
新規事業の立ち上げは、企業が新たな収益源をつくり、持続的に成長していくための重要な取り組みです。
しかし、アイデアを考えて商品やサービスを開発すれば成功するほど単純ではありません。「誰のどのような課題を解決するのか」を明確にし、市場性や競合、自社の強み、収益性などを検証したうえで、小さく市場へ出して顧客の反応を確かめる必要があります。
そこで本記事では、新規事業立ち上げで最初に決めるべきことから、立案・検証・事業化までの7つのプロセス、スケジュール例、成功のポイント、失敗パターン、活用できるフレームワークまで順番に解説します。
これから新規事業を立ち上げる方はもちろん、「アイデアはあるものの、次に何をすればよいかわからない」という方も参考にしてください。
■目次
新規事業立ち上げとは?
新規事業立ち上げとは、既存事業とは異なる新しい商品・サービスやビジネスモデルを企画し、顧客へ価値を提供して収益化できる状態まで事業を構築することです。
単に新しいアイデアを考えるだけではありません。顧客課題の特定、市場調査、ビジネスモデルの構築、商品・サービスの開発、テストマーケティング、販売・営業体制の構築など、事業として継続できる仕組みを整えるところまでが新規事業立ち上げに含まれます。
新規事業立ち上げと新商品・既存事業改善の違い
「新しい取り組み」であれば、すべてが新規事業になるわけではありません。
| 項目 | 概要 | 例 |
|---|---|---|
| 既存事業の改善 | 現在の事業モデルや顧客を大きく変えず改善する | 業務効率化、既存サービスのUI改善 |
| 新商品・新機能 | 既存事業の延長線上で商品・機能を追加する | 既存SaaSへの新機能追加 |
| 新規事業 | 新しい顧客・市場・価値・収益モデルなどを組み合わせ、新たな事業を構築する | 新市場向けサービス、新しいサブスクリプション事業 |
既存商品の改良だけであれば、一般的には既存事業の改善や商品開発に分類されます。
一方、これまで接点のなかった顧客層を対象に新しいサービスを提供したり、既存の技術や顧客基盤を生かして異なる市場へ参入したりする場合は、新規事業として検討する必要があります。
企業が新規事業を立ち上げる主な目的
企業が新規事業を立ち上げる目的は、新しい売上を作ることだけではありません。
- 新たな収益源を確保する
- 既存事業への依存リスクを分散する
- 市場環境や顧客ニーズの変化へ対応する
- 自社の技術・顧客基盤などの強みを別市場で活用する
- 次世代の経営人材・事業責任者を育成する
既存事業の市場が成熟すると、これまでと同じ商品・顧客だけでは成長率が鈍化する可能性があります。新規事業によって第二・第三の収益の柱を作ることで、中長期的な成長につなげられます。
また、新規事業では市場分析、商品開発、マーケティング、営業、社内調整など、部門を横断した役割が求められます。そのため、新規事業の立ち上げ経験そのものが次世代リーダーの育成につながる点もメリットです。
新規事業立ち上げで最初に決めるべき4つのこと
新規事業を任されたとき、すぐにアイデア出しから始めるのはおすすめできません。
まず、新規事業を行う目的や意思決定の方法など、プロジェクトの前提条件を整理しておく必要があります。
①新規事業を立ち上げる目的・事業領域
最初に明確にしたいのが「なぜ新規事業を立ち上げるのか」です。
例えば、「5年後の売上の柱を作りたい」という目的と「既存技術の新たな用途を開拓したい」という目的では、検討すべき事業の方向性が変わります。
自社の経営理念や中期経営計画とも照らし合わせながら、どのような成長を実現したいのかを整理しましょう。
あわせて、大まかな事業領域も定めます。事業領域を考える際は、「○○業界へ参入する」といった業種だけで考えるのではなく、「誰のどのような課題を、どのような強みを使って解決するか」という視点で考えることが重要です。
この段階では商品・サービスを細かく決める必要はありません。後の顧客調査によって仮説が変わる可能性があるため、まずは探索する範囲を設定する程度に留めます。
②責任者・チーム・意思決定体制
次に、新規事業を誰が進めるのかを決めます。
新規事業では正解が決まっていないため、検証結果によって方向転換するケースも少なくありません。そのたびに複数の決裁を必要とすると、事業開発のスピードが落ちてしまいます。
そのため、「誰が事業責任者なのか」「どこまで現場で意思決定できるのか」「どのタイミングで経営会議へ上げるのか」をあらかじめ決めておきましょう。
経営者・事業責任者の役割
経営者や事業責任者の役割は、単に予算を承認することではありません。
なぜこの事業に取り組むのかという目的を社内に伝え、必要な予算・人材を確保しながら、事業チームが検証を進められる環境を作る必要があります。
短期的な売上だけで評価すると、まだ仮説検証段階の新規事業を早期に打ち切ってしまう可能性があります。フェーズに応じた評価指標を設定することも経営側の重要な役割です。
新規事業チームメンバーの役割
チームメンバーは、市場や顧客の課題を調査し、事業仮説を具体化して検証する役割を担います。
求められるのは、決められた計画をそのまま実行する能力だけではありません。
顧客から想定外の反応があった場合に、「当初の仮説のどこが違っていたのか」「ターゲットを変えるべきか」「提供価値を修正すべきか」と考え、次の検証につなげる力が必要です。
社内に不足するスキルは外部人材で補う
新規事業では、市場調査、事業戦略、システム開発、マーケティング、営業など幅広い専門性が必要になります。
すべての能力を社内で確保する必要はありません。特定領域の経験者がいない場合は、外部のコンサルタントやプロ人材を期間限定で活用し、事業を前に進めながらノウハウを社内へ蓄積する方法も有効です。
③投入できる予算・人材・時間
新規事業に使えるリソースも事前に整理しておきます。主に確認したいのは、ヒト・モノ・カネ・情報です。
例えば、担当者が既存業務と兼務しており、新規事業に使える時間が週1日しかない状態では、十分な顧客ヒアリングや検証を行えない可能性があります。
必要な人員や予算を検討するときは、最初から事業を完成させるためのリソースを用意するのではなく、「次の仮説を検証するために何が必要か」という単位で考えるのがポイントです。
段階的に投資を増やすことで、まだ顧客ニーズが確認できていない段階で多額の開発費を投じるリスクを抑えられます。
④評価基準・撤退基準
新規事業では「成功するまで続ける」ではなく、次のフェーズへ進む条件を決めておくことも重要です。
例えば顧客課題を検証する段階であれば、「顧客インタビューを20社実施する」「一定割合以上の企業が同じ課題を重要と回答する」などが判断材料になります。
MVPを提供する段階なら、「継続利用率」「有料で使いたい顧客数」「問い合わせから契約までの転換率」などを設定できます。
反対に、「○カ月検証しても顧客ニーズを確認できない」「一定以上の粗利率を実現できない」といった撤退・方向転換の基準も決めましょう。
感覚ではなく事前に設定した基準で判断することで、サンクコストに引きずられるリスクを減らせます。
新規事業立ち上げの進め方|立案から事業化まで7つのプロセス

ここからは、新規事業立ち上げの具体的な進め方を7つのプロセスに分けて解説します。
重要なのは、STEP1からSTEP7までを一度進めれば終わりではない点です。顧客へのヒアリングで仮説が否定された場合は前の工程へ戻り、再びアイデアやターゲットを見直します。
仮説と検証を繰り返しながら、事業の精度を高めていくことが新規事業立ち上げの基本です。
STEP1.顧客や市場の課題を見つける
最初に行うのは、商品アイデアを考えることではなく「解決すべき課題」を見つけることです。
顧客が強く困っていない問題を解決するサービスを作っても、お金を払って利用してもらえる可能性は高くありません。
まず、以下を整理します。
- 誰が困っているのか
- 何に困っているのか
- 現在はどのように解決しているのか
- なぜ既存の解決方法では不十分なのか
既存顧客へのインタビュー、営業担当者へのヒアリング、問い合わせ内容の分析、SNSやレビュー、業界レポートなど、複数の情報源から仮説を立てましょう。
特に顧客インタビューでは、「こんなサービスがあったら使いますか」と聞くだけでは十分ではありません。
将来の意向ではなく、実際に過去どのような問題が起こり、どのように対処し、いくらの時間や費用が発生したかまで確認すると、課題の深刻度を判断しやすくなります。
この工程の成果物:顧客課題仮説
STEP2.事業領域を決めてアイデアを出す
課題を整理したら、その課題を解決する事業アイデアを考えます。
この段階では最初から1案に絞る必要はありません。複数の案を出したうえで、自社との相性や市場性を踏まえて絞り込みます。
アイデアを考える際には、「自社が保有している技術」「顧客基盤」「ブランド」「データ」「販売チャネル」「パートナー企業」など、既存の経営資源を生かせないか検討しましょう。
方向性は、大きく以下のように整理できます。
| 方向性 | 考え方 |
|---|---|
| 既存商品×新市場 | 既存の商品・技術を新しい顧客層へ提供する |
| 新商品×既存市場 | 既存顧客の別の課題を新しい商品で解決する |
| 新商品×新市場 | 新しい顧客へ新しい価値を提供する |
| 既存事業の転換 | 既存のビジネスモデルや提供方法を抜本的に変える |
ゼロからすべてを作るより、自社が既に持っている強みを活用した方が競争優位を作りやすくなります。
この工程の成果物:検証候補となる複数の事業アイデア
STEP3.顧客ニーズを検証する
良さそうなアイデアができても、すぐに商品を開発するのは避けましょう。まず、「本当に顧客がその解決策を求めているのか」を確認します。
有効なのが顧客インタビューです。
対象となる顧客へ事業コンセプトや簡単なプロトタイプを提示し、「現在どのような課題を抱えているか」「既存の解決方法の何が不満か」「提案するサービスで解決できそうか」「お金を払って利用する価値があるか」を確認します。
ここで重要なのは、自分たちのアイデアを評価してもらうこと以上に、顧客課題の仮説が正しかったかを確かめることです。
「サービスは良いと思うが、今すぐ必要ではない」という回答が多い場合、課題の優先度が低い可能性があります。
逆に、「現在この作業に毎月20時間かかっている」「既に別サービスへ年間100万円払っている」といった具体的な行動が確認できれば、ニーズが強いと判断しやすくなります。
この工程の成果物:実際の顧客の声によって検証された課題・顧客仮説
STEP4.市場性・競合・自社の優位性を検証する
顧客ニーズを確認したら、その事業を成長させられる市場が存在するかを調査します。
市場規模・成長性を確認する
市場規模は、単に「○兆円市場だから魅力的」と判断するのではなく、自社が実際に狙える範囲まで分解しましょう。
TAM・SAM・SOMの考え方を使うと整理しやすくなります。TAMは理論上の市場全体、SAMは自社サービスが対応できる市場、SOMはそのなかで現実的に獲得できる市場です。
例えば国内企業向けの業務支援サービスであれば、「全企業」を市場規模とするのではなく、従業員規模・業界・課題の有無などで対象を絞り込む必要があります。
競合・代替手段を確認する
競合調査では、自社と似た商品だけを見るのでは不十分です。顧客が現在行っている代替手段も競合になります。
例えば業務効率化SaaSを開発するとしても、競合は他社SaaSだけではありません。
- Excelで管理する
- 人手で作業する
- 外注する
- そもそも何もしない
といった選択肢も含めて比較します。
価格、機能、ターゲット、販売チャネル、顧客評価などを整理し、「なぜ顧客が既存の方法から自社サービスへ乗り換えるのか」を考えます。
自社が勝てる理由を確認する
市場が大きく、顧客ニーズが強くても、自社が競合に勝てなければ事業として成立しません。
自社の技術力、顧客基盤、ブランド、データ、営業網、既存サービスとのシナジーなどから、競争優位を作れる要素を確認します。
この工程の成果物:市場性・競合環境・自社の優位性を整理した事業性評価
STEP5.ビジネスモデル・収益計画を作る
次に、どのように価値を提供し、収益を得るのかを具体化します。
ターゲットと提供価値を決める
「誰に売るのか」と「なぜ選ばれるのか」を明確にします。
ターゲットを広く設定しすぎると、商品機能やマーケティングメッセージが曖昧になります。
例えば「中小企業向け」ではなく、「従業員100〜500人で○○業務に課題を持つ企業」のように、課題と紐づけて具体化しましょう。
マネタイズ方法を決める
代表的な収益モデルには、買い切り、月額課金、従量課金、手数料、広告、ライセンスなどがあります。
顧客が価値を感じる単位と料金体系が一致しているかを考えることがポイントです。
コスト・売上・利益をシミュレーションする
売上だけでなく、顧客単価、顧客数、粗利率、開発費、マーケティング費、営業費、運用費などを仮置きし、事業として成立するかを確認します。
この段階では精緻な数字を作ることより、どの変数が事業性に大きく影響するのかを把握することが重要です。
KGI・KPIを設定する
最終的な売上・利益だけでなく、各フェーズで確認するKPIも設定します。
立ち上げ初期であれば、商談数、テスト利用数、継続率、ヒアリング数など、将来の売上につながる先行指標を見ることが重要です。
この工程の成果物:ビジネスモデルと収支モデルを含む事業計画のたたき台
STEP6.MVP・PoCで小さく検証する
事業仮説がある程度固まったら、MVPやPoCを使って市場で検証します。
MVPは、顧客へ価値を提供するために最低限必要な機能だけを持つ製品・サービスです。PoCは、技術や事業アイデアが実現可能かを小規模に検証する取り組みです。
目的は「完成品を作ること」ではなく、事業の重要な仮説をできるだけ少ない時間とコストで確かめることです。
顧客インタビューで課題・ニーズを検証する
プロトタイプやサービスイメージを見せながら、顧客の反応を確認します。
「使いたい」という発言だけでなく、実際にテスト利用してくれるか、有料でも契約する意思があるかまで確認できると精度が高まります。
LP・広告で市場反応を検証する
サービス開発前でも、LPを作成して広告を配信することで需要を確認できます。
広告のCTR、LPのCVR、問い合わせ件数などを測定し、ターゲットや訴求内容への反応を確認します。
LPや広告を使えば、比較的少ない投資で市場反応を確認できる点がメリットです。
MVP・プロトタイプで利用意向を検証する
実際のサービスに近い体験を提供し、「利用されるか」「繰り返し使われるか」「どこで離脱するか」「料金を払う価値があるか」を確認します。
必要な機能だけに絞ることで、仮説が外れていた場合の開発コストも抑えられます。
この工程の成果物:顧客の実際の行動から得られた検証データ
STEP7.事業化し、検証・改善を繰り返す
MVPなどで一定のニーズが確認できたら、正式な事業化へ進みます。
ここからは、商品開発だけでなく、マーケティング、営業、契約、カスタマーサポート、請求、運用体制など、継続してサービスを提供するための仕組みを整える必要があります。
事業化後も仮説検証は終わりません。利用率、継続率、顧客単価、CAC、売上、粗利、顧客のフィードバックなどを継続的に確認し、商品や販売方法を改善します。
想定した成果が出なければ、「改善して継続する」「ターゲットやビジネスモデルを変更する」「事業から撤退する」のいずれかを判断します。
この工程の成果物:事業運営のKPIと継続的な改善計画
新規事業立ち上げのスケジュール・タスク例
新規事業の立ち上げに必要な期間は、事業内容や業界、商品開発の難易度などによって大きく異なります。
そのため「○カ月で立ち上げるべき」と一律に決めることはできません。一方、各フェーズで何をするのかを整理しておけば、スケジュールを設計しやすくなります。
| フェーズ | 主なタスク | 主な成果物 |
|---|---|---|
| 構想・課題探索 | 目的整理、顧客ヒアリング、課題探索、アイデア作成 | 顧客課題仮説、事業アイデア |
| 市場・事業性検証 | 市場調査、競合分析、顧客検証、ビジネスモデル設計 | 市場性評価、ビジネスモデル、収支仮説 |
| PoC・MVP検証 | プロトタイプ作成、テストマーケティング、ユーザーテスト | 検証結果、Go/No-Go判断 |
| 事業化・拡大 | 正式開発、営業・マーケティング、KPI管理、改善 | 売上・利用データ、改善計画 |
フェーズ1.構想・課題探索
最初のフェーズでは、新規事業を行う目的を整理し、顧客や市場の課題を探索します。
「どのような商品を作るか」よりも、「解決する価値のある課題が存在するか」を確認する期間です。
フェーズ2.市場・事業性検証
顧客課題が見えてきたら、市場規模、競合、自社の強み、収益モデルなどを確認します。
同時に顧客ヒアリングを重ね、課題や提供価値の仮説を具体化します。
フェーズ3.PoC・MVP検証
事業として成立する可能性が見えてきたら、小規模な製品・サービスを作り、市場へ提供します。
この段階では機能数よりも、最も重要な仮説を検証できることが優先です。
フェーズ4.事業化・拡大
一定の顧客ニーズと事業性が確認できたら、正式な商品開発や販売体制構築へ投資を広げます。
この段階でもKPIを確認し、PMFに近づいているかを見ながら改善を続けます。
新規事業立ち上げを成功させる6つのポイント
新規事業の成功確率を少しでも高めるには、プロセスだけでなく組織の進め方も重要です。
①経営陣が適切にコミットする
新規事業は、既存事業と比べて短期間では売上につながらないことがあります。
そのため、経営陣が新規事業の目的や評価方法を理解していないと、「半年やったのに売上が少ない」といった理由だけでプロジェクトが縮小される可能性があります。
一方で、経営陣が細かな意思決定まで介入しすぎると、検証スピードが落ちます。
経営陣は方向性・投資判断・重要な意思決定に関与し、日々の仮説検証は事業チームへ権限移譲するなど、適切な役割分担が重要です。
②顧客課題の検証を優先する
新規事業では、「このサービスなら売れるはず」というアイデアへの思い入れが強くなりがちです。
しかし重要なのは、アイデアの良し悪しではなく、顧客に解決する価値のある課題が存在するかです。
サービスを作り込む前に顧客と接点を持ち、課題の有無と深刻度を確認しましょう。
③最初から大きく投資せず小さく検証する
顧客ニーズが確認できていない段階で大規模なシステムや商品を作ると、仮説が外れた場合の損失が大きくなります。
まずはインタビュー、LP、モックアップ、手作業で提供する簡易サービスなどを使い、小さい単位で検証します。
仮説が確認できたら次の投資へ進む「段階投資」の考え方が有効です。
④既存事業とは異なる評価基準を設定する
既存事業では、売上や利益が重要なKPIになります。一方、新規事業の初期段階では、売上がまだ発生していないことも珍しくありません。
課題探索段階なら顧客ヒアリング数、MVP段階なら継続利用率や有料化率など、フェーズに応じたKPIを設定しましょう。
⑤必要な人材・予算・権限を確保する
新規事業を既存業務の「空いた時間だけ」で進めようとすると、検証スピードが上がりません。
また、商品開発だけ進んでも、営業やマーケティング担当がいなければ顧客へ届けられません。
必要なリソースをフェーズごとに整理し、重要な局面では人材や予算を集中させることが大切です。
⑥不足するノウハウは外部から補う
社内に新規事業経験者がいない場合、すべてを手探りで進めると意思決定に時間がかかる可能性があります。
特に事業戦略、PoC、システム開発、マーケティングなど、自社の知見が不足している領域では、外部のプロ人材やパートナーを活用するのも有効です。
外部人材に任せきりにするのではなく、社員と共同でプロジェクトを進め、得られたノウハウを社内へ残す仕組みを作ることがポイントです。
新規事業立ち上げでよくある5つの失敗と対策
①アイデアありきで顧客課題を検証しない
よくある失敗が、経営者や担当者が思いついたアイデアを前提に開発を進めてしまうことです。
社内で高く評価されたアイデアでも、顧客が必要としているとは限りません。
対策として、サービス開発前に顧客ヒアリングを実施し、「実際に課題が発生しているか」「現在どのように解決しているか」を確認しましょう。
②市場調査だけで「売れる」と判断する
「市場規模が大きいから成功する」と判断するのも危険です。
市場全体が拡大していても、自社が狙う顧客に強いニーズがなかったり、競合が強かったりすれば参入は難しくなります。
市場データだけでなく、顧客へのヒアリングやテスト販売などを組み合わせて判断しましょう。
③最初から完成品を作ってしまう
顧客の反応を確認する前に、多機能なサービスを開発してしまうケースもあります。
必要だと思っていた機能が実際にはほとんど利用されないこともあります。
MVPを使い、最小限の機能で顧客価値を検証したうえで開発範囲を広げるのが有効です。
④経営陣と現場の認識がずれる
経営陣は短期的な成果を求め、現場は検証に時間が必要だと考えているなど、認識のズレが起こる場合があります。
プロジェクト開始時に目的、期待する成果、KPI、投資判断のタイミングを共有しておきましょう。
定期的なレビューの場を設けることも有効です。
⑤撤退基準がなく投資を続けてしまう
「ここまでお金を使ったから」と投資を続けると、損失がさらに膨らむ可能性があります。
あらかじめ、「○カ月以内に有料顧客○社」「継続率○%以上」「顧客獲得単価○円以下」などの判断基準を決め、達成できない場合は改善・ピボット・撤退を検討します。
撤退は失敗ではありません。検証結果から早く学び、次の事業へリソースを振り向けることも新規事業開発の重要な意思決定です。
新規事業立ち上げで使えるフレームワーク
フレームワークは、新規事業の答えを自動的に導き出してくれるものではありません。
目的に応じて使い分けることで、情報を整理し、チーム内で共通認識を作るために役立ちます。
| フェーズ | フレームワーク | 主な用途 |
|---|---|---|
| 事業の方向性 | MVV | 事業の目的・目指す姿を整理 |
| 顧客理解 | ペルソナ | 想定顧客を具体化 |
| 顧客課題 | ジョブ理論 | 顧客が達成したいことを整理 |
| 外部環境 | PEST分析 | 政治・経済・社会・技術の変化を整理 |
| 市場・競合 | 3C分析 | 顧客・競合・自社を整理 |
| 戦略整理 | SWOT分析 | 強み・弱み・機会・脅威を整理 |
| 事業設計 | ビジネスモデルキャンバス | 事業全体の構造を可視化 |
| 仮説整理 | リーンキャンバス | 新規事業の重要仮説を一枚で整理 |
アイデア・顧客課題の整理に使うフレームワーク
MVV
MVVはMission・Vision・Valueを整理する考え方です。
新規事業で、「なぜこの事業を行うのか」「将来どのような状態を目指すのか」「どのような価値観を大切にするのか」を整理する際に役立ちます。
ペルソナ
ペルソナは、商品・サービスを利用する典型的な顧客像を具体化する手法です。
ただし、担当者の想像だけで人物像を作るのではなく、実際の顧客インタビューやデータをもとに設定することが重要です。
ジョブ理論
ジョブ理論では、顧客が商品そのものを求めているのではなく、「達成したいこと」のために商品・サービスを利用すると考えます。
顧客がどのような状況で、何を解決したくて既存の商品を選んでいるのかを分析することで、表面的ではないニーズを把握しやすくなります。
市場・競合分析に使うフレームワーク
PEST分析
PEST分析は、Politics・Economy・Society・Technologyの4視点で外部環境を整理する手法です。
法改正、人口構造、景気、技術革新など、新規事業に中長期的な影響を与える変化を把握する際に役立ちます。
3C分析
3C分析では、Customer・Competitor・Companyの3つを整理します。
市場や顧客が求めていること、競合が提供している価値、自社の強みを比較することで、参入余地を検討できます。
SWOT分析
SWOT分析は、自社の強み・弱みと、外部環境の機会・脅威を整理するフレームワークです。
単に4象限を埋めるのではなく、「強みを生かしてどの機会を取りに行くか」など、具体的な戦略へつなげることが重要です。
ビジネスモデル設計に使うフレームワーク
ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルキャンバスは、顧客、提供価値、チャネル、収益、コスト、必要なリソースなど9つの要素からビジネスモデル全体を整理します。
複数部門のメンバーで事業構造の認識をそろえる際にも有効です。
リーンキャンバス
リーンキャンバスは、ビジネスモデルキャンバスを新規事業やスタートアップ向けに応用したフレームワークです。
顧客課題、顧客セグメント、独自の価値提案、解決策、収益などを一枚で整理できるため、仮説が多い立ち上げ初期に向いています。
重要なのは、一度作ったキャンバスを完成版として扱わないことです。顧客インタビューやMVPの結果をもとに何度も更新しましょう。
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新規事業立ち上げの成功事例3選
新規事業の立ち上げでは、事業アイデアだけでなく、実行体制や専門人材の確保も重要です。
ここでは、フリーコンサルタント.jpによる支援事例から、新規事業立ち上げを前進させた3つのケースを紹介します。
大手通信キャリア会社|新規教育サービスを立ち上げ
大手通信キャリア会社では、新たな収益の柱となる教育サービスを開発するため、新規部署とプロジェクトを立ち上げました。
一方、社内には要件定義とプロジェクトマネジメントを同時に進められる人材が不足していました。
そこで外部のプロ人材を活用し、要件定義の支援からプロジェクト全体の設計・推進までを依頼しています。
その結果、新しい領域でのサービスをローンチできただけでなく、システム開発やプロジェクト推進の進め方を社内メンバーへ共有し、次の新規事業にも取り組みやすい体制を構築しました。
不足する専門性を外部から補いつつ、ノウハウを社内へ残した事例と言えるでしょう。
大手外資系リゾート開発会社|複数のステークホルダーを調整し開発体制を構築
大手外資系リゾート開発会社では、日本市場における新規リゾート施設の開発を計画していました。
しかし、日本国内での開発実績が少なく、地方自治体やゼネコンなど複数の関係者をまとめながらプロジェクトを管理できるPMO人材が不足していました。
そこで外部人材が参画し、課題・論点の整理や関係者との調整・交渉を担当しました。
結果として、複雑な利害関係を整理しながらリゾート開発に着手するための体制を構築し、プロジェクトを前進させています。
新規事業では、商品アイデアだけでなく、社内外の関係者を巻き込みながら実行できる体制を作ることも重要です。
大手電機メーカー|GX領域の新規事業を予定より早く立ち上げ
大手電機メーカーでは、中期経営計画の実現に向け、グリーンエネルギーやカーボンニュートラルをテーマとする新規事業の創出を進めていました。
一方、社内には新規事業を企画段階から事業化までリードした経験を持つ人材が不足していました。
そこで外部のプロ人材が参画し、企画からグロースまで一貫してプロジェクトを推進しました。
実務を通じてノウハウを社内へ共有・仕組み化した結果、当初予定より早くGX領域の新サービスを立ち上げることができました。
さらに、社員がプロジェクトへ参加することで新規事業立ち上げの経験が社内に蓄積され、次の事業創出につながる組織力の強化にもつながっています。
新規事業立ち上げはフリーコンサルタント.jpにお任せください
新規事業立ち上げでは、顧客課題の探索、市場調査、事業戦略、PoC、商品開発、マーケティング、営業など、フェーズごとに異なる専門性が求められます。
- 新規事業のアイデアはあるものの事業性を検証できない
- PoCを実施したが、事業化へ進めない
- 新規事業を任せられる責任者が社内にいない
- 事業開発経験者が不足している
といった課題を抱えている場合は、外部のプロ人材を活用する方法もあります。
フリーコンサルタント.jpには、新規事業の戦略立案、事業開発、プロジェクトマネジメントなどの経験を持つプロフェッショナル人材が登録しています。
25,000人以上のプロフェッショナル人材が在籍しており、最短即日でニーズに沿った人材をご紹介します。
自社に不足している経験・スキルを持つ人材を必要なフェーズで活用すれば、事業を前進させるだけでなく、プロジェクトを通じてノウハウを社内へ蓄積することも可能です。
新規事業立ち上げの進め方や人材不足に課題を感じている場合は、フリーコンサルタント.jpへご相談ください。
まとめ|新規事業立ち上げは仮説検証を繰り返しながら進めよう
新規事業立ち上げでは、最初から完璧な事業計画や商品を作る必要はありません。
目的・体制を決める → 顧客課題を見つける → 事業アイデアを作る → 顧客・市場・事業性を検証する → MVPで試す → 事業化する → 改善する
特に注意したいのが、顧客の反応を確認する前に商品・サービスを作り込みすぎることです。
新規事業は不確実性が高いため、小さな仮説検証を繰り返しながら、「本当に顧客が必要としているか」「事業として成立するか」を確認しましょう。
また、新規事業に必要な知識や経験がすべて社内にそろっているとは限りません。事業開発やプロジェクト推進の経験者が不足している場合は、外部のプロフェッショナル人材も活用しながら、必要なノウハウを補うことが有効です。
立ち上げそのものをゴールにするのではなく、顧客へ価値を届け、継続的に収益を生み出せる状態まで仮説検証を続けることが、新規事業成功への重要なポイントです。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)
監修者プロフィール 浅尾 慎介(地方創生を主軸に業務改善コンサルティングを得意とするプロ人材) コンサルティングファームでは、製造業、製薬業をクライアントに業務改革、システム導入プロジェクトに従事した。課題解決、ステークホルダー間の調整を得意としている。 広告代理店では、制作に携わり、YouTubeを活用したプロモーションなどを行った経験がある。







