DXとは?実現するための課題や対策、成功例をわかりやすく解説
ビジネスコラムColumn
最終更新日:2024.10.30
DX/最新技術

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味や定義、DX化の課題、成功例についてわかりやすく解説

DXとは?実現するための課題や対策、成功例をわかりやすく解説
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、企業がデジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを根本的に変革する取り組みです。

近年、急速な技術革新や顧客ニーズの変化が進むなか、DXは競争力を維持、向上させるための重要な戦略となりました。

本記事では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の意味や定義、DX化の課題について解説します。成功事例もわかりやすく解説するので、自社の課題解決にお役立てください。






1.DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義とは?

デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)は、製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、競争上の優位性を確立する段階を表します。DXには企業文化や組織体制など、組織全体の変革が求められており、DXによって新たな事業や価値の創出が期待されます。

DXで懸念されるのが、組織全体の変革を実現する際に想定される、組織内からの反発などの諸問題です。これらの課題は、デジタイゼーションやデジタライゼーションなどの段階を踏んでノウハウを蓄積すると、解決しやすくなると考えられています。

また、DXでは現状のビジネス環境に対応するだけでなく、今後の技術革新などによってビジネス環境が激変した際にも対応できるようにしなければなりません。つまり、DXには高い技術力や課題解決力、判断力などの総合的な力が求められているということです。

「DX」は変革そのものが目的ではない

DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、直訳すると「デジタルによる変革」と表せます。

DXの概念は、2004年、スウェーデンのウメオ大学に所属していたエリック・ストルターマン教授によって提唱されました。当時のDXは、情報技術の浸透が人々の生活を豊かにすることを意味していましたが、以降さまざまな産業のデジタル化にともない、DXがビジネス用語として使用されるようになったと考えられています。

なお、ビジネスにおけるDXについて、経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」では、次のように解釈しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

出典:経済産業省 デジタルガバナンス・コード2.0

このように、ビジネスにおけるDXは単なる「デジタルによる変革」そのものが目的ではないといえます。

2.DXに必要な「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」とは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、競争上の優位性を確立する段階を表します。では、近藤しがちな「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「IT」とはどのような違いがあるのでしょうか?

主な違いは以下の通りです。

次らからそれぞれについて、詳しく紹介していくので、ぜひ参考にしてください。

(1)デジタイゼーション

デジタイゼーション(Digitization)は、アナログでおこなってきた業務のデジタル化を意味します。

例えば、紙の書類をExcelファイルなどでデータベース化する場合や、RPAを導入して単純作業を手作業から自動化にシフトする場合がデジタイゼーションにあたります。

デジタイゼーションによって得られるメリットはさまざまです。アナログにはない検索性や恒久性をデジタル化で向上させることで、業務の効率化や生産性を向上させ、スピード感のある作業を実現できます。また、紙媒体での作業にありがちなヒューマンエラーの防止などの効果が期待できるでしょう。

(2)デジタライゼーション

デジタライゼーション(Digitalization)は、デジタルを取り入れて業務プロセスを変革することを指し、単純なデジタル化による業務効率化を表すデジタイゼーションとは異なるものです。

デジタライゼーションの一例として、商談を「訪問」から「オンライン」に切り替えるデジタル化が挙げられます。業務プロセスをオンライン化すると、移動時間に割いていた時間を資料作成やリサーチなどの時間にあてられるようになり、結果として、商談の質の向上につながります。

また、広告媒体を紙からWebに切り替えるのもデジタライゼーションの一例です。Web広告なら、ターゲット層を絞り込んだプロモーションや効果測定の実施が可能になるでしょう。

(3)IT

IT化はIT技術の活用によって業務効率化などを図ることを指しており、IT化はDXを進める手段の一つだといえます。一方、DXはITを活用した組織・ビジネスの仕組みそのものの変革を意味し、企業成長によって新たな価値を生み出すことが期待されています。

IT化は戦術、DXは戦略といわれており、企業ごとに適した戦術・戦略を取り入れることがDXの成功につながるでしょう。

3.DXが注目されるようになった背景とは

ここでは、DXが注目されるようになった背景を解説します。なぜ近年急速にDXニーズが伸びているのか、把握しておきましょう。

パンデミックや自然災害による影響

パンデミックや地震、台風、雪害などの自然災害に備える手段として、DXは非常に有効です。非対面型の接客による感染リスクの低減、リモートワークに便利なオンラインミーティングツールやメタバースオフィスなどが台頭すれば「いつでもどこからでも同じクオリティの商品、サービス」が提供できるようになります。

こうした取り組みの実現には従来のビジネスモデルからの脱却が必要であり、DXなど新たな考え方や最新技術のフル活用も急務とされました。業界、業種の枠を越えて社会課題を解決するヒントとしても有効であり、今後更なるDXニーズの拡大が予想されています。

2025年問題

2025年問題とは、約800万人いるとされる団塊の世代が後期高齢者(75歳)になる時期に生じる諸問題を指します。高齢化が進んで労働人口が減ると、医療、介護、福祉などの分野で「働き盛り」の人の負担が増えるだろうと懸念されています。

IT分野も2025年問題を抱えているので注目しておきましょう。経済産業省が2018年に公表したDXレポートでは、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じ、IT人材は約43万人不足すると試算されています。DX化に成功すれば、自社が抱える課題だけでなく社会的な課題も効率よく解消でき、自社の成長にもつながるのがポイントです。

DXを推進しなければ市場の変化に対応できず、デジタル競争を勝ち抜くことが非常に困難となるでしょう。また、事故や災害によるシステムトラブルやデータ流出などのリスクも高まります。DXでは既存システムの問題解決、業務全体の見直しが求められますが、これらを実行する際の各種課題を乗り越えなければ、DXの実現は難しいのが現状です。

実際に、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX白書2021」の日米企業調査によると、日本における全社的なDXへの取組状況は21.7%にとどまっています。同調査では米国企業の取組状況が36.6%であることも示されており、比較すると日本のDXが進んでいないことがわかります。2025年の崖を乗り越えるためには、想定される問題を直視し、より積極的にDXに取り組む必要があるのです。

4.DXを推進で得られる7つのメリット

ここでは、DXの推進で得られるメリットを解説します。

➀生産性、業務効率が向上する

DXにより生産性が向上する主な要因のひとつとして、業務プロセスの自動化が挙げられます。たとえば、データ入力、在庫管理、顧客対応などの手作業を自動化することで、社員がより価値のあるコア業務に集中できます。ルーティン作業にかかる時間が短縮され、業務全体のスピードが向上し、生産数を増やすなど生産性の向上が期待できるでしょう。

なお、データ分析ツールを利用することで、リアルタイムに業務のパフォーマンスを把握し、問題点を迅速に特定できるのもメリットです。結果的にこれまでと同じ業務パフォーマンスを短時間で発揮できるようになるため、働き方改革やワークライフバランスの向上にも貢献します。

➁コスト削減につながる

DXにより多くの業務プロセスが自動化されることで、人的リソースに割いていたコストを削減できます。同じ人数でより多くの業務を処理できるため、人材面でのコストパフォーマンスがよくなるのがメリットと言えるでしょう。また、AIやRPAを使って自動化ができればミスが減り、再作業や修正にかかるコストを低減させることも可能です。

その他、副次的なコスト削減メリットとしてビジネスの機関損失予防が挙げられます。たとえばリアルタイムでのデータ分析が可能になれば、需要予測を正確におこなうことで無駄な投資、コスト投入を避けやすくなります。業務のボトルネックや無駄なプロセスを特定し、改善策を講じることもできるので、確実な投資効果が期待できるのです。

③新規事業が生まれやすくなる

DXを通じて得られるデータや技術の活用により、企業は市場の変化に迅速に対応できるようになります。結果、イノベーションを生み出しやすくなり、新規事業が生まれやすくなるのがメリットです。DX化に成功すれば大量のデータを収集、分析できるため、顧客のニーズや市場のトレンドをリアルタイムで把握でき、ビジネスチャンスを逃すこともありません。

また、アジャイル開発手法※1やプロトタイピング技術※2を活用することで、新しいアイデアや製品を迅速に試作、実験できます。リスクを早期に特定し、必要な修正を加えながら市場に出るという意味でも、新規事業の成功にDXが大きく貢献するとわかります。

  • ※1 システム、ソフトウェア開発において、小さな単位で実装とテストを繰り返して開発を進める手法
  • ※2、初期段階に試作モデルを作り、機能や操作性を確認し、ユーザーの要求や評価を本番のシステムに反映して完成させる開発手法

④顧客エンゲージメントが強化できる

DXを通じて収集されるデータを活用することで、企業は顧客の嗜好や行動を理解して個別最適化されたサポートを提供できるようになり、顧客エンゲージメントが強化されます。

「自分のニーズを正確に把握してくれる会社だ」「ほしいときにほしい情報をピンポイントでくれて助かる」など満足度が上がることで、結果的にファンを育成することもできるでしょう。顧客とコミュニケーションを取るための多様なチャネルを提供するなど、フレキシブルなDX活用ができれば更なる効果が期待できます。

顧客エンゲージメントが強化されると、既存顧客の口コミによって新規顧客が集まるなど、顧客開拓面でのメリットも生まれます。メリットがメリットを生む良い循環ができあがっていくので、DXには大きな価値があるといわれているのです。

⑤BCP(事業継続計画)が充実する

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)は、災害や不測の事態が発生した際に、企業の重要な業務を継続して迅速に回復するための戦略をまとめたものです。リアルタイムでのデータ収集と分析が行えるDXは、リスク管理や危機管理の強化にも役立ちます。たとえば、自然災害やサイバー攻撃の兆候を早期に把握し、事前に対策を講じることで影響を最小限に抑えることができるのです。

その他、セキュリティレベルの向上や正確なリスクマネジメントなど、日常の事業継続計画に活用することも可能です。事業の中断を防ぐ手法として有効であり、BCPのシミュレーションやトレーニングの実施もできます。

⑥環境にやさしい経営ができる

DXを「環境に優しい経営」に活用することも可能です。たとえば、エネルギー管理システムを導入してオフィスや工場のエネルギー消費をリアルタイムで監視、調整すれば、エネルギーコストを削減しながら環境負荷を低減できます。サプライチェーン全体を効率化し、環境への影響を最小限に抑えるなど、活用方法が多岐にわたるのもポイントです。

自社のコスト削減だけでなく、環境問題対策やSDGsの実現にも貢献できるのがDXであると言えるでしょう。エコフレンドリーな製品の開発や売上シミュレーションにもDXを使うことができ、活用の幅も広いです。

⑦市場の変化に柔軟に対応できる

DXによって自社がリアルタイムでデータを収集、分析できるようになれば、市場の変化に柔軟に対応できます。市場のトレンドや顧客のニーズの変化を迅速に把握でき、データに基づいた迅速な意思決定ができれば、無駄な損失を被ることもありません。追加投資や事業撤退もベストタイミングで決められるので、予測に基づいた戦略的な計画を立案しやすくなるでしょう。

その他、クラウドサービスや自動化ツールを活用することで、業務プロセスのスピードを向上させ、新しい製品やサービスの開発を急ぐことも可能です。必要に応じてリソースをスケールアップまたはスケールダウンするなど、フレキシブルな対応もできるので検討してみましょう。

5.DXを推進するうえで乗り越えるべき課題

DXを進めるためには、企業が抱える課題の正確な把握が欠かせません。DXの妨げになりうる課題を3つの項目に分けて解説します。

デジタル社会に残る日本の商慣習

デジタル化が進んでいない日本では、決算書類や契約書にアナログで押印しなければならないケースがいまだ多いのが現状です。また、スピーディさが特徴のデジタル化したビジネス環境を、自分に合わないと感じる方も少なからずいるでしょう。

デジタル分野では最小限のサービスからアップデートを重ねていきますが、日本の商習慣では性格上、最初から完璧が目指されるのです。

このような慣れ親しんだルールを抜本的に変えるためには、組織的な意識変革も必要となります。早急な改革は反発を招く恐れもあるため、一つずつ確実に改革を進めていくことが大切です。

既存システムに対する依存

これまでの日本社会では、メンバーシップ型雇用制度を採用する企業が多く存在していました。業務は属人的で、業務に合わせてシステムをカスタマイズしてきたことから、古いシステムを捨てようと思っても、簡単には変えられない状況に陥っているのです。

DXの推進には、既存システムの見直しが欠かせません。しかし、既存システムへの依存、老朽化したシステムの運用費などが原因でDXの予算を捻出できず、システムの見直しが進まない現状があります。

ITリテラシーの低さ

通信インフラが充実している日本ですが、いまだに紙でのやり取りやFAXが必要な業務をおこなう企業が多く見受けられます。

近年では、ペーパーレス化やチャットツールの採用といった取り組みも増えてきましたが、欧米に見られるようなモバイル端末のみで仕事を完結する段階とまではいえません。

DXを推進するには、積極的にデジタル化を取り入れ、社員に教育をおこなうことでITリテラシーの向上を図る必要があります。ITリテラシーの低さを改善しないことには、DXの実現も遠のくといわざるをえません。

みらいワークスには、ITを専門としたプロ人材が多数在籍しています。DX化に伴い、自社のITリテラシーの低さを補うなら、ぜひみらいワークスからご相談ください。

6.DXを推進するうえでの課題への対策

DXを推進するには、どのようなポイントに注意すれば良いのでしょうか。ここでは、DXを推進するうえで起こりうる課題への対策を4つ紹介します。闇雲にDXを推進しようとせず、まずはポイントを押さえて一つずつ着実にDXを目指しましょう。

DXの目的の明確化

DXを推進するために、まずはDXの目的を明確化しましょう。

目的を定めずに何となくDXを始めると、ゴールへたどり着けずに計画が破綻してしまう可能性が高くなります。また、そもそも何をして良いのかわからず、不要なデジタル技術の採用によって予算を無駄遣いしてしまうかもしれません。デジタル技術を使うことが目的になってしまい、変革やビジネスの創出につなげられない場合もあるでしょう。

このような事態を防ぐためには、まずは目的を明確にし、組織全体でビジョンを共有する必要があります。

DXは今後の経営を左右するため、中長期的な観点でのDX推進をおこない、現場レベルまで意識変革する必要があります。スムーズにDXを推進するためにも、組織全体でDXに取り組めるよう、情報の周知徹底を図りましょう。

経営層の理解

単純なデジタル化が可能とするのは業務効率化などに過ぎず、業務全体の変革までは実現しません。市場での競争の優位性を確立するためには、具体的な経営戦略を立てて実行にうつす必要があります。DXを推進するには、まずは経営層が強い意思を示して組織全体を整備することが重要です。

また、従業員が積極的にDXに取り組もうとしても、経営層の理解不足が原因で改革が進まない場合もあります。経営層に正しい知識がなかったために、コスト削減や業務効率化をしただけでDXを達成したと思い込んでしまうケースも考えられるでしょう。

経営層がDXの本質を理解したうえで、組織全体でDXに取り組む体制の構築が重要です。

レガシーシステムからの脱却

レガシーシステムとは、老朽化・ブラックボックス化した基幹システムを指します。

レガシーシステム導入以降、時間の経過で環境の変化に対応できるように、あらゆるカスタマイズやアドオンが開発されてきました。複雑化したシステムは非効率で維持コストもかかりますが、システム改善のために事業を停止するわけにもいかず、古いシステムを使い続けている企業も見受けられます。

DXへの着手をいかに早くおこなえるかは組織の今後を左右するため、早急にシステムを刷新する対策が必要です。システムを刷新する際には業務に支障が出るなどの問題も発生する可能性がありますが、これらの課題を踏まえてなお、DXを推進できる力が求められます。

DX人材の確保や育成

前述したように、システムを刷新して維持していくためには優秀なDX人材が不可欠です。システム開発や運用、保守をベンダーに丸投げするだけでは、社内に技術やナレッジが蓄積されません。社内でいかに人材を育て、活用するかがDXの要だといえます。

IT人材が必要とされる一方、少子高齢化し労働人口が不足する社会でデジタル人材は年々不足し、優秀な人材は常に需要が高くなっています。ナレッジが蓄積されていないことも人材不足の要因の一つとなっており、優秀な人材を在籍させ続けることはどのような業種の企業においても課題です。

変化し続ける市場でも優位性を担保するために、人材登用にも注力し、ベンダーと渡り合えるほどデジタル技術に精通したDX人材を確保、育成できる環境を整えましょう。

みらいワークスには、DXに特化したプロ人材が多数在籍しています。DXのプロとして自社のプロジェクトに携わってもらいたいという相談のほか、DXに特化した人材育成に関しても行います。これから人材育成に励もうと考えている企業の方は、ぜひ一度ご相談ください。

7.DX化が各業種に与える影響とは

ここでは、DX化が各業種に与える影響を解説します。特に影響の多い3業種をピックアップしているのでご参考ください。

IT業界

IT業界では多くの業務プロセスが自動化されることにより、生産性やパフォーマンスが著しく伸びることが期待されています。たとえば、ソフトウェアの機能テストや回帰テストを自動化するためのツールを使うことにより、手動でのテスト作業が減り、品質を維持しつつ開発スピードを向上することができるのです。

IT業界では、よりスピードと確実性のあるDX推進が求められます。競合他社が一気にDX化により力をつける可能性があることも考えれば、IT業界に属する企業にとって、DX化が急務となるでしょう。

クラウドコンピューティング、AI、データ分析、アジャイル開発手法など、新しい技術や方法論に対する知識のあるエンジニアもさらに重宝されていくこととなります。

物流業界

IoTデバイスを用いて運行状況をリアルタイムで管理、監督できるようになり、配送時間の短縮とコスト削減が実現します。また、データ分析を通じて交通状況、天候、配達先の特性に基づいた最適な運送ルートを算出できるため、時間とエネルギーの無駄も削減できます。これまでなかなか実現しなかったドライバーのワークライフバランス向上と、環境に優しい省エネルギーな運転、配送を実現する、一石二鳥の効果が期待できるでしょう。

また、トラッキングシステムの導入により顧客が配送状況をリアルタイムで追跡できるなど、顧客にとってのメリットも生まれます。顧客満足度が高まり、リピーターを増やすきっかけにもつなげられるでしょう。

製造業界

製造業界の場合、たとえば製造設備にセンサーを取り付けてリアルタイムで稼働状況やパフォーマンスをモニタリングすることで、異常の早期発見や生産効率の向上を図ることが可能です。他にも、自動化されたロボットによる組立や加工プロセスを導入することで、作業精度を高められるでしょう。人間の手が届きにくい部分でも効率的に作業できるようになり、パフォーマンスが圧倒的に改善するのが魅力です。

また、データ分析を活用して顧客のニーズを把握し、少量多品種生産やカスタマイズされた製品を提供することもできます。たとえば、VRやARを用いた従業員向けのトレーニングプログラムなど、できることは多く、今後の使い方に期待が寄せられています。

8.DXの活用事例3つ

ここでは、DXの活用事例を紹介します。DXは企業規模、業態問わずさまざまな企業で導入されているため、自社の業務改善のヒントになりそうな要素がないか、事例から探してみましょう。

オンラインスクール

DXによりオンライン上で学習指導やレッスンができるようになったことで、生徒が自宅や好きな場所で学べるようになりました。通学の手間を省けることや学習者の進捗をデータで把握できるようになったことなど、多くのメリットにつながっています。

また、オンラインスクールはパンデミックが流行した際に、爆発的に増加しました。今後も未知の感染症が流行しないとは限りませんし、利便性が高いため、ますます発展していくことが考えられます。オンラインスクールは、全国47都道府県、時には海外からも講師を呼ぶことができ、時間、場所の制約なく学びの範囲を広げられる手法と言えるでしょう。

配車サービス

配車サービスでは、GPS技術を用いてユーザーの現在地と近くのドライバーをリアルタイムで把握するDX手法が採用されており、最適なマッチングをスピーディーに実現しています。その他、AIアルゴリズムを用いて最も効率的なルートを自動で算出するなど、運転時間の短縮や燃料コストの削減にも貢献しているのがポイントです。 ビッグデータ分析を活用して地域ごとの需要を予測し、繁忙時間や特定のイベントに合わせた配車の準備もできるので、ロスの少ない配車ができるようになりました。

また、クレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済をアプリ上で完結できたり、乗客とドライバーの相互評価システムを導入したり、新たな取り組みも始まっています。近年は配車の予約もアプリ上でできるようになっているため、生活の質向上に貢献しています。

AI家電

AI家電はAmazon AlexaやGoogle Assistantなどの音声アシスタントと連携していることが多く、音声で操作できる機能が搭載されています。ハンズフリーでの操作や使い勝手の向上に貢献する他、パーソナライズされた体験ができるようになりました。家電がインターネットに接続され、他のデバイスやシステムと連携する「スマートホーム」の実現に貢献しています。

また、スマートフォンアプリを通じて外出先からでも家電を操作、監視できる機能も実装され、ホームセキュリティーの向上にも役立っています。火災警報器やセキュリティカメラが異常を検知した際にアラートを送ることもできるため、今後活用の幅はさらに拡大していくでしょう。

9.日本企業におけるDXの成功事例3選

ここまでDXの概要や推進のためのポイントを解説していきましたが、実際に日本の各企業ではどのようにDXに取り組んでいるのでしょうか。ここでは、日本企業におけるDXの成功事例を3社紹介します。自社に取り入れられる部分がないか、検討してみてください。

トライグループ

幅広い教育サービスを展開するトライグループは、インターネットを活用した映像学習サービス「Try IT」を提供しています。

サービスでは映像授業を無料視聴できるだけでなく、視聴者の質問に教師がその場で応えるオフライン授業のような体験もできます。これまでのノウハウを活かし、生徒にとって最適なタイミングで最適な指導ができるような仕組みも用意されており、継続的に学習を続けられるような工夫が施されています。

いつでもどこでも学習できるインターネットでのサービスならではの特徴を売り出し、会員登録者数は100万人を超えています。

ソニー損害保険

ソニー損害保険株式会社では、DXによって顧客の事故リスクに応じて保険料をキャッシュバックする仕組みを構築しました。開発したのは、スマートフォンで運転特性データを計測し、その結果から事故リスクを推定できるアプリです。

アプリを利用して事故時の補償やサービスを受けられるメリットに加え、キャッシュバックというメリットを顧客に提示して、顧客の事故リスクを低減させています。顧客がキャッシュバックのために自ら安全運転を心がける仕組みを作ることで、自動車事故の発生を抑える新しいサービスを提供しているのです。

ユニメイト

レンタルユニフォーム事業を手がける株式会社ユニメイトでは、自動採寸アプリを開発し、業務の効率化や顧客満足度の向上を実現しました。

AIによる画像認識技術を活用したアプリ「AI×R Tailor」を活用すると、正確な身体のサイズを簡単に把握できます。顧客自身が身体のサイズを把握可能となったことで、ブランドやメーカーによって異なる服のサイズ感を合わせられ、より自分に合った服選びができるようになりました。

企業側の視点で見ると、顧客が自分に合ったサイズを選びやすくなったことで、サイズが合わないことによる返品、交換へ対応する手間が減っています。アプリの開発が返品・交換にかかるコスト削減につながっているのです。

10.DXの進め方

DXは、以下の6ステップで進めるのがおすすめです。ステップごとにやるべきことを明確にしておくと、ミスマッチなく定着しやすくなるので試してみましょう。

➀目的を明確にする

まずは、自社がDXを通じて達成したい長期的なビジョンや目標を設定します。単なる短期的な利益追求ではなく、持続可能な成長を見据えた広範な目標を定めておくことで、よりDX化の効果が得られるでしょう。「なぜDXをするべきだと考えたのか」「どういう状況に危機感を覚えてDXに着目したのか」など、根本的な課題意識を振り返るところから始めるのも近道です。

たとえば「業界のリーダーとしての地位を確立する」「顧客体験を劇的に向上させる」「内部プロセスを効率化し、コストを削減する」などの目的が考えられます。自社が継続的に成長するために何が必要か、まずは実現の可能性を抜きにして考えてみましょう。

➁現状把握と課題の洗い出し

現状把握はDXにおける出発点であり、企業の内部環境と外部環境を正確に理解するプロセスです。業務プロセス、組織構造、ITインフラ、顧客のニーズ、市場動向など、自社の状況をなるべく客観的に把握するところから始めましょう。現状を把握することで、何が効果的に機能しているのか、どこに問題があるのかが明らかになり、具体的な改善点を見つけられます。

その後、把握した課題をリストアップしていきます。ボトルネックや非効率な部分を特定する他、アンケートやインタビューを通じて顧客の声を直接聞きながら気づいていなかった課題を浮き彫りにしていくのも有効です。

③DX推進に伴う体制を構築する

そのため、まずはDX推進を担うリーダーを選任し、組織内の協力を促進しながら課題解決に向けた道筋を示してもらいましょう。部門を超えたクロスファンクショナルなチームを編成するなど工夫し、特定部署だけでの小規模な取り組みにせず、自社を挙げた大きなプロジェクトにすることも大切です。

また、新しいテクノロジーやプロセスを導入する際には、社員への教育とトレーニングが欠かせません。DXの取り組みに対する理解を深め、実際の業務に活かせるスキルを習得する機会を提供することで、社員の抵抗感を軽減しながら浸透させていきましょう。

④ITシステムやベンダーの選定

適切なシステムと信頼できるベンダーを選ぶことで、DXの成果を最大化し、企業の目標達成に向けた効率的なサポートを得られるようになるのもポイントです。まずは市場で利用可能なITシステムやベンダーの調査をして、自社のニーズに合致するものを見極めましょう。機能性、スケーラビリティ、コストなどの観点で比較していけば、使いやすいものが見つかります。

デモやトライアルを経て機能や使い勝手を体感し、自社の業務にどのようにフィットするかを確認しながら利用を決定すれば、大幅なミスマッチが起こることもありません。選定したITシステムやベンダーについて社内での合意形成を図っておけば、大きなカルチャーショックも起こらないでしょう。

⑤DX施策の実行

続いて、実際にDX施策を実行するフェーズに移ります。施策の目的と達成すべきKPI(重要業績評価指標)を策定する他、各施策の実行期限やマイルストーンをシミュレーションしてスケジュールを可視化しておきましょう。

施策を実行するためのチームを編成し、役割を明確にしておけば、混乱することなく進められます。

⑥PDCAをまわす

PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を回すことで、計画した目標に対してどの程度達成できたかを確認しながら改善施策を図れます。

目標未達成の原因や改善が必要な部分も都度明らかになるので、大きな齟齬が出てから問題に気づくことを防ぎます。問題点を解決するための具体的な改善策を立て、次回のPDCAサイクルに活かすのを繰り返していくことで、より実現可能性の高いDX施策となるでしょう。

11.まとめ

ここまで解説してきたように、DXの実現には市場での競争力向上や業務の効率化など、企業にとってさまざまなメリットがあることから、その推進は業種を問わず急務といえます。

そのためには、自社にとって最適なDXとは何か考え、DXの推進に向けた課題を一つずつクリアしていくことが重要です。

しかし、自社にとってどのようなDXが最適なのか判断することは簡単ではないことから、具体的な取り組みの部分でつまづいてしまう企業も少なくありません。

そこで、こうしたDXの推進に関する課題を抱えている企業に向け、DXの進め方のポイントをまとめたお役立ち資料をご用意しました。ぜひダウンロードのうえ、ご活用ください。






(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

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