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最終更新日:2024.08.26
営業/マーケティング

【プロ監修】インサイドセールスを立ち上げたい! 組織の構築ポイントや成功事例も紹介

【プロ監修】インサイドセールスを立ち上げたい! 組織の構築ポイントや成功事例も紹介

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、外出や人との対面の自粛が求められるようになり、企業ではテレワークが普及しました。その影響で、企業は、顧客を訪問して営業活動を行うフィールドセールスを実施しづらくなりました。そこで注目されているのが、インサイドセールスという営業スタイルです。

本記事では、マーケティングのプロフェッショナル監修のもと、インサイドセールスの概要、インサイドセールスを担当する組織を立ち上げる際のポイント、インサイドセールス導入のメリット、インサイドセールスを導入した企業の成功事例などを解説します。




1.インサイドセールスとは?

1.インサイドセールスとは?

一般的に「インサイドセールス(内勤営業)」とは、自社のオフィスなどから遠隔で行う営業活動を指します。顧客を訪問して営業活動を行う「フィールドセールス(外勤営業)」に対して、インサイドセールスは電話や電子メール、Web会議システムなどを活用して顧客にアプローチします。

昨今の新型コロナウイルス感染拡大の影響で、顧客を直接訪問しての営業活動や商談が難しくなったことから、非対面で行える営業活動としてインサイドセールスの注目が高まり、営業部門の一組織としてインサイドセールス担当部門を立ち上げる企業も増えてきました。

インサイドセールスのクラウドサービスを提供する株式会社インターパークが、営業職のビジネスパーソンを対象に2021年7月に実施した調査(※1)によれば、「自社においてインサイドセールスを導入している」という回答(26.1%)は昨年比プラス6.1%。また、「2020年3月以降にインサイドセールスを導入した」と回答した人のうち83.3%が、感染収束後もインサイドセールスを行っていきたいと回答しています。

2.マーケティングコンサルタントのニーズは急増している

2.インサイドセールス業務の担当組織を立ち上げるメリット

営業部門にインサイドセールス業務を担当する組織・チームを立ち上げ、インサイドセールスを導入・実施するメリットを解説します。

1)効率的な営業活動ができる

顧客企業を訪問するフィールドセールスの場合、移動時間やリソースなどを考えると、1日に訪問できるのは2件か3件というところになってしまいます。
他方、インサイドセールスでは、1日に5件から7件のWeb会議を実施することも可能です。したがって、より多くの顧客にアプローチすることができるということになります。

2)顧客の見込み度合いに応じたアプローチをとりやすくなる

潜在顧客であるコールドリードから、近い将来の商談受注を見込むことができるホットリードまで、すべての顧客に対してフィールドセールスを実施するのは大変です。
そこで、フィールドセールスとインサイドセールスでアプローチするリード(見込み顧客)や案件を分けることによって、フィールドセールス部門がアプローチしたい顧客に集中できるようになるのです。

3)リードタイムを短縮できる

インサイドセールスによる電話営業で企業にアポイントメントを取得できたら、その情報をフィールドセールス部門に引き継ぎ、フィールドセールスの担当者に訪問してもらうことになります。
そのアポ取得の電話で相手先企業のニーズをヒアリングし、その情報を含めてフィールドセールスに引き継げば、フィールドセールスは「初回ヒアリング」が不要になる分、訪問回数を1回減らすことも可能に。そうなれば、リードタイムの短縮につながります。

4)幅広い人材を活用できる

インサイドセールスの仕事は、電話やWeb会議システムといった環境を整えることができれば、在宅勤務でも実施することができます。
そのため、子育て中で通勤や企業訪問などの外出が難しいビジネスパーソンにも任せることができ、幅広い人材の活用が可能になるというわけです。

3.インサイドセールスの役割

3.インサイドセールスの役割

訪問営業の困難な状況を受け、前述のようなメリットを見込めることから期待が高まるインサイドセールスですが、効果を最大化するためのポイントはその役割を明確にすることにあります。

具体的には以下で解説しますが、基本的にはフィールドセールスによって商談を受注する過程の負担を軽減し、受注の確率を高めるための分業がインサイドセールスの役割・目的であるという点をおさえておきましょう。

1)アウトバウンド

自社で持っているリードのうちアクションがないコールドリードを掘り起こす、あるいはまだ接点のないターゲットのリードを獲得するといったことを目的に、電話などで営業活動を実施します。

2)インバウンド

セミナーに参加した顧客、資料を請求した顧客、問い合わせした顧客など、アクションのあったリードを商談につなげるため、営業活動を実施します。

3)営業フォロー

フィールドセールスによって商談が進んだものの受注に失敗してしまったリードや、フィールドセールスによる商談の途中で話が保留になったまま動いていないリードをもう一度掘り起こすため、営業活動を実施します。

4)カスタマーサクセス

「カスタマーサクセス」とは、自社の商品・サービスを顧客企業に利用してもらうことを通じ、顧客企業の成功をサポートする活動。インサイドセールスは基本的にリード、すなわち見込み顧客への営業活動が主な役割ですが、既存顧客の対応となるカスタマーサクセスの一部をインサイドセールス部門が担うケースも考えられます。

4.インサイドセールスの組織立ち上げ・構築のポイント

4.インサイドセールスの組織立ち上げ・構築のポイント

ここまで解説してきたように、インサイドセールスに求められる主な役割は「フィールドセールスをサポートするためのリード育成による商談機会の創出」であり、その担当業務はマーケティング部門と営業部門の両方に重なるものといえます。

その点を踏まえ、インサイドセールスの効果を最大限に高めるためには、インサイドセールスを担当する組織の立ち上げや、フィールドセールス担当部門・マーケティング部門との連携構築に際しておさえておくべきポイントがあります。ここからは、そのポイントについて詳しく解説します。

1)現状の課題と今後の目的・目標を明確にする

自社の営業活動における問題点や成果を高めるための改善点など、現状の課題を明確にしなければ、インサイドセールスや営業全体で達成すべき目標を設定することができません。まずは現状の課題を分析し、明確にしましょう。

そして、チームを立ち上げインサイドセールスを実施して成果を上げていくためには、「何を成果とするのか」「目指すゴールは何か」ということが明確である必要があります。適切に評価してPDCAを回せるよう、目的・目標を明確に定めます。

また、フィールドセールス担当部門やマーケティング部門と連携して「営業の分業」としてのインサイドセールスを実施する場合、その目的・目標を共有して認識をすり合わせておくことも大切なポイントです。

2)KPIを設定する

インサイドセールスを立ち上げる時期から安定運用を図る時期まで、インサイドセールス組織構築上のフェーズに応じて、適切なKPI設定が求められます。

例えばインサイドセールスでは「アポの取得数」をKPIとするケースが散見されます。これはリードの量を追うようなフェーズでは有用ですが、リードの質を重視して商談獲得の確度を高めていきたいフェーズでは問題になることも。

フィールドセールスと連携して商談につなげるには、両組織の協力関係も重要です。「最終的な目的は商談の受注である」という点を念頭に置き、そのためにインサイドセールスが何をすべきかという点を踏まえたKPI設定も考える必要があるでしょう。

3)CRMなど支援ツールを活用する

インサイドセールスがリードの情報をフィールドセールスに受け渡して受注につなげるためには、情報の分断が起こらないよう留意する必要があり、その企業に誰がいつどのようなアプローチをしたかという記録を残しておくことが不可欠です。

そのためには、CRM(顧客関係管理)ツールやSFA(営業支援)ツール の導入は必須になるでしょう。CRMツールやSFAツールで履歴を記録することで、インサイドセールスがどのくらい商談を生み出したかという効果も測定することができ、KPIの評価や後述のPDCAに活用できる点も導入のメリットに。

そのほか、Web会議サービス、名刺管理ツール、録音機能付きの電話機など、インサイドセールスの業務に必要なシステム構築も進めましょう。

4)シナリオを作成し、トークスクリプトやマニュアルを作成する

リードに対して適切な営業活動を行うためには、リードの見込み度合いや状況に応じていつどのような情報をどのような方法で提供するかといったシナリオを作成し、そのシナリオに沿って営業活動を進めます。

今は関心のないリードに次はいつ架電するか、もう少しでアポを取れそうな企業にはどのようなトークでプッシュするか、といったように、リードのレベルを定義してそのレベルに応じた営業活動を考えていくと、アポも安定的に取得できるようになります。

フィールドセールスやマーケティング部門と連携して営業活動を進める場合、どの段階のアプローチをどの部門で対応するか、どのような状態になったら組織間のリード引き継ぎを行うかといったことも決めておく必要があるでしょう。

実際にインサイドセールスとして営業活動を進めるにあたっては、トークスクリプト資料やマニュアル資料などを作成しておくことで、トークのノウハウを共有して質のばらつきを防ぐことができ、チームとしての活動の質を担保できるようになります。

5)PDCAを回して改善する

組織のあり方や活動体制に完成形はありません。組織を立ち上げればそれで終わりということではなく、その体制や仕組みは定期的に振り返って適切な改善を図らなければなりません。

設定した目的・目標やKPIに応じて評価を行い、失敗があれば改善し、ブラッシュアップをしていきましょう。

5.インサイドセールスの成功事例5選

5.インサイドセールスの成功事例5選

最後に、インサイドセールスを導入した企業の成功事例を紹介します。

1)NTT東日本

NTT東日本株式会社は全国に支店がありますが、地方の支店では顧客訪問時の移動距離が長い傾向があり、訪問営業だけでは企業に対して有効なアプローチをとりづらいという課題がありました。そこでインサイドセールを導入。

まずは既存顧客10社を対象としたスモールスタートで効果と理解度を測定したことによって不安も払拭でき、本格導入へ。インサイドセールスの導入によって削減できた時間をフィールドセールスに投入することで、お客様と顔の見える関係を構築し、商談機会を増やすことに成功しています。

2)ベネフィット・ワン

福利厚生サービスのパッケージを提供する株式会社ベネフィット・ワンは、フィールドセールスにインサイドセールスを組み合わせることによって、1日の商談件数を4~5件から14件以上に増やすことに成功しました。過去にはインサイドセールスだけで500社以上との契約獲得に至ったことも。

多くの企業はWeb会議システムによるインサイドセールスに抵抗感はなく、多少抵抗があっても、インサイドセールスによって訪問営業のコストを削減しサービスの品質向上に投資できることを説明すると理解も得られたそうです。

3)富士ソフト

ソフトウェア開発を手がける富士ソフト株式会社では、新規顧客開拓のため営業担当者の架電やテレマーケティング業者の利用などを行っていたものの、あまり効果が上がらず苦戦。リードの獲得を営業部門と分離させ、営業部門のリソースは商談に集中させたいという課題がありました。

そこで、インサイドセールス代行サービスを活用してインサイドセールスを導入したところ、新規顧客の商談取得率が2倍に。外部委託サービスから詳細なフィードバックを得ることによって、より効果的なPDCAも実現できるようになりました。

4)カリフォルニア損保

アメリカの伝統的な損害保険会社であるカリフォルニア損保は、見込み顧客に対する電話のコンタクト率を高めるため、インサイドセールスを導入しました。その結果コンタクト率は向上し、それに伴って見積書の提示率、成約率、営業担当者あたりの売り上げのいずれも向上しました。

5)マイナビ

多様な事業を展開する株式会社マイナビのコンテンツメディア事業部では、インサイドセールスチームをを立ち上げ、営業改革を推進。新規顧客の獲得と既存顧客対応のリソース偏在、フィールドセールスの営業活動の属人化、営業に関するナレッジのブラックボックス化といったさまざまな課題の解消につながり、新規獲得率の向上も実現しました。

6.まとめ

新型コロナウイルス感染拡大、人材不足といったさまざまな状況を受け、より効果的な営業活動を実施するための選択肢として、インサイドセールスの立ち上げに対する注目が高まっています。

電話やメール、Web会議システムなどを活用して営業活動を行うインサイドセールスは、その手法から「アポを取る担当」と見られてしまうことも少なくありませんが、その考え方ではインサイドセールスの効果を十分に得ることは難しいでしょう。

反対に、インサイドセールスを立ち上げればフィールドセールスは必要なくなるかといえば、決してそうではありません。なかには、潜在顧客へのアプローチから商談の契約までインサイドセールスで行えるケースもありますが、多くの場合はフィールドセールスとインサイドセールスを組み合わせることで大きな効果を発揮するようになります。

インサイドセールスの基本的な役割・目的は、「フィールドセールスが商談を受注するための営業活動に集中できる環境をつくること」、端的にいえば「フィールドセールスの負担を軽減すること」であり、そのための分業組織であるととらえておくと、その価値を過不足なくイメージできるのではないでしょうか。

そして、そのためにインサイドセールスが主に担うのが「リード(見込み顧客)育成による商談機会の創出」であり、その担当業務はマーケティング部門と営業部門の両方に重なるものです。その成果を上げるためには、セミナー参加者、資料請求者、お問い合わせ者といったリードをマーケティング部門と連携してしっかり管理することも必要です。

インサイドセールスの立ち上げに際し、どこからスタートすればわからないという話もよく聞かれますが、まずはフィールドセールスの担当部門が「インサイドセールスがいてくれて楽になった」と実感できるようなインサイドセールスのあり方を設定し、そこからスタートするというのは効果がわかりやすく、おすすめの立ち上げ方法の一つです。

監修者プロフィール 石川 遼彦(マーケティング・コンサルタント)
ウェブディレクター、ショッピングモールのプロモーション担当者を経て、マーケティングコンサルタントに転身。上場企業を中心に大手企業から中小企業まで幅広い案件に携わったのち、所属企業のマーケティング責任者としてマーケティング部門とインサイドセールス部門を統括。 SaaS製品の企画・開発からプロダクトマーケティングまで幅広く手掛ける。 得意領域はSalesforceやMarketoとPardotといったCRM/SFAとマーケティングオートメーション(MA)ツールを活用したデジタルマーケティング。




(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

出典
​​​​​​​※1【インサイドセールスに関する調査】インサイドセールスを導入する企業は昨年比+6.1%。そのうち34.9%は、外出自粛が取りざたされた2020年3月以降に導入。(PR TIMES)

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