「企業ブランディングは大企業ビジネスのものだ」というイメージを持っている方が多いようです。しかし、中小企業やベンチャー企業であっても企業ブランディングは大切だといえます。企業ブランディングはマーケティングにも密接に関わっており、売り上げ向上に役立ちます。
本記事では企業ブランディングの基礎知識から目的・効果と企業ブランディングの戦略について解説します。
1.企業ブランディングとは?概要と目的を解説
企業ブランディングを成功させるためにはどうすればいいのでしょうか。 企業ブランディングは会社のイメージやビジネス価値を高めるために行います。
そもそもブランドとは商品やサービスを競合他社と区別するための概念です。
自社が制作・開発した商品やサービスを使ううちに顧客はユーザー体験を通して会社に対して特定のイメージを持つ効果が出てきます。これがブランドイメージです。
企業ブランディングとは、顧客が抱くブランドイメージを会社側から積極的にアピールすることで能動的に高めていく活動のことを言います。
多くの大企業はすでに企業ブランディングを戦略的に行っております。
資本力があるため企業ブランディングの事業にも多額の予算を割くことができ、自社内に専門に部署を作る事例や外部の専門業者に申込みする事例もあります。
しかし大企業以外ではなかなかビジネスや事業に割く予算が取れず、ブランディングの担当者がいても他の仕事と兼任の事例が多いでしょう。
日本において大企業の割合は会社全体の0.3%にすぎず、残りの99.7%は中小企業か小規模企業です。(※1)
このように多数の競合があるなか、顧客に自社サービスを申込みして体験してもらうためには、企業ブランディングのコンセプトを定義し、戦略的に自社の事業やサービス内容を正しく理解してもらうことが欠かせません。
また、申込みや体験を増やすには、少ない資金、時間、人員で効果的に自社の企業ブランディングをし、魅力を引き出すことが重要となります。
中小企業やベンチャー企業でも企業ブランディングをしっかりとやることで競争優位に立ち、成長企業への進化へ繋がった事例もあります。
企業ブランディングと製品ブランディングの違い
企業ブランディングは、自社の事業やサービスを対象とする製品ブランディングとは異なります。
製品ブランディングはあくまでも制作・開発した製品のブランドに対する取り組みであり
制作・開発した製品のイメージを向上して申込みを増やすのが目的です。
一方、企業ブランディングは、会社そのもののイメージを向上する目的の取り組みであり
顧客だけではなく、株主や従業員、取引先、地域や行政など社会全体への発信を目的としているのです。
いわば社会全体にその会社のファンを増やす取り組みが企業ブランディングと言うことができます。
企業ブランディングは「実利価値」「感性価値」「情緒価値」「共鳴価値」の4つの価値のいずれか、または組み合わさったものを提供します。
そしてそれらの価値に対して社会からの共感を得られたとき「ブランド」として成功します。
BtoBにも企業ブランディングは有効
ブランドというとBtoCのイメージがあるかもしれませんが、BtoBにおいても企業ブランディングは有効です。後述しますが、企業ブランディングには社内の意識を統一する効果があるからです。
一般にBtoCは幅広いターゲット層に訴求しなければなりませんがBtoBの場合は単価が高く、ターゲット層が狭いのが特徴です。
したがってBtoC向けのマーケティングのようなマスメディア広告を打つ必要はあまりない場合が多く
それよりはBtoB専門のセミナーや対面営業、オウンドメディアなどで地道にマーケティングを行うことで企業のブランド価値を高め成功につなげるることができます。
2.企業ブランディングをする6つのメリット
企業ブランディングを戦略的に実施するメリットを以下で解説します。
1)資金調達がしやすくなる
企業のブランド価値が高いと投資家や金融機関からの信用も高いので、新しい製品を開発するときにスムーズに資金調達の申込みをできる事例が多いです。
2)人材採用がしやすくなる
企業ブランディングは採用活動にも役立ちます。
人気の就職先ランキングを見ると有名な大企業ばかりが並んでいる事例が目立ちます。
これは企業のブランド価値が高いことも1つの大きな要因です。
優秀な人材はブランド価値の高い企業の求人に申込む傾向もあるため、採用活動にも効果的です。
3)従業員のモチベーションやコンプライアンス意識が高まる
企業ブランドが確立されるということは、企業理念がステークホルダーに対して浸透するということです。
従業員が末端にいたるまで企業の理念で染まり、対外発信のトーンが統一されるようになります。
また、ブランド価値の高い企業の従業員は一般的にはモチベーションが高くなります。
なぜなら世の中をよりよくしている実績のある企業に勤めることで自分の仕事に誇りとやりがいを持つ効果があるからです。そのような企業に勤めることで従業員個人の周りからの評価も高くなり、仕事への意識が向上する事例もあります。
4)マーケティング戦略の面で成功しやすい
企業ブランディングはマーケティング戦略の成功にも役立ちます。
顧客は自己の利益を求めて製品を体験しますが、同時に社会全体の利益にも関心が高いです。
社会貢献活動を行っている企業と何も社会貢献活動を行っていない企業が同じ機能の製品を売っていた場合
社会貢献活動を行っている企業が制作・開発したサービスの方がよく申込みされる傾向があります。
また、新しく制作した製品を提供したとき、企業のブランド価値が高いとすぐに製品を認知・信頼してもらえるため提供や販売をしやすくなる事例があります。
さらに、ブランド価値が高い企業の製品は顧客がSNSなどでシェアしてくれやすくなります。
ブログなどで詳しいレビュー記事を書く顧客も。ブランド価値が高くなるとマーケティングにかかるコストも削減することができるのです。
5)プライシングで有利に立てる
プライシングとはマーケティングの一種で価格設定のことです。
製品がコモディティ化してくると価格競争に陥りやすくなりますが、同じ機能の製品でも企業ブランド自体が差別化になります。
顧客はブランド価値が高い企業が発売する製品は高くても当たり前というイメージがあるため値段が高くても申込みされやすいです。
6)顧客ロイヤリティが高まる
顧客はブランド価値が高い企業のサービスに繰り返し申込みしやすい傾向にあります。
企業ブランド自体のファンになり、製品にも愛着を持つようになるからです。
商品本体の価値に、企業ブランドの安心感も付随し、申し込みに繋がりやすい傾向にあります。
そのため他社でより安価な類似品が提供されたとしても簡単に乗り換えたりせず申込みし続けてくれるでしょう。企業ブランディングはリピート客に対するマーケティングにも役立つのです。
3.企業ブランディング立案の手法・手順
このセクションでは企業ブランディング立案の手法と手順を解説します。
Step1:現状を把握する
まず現状の課題を把握するために調査や分析を行います。
自社の実績や特徴、強みと弱み、社会に対して何をアピールしていくかなど企業ブランディングの方向性を決定します。
Step2:ブランド定義を決める
次にブランドの特徴や社会的役割、コンセプト、ビジョン、デザイン、パーソナリティなどを明確にします。
ブランドやデザインは他社とは異なる独自のものであることが重要です。
このとき組織内でも企業ブランディングの必要性を共有することが重要です。
ブランド名の作成やロゴのデザイン製品やパッケージなどのデザインもこのステップで行ないます。
Step3:定義をもとに計画・実施する
STEP2で決めた定義をもとにブランド戦略を立案します。
ブランド戦略とはターゲット層に対してブランドの特徴を効果的にアピールするための具体的な方法です。
ブランド戦略のための手段や制作物やデザイン、掲載するメディアなどを計画します。オウンドメディアの開発もこのステップで行います。
Step4:検証する
STEP3で計画したブランド戦略を実施したあとは構築・発信した企業ブランドのデザインが理想通りに受け入れられたのか効果を検証する必要があります。
アンケートや市場調査などでデータを取り客観的に評価しましょう。
Step5:リブランディングする
企業ブランディングは継続することが大切です。PDCAを回しながら運用を続けることで企業ブランドが徐々に社会に根付いていきます。
このPDCAをリブランディングと言います。
社会や市場環境は時代に合わせて刻一刻と変化していくものであり、リブランディングはそれに合わせてブランドイメージを変えていく活動のことです。
リブランディングがしっかりできてないとブランドが時代遅れになり、ブランド価値も下がっていきます。
まとめ
本記事では、企業ブランディングの基本概念、目的、効果、戦略について解説しました。
企業ブランディングは大企業だけでなく、中小企業やベンチャー企業にも重要で会社のイメージやビジネス価値を高める活動を指します。
これにより、資金調達が容易になり、人材採用が促進され、従業員のモチベーションが向上します。
また、マーケティング戦略の成功、価格設定の優位性、顧客ロイヤリティの向上といったメリットも得られます。
成功のためには、現状の課題を把握し、ブランドの特徴やコンセプトを明確に定義し、その定義に基づいたブランド戦略を立案・実施することが重要です。
さらに、実施後は効果を検証し、時代や市場の変化に応じてリブランディングを行う必要があります。
リブランディングを継続的に行うことで、企業ブランドは社会に根付き、時代に適応したブランド価値を維持・向上させ中小企業やベンチャー企業も競争優位を築き、成長企業へと進化することが可能です。
出典 ※1:中小企業・小規模事業者の数(2016年6月時点)の集計結果を公表します(中小企業庁) https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/chu_kigyocnt/2018/181130chukigyocnt.html
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)