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最終更新日:2024.08.26
DX/最新技術

バックオフィスDXとは?効果性の高い進め方やポイント、成功事例も解説

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1.バックオフィスDXとは?

テレワークや働き方改革の推進によって、経理や人事など管理部門のデジタル化が急務という企業も多いのではないでしょうか。こうした管理業務、いわゆるバックオフィスのDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組む企業が増えています。 DXというと、営業やマーケティングなどフロント業務向けというイメージが強いかもしれません。しかしある調査によれば、DXに取り組む企業の約6割がバックオフィスDXをすでに実施。営業やマーケティングのDXより多い結果となりました(※1)。

「経営の中核を担うバックオフィスのDXこそ経営改革につながる」という意見もあります。しかし実際はバックオフィスのIT化が遅れている企業も多く、どうバックオフィスDXに取り組んでいいかわからないという声も聞かれます。 そこでバックオフィスDXの基本的な考え方とあわせ、実際に進め方やポイント、成功事例をまとめました。


1.バックオフィスDXとは?

1.バックオフィスDXとは?
企業の業務は大きく、フロントオフィスとバックオフィスに分かれます。フロントオフィスとは顧客と直接対面する営業やマーケティング、カスタマーサポートなどの部門のこと。一方バックオフィスは、顧客と直接対面しない経理や人事、法務などの管理部門を指します

バックオフィス業務にITツールなどを導入してデジタル化を実現、効率化やコスト削減を目指すのがバックオフィスDX。しかしITツールを導入しただけではDXとは言えません。経済産業省のDXガイドラインでは、DXを以下のように定義しています(※2)。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」 例えば「採用業務のDXで新たな人材を採用でき新規事業につながった」「法務のDXによって異業種企業との契約が実現した」というケースは、バックオフィスDXと言えるでしょう。バックオフィス業務をデジタル化した上で、さらに組織やビジネスの変革につなげられるか?という点がポイントです。

2.バックオフィスDXが注目される理由と重要性とは

2.バックオフィスDXが注目される理由と重要性とは

バックオフィスDXが注目される大きな理由が、テレワークや在宅勤務の導入です。コロナ禍によって、テレワークや在宅勤務を導入する企業が急増。東京都の調査によると、都内のテレワーク実施率は2021年8月時点で65%にも達しています(※3)。

テレワークの導入が進む一方で「オンラインでは業務が完結しない」という課題もあります。総務省の調査によると、テレワーク実施の課題・障壁の上位は以下のような結果となりました(※4)。 ≪テレワーク実施の課題・障壁の回答(上位のみ抜粋)≫

  • テレワークに適した仕事ではない(36.3%)
  • 勤務先にテレワークできる制度がないため(27.9%)
  • 会社に行かないと利用できない資料(22.8%)
  • 会社に行かないとできない手続き(19.4%)

特に経理や法務などの管理部門では、資料をオンライン化しづらい傾向があります。押印が必要なのでオンラインでは完結しない、というバックオフィスの方も多いのではないでしょうか。また自社がデジタル化に取り組んでも、「請求書がFAXで来るため出社を余儀なくされている」というように取引先が対応していないためIT推進が遅れるケースもあります。

しかし長引くコロナ禍や働き方改革によって、経理や人事などバックオフィスの業務効率化・コスト削減は必須の時代。そこで今バックオフィスDXの重要性が高まっています。冒頭で紹介したように、すでに多くの会社がバックオフィスDXを実践しているのもこうした事情からでしょう。

3.バックオフィスDXを実践する3つのメリット

3.バックオフィスDXを実践する3つのメリット

バックオフィスDXを実践するメリットは次の3つです。

(1)バックオフィス業務の精度が上がり、経営のスピードアップにつながる

経理や財務、法務と言ったバックオフィス業務は、企業経営の根幹ともいえる業務。多くの資料を人手でチェックする必要があり、どうしてもマンパワーがかかります。こうした業務をDXで自動化やデジタル化が実現すれば、ミスやヒューマンエラーが防止でき業務効率の大幅なアップが期待できます

こうした効率化は、最終的に経営のスピードの向上につながります。例えば法務部門での契約書チェック業務をDXで効率化できれば、契約締結までの時間を大幅に短縮できます。つまりこれまで以上に多くの契約締結が可能になるわけです。

(2)コスト削減効果がわかりやすい

資料作成やチェック業務など、ルーティン業務が多い点もバックオフィス業務の特徴です。こうしたルーティン業務もクラウドサービスなどを活用して効率化できれば、残業時間や外注費の削減につながります。これまでIT化の推進が遅れていた企業ほど、大きな効果が期待できるわけです。

また「残業時間を〇時間削減できた」「年間コストを〇円削減できた」など効果を数値化しやすい点もメリットと言えるでしょう。

(3)多様な働き方に対応でき、人材確保につながる

バックオフィスといえば資料のオンラインができていないため、出社が必要なケースが多いイメージが強いのではないでしょうか。しかしバックオフィスDXによってオンラインで業務ができるようになれば、テレワークや在宅勤務にも対応できます。つまり社員の柔軟な働き方が可能になるわけです。

これは育児や介護などと仕事を両立しやすい環境につながり、離職防止効果も期待できます。さらにこうした制度が充実すれば、より優秀な人材を採用できるようになるメリットもあります。

4.バックオフィスDXの進め方、基本の4ステップ

4.バックオフィスDXの進め方、基本の4ステップ
バックオフィスDXに取り組みたいと思っても、具体的な進め方がわからないという経営者の方も多いのではないでしょうか。ここではバックオフィスDXの基本的な進め方を4つのステップで解説します。

(1)バックオフィス業務の可視化・標準化に取り組む

まずは社内のバックオフィス業務について現状分析を行い、現場が抱えている課題を洗い出すことが先決です。

課題を洗い出すために必要なのが、業務の可視化。現在の業務フローや具体的な作業内容、かかっている時間などを可視化しましょう。可視化すれば、現場だけではなく経営者の視点でもどこに課題があるのか把握しやすくなります。またバックオフィスDXを実践するにはDX経験を持つプロフェッショナルの協力が不可欠です。業務を可視化しておけば、こうしたプロ人材にもスムーズにチェックしてもらえるでしょう。

あわせて検討したいのが、業務の標準化。業務フローが担当者ごとに異なっていると、当然ながらデジタル化・自動化は難しくなります。最近では業務の可視化や標準化をテーマにしたセミナーも増えています。セミナーなどを参考に、DXを実践するためのベース作りに取り組みましょう。

(2)社員のモチベーションを向上させる

バックオフィスDXは業務効率化だけにとどまらず、最終的には組織やビジネスに大きな変革を起こすことがゴールです。しかし社員の中には変化を恐れ、DXの取り組みに消極的だったり反発したりする人も出てきます。

こうしたケースに備えて、担当者のモチベーションを上げる対策を検討しましょう。経営者自らバックオフィスDXに取り組む意味を説くことも有効です。また主体性を持たせるため、部門内にDX担当を任命してセミナーなどに参加させて育成する方法もあります。

(3)自社の業務にあわせてシステムやサービスを導入する

バックオフィスDXでは、まずITシステムを導入して業務効率化やコスト削減につなげることが主な施策。しかしITシステムといっても、自社開発するケースもあれば安価なクラウドを利用するケースもあります。またクラウドサービスの中でも最近は選択肢が増えており、サービスによって機能が大きく異なります。

ただITに詳しい人材がいないと、システムやサービスの選定は難しいでしょう。現状の課題を分析した上で、専門家に協力してもらい自社に最適なシステムやサービスを選定することが大切です。

(4)導入後のフォローやPDCAを行う

バックオフィスDXはシステムやサービスを導入して完結するわけではありません。導入後もさまざまな課題が出てくる可能性があります。現場の意見をもとに対策を行う、いわゆるPDCAを繰り返していく必要があります。

PDCAを回すためには、現場社員が意見を出しやすい環境づくりが重要。社内セミナーで経営者自らヒアリングする機会を設けることも検討しましょう。

5.バックオフィスDXを成功させるポイントは、小さな成功体験の積み重ね

5.バックオフィスDXを成功させるポイントは、小さな成功体験の積み重ね
経理や人事、法務などのバックオフィス部門は経営の中核を担う部門。そのためDXに取り組む際にも慎重に進めたいところです。大規模システムを一気に導入してしまうのはリスクがあります。「自社にあわない機能ばかりだった」「機能は充実しているが社員がシステムを使いこなせなかった」というケースもあります。こうなると業務が滞ったり重要なデータが消失したりと、深刻なトラブルにつながるリスクも高くなります。

こうしたリスクを避けるポイントは、スモールスタート。特にバックオフィスは部門内で完結する業務も多く、業務単位でITシステムを導入しやすいメリットもあります。例えば経理部門なら請求書の発行業務など、デジタル化しやすい業務から取り組むのがおすすめです。こうした小さな成功体験の積み重ねがDXには重要。成功体験を社内セミナーで周知させれば、他の部門にもDXを推進しやすくなります。

6.バックオフィスDXに成功した国内の6事例

これからバックオフィスDXに取り組む場合、「他社がバックオフィスDXで具体的にどんな効果を上げているのか?」という点が気になるのではないでしょうか。そこで国内のバックオフィスDXに成功した6事例をまとめました。

(1)資生堂

海外にも化粧品ブランドを展開する資生堂グループ。法務部門では、契約書を自動チェックできるITシステムを導入しました。チェック作業時間の削減につながっただけではなく、新人教育にも活用していると言います。業務効率化だけではなく、教育面でも改善につなげている点はバックオフィスDXの成功事例と言えるポイントでしょう(※5)。

(2)鹿島建設

建設事業を手掛ける鹿島建設では近年、異業種や海外企業との提携が増加。これに伴い契約関連業務の負荷も大きくなったそうです。そこで知財法務部門では契約書専用ツールを導入しました。自動レビュー機能を活用した結果、業務の大幅な効率化に成功したと言います。効率化によって、さらにスピーディーなオープンイノベーションの実現ができる組織になったわけです(※6)。

(3)サッポロビール

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入しコスト削減に成功した事例がサッポロビール株式会社。サッポロビールの営業支援部門では、小売業者ごとにPOSデータをダウンロードする必要があり、長時間の単純作業という課題がありました。そこでRPAによってデータのダウンロード作業を自動化。これによって労働時間を年間約5700時間も削減。金額では年間約1100万円に相当するそうです(※7)。

労働時間の削減はコスト削減になるだけではありません。社員が本来の業務に集中できる効果もあります。収集したデータの分析など、さらに高度なタスクに取り組めばビジネスの改革につながるでしょう。

(4)わかさ生活

健康食品の製造販売事業手掛ける、株式会社わかさ生活。この会社では、コロナ禍で在宅勤務やテレワークの導入をきっかけにペーパーレス化に取り組みました。具体的には人事部門にITシステムを導入、採用手続きの短縮化を実現。人事部門も書類や捺印などアナログな作業が多い分野のため、勤怠管理や採用活動などの業務からDXに取り組みやすいと言えるでしょう。

わかさ生活ではさらに業務効率化で空いた時間を有効活用しています。人事労務部門の社員が商品開発にも関わるなど、多様な働き方を実現しています(※8)。

(5)Mediba

au関連事業などを手掛ける株式会社Mediba(メディーバ)では、経理や法務などさまざまなバックオフィスDXを実践しています。経理部門ではRPAを活用してペーパーレス化を実現。その結果テレワークが推進され、出社率を2割まで下げることに成功しました。

法務部門でもペーパーレス化を目指し、電子サインで契約できるツールを利用。機能を駆使したことで、社内はもちろん取引先の多様な働き方にも対応できる組織作りを実現しました。部門や業務にあわせてツールや機能を検討した点が成功したポイントでしょう(※9)。

(6)レスタス

オーダーメイド商品の制作・販売ツール「名入れ製作所」やECサイト構築を手掛ける株式会社レスタス。繁忙期に多数のアルバイトを採用するため、勤怠管理の効率化が課題だったと言います。また将来のIPOを見据え、新たにクラウド型の勤怠管理システムを導入しました。 社員やアルバイトがスマートフォンで手軽に勤怠入力できるようになり、飛躍的に効率が上がったそうです。

また現場と離れている本社でも勤怠を一括管理できる機能も利用。管理側の業務効率化も実現しました。ツールで得た勤怠管理データ分析すれば、将来もっと効率のよい働き方や人材計画にもつながるでしょう(※10)。

まとめ

テレワークや在宅勤務の導入が進む中、紙ベースでの作業では効率が下がりビジネスのスピードも遅くなってしまいます。こうした中アナログでの作業量の多い経理や人事、総務、法務などのバックオフィス部門こそDXが求められています

ただし経営の中核を担うバックオフィス部門では、リスクマネジメントも重要なポイント。リスクを抑えるためにも、まずはスモールスタートがおすすめです。小さな成功体験を重ね、さらにその成功を社内セミナーなどで周知させれば、会社全体のDXも推進しやすくなります。




(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

出典
※1:【社内におけるDX推進に関する実態調査】テレワーク、バックオフィス、マーケティング、営業活動におけるDX関連の年間予算は平均4億8891万円 主導するのは「経営者・役員」という回答が1位に(PR TIMES)
※2:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver. 1.0(経済産業省)
※3:テレワーク実施率調査結果をお知らせします!8月の調査結果(産業労働局)
※4:個人向けアンケートで見るテレワークの実情(総務省)
※5:「法務のプロに求められる判断」に比重を置くために―資生堂がLegalForceを導入した理由(株式会社 LegalForce)
※6:LAWGUEによる業務改善:知財法務業務の要であり出発点である ドラフティングを効率化(FRAIM株式会社)
※7:RPAの活用で、サッポロビールに年間約1100万円の削減効果(東洋経済オンライン)
※8:「効率化で終わらない」事業成長にダイレクトに関わる新たな労務(株式会社SmartHR)
※9:medibaが取り組むオンライン化まとめ(株式会社mediba)
※10:利用規模に合ったコストと簡単お手軽なスマホ操作が大好評(株式会社 DONUTS)

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