボディランゲージなどで感情を表現できるのが特徴です。
また、近年は教育現場や介護現場でもPepperが導入され始めており、今後も幅広い領域でAI搭載のロボットが活躍することが期待できるでしょう。
AIによる分析、行動予測を駆使したオンライン決済サービスの不正検知
ソフトバンク株式会社の子会社であるSBペイメントサービス株式会社は、オンライン決済サービスの不正検知サービスの提供を行っています。
SBペイメントサービスでは、長年蓄積した顧客データや購買データをもとに、不正パターンを学習することで行動予測に基づく不正利用検知ができるようになりました。たとえばこれまで毎月数千円しかクレジットカードを利用していなかった人が、あるタイミングを境に数十万円使うようになった場合に不正利用の可能性を知らせます。また、第三者による利用疑いがあるオンライン決済、同様の購買を数十件続けるなどの不信な動きの検知も可能です。
不正利用を検知できれば、金銭的な被害を未然に防ぐことができます。オンライン決済を利用する企業も回収不能となるリスクを負わなくて済むため、企業側、消費者側どちらにとってもメリットのある取り組みとなりました。
10.そもそもAI(人口知能)の歴史
ここでは、AI(人口知能)の歴史について解説します。ここ数年で目覚ましい進歩を遂げているAI(人口知能)ですが、そもそもの発端がどこにあり、いつ頃誕生した技術なのか掘り下げていきましょう。
1950~1960年代:推論や探索技術を用いたAIが誕生
1953年の「ダートマス会議」によって初めて「AI(=Artificial Intelligence:アーティフィシャル インテリジェンス)」という呼び名が生まれ「AI」というワードが定着する要因となりました。もともとは推論と探索に役立つ技術として誕生し、パズルや迷路を解くなど「最適解を見つけるソリューション」としての活用が見込まれていたのがポイントです。
1966年には始めて事前言語処理能力を持ったAIである「ELIZA(イライザ)」が誕生し、AIブームの火付け役となりました。人間の言葉を解析してコミュニケーションを取る機能が搭載されていることから、今のチャットボットなど会話型AIの基礎となっています。
1980~1990年代:特定の知識を取り込んだAIが誕生
1980~1990年代には第二次AIブームが到来し、特定の知識を取り込んだAIが誕生しています。たとえば全ての一般常識をコンピューターに取り込んだ「Cyc(サイク)プロジェクト」がスタートしたり、人工知能型の第五世代コンピューターの開発が進んだりしました。
この頃にはAIが持つ知識をフル活用して推論をする技術開発が進んだため「いかにAIに情報をインプットするか」「いかに正しい推論やレポートを作成させるか」という課題がキーとなっています。
現在は将来予測やトレンド分析にAIが活用されていることからも、1980~1990年代の研究が今に繋がっていると言えるでしょう。
2000年代~:機械学習ができるAIが誕生
2000年代以降は、機械学習ができるAIが誕生しています。機械学習とは、AIなどのコンピューターシステムが過去のデータや経験から自動的に学習する手法のことであり、人と同じように「経験則に基づく推論」や「過去のやり取りを参照したコミュニケーション」ができるようになりました。機械学習はAIの一分野として大成し、特にデータからのパターン認識や予測能力の向上を目的として使われるようになります。
これにより、ビッグデータ解析、活用やディープラーニング(深層学習)への活用が広がり、自然言語処理、音声認識、画像認識などAIを使うシーンが格段に増加したのが特徴です。近年はディープラーニングを用いたChatGPTが話題となり、企業だけでなく個人にも多数使われるようになりました。
11.日本でビジネスにおけるAIの導入が進まない3つの理由と進化の歴史
1950年代から研究が進むAIですが、その過程では「AIブームの時代」と「AIの冬の時代」を繰り返してきました。おおよそ1950年代後半から1960年代の第1次AI(人工知能)ブーム、1980年代の第2次AI(人工知能)ブームに続き、現在迎えているとされているのが第3次AIブームです。
そんな現在、AI(人工知能)はさまざまな業界で活用が期待されています。
2020年1月発表のキーマンズネット編集部読者調査では、全体の85.9%が「企業の業務およびシステムに、AI(人工知能)が必要だと思う」と回答しています。(※1)
他方、総務省発表の「令和元年版 情報通信白書」によれば、各国における企業のAI導入割合において、日本はアメリカ、中国など主要7カ国中で、最も低い値を示しています。
そして、国内のAI活用状況は、全体で10.9%。先端技術を提供する企業ではなく利用する企業に絞れば、その割合は9.4%にとどまっています。(※2)
活用を期待されているにもかかわらず、なぜ日本ではAI(人工知能)の導入があまり進んでいないのでしょうか。そこには大きく3つの課題があると考えられます。ここからは、その課題について解説します。
1)AIやデータ活用の重要性に対する理解が不足している
「AI(人工知能)」という用語自体は普及したものの、この用語が何を指しているか、具体的に何ができるのかというところまでは理解が進んでいないように見受けられます。そのため、実業務の環境でどのように活用できるのか、どのように導入するべきなのか、といった検討段階でつまずいてしまうという状況を多く目にします。
「AIを活用した新規事業」というと何かすごいことができそうなイメージが湧くでしょうし、対外的にも先進的なイメージを与えることもできますから、経営者が「我が社もAIを導入して何かやろう」と考えるのもうなずけます。
しかし、AIで実現できることと実現できないこと、AIに向いていることや向いていないこと、AIの技術の中でも具体的にどういった技術を使うのか、といったことを理解したうえで導入を検討しないと、具体的な話を展開させるのは難しいでしょう。
2)リソース不足によりAIの業務活用が進展しない
AI(人工知能)の導入には、AIやデータをどう活用できるかを判断し進める人材、AIのシステムを導入する資金、AIを開発するコンピュータなど、さまざまなリソースを必要とします。
しかし、そうしたリソースが不足していると、スピーディーな導入は困難です。
特に人材面では、AIの技術や知識を理解し実業務にどのように活用できるかを“目利き”する人材も必要ですが、AIの活用と密接に関わるデータの活用についても、社内に埋もれるデータをどう利用しAI導入につなげていくかを“目利き”する人材も不可欠です。
日本では、データ利活用の重要性が経営者や上層部に浸透していない企業がまだまだ少なからず存在するという印象があります。そうした企業では、せっかく社内に有効活用できそうなデータがあっても、データ活用の“目利き”人材が不足しがちというケースも多いでしょう。
また、投資対効果の観点でいうと、企業の経営者は早期の効果創出を期待しがちですが、AIは学習を繰り返すことでその精度が徐々に高度化され、効果を高めていきます。
すなわち、AI(人工知能)の導入効果は学習が前提であり、そのための期間やコストを見積もっておく必要があるのです。この点を見誤ると、AI活用可否の判断を誤る可能性につながってしまうため、注意が必要です。
【関連記事】
3)AI導入のリスクを恐れ実行に踏み切れない
いざAI(人工知能)を業務に導入するとなると、企業の経営者、上層部、従業員に至るまで、「本当にAIで大丈夫なのか」「AIの仕事は信頼できるのか」といったように、人間がAIに対して漠然と不安感を抱くという状況が起こりがちです。
また、AIと人間が協働する領域においては、従来の業務では発生しなかったようなリスクが生じ得ます。例えば、自動運転をしていた車が事故を起こした場合、その責任は車両を作ったメーカーにあるのでしょうか。それとも、車内で自動運転を制御していた人間にあるのでしょうか。
AIを活用したサービスが増加している現代の環境に、法律の整備はまだまだ追いついていない部分もあります。
そうしたすき間でトラブルが発生することも十分に考えられます。 起こり得る問題が明らかであればそれに対する体制を構築することもできますが、どのような問題が起こるかも未知数であるなかで問題をどこまで許容し、どこまで回避し、どこまで責任を負うかといったことを判断できない企業もあるでしょう。そうなれば、AI導入の実行に踏み切れない、という結論になってしまいます。
12.AI(人工知能)の今後の課題
AI(人工知能)の今後の課題として、AIリテラシーの強化が挙げられます。誰でも手軽に、時には無料で利用できるようになったAI(人工知能)は無限の可能性を秘めている一方、トラブルの元となるなどリスクやデメリットが目立つようになりました。
アルゴリズムの偏りをどう修正するか、差別やプライバシーの侵害にどう配慮するか、クオリティと効率のバランスをどう調整していくかなど、課題は尽きません。自動化による雇用の減少なども懸念されており「AIに仕事が取られてしまうのでは?」という慢性的な不安も蔓延しています。
また、悪意のある攻撃や誤ったデータの入力によって、AIシステムの予測、意思決定に悪影響がもたらされるリスクも課題のひとつです。「AIに自動運転を任せて万が一事故に遭ったらどうする?」「医療手術をAIが担当できるようになったとして、果たして倫理的に許されるのか?」など、今後もさまざまな議論が続くと思われます。
13.まとめ
AI(人工知能)の研究が進んできた現在、AI技術を使ってさまざまなサービスの開発や業務への組み込みが可能となりました。自動車の分野では、特定の場所において運転者の操作を不要とする自動運転「レベル4」の実現も視界に入ってきています。
第3次AIブームのただなかで、最先端のIT技術のひとつとしてAIが幅広く認識されるようになったのは喜ばしいことといえますが、他方で「AI(人工知能)」という用語が一人歩きし、まるで何でもできる魔法のように漠然としたイメージをもってとらえられてしまっている部分もありますが、実際には、AI(人工知能)と一言でいっても、AIを構成する技術や学習、構築のための手法は多種多様です。
学習方法だけをみても以下のとおり実にさまざまです。
- 機械学習(machine learning/マシンラーニング)
- 深層学習(deep learning/ディープラーニング)
- 強化学習、CNN(Convolution Neural Network)
- RNN(Recurrent Neural Network)
AIを解説する情報も多数存在するものの、詳細を解説した情報はどうしても理解が困難になりがちですし、簡単に解説した情報は漠然としたイメージの域を出ないということもあるでしょう。
実際、本業がIT領域ではない企業の経営者や担当者がAIをきちんと理解するのは難しいところもあります。そんな状況下で正しくAIの開発、導入を適切に進めるためには、まずはじめに「AIを使ってこういうことをしたい」といったように目的や目標を明確にするプロセスが不可欠です。
AIを導入する目的や目標が明確になって、初めて最適な技術・手法を選択することができるようになるのです。
これからAI導入を検討しようとお考えの方は、この目的や目標が明確になっているかどうかをまずご確認いただきたいと思います。
また、AIはすぐれた技術ですが、まだまだ発展途上であり、成熟した従来のIT技術や、統計学をベースとした予測手法も、状況に応じてまだ十分活用可能です。
実際、さまざまな企業から「AIを活用して何かやりたい」というご相談を大変多くお受けするようになりましたが、お話をうかがってみると従来の学問やIT技術を用いて実現するほうが適しているケースも散見されます。
AI導入を検討される際には、「AI」という漠然としたイメージにこだわりすぎず、あくまで前段の目的や目標ありきでAI(人工知能)も含めた数多の技術のなかから最善の方法を検討するといいでしょう。AI初心者の方、ITの専門家でない方にとっては、「そのように幅広い技術があるとなると、すべてを理解するのは難しそうだ」「最適な選択ができるかどうか不安」と感じることもあるかもしれません。
こんな不安を感じられていらっしゃる方はAI技術や最先端のITに関する知識を有するプロフェッショナルに相談することをおすすめします。
AIの技術動向や活用のモデルケースといった最新情報をキャッチアップし、専門的な知見をもつプロフェッショナル人材のサポートを受けることで、最適な技術の解説や提案を受けることも可能になり、AI導入の効率もメリットも格段に高まるでしょう。
監修者プロフィール 長迫勇樹
株式会社クォンタムデータ代表取締役。 量子情報技術とその他先端領域(人工知能、データ解析)の融合により新規事業の研究開発・導入コンサルティングを手掛ける。京都大学大学院卒・NTT横須賀研究所、インターネット総合研究所を経て2017年に創業。米国の大学での教職他海外駐在経験も豊富。理学修士、工学修士、玉川大学量子情報研究センター博士課程単位取得修了。現在は千葉大学のキャンパス内に事務所を構えている。
出典
※1:AI導入「必要」86%、実際の導入率は18%……RPAと混同する声も(キーマンズネット)
※2:第1部 特集 進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0(総務省)
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)