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経営者必見!脱炭素経営とビジネス成長を両立するためにすぐできること

経営者必見!脱炭素経営とビジネス成長を両立するためにすぐできること

候変動への対策が世界全体の課題となる中、日本政府も脱炭素社会に向けて温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を2050年までに目指すことを宣言しました。

これによって再生可能エネルギーの活用など、脱炭素経営に取り組む日本企業が急増しており、実は日本企業における脱炭素の取り組み状況は世界トップクラスです。
例えば事業に使うエネルギーを100%再生可能エネルギーにしようとする世界的な枠組み「RE100」の参加企業数では、日本は2位を誇ります。

その一方で、国内企業の8割が2050年に向けたロードマップを策定できていない状況というのも事実です(※1)。
また日本の炭素生産性は、世界各国と比べて低いというデータもあります。省エネや再生可能エネルギー活用は進んでいるものの、2050年に向けて脱炭素を効率化しながら長期的な事業計画を立てられるかが日本企業が抱える課題と言えます。

実際に「省エネには取り組み始めたが、事業とどう連携させればいいのかわからない」という経営者の方も多いのではないでしょうか。
そこで日本企業が抱える課題を分析した上で、事例を紹介しながら脱炭素とビジネスの両立に向けてやるべきことを解説します。
以下のコラムもあわせてご覧ください。

1.2050年の温室効果ガス排出量ゼロに向けて日本企業が抱える課題

1.2050年の温室効果ガス排出量ゼロに向けて日本企業が抱える課題
2050年までに温室効果ガス排出量ゼロにするカーボンニュートラルを目指す上で、日本において特に課題になっているものは2つ挙げられます。

(1)多くの日本企業が、将来のロードマップを策定できていない

冒頭で紹介した2021年の調査によると、74%の企業がカーボンニュートラル実現へコミットしていると表明しています。
しかしその一方で「2050年までのロードマップを策定できている」と回答した企業は16%しかありませんでした。

脱炭素の取り組みに対する意識は高いものの、今後2050年までどういう戦略でいくかが見えていない、ということが日本企業の課題であることがわかります(※1)。
なお温室効果ガス排出量の算定においては、国際基準でScope1(自社事業による直接排出)Scope2(他社から購入した電気などの間接排出)、Scope3(1、2以外の事業活動で発生する間接排出)という3つの範囲があります。

この3つの範囲ごとに行われた調査でも、日本企業の課題が浮き彫りとなりました。
Scope1では省エネを実践している企業が約4割、Scope2では再生可能エネルギーの調達も約4割以上と対策が加速していることがうかがえます。
しかしScope3になると実践している企業は3割にとどまっています(※1)。

Scope3には原材料の製造や配送など、事業に関連した他社の排出量が含まれます。つまりこれを削減するには、取引先など他社との連携した取り組みが必須です。
ここがネックとなり、世界と比べて日本は将来のロードマップが策定しづらい状況にあることがわかります。

(2)日本は世界各国と比べて炭素生産性が低い

もうひとつ日本が直面している課題が、世界各国に比べて炭素生産性が低いということです。
炭素生産性とは、温室効果ガス排出量当たりの国内総生産(GDP)のことを言います。
この指標が高ければ、同じ炭素量でより多くの生産ができることとなります。

環境省の資料によると、アメリカや欧州が近年炭素生産性を向上させている一方で日本は低迷(※2)しています。
脱炭素を加速させるだけではなく、イノベーションや効率化にも取り組みビジネスも成長させる、これが今後の日本企業に求められていると言えるでしょう。

(3)今後温室効果ガス排出量ゼロを目指すには、DXがキーとなる

こうした課題の根底にあるものとして考えられるのが、日本のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の遅れと言えます。
例えばサプライチェーン全体で温室効果ガスの排出量削減に取り組むには、より業界や産業全体での変革が必要です。
これを実現するには、自社はもちろん、業界全体でDXが重要となってきます。

また脱炭素を加速させながら生産性アップを実現させるには、省エネや再生可能エネルギーの調達だけでは難しいのも事実です。
新たな技術やシステムを導入して業務を効率化したり、デジタルを活用した新たなビジネスモデルを構築したりするという発想が必要になってきます。

つまり炭素生産性の向上を実現するためには、DXがキーになってくるでしょう。
しかし現状日本のDXは、アメリカなど世界各国と比べて「周回遅れ」とも言われる状況(※3)です。
こうしたDX化の遅れが、日本の課題の根底にあると考えられます。

2.脱炭素をチャンスと捉え、ビジネス成長につなげる国内・海外事例

2.脱炭素をチャンスと捉え、ビジネス成長につなげる国内・海外事例
国内企業の中にも脱炭素をビジネスチャンスと捉え、思い切った事業転換などに取り組むところも出てきました。
また海外に目を向けると、すでに脱炭素とDXをつなげて生産性向上を目指すケースもあります。
ここでは今後の課題解決のヒントとなりうる、国内・海外の事例を紹介します。

(1)脱炭素ビジネスへ事業転換した国内事例

メイン事業を脱炭素ビジネスにシフトした企業もあります。
環境省の資料で紹介されている「株式会社WDN」「奥地建産株式会社」も脱炭素ビジネスに転換した事例のひとつです。

どちらも大阪府を拠点にする中小企業です(※4)。
WDNは液晶ディスプレイ製造の受注減少をきっかけに、成長が期待できる環境分野に目を付けLED事業へシフトしました。
奥地建産も住宅着工数の減少をきっかけに、太陽光発電架台の製造に着手しております。

2社ともに従来持つ技術やノウハウを活用しながら、脱炭素をビジネスチャンスと捉え事業転換した事例として、注目を集めています。

(2)売上アップを実現、さらにScope3の削減目標も掲げる国内事例

日本企業が抱える大きな課題である、脱炭素のロードマップ策定ですが、これに取り組んでいる先進事例として知られるのが、神奈川県にある中小企業の株式会社大川印刷です。
2005年にはソーシャルリーディングカンパニーと名乗り、NPOなどと協業して環境にやさしいインキ導入などを実施しております。

その後「Co2ゼロ印刷」「再生可能エネルギー100%印刷プロジェクト」などにも取り組んでいます(※5、※6)。
こうした取り組みの結果、環境問題への意識が高いと見取引企業からの引き合いが増加し、売上アップにつながったと言います。
脱炭素をチャンスと考え、ビジネスの成長につなげた事例と言えるでしょう。

社内はもちろん取引先も脱炭素への意識が高いため、ロードマップの策定がしやすいというわけです。
すでに大川印刷では、Scope3(取引先などが排出する間接排出量)についても2030年に100%削減(2017年比べ)という実質排出量をゼロにする目標を掲げています(※7)。

(3)スウェーデンやデンマークの海外事例ではすでに脱炭素DXを実現

海外、特に欧州では脱炭素の分野でDXに取り組む事例が目立ちます。
例えばデンマークでは国全体としてDXに取り組み、食品配達のサブスクリプションモデルや建設物の効率的なメンテナンスを実施するなど脱炭素社会に向けてデジタルを活用しています(※8)。

また経済成長と温室効果ガス削減を両立させ、脱炭素社会を目指しているのがスウェーデンです。
デジタル技術を活用した新興企業がさまざまな業界で台頭していること、炭素税などを導入していることなどが、両立できている理由だと言います(※9)。

脱炭素社会を実現させるには、企業がDXに取り組み新たな技術でビジネスを変革できるかがポイントになります。これは業界を問わず、あらゆる企業が取り組むべき問題になってきています。

3.日本企業が脱炭素DXに取り組みビジネスを成長させるためのポイント

3.日本企業が脱炭素DXに取り組みビジネスを成長させるためのポイント
2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を実現させるため、企業はどう課題に向き合うべきなのでしょうか。
温室効果ガスの排出量ゼロと言うと、どうしても省エネや再生可能エネルギー利用に注目しがちです。
もちろんこれらの施策も必要ですが、これだけでは事業を成長させるのは難しいでしょう。

先ほど紹介した先行事例を見ると、ポイントが見えてきます。
温室効果ガスの排出量をゼロに近づけながら、ビジネスの成長を実現するために必要なポイントを解説します。

(1)IT活用による脱炭素関連業務の効率化

いきなり脱炭素DXに取り組みたいと思っても、どう進めていいかわからないという経営者の方も多いかもしれません。
そこでまず導入を考えたいのが、クラウドなどのITツールです。

アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が2021年に発表した資料によると、平均的な日本企業の場合オンプレミス(自社開発・運用)からクラウドに移行するだけで、Co2排出量を77%削減できるというデータもあります(※10)。 また最近IT系ベンチャー企業の中には、脱炭素ビジネスを支援するためのITツールを開発・提供するケースもあります。

例えば2015年に設立されたエネチェンジ社が提供するのが、グリーン電力証書をオンラインで発行できるプラットフォーム(※11)です。
このツールを使えば、国際基準においても利用できる再生可能エネルギー購入証明書の手続きを簡略化することができます。

また温室効果ガス排出量の算出・可視化を支援するサービスも登場しています。
例えばサプライチェーンの温室効果ガス排出量も含めて算出・可視化できるクラウドサービス「zeroboard」が2021年から運用開始(※12)されました。

こうしたクラウドサービスを活用することで、従来煩雑だった脱炭素関連業務が軽減され、生産性向上や新たなイノベーション開発にもつながるはずです。
ただしこうした自社の事業や体制に合うツールを選ぶことが重要です。

(2)税優遇制度や補助金制度を活用する

脱炭素に取り組む上で、設備投資などのコストも必要になります。
多くの日本企業が今後の脱炭素に向けて、多額の設備投資を計画しています。
例えば給湯器のノーリツは2021年から2029年までの8年間で開発や投資に約700億円を投じる計画を公表しました(※13)。

しかし再生可能エネルギー価格高騰やコロナ禍によって、厳しい経営を迫られる企業も多いでしょう。そこで政府は、2021年8月に脱炭素やDXに投資する企業に税制支援や金融支援を行うため法改正を実施しました(※14)。

また脱炭素関連の投資に利用できる補助金制度も増えています
例えば環境省では、Co2削減につながる設備導入を支援するため、設備投資の一部(上限5,000万円)を助成する「グリーンリカバリーの実現に向けた中小企業等のCO2削減比例型設備導入支援事業」を設けています(※15)。

このほかにも、環境省ではカーボンニュートラルに向けてさまざまな支援制度を設けています。
工場場の温室効果ガス削減を支援する制度や、カーボンニュートラルにつながる技術開発費を支援する制度などもあります。

自社が利用できる制度は、積極的に導入したいところです。
また自治体でもこうした補助金を設けているケースがあります。
例えば東京都では「中小規模事業所向け省エネ型換気・空調設備導入支援事業」を設けています(2021年12月時点)。
これはコロナ禍対策の対応としての換気確保とあわせCo2排出量にもつながる空調設備の導入費を一部助成する制度です。

(3)専門家による支援を受ける

脱炭素に向けたDX推進となると、コストとあわせて必要なのが人材の確保でしょう。
社内リソースだけでは難しい、という企業も多いのではないでしょうか。
特に「何から手を付けていいかわからない」という経営者の場合は、行政や金融機関などが設けている相談窓口や支援策を利用するのもひとつの方法として有効です。

現在では、中小企業向けにさまざまな支援策が設けられています。

ただしこうした支援策は、あくまできっかけづくりと考えるべきでしょう。
デジタルを活用し脱炭素ビジネスの長期的に継続するには、事業戦略も含めた中長期的なロードマップ策定が必要です。

気候変動対策として、世界が目指す脱炭素社会ですが、これに向けて温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロにするというのがカーボンニュートラルです。
政府の取り組みが加速する中、業界を問わずあらゆる日本企業が、ビジネスと連動させて考える必要があります。

実際多くの日本企業が脱炭素への意識は高いものの、2050年までに温室効果ガス排出量ゼロを目指すとなると「ロードマップ策定ができていない」「海外と比べて生産性が低い」といった課題に直面しています。
これはDX化の遅れも大きな要因です。

一方で世界に目を向けると、脱炭素に取り組みながらビジネスを成長させるため、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を活用しているケースも見られます。
脱炭素社会とビジネスの両立に向けて、まず取り組みたいのはITツール活用による効率化でしょう。

さらに政府や自治体が設けている税制支援や補助金、相談事業も積極的に活用しましょう。
ただしこれらは、あくまできっかけづくりです。実際には2050年に向け、脱炭素とビジネスを両立させる長期計画を立てる必要があります。

こうした計画や戦略の立案には専門知識・スキルのほか経験も必要です。
こうなると社内だけでは対応しきれないケースも多いでしょう。
そこで各分野の専門知識やプロジェクト推進スキルを持つ外部パートナーと組むことも検討したいところです。


(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)
出典 ※1:「日本企業の脱炭素経営、実態調査で見えた現状と今後の課題とは?」(スマートジャパン)
https://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/2201/31/news056.html
※2:「地域の生活・経済を担う地域企業の現状と課題について」(環境省) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/datsutanso/hearing_dai3/siryou2.pdf
※3:日本企業のDX導入が遅れている背景」(独立行政法人経済産業研究所) https://www.rieti.go.jp/users/iwamoto-koichi/serial/130.html
※4:「【神奈川県】株式会社大川印刷 ~SDGsを活用した地域中小企業による新たな需要開拓~」(関東経済産業局)
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/sdgs/data/ohkawainsatsu.pdf
※5:「大川印刷がSDGsに取り組み『社会的印刷会社』を標榜」(サステナブル・ブランド ジャパン)
https://www.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/1191745_1501.html
※6:「株式会社大川印刷 中小企業版SBT・RE100の設定 成果報告 2018年度」(環境省) https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/jp_chusho/D2018_ohkawa-inc.pdf ※7:「先進事例『デンマーク』に学ぶ脱炭素に向けた日本のDXとは?」(日本経済新聞) https://ps.nikkei.com/members2110/index.html
※8:「環境配慮型商品『実際に購入』は3割でも、継続購入意向は96%。ブランド支持獲得のカギは『脱炭素DX』」
https://www.businessinsider.jp/post-246355
※9:「『クラウドへの移行によるCO2削減効果』に関するレポートが公表されました(Amazon Web Services ブログ) https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%89%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8Bco2%E5%89%8A%E6%B8%9B/
※10:「エネチェンジ×日本自然エネルギー、グリーン電力証書オンライン発行プラットフォーム『GreenCart』の共同運営開始」(ENECHANGE)
https://enechange.co.jp/news/press/greencart/
※11:「ゼロボード、横浜銀行と伊藤忠エネクスと『脱炭素経営ソリューションの概念実証』に関する業務提携契約を締結」(日本経済新聞) https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP625573_Y2A110C2000000/
※12:「ノーリツ、脱炭素に700億円投資 水素燃料機器など開発」(日本経済新聞) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF152CC0V10C22A2000000/
※13:「産業競争力強化法における事業適応計画について」(経済産業省) https://www.meti.go.jp/policy/economy/kyosoryoku_kyoka/zentaishiryo.pdf
※14:「グリーンリカバリーの実現に向けた中小企業等のCO2削減比例型設備導入支援事業」(環境省)
https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/nergy-taisakutokubetsu-kaikeir04/r3hosei_gr.pdf
※15出典:「中小規模事業所向け省エネ型換気・空調設備導入支援事業」(東京都環境局) https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/businesses/200300a20210618113341010.html

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