仮想通貨など金融業界で利用が進む技術「ブロックチェーン(blockchain)」。最近は金融業界に限らず、物流や医療などの業界でもビジネス活用が進んでいます。実は日本でも、2018年の時点で「約4割の企業がブロックチェーンに何らかの形で取り組んでいる」というデータもあります(※1)。
今後競合他社がブロックチェーン技術を導入したり、新たな競合がブロックチェーン技術で創業したりするケースも想定しておくべきでしょう。こうなると、あらゆる企業がブロックチェーンの基本を理解して、自社ビジネスにどう使えるか考えておく必要があります。
とはいえ、そもそもブロックチェーンの仕組みがよくわからない方も多いのではないでしょうか。そこで今知っておきたいブロックチェーン技術の基礎知識をまとめ、ビジネス活用のコツについて事例を交えながら解説します。
■目次
1.ブロックチェーン(blockchain)とは?
ブロックチェーン(blockchain)は、もともと仮想通貨(暗号資産)のビットコインのために開発された技術であり、ネット上の取引履歴データ(block)を、鎖(chain)のように分散してつなげて記録する仕組みです。ここでは一般的なデータベースと異なる2つの特徴とブロックチェーン市場の状況について解説します。
特徴1)非中央集権的で、メイン管理者が不在
一般的なデータベースでは、管理者のいるメインサーバ上にのみデータが格納されます。しかしブロックチェーンには、メインサーバが存在しません。ネットワークにあるコンピュータそれぞれが、データを共有して管理します。そのため「分散型台帳」と呼ばれることもあります。
コンピュータ同士が直接やりとりするネットワークをP2P(Peer to Peer)と言いますが、ブロックチェーンのネットワークでも、このテクノロジーが採用されています。
特徴2)トランザクション(取引)の安全性が高い
管理者がいないとなると、心配なのが安全性ではないでしょうか。誰でも好きなようにデジタルデータを作成できてしまう懸念があります。そこでブロックチェーンでは、ネットワーク全体で正しくデジタルデータをつないで安全性を向上するためのルールが定められています。
データを共有するコンピュータがお互いをチェックしあうルールは「コンセンサス・アルゴリズム」と呼ばれ、仮想通貨のビットコインでは「PoW」というコンセンサス・アルゴリズムが使われています。さらにブロックチェーンでは、データの偽造や改ざんを防ぐための暗号化技術も利用され、データの正確性・信頼性を保持しています。
3)ブロックチェーン市場規模は世界で急成長している
ブロックチェーンのテクノロジーは、仮想通貨以外のビジネスにも活用されています。用途も広がっており、世界全体でブロックチェーンの市場規模は急成長しています。
ある調査によれば、ブロックチェーンの2021年の49億米ドル(約5,500億円)から年間平均68.4%で成長。2026年には674億米ドル(約7兆6,600億円)まで伸びると予測されています(※2)。この動向を見ると、さらに身近なテクノロジーになることは間違いないでしょう。
2.ブロックチェーンとNFTの関係性
ブロックチェーンについて学ぶ際に、NFTという言葉を合わせて耳にすることも少なくありません。
NFT(=Non-Fungible Token)とは、ブロックチェーンに刻まれた履歴や証明のデータを指す言葉です。履歴データや証明データをイメージするのが近道ですが、NFTというデータが独立して存在するわけではない点に注意が必要です。
あくまでブロックチェーンに刻まれるデジタルデータの一部がNFTである、と認識しておきましょう。
また、NFTはブロックチェーン上で特定の規格に準拠して作成されるのが特徴で、これらの規格によりNFTの標準化や相互運用性が実現されています。異なるプラットフォーム間でのNFTの取引ができる理由は特定の規格に準拠して作成されているからであり、トランザクションの透明性やセキュリティ確保にも役立っています。
3.ブロックチェーンの市場規模
以下からは、ブロックチェーンの市場規模について紹介します。国内と世界それぞれの市場規模について解説するので参考にしてみましょう。
国内のブロックチェーン市場規模
独自のAIで膨大な経済データを解析する、経済予測分析プラットフォーム「xenoBrain」によると国内のブロックチェーン市場規模は2024年現在で1,082億円、2029年には1,699億円に到達すると予想しています。(※)
特に近年では、デジタル庁が発表した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において「ブロックチェーン技術を基盤とするNFT(非代替性トークン)の利用等のWeb3.0の推進に向けた環境整備」が盛り込まれたことにより、ブロックチェーンに関する注目度が増しています。
ブロックチェーン技術を基盤としたWeb3.0により、ブロックチェーンを活用したグローバルビジネス展開に着手する企業も増えました。特にアニメ、マンガ、ゲーム等カルチャー分野におけるブロックチェーン活用だけでなく、グルメや地方の観光体験などコンテンツ産業における活用についても検討されています。
(※)参考:市場規模 5年間の推移予測ブロックチェーン – xenoBrain(ゼノブレイン)
世界のブロックチェーン市場規模
世界のブロックチェーン市場規模は、2023年段階で1兆5,500億円(約106億ドル)に到達します。さらにブロックチェーンの市場規模が年々拡大していることから、2030年には、58兆6,000億円(約4,041億ドル)に到達するだろうと予測されています。(※)
元々は暗号資産取引に活用されていたブロックチェーンですが、現在は金融、製造、貿易、医療、ゲーム、アート分野での活用も始まっています。データ改ざんや不正アクセス等に強いブロックチェーンの特性を活かせれば、今後さらに活用の道は広がっていくでしょう。
低コストで効率的なシステム開発に応用される可能性も高く、今後の可能性に注目が集まっています。
(※)参考:株式会社グローバルインフォメーション「ブロックチェーン市場の2030年までの予測」
4.ブロックチェーンが持つ3つのメリット
ブロックチェーンが幅広いビジネスでも活用され始めているのは、従来のテクノロジーにはないメリットがあるためです。ここではブロックチェーンの代表的なメリットを3つ紹介します。
1)システムダウンが起こる可能性が低い
従来のシステムやデータベースでは、管理者が持つメインサーバがダウンするとサービス全体がストップしてしまいます。実際に銀行などの金融機関では、メインサーバなど一部のシステムがトラブルを起こしてサービス全体がダウンしたケースも。こうなると決済など重要なサービスが停止してしまい、深刻な事態となってしまいます。
一方でブロックチェーンはメインサーバがなく分散で管理する仕組みため、一部のコンピュータがダウンしてもサービス全体に影響しにくいというメリットがあります。
2)運用コストが安い
従来の中央集権型システムを新たに構築するとなると、高性能のサーバや安全性の高いネットワークやデータセンターなどが必要。こうなると相当なコストがかかります。
一方でブロックチェーンはネットワークに参加するコンピュータが分散して管理する仕組み。そのためサーバ構築費などのコストを抑えられるメリットがあります。
3)埋め込まれる取引履歴は非表示となり、データの改ざんが難しい
デジタルデータのやり取りで懸念されるのが、改ざんや不正コピーですが、ブロックチェーンでは対策が施されています。
ブロックチェーンではトランザクション(取引)を約10分おきにブロック(塊)にまとめる仕組み。新しいブロックを作るとき、ハッシュ関数という仕組みで直前ブロックの一部をデータに埋め込みます。
これによって直前の取引履歴がデータ内に記録されます。ハッシュ関数(※3)を使うことで暗号化され、記録された取引履歴の内容は非表示となります。そのためデジタルデータでも書き換えや改ざんが難しい点がブロックチェーンの大きな特徴です。
ブロックチェーンでは公開鍵暗号方式(※4)も採用するなど、改ざんや書き換えを防止するテクノロジーが採用されています。もちろんブロックチェーンに限らずあらゆるシステムは100%安全とは言えませんが、ブロックチェーンは高度なセキュリティで守られていると言えるでしょう。
5.ブロックチェーンのビジネス活用による5つのデメリット
ブロックチェーンのビジネス活用には大きなメリットがある一方、デメリットもあります。以下で代表的なデメリットやリスクについて解説します。
51%攻撃のリスクがある
ブロックチェーンにおける51%攻撃とは、攻撃者がブロックチェーンネットワーク内の51%以上の計算処理能力を支配して不正な取引を行うなど、悪用することを指します。
元々ブロックチェーンは悪意のあるデータ改ざんや不正アクセス等の悪用に強い性質を持っています。
ブロックチェーンの各ブロックには、直前のブロックの内容を表すハッシュ値と呼ばれるデータが書き込まれていますが、データ改ざんをした場合、導き出されるハッシュ値も異なり、ブロック内の情報が組み変わってしまいます。そうなると次のブロックとの整合性が取れなくなり、これもまた改ざんしようとすると、さらに次のブロックとの整合性が取れなくなります。
このように、導き出されるハッシュ値が異なれば、以降のすべてのハッシュ値も変更する必要がありますが、これはきわめて困難です。そのため、ブロックチェーンで管理されているデータの改ざんは難しいと言われています。
ただ、それを超える処理能力を持った場合には悪用されてしまう恐れがあります。たとえば悪意のあるユーザーが過半数を超え、わざとブロックチェーンの改変、改ざんをしようとした場合、本意ではないデータの変更がされてしまうかもしれません。最悪の場合、ブロックチェーンの無効化や二重請求が行われる可能性があります。
ハッシュレートやコンセンサスアルゴリズムの強化などで対策が取られていますが、今後も更なる強化が期待されています。
※コンセンサスアルゴリズム:ブロックチェーンに参加している端末間で合意形成を行うメカニズムのこと
記録データの削除ができない
ブロックチェーンは、記録したデータを削除できない特性を持っています。
改ざんが難しく、信頼性の高いデータの管理が可能になるという意味ではメリットと言えるでしょう。しかし、一度入力したデータを取り消すことはできないため、誤入力や処理をやり直したい場合には注意が必要です。
特に個人情報を取り扱うサービスでは、全ての情報が記録されることに配慮することが欠かせません。一度登録した情報は消せなくなってしまうからこそ、後で「個人情報を消してほしい」「個人情報が変更されたので上書きしてほしい」ということができなくなってしまいます。
また、ブロックチェーン上の情報は、ネットワークに参加するすべての人に公開されるため、暗号化されていても情報が行き渡ってしまいます。プライバシー保護や情報漏洩のリスクを適切に管理しながら運用しないと、思わぬトラブルにつながります。
法整備が追いついていない
ブロックチェーン技術の急速な発展に対して、法整備が追いついていないという点もデメリットです。法律をかいくぐった悪意のある攻撃をされてしまえば、裁くこともできず泣き寝入りするしかないという可能性もあります。
では法律を定めれば良いと考えられますが、ブロックチェーンは国際的な技術であるため、全世界統一のルールを設けることは非常に難しいと言えるでしょう。現在では、一部の国ではブロックチェーンに関連する法律、規制が十分に整備されている一方で、他の国ではまだ整備が進んでいないなど、国ごとの格差も広がっています。
同様に、プライバシー保護、データの管理、スマートコントラクトの法的有効性などに関する議論も続いています。既存の法制度がブロックチェーン技術にどのように適用されるかなど、課題が多いのが現状と言えるでしょう。
処理速度が遅い場合がある
ブロックチェーンにおけるコンセンサスアルゴリズムは計算コストが高く、処理速度が遅い場合があります。分散型台帳を維持するためにネットワーク全体で合意形成を得る必要があり、新しいトランザクションを承認し、ブロックに追加するまでに時間がかかるのです。
特にビットコインなどのパブリックブロックチェーンでは、分散されたノードの合意を得るための時間も長くなりがちです。その分データの正しさを証明できるのでメリットであるという考え方もありますが、限られた時間で大量のブロックチェーン処理をしたいときには大きなハードルとなるでしょう。
今後ブロックチェーンが増加するにつれて、ネットワーク全体で処理する必要があるトランザクションの数が増えてさらに処理速度が遅くなることも懸念されています。
データが巨大化し続ける
ブロックチェーンが活用されるシーンが増え、取引量が増えれば増えるほどデータも巨大化していくため、管理に関する懸念点が大きくなっています。
現在はネットワークやコンピューターの性能が十分であるため対応できていますが、今後の通信量やデータ量によってはキャパシティーを超えてしまう恐れがあります。ある程度の範囲であればストレージを増やすことで対応できるかもしれませんが、将来的にどの程度のデータ量になるかまで予想することは難しく、対応の遅れが出るかもしれません。
全てのトランザクションやデータを永久的に記録するというブロックチェーンの性質がデメリットとなっている一要因でもあり、スケーラビリティやデータ管理の観点から重要な問題となっています。
6.ブロックチェーン技術の広がる適用範囲
本文ブロックチェーンは他の金融サービスでも決済などの取引に使われているほか、さらに金融以外のサービスにも広がっています。ここではITコンサルを手掛ける企業がまとめた資料(※5)をもとに、どこまで業界・サービスでブロックチェーンの利用が進んでいるか3段階で紹介します。
1)ブロックチェーン1.0(仮想通貨領域)
ビットコイン以降も仮想通貨の種類は増え、2022年現在で6,000以上の種類があると言われています。こうしたビットコイン以外の仮想通貨においても、決済などの取引でブロックチェーンが採用されています。ここで使われるのはベーシックなブロックチェーン技術。これがいわば1.0となります。
2)ブロックチェーン2.0(金融領域)
ブロックチェーンのテクノロジーはその後、仮想通貨以外の金融領域にも拡大。これは次の世代として「ブロックチェーン2.0」と呼ばれ、通貨の取引だけではなく契約などにも対応しています。
ポイントとなるのが、ブロックチェーン技術にさらに「スマートコントラクト」という技術。スマートコントラクトとは、契約や所有権の移転をブロックチェーン上で自動的に行うためのものです。これによって、通貨以外の金融分野にもブロックチェーンが応用できるようになりました。
(例)
- 契約管理
- 資産管理
- クラウドファンディング
3)ブロックチェーン3.0(金融以外の領域)
ブロックチェーンは新たな技術と融合して、物流や農業、観光といった様々な分野で活用されはじめました。こうした金融以外の分野でも使われる次世代のブロックチェーンは「ブロックチェーン3.0」と呼ばれます。例えばアメリカでは選挙の投票システムにブロックチェーン技術が使われた事例もあります(※7)。
(例)
- 物流(サプライチェーンの運送管理システム)
- 農業(農産物のトレーサビリティ、生産から消費まで追跡するシステム)
7.実はブロックチェーン技術は3種類ある
ビットコインのように誰でもネットワークに参加できるというイメージがありますが、実はクローズドなブロックチェーンも存在します。接続者の制限や管理者の有無によって、ブロックチェーンは3つのタイプに分かれます。
それぞれ特徴が異なるため、自社ビジネスへの導入を考える場合は適したブロックチェーンの種類を選ぶというのも重要なポイントのひとつです。
1)パブリック型
ビットコインをはじめ、一般的に知られるブロックチェーンはパブリック型です。パブリック型は管理者がおらず、誰でも承認なしでネットワークに参加することが可能であり、参加者が多いため、分散性が高く改ざんされにくいなどのメリットがあります。
一方参加者が多数になるため「トランザクションの処理に時間がかかる」「非表示としたい機密情報のやり取りがしづらい」などの課題もあります。
2)プライベート型
パブリック型と異なり、単独の管理者がネットワーク参加する人を承認するのがプライベート型です。管理者を必要としないという本来のブロックチェーンの特性は失われますが、参加者を制限できるため「処理が高速化できる」「合意形成がしやすい」と言った点がメリットとなります。
また、既存データベースやシステムから、低コストのプライベート型ブロックチェーンに乗り換えるケースもあります。最近は「mijin」のように、企業や個人がプライベート型プロックチェーンを構築できるサービスも登場しています(※8)。
3)コンソーシアム型
パブリック型とプライベート型の中間と言えるのが、コンソーシアム型。プライベート型は管理者が単独ですが、コンソーシアム型は複数の企業や団体が共有して管理します。パブリック型とプライベート型両方のメリットを享受できるのが強みです。
複数の企業がブロックチェーンを使ったサービスの実証実験を行う場合、コンソーシアム型を導入するケースが増えています。
8.業種別ブロックチェーンのビジネス活用5事例
仮想通貨の技術というイメージが強いブロックチェーンですが、すでにビジネスへ導入してサービスを実現している日本企業もあります。こうした先行事例を知ることで、自社ビジネスに活用するヒントが見つかるかもしれません。ここでは金融以外の業界で、ブロックチェーン活用を実現している5社の事例を紹介します。
1)自動車業界:デンソーは走行データのトレーサビリティにブロックチェーンを活用
自動車部品メーカーのデンソーもブロックチェーンに取り組む企業のひとつです。自動車のセンサーやドライブレコーダーの持つ有益なデータのトレーサビリティ(追跡)にブロックチェーン技術を採用しています。記録されたデータは自動車保険業界などでの活用を見込んでいると言います(※9)。
一般的なブロックチェーンよりさらに安全性を向上させるため、独自の改ざん防止技術開発にも取り組んでいます。さらに自社だけではなく、サプライチェーンが使えるようなブロックチェーン技術の開発も進めています。
2)運送業界:日本通運は輸送システムにブロックチェーンを活用
運送業界でも、荷物のトレーサビリティ(追跡)にブロックチェーンの活用が進んでいます。例えば大手物流企業の日本通運では、アクセンチュアなどと共同でブロックチェーンを使った輸送網の整備に取り組んでいます(※10)。
生産から納品までの取引データをブロックチェーンで記録・管理することで、偽造品混入の防止を実現できると言います。日本通運はこの取り組みに最大で1,000億円を投資。こうしたブロックチェーン活用に向けた大規模なプロジェクト事例が今後も増えることが予想されます。
3)音楽業界:ソニーは音楽著作権管理システムにブロックチェーンを活用
ソニーミュージックエンタテイメントは、音楽の著作権管理システムにブロックチェーン技術を採用することを2019年に発表(※11)。データの改ざんが難しいというブロックチェーンのメリットを生かし、著作権情報の登録・共有がしやすくなるサービスの構築を目指しています。
著作権管理にブロックチェーンを活用する事例は他にもあります。JASRAC(日本音楽著作権協会)も、ブロックチェーンを使ったシステムを2022年に実現させることを発表しました(※12)。
4)医療業界:サスメド社は臨床試験のモニタリングにブロックチェーンを活用
医療業界もブロックチェーンに注目する業界の一つ。中でも話題になったのが2015年に創業した医療系ベンチャーのサスメド社の取り組み(※13)です。サスメド社では臨床試験のモニタリング業務にブロックチェーンを活用しています。
臨床試験では記録するデータの正確性・信頼性が欠かせません。そのためチェック業務が大きな負担となります。サスメドの事例では改ざんが難しいブロックチェーン技術を利用することで、データの安全性を確保しながらモニタリングの記録やチェック業務の効率化につなげています。
5)農業: Grainchain社は農産物のトレーサビリティにブロックチェーンを活用
農業でも活用が期待されているブロックチェーン。例えばアメリカで創業されたネットベンチャーであるGrainchain社は、ブロックチェーンを利用した農産物のトレーサビリティサービスを開発しました(※14)。農産物の安全性を確保できるだけではなく、仲介者を減らし生産者の収入確保にもつなげる狙いがあります。
この取り組みは大きな注目を集め、2020年には決済サービスを手掛けるマスターカードがGrainchain社とのパートナーシップを発表しました(※15)。
9.ブロックチェーン×生成AIで完全自動化の組織が完成する未来も
今後、ブロックチェーンと生成AIとの組み合わせで、完全自動化組織が完成する可能性があると言われています。
生成AIはある程度のルールに従って稼働するのが得意であり、作業の自動化に活用されています。例えば工場におけるオートメーション、自動車の運転、パターンに沿ったカスタマーサポートなどは生成AIの得意分野と言えるでしょう。
一方、ブロックチェーンは意思決定を代替することができ、これまでに蓄積してきた膨大なデータや参考情報をもとに方針を決めることができます。経営者や管理者が担う意思決定もブロックチェーンが担当できるようになれば、DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散自律型組織)やDAC(Decentralized Autonomous Company:分散自律型企業)の誕生も近いでしょう。
法的および倫理的な問題への対処や、データの信頼性やプライバシーの問題への対策など、まだまだ課題が多いのも現状です。しかし、今後生成AIの精度や汎用性が上がり、ブロックチェーンのスケーラビリティ問題が解消されていけば、完全自動化の組織が生まれるかもしれません。
10.まとめ
多くのコンピュータがネットワーク上でデータを共有して管理し、分散型台帳とも言われるブロックチェーン(blockchain)。従来の中央集権型システムと比べて「システムダウンしにくい」「構築コストが安価」といったメリットがあります。さらにデジタルデータでも暗号化技術によって内容を非表示にできるため、改ざんが難しい点も大きな特徴。この点が評価され、現在は仮想通貨以外でも幅広くブロックチェーンが利用されています。
すでに自動車産業や運送業界、音楽業界など幅広い分野ではブロックチェーンのテクノロジーが採用されています。今後も様々な業種でブロックチェーンを活用し、新規事業を立ち上げたり創業したりするケースが増えることは間違いないでしょう。こういった動向を踏まえると、ITに詳しくない経営者でもブロックチェーンの基礎知識はおさえておくべきと言えます。ブロックチェーンの特性や種類を把握した上で、専門家のアドバイスを受けながら自社にあう活用法を見極めることが大切です。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)
出典 ※1:4割超の日本企業がブロックチェーンに取り組み、ガートナー調査(ビジネス+IT)
※2:ブロックチェーンの市場規模、2026年に674億米ドル到達予測(PR TIMES)
※5:ブロックチェーン活用事例(グローシップ・パートナーズ株式会社)
※7:ブロックチェーン×投票 〜選挙を変えるブロックチェーン技術〜(トレードログ株式会社)
※8:次世代ブロックチェーンプラットフォーム「mijin Catapult (v.2)」製品版を一般公開(PR TIMES)
※9:ブロックチェーンとモノがQRコードで結びつく(デンソー The COREs)
※10:偽造品排除へ先端物流、日通などがブロックチェーン(日本経済新聞)
※11:ソニー・ミュージック、著作権情報管理にAWSのブロックチェーンを採用 「クリエイターの権利を守りながら、煩雑な管理からも解放」(ITmedia NEWS)
※12:音楽クリエイターの楽曲管理のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた実証実験を行いました(一般社団法人日本音楽著作権協会 JASRAC)
※13:ブロックチェーン技術を用いて臨床試験を効率化(PR TIMES)
※14:Blockchain in Agriculture(GrainChain)
※15:Growing Demand for Transparency: Mastercard and GrainChain Give Producers Visibility into Commodity Supply Chains(Mastercard Newsroom)