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最終更新日:2024.07.25
DX/最新技術

【DX事例32選】業界別の成功事例から学ぶDX推進のカギと共通点を解説

上場企業のIR資料を開くと、「DX」の2文字を見かけることが多くなったと感じていませんか?

デジタルトランスフォーメーション(以下DX)が企業に注目されるきっかけとなったのは、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」であり、5年以上も前です。現在まだDX化が進んでいない企業は、これから先、他社との競争に競り負けてしまう未来もあり得るため、早めの対策を行いましょう。

とはいえDXの必要性は理解できても、自社にとってデジタル技術にどういった使い道があるか、どのような進め方をしたらDXが成功するかという問いに対して、即答は難しいでしょう。

そこで、今回はDXに成功している企業の事例32選を詳しくご紹介します。成功している事例をチェックし、ぜひ貴社のDX化推進に役立ててくださいね。

■目次

  1. DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
  2. DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例8選【製造業】
  3. DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例5選【小売】
  4. DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例3選【情報・通信業】
  5. DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例5選【金融・保険業】
  6. DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例3選【不動産】
  7. DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例3選【化学】
  8. DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例5選【運輸・物流業】
  9. DX(デジタルトランスフォーメーション)に成功している企業に共通すること
  10. DX(デジタルトランスフォーメーション)化を成功している企業事例の3つの共通点
  11. DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が必要とされている理由
  12. DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のメリット
  13. DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の課題
  14. DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させるためのポイント
  15. まとめ

1.DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

DXとは、デジタル技術によって生活やビジネスを変革化することを指します。具体的に言うと、チャットボットによる電話対応業務の自動化や在宅で授業が受けられるオンラインスクールなど、デジタル技術によって新製品やサービスを生み出すことです。

なお、経済産業省が提示しているデジタルガバナンス・コード2.0でも以下のように定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

(引用:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」

また、上記の経済産業省のレポートタイトルにある「2025年の崖」とは、1980年代に多くの企業で導入された基幹システムが、その扱いに精通する人材の定年退職によって2025年頃にブラックボックス化することを危ぶんだ表現です。

DXの妨げになる古いシステムの刷新は避けて通れない、との危機感がタイトルに表れていますが、DXにはシステムの入れ替えを超える意味があります。

経済産業省では、東京証券取引所の上場企業から優れたDXの取り組みをしている企業を「DX銘柄」などとして発表しています。このあと紹介するDX事例では、2022年にDX銘柄に選ばれた企業がわかるようにしてあります。

DX、デジタイゼーション、デジタライゼーションの違い

DX 事例

DXとはAIなどのデジタル技術を駆使して、業務プロセスや商品、サービスの変革を行い、組織や企業文化を改革して、企業価値を高めることを指します。つまり、単純にアナログだったことをデジタル化することやデジタル技術を駆使することとは内容が異なります。

デジタイゼーションとは、手作業などアナログでの情報、業務をデジタルに変換することを指します。「デジタル化」と呼ばれることも多く、具体的には手書き書類を電子保存することや、帳簿や書類をデジタル作成すること、データベースを構築することなどが当てはまります。情報へのアクセシビリティを向上させる目的で導入されることが多く、スマートフォンやタブレットなどモバイル端末の普及に伴って急速にデジタイゼーションが進みました。

デジタライゼーションも「デジタル化」を進めるという意味では同一ですが、情報をデジタル化するだけでなく、デジタル技術やデジタルプラットフォームを活用して付加価値を生み出すプロセスも含まれます。データ収集、データ分析、データ活用を指して「デジタライゼーション」と呼ぶことが多く、ビジネスのデジタル化をより広範囲で包括的に捉えていることがポイントです。

DXには、デジタイゼーションもデジタライゼーションも欠かせません。データをフル活用して業務効率化やチームビルディングに役立てるのがDXであり、実務の枠を飛び越えた組織変革をもたらします。

続いては、DX化とデジタル化の違いについて説明します。早くDX事例を見たい方は本記事のDX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例8選【製造業】からご覧ください。

DX化とデジタル化の違い

DX化とデジタル化の違いは「目的」にあります。

DX化とは、デジタルや新たな技術などの活用することで企業のビジネス変革をもたらし、競争力の強化を目的としているのに対し、デジタル化はテクノロジーや最新技術を利用することによる業務効率化を目的としています。なお、前述したデジタイザーション、デジタライゼーションは「デジタル化」にあたります。

DX、デジタル、この2つは混同されがちですが、似て非なるものです。以下から、具体的にどう違うのか、DX化、デジタル化それぞれの身近な例を見ていきましょう。

DX化の身近な例

DX化の身近な例としてはカスタマーサポートのAI化が挙げられます。これまではお問い合わせがあれば人間がひとつずつ対応していましたが、現在は自動音声システムやロボットが自動で回答するチャットシステムが増えてきています。これにより、カスタマーサポートで働く従業員の業務負担が軽減できたり、コストの削減につながったりと企業としても大きなメリットを享受できるようになったのです。

また、オンラインスクールもDX化のひとつと言えます。従来スクールと言えば、特定の時間や特定の場所でのみ行われるものであり、定員にも限りが生じていました。しかし、オンラインで行えるようにしたことで、定員に限り一度に多くの人数が受講できるようになったのです。さらに、オンラインにすることで講義内容を記録しておくことが可能となり、生徒はいつでも好きな時間に勉強ができるようになりました。

このようにDX化とは、企業がデジタル技術を活用し、業務プロセスの改善に加えて、ビジネスモデルの変革を行うことを指します。単にデジタル技術を導入するのではなく、活用することで業務の問題点を根本から見直し、業務環境の快適性や組織の価値向上などを目指すのです。

デジタル化の身近な例

デジタル化の身近な例としては、社内マニュアルのクラウド化や電子契約の導入などが挙げられます。これにより書類の発行をなくし、コスト削減や業務時間に無駄が生じることを防ぐことができます。

デジタル化とは、アナログ業務をデジタル業務へ変換することです。DX化が将来的な創造に焦点を当てているものであるのに対し、デジタル化はコスト削減や業務効率の向上など現状の改善に焦点を当てるものになります。

2.DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例8選【製造業】

ココからは、DX銘柄2022に選定された製造業をメインとする企業のDX成功事例8つをご紹介します。

ブリヂストン

タイヤ事業を核とし、ソリューション事業を展開している株式会社ブリヂストンでは、「リアル」である匠の技とデジタルを融合させる取り組みに力を入れています。

具体的な事例としては「技能伝承システム」が挙げられます。航空機用タイヤ、鉱山・建設車両用タイヤを製造する熟練技能員の高度な技術をカメラやセンサーで計測・可視化し、新人の技能習得に活かす仕組みです。

また、データをもとにタイヤ摩耗予測技術を開発し、航空会社と協業して航空機用タイヤ交換の効率化にも取り組みました。その他、高度設計シミュレーターを活用して鉱山車両用タイヤのカスタマイズをおこなうなど、価値創造を進めています。

味の素

味の素株式会社を核とする味の素グループは、社会価値と経済価値の共創を目指す経営基本方針「ASV」(Ajinomoto Group Shared Value)を掲げ、食と健康の課題解決企業として、ゴールである社会変革へ向けてDXを展開しています。

教育・採用によるDX人財増強計画を掲げ、人員増強数を重点KPI(重点業績評価指標)にしています。

デジタル技術の導入事例として挙げられるのが、包装工程管理システムの開発・導入によるスマートファクトリー化です。記録を紙媒体からアプリの利用に変更し、稼働データの自動記録によって、管理業務の標準化、リモートでの現場管理、迅速なデータ分析を可能にしました。

他にも、サプライチェーンのデジタル管理や、デジタル技術を活用した新事業創出など多くのプロジェクトが進行中です。

ユニ・チャーム

ユニ・チャーム株式会社は、不織布・吸収体専門メーカーとして付加価値の高い商品を市場に送り出している企業です。DX導入目的は、おもに商品開発および改良点の発見、新分野開拓につながる顧客インサイトの発見の3つです。

デジタル技術を活用して開発された新サービスに、紙おむつのサブスクリプションサービス「手ぶら登園」があります。保育園の紙おむつ在庫を管理して自動で発注・配送するシステムで、保育園におむつを持参する保護者の不便を解消しました。

また、離れた場所の様子がわかる「デジタルスクラムシステム」を開発し、顧客とのオンラインミーティングを開いてニーズの吸い上げに活用しています。さらに、このシステムを使って留守中のペットの行動などを観察することで、新しい顧客インサイトの発掘につながると期待されています。

LIXIL

住まいの水回り製品や建材を開発・提供する株式会社LIXILが進めているのは、既存ビジネスの変革、新規ビジネスの開発、生産性向上のためのDXです。

具体的には、AIを活用してオンラインショールームの利便性と機能を進化させるなど、デジタルを活用した既存ビジネスの変革、エンドユーザーに寄り添ったサービスを展開中です。

ユーザーが荷物の集配を遠隔管理する「スマート宅配ポスト」や、外出中に水漏れを検知して給水を自動で遮断する「ホームモニタリングシステム」を開発し、快適な暮らしに貢献する新規ビジネスにつなげています。

また、データを一元管理するクラウド型のデータ統合基盤を開発したほか、専門知識がない従業員が業務ツールを開発できるノーコード開発ツールを導入しました。これにより業務に必要なツールを従業員が自分で開発し、業務効率化を実現しています。

IHI

株式会社IHI(以下IHI)は、グループ一体で資源・エネルギー、社会インフラ、産業機械、航空・宇宙の4つの事業分野を展開する総合重工業企業です。

IHIグループでは、「モノ売り」から、製品・サービスを通して顧客の成長や成功を支援するビジネスへの転換を図り、ライフサイクルを通じて顧客に価値を提供するライフサイクルビジネスの確立を目指しています。

その実現に向けて、製品・設備のデータを収集・分析する自社開発のIoTプラットフォームと、顧客情報を共有する「カスタマーサクセスダッシュボード」でデータ連携を進め、営業、サービス、技術・製造の各部門が一体となるビジネスモデルの構築に取り組んでいる状況です。

また、デジタル化によって、事業類型の特性に応じた業務プロセス改革を図っているほか、研修などを通して、データ重視の企業文化づくりをおこなっています。

トプコン

株式会社トプコンは、精密光学、GNSS(全地球測位システム)、3次元計測、センシング(センサーで計測して数値化する技術)・制御などに、独自の高い技術を持っています。それらをベースにIoTとネットワーク技術を活用し、「医・食・住」3つの事業領域で社会的課題の解決を目指します。

「医」では、高齢化の進展にともなう眼疾患の増加と眼科医の不足に対して、フルオート検査機器とICTの活用による遠隔診断やAI自動診断を実現しました。

「食」では、世界的な食糧不足への懸念に対して、デジタルデータによる営農プロセスの一元管理というソリューションを提供しています。

「住」では、インフラ需要拡大と建設技能者の不足に対して、ICT自動化施工システムの開発、建設フローのデジタルデータ化で問題解決に貢献しています。

クボタ

農機の印象が強い株式会社クボタ(以下クボタ)は、食料・水・環境の領域で顧客価値の最大化を志向するグローバル企業です。事業本部ごとに分かれていたIT部署を統合して創設したグローバルICT本部を中心に、さまざまな経歴を持つ社員がDXをけん引しています。

クボタでは、農業機械とICTの融合による営農・サービス支援システム、自動運転農機、水環境分野へのIoT活用など独自の製品・サービスを提供してきました。しかし、食料・水・環境、いずれの領域でも今後問題の深化が予想されるため、DXをさらに加速する必要があるとしています。

2020年に発表した、マイクロソフトコーポレーションとの戦略的提携※はその第一歩です。すでに基幹システムをセキュリティレベルの高いクラウドに移行済みで、今後はデータ集約・分析による製品の開発や品質向上、AI活用によるイノベーションを志向していきます。

※出典:クボタとマイクロソフト、デジタルトランスフォーメーションの推進に向けて戦略的提携を発表

ヤマハ発動機

ヤマハ発動機株式会社は、「経営基盤改革」「今を強くする」「未来を創る」と名付けられた3つの分野で、DX戦略に取り組み中です。

「経営基盤改革」の分野では、グローバル連結データベース・連結会計・経営ダッシュボードの稼働、需要予測モデルの活用が実現しました。グローバルEPR(統合基幹業務システム)の刷新もおこなっていますが、周辺システムとの連携の難易度が高く、計画のアップデートで対応しています。

「今を強くする」では、デジタルマーケティングやEコマースなど、デジタルによる顧客接点を強化しました。また、専用アプリによって、スマートフォンでの車両情報確認ができ、スマートフォンの情報をメーターにアイコン表示する「コネクテッド二輪車」を市場に投入しています。製造現場では、管理・搬送・作業・検査の自動化も進みました。

「未来を創る」観点では、モーターサイクルを社会貢献につなげられないかという課題認識をもとに、顧客との共創を始めています。

3.DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例5選【小売】

ここで取り上げるのは、小売り業をメインとする企業のDX成功事例です。全5社の事例をご紹介するので、現在小売業を行っている方やこれから展開していきたい企業はDX化の参考としてご覧ください。

セブン&アイ・ホールディングス

株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、コンビニエンスストアや金融サービスを展開するグループ企業を束ねる純粋持株会社です。グループDX推進本部とグループDXソリューション本部の2本部体制で、グループを横断したDXを推進しています。

まず、「守りのDX」として挙げられるのが、セキュリティレベルの高い共通インフラ基盤の構築、および各種セキュリティ対策の実施です。具体的には本部内にセキュリティの専門人材を集中し、本部からグループ各社に機能やアドバイスを提供する体制をとっています。

つづいて「攻めのDX」は顧客価値を創造し拡大する取り組みです。核となるのがAIを活用した配送最適化の仕組み「ラストワンマイルDXプラットフォーム」です。これは拡大し多様化する宅配ニーズに対応し、顧客の利便性を向上させ、社会的課題を解決する取り組みといえます。また、グループ共通の7iD会員を資産と位置付け、顧客本位のサービス提供の基盤構築にも取り組んでいます。

7iDアカウントサービス

ユニクロ

ユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリングは、製造小売業から「情報製造小売業」へと業態を変革するため、全社改革「有明プロジェクト」を行いました。

有明プロジェクトで取り組む“情報製造小売業“の全体像

出典:有明プロジェクトについて ~“情報製造小売業”の実現に向けて~

リアルタイムの販売状況にあわせて出荷するというプロジェクトで、来店客の嗜好や人気のコーディネート、買い手が抱く商品の不満などの情報を集め、開発に役立たせ生産量も決めていくというものです。

この会社の目指すところは、「作ったものを売るのではなく、消費者が求めるものを作る」ビジネスです。店舗への無人レジ導入、Eコマースと実店舗の融合などを実現してきた同社は、デジタル技術を活用して顧客視点での業務改革をおこなう「攻めのIT」を目指しています。

新しいビジネスモデルの構築に向けて、部署を隔てる壁が一切ない有明本部に本社機能が移りつつある同社では、デジタル時代にふさわしい企業文化も創造されているようです。

ファミリーマート

コンビニエンスストア大手の株式会社ファミリーマートは、外部から招いたプロ人材のリードによって短期間で立ち上げたファミペイを皮切りに、顧客の利便性向上と店舗業務の省力化につながるDXを推進しています。

バーコード決済機能付きアプリ、ファミペイは2021年11月に1,000万ダウンロードを突破※しました。クーポン配信、他社ポイントとの連携をはじめ、電子マネー「ファミペイ」での翌月払い、バーコード読み取りによる公共料金などの支払いなど、フィンテックを駆使したサービスを提供しています。

ファミペイの成功は、社員・店舗スタッフ全員にデジタル変革の意義を理解してもらうための、社内広報などの活動によって導かれたものでした。近年は無人決済店舗の実用化で、また新たな道を開こうとしています。

※出典:デジタル推進による利便性の向上

無印良品

無印良品を展開する株式会社良品計画は、デジタルマーケティングをフル活用している企業で、SNSの運用やオウンドメディアの運営にも力を入れています。良品計画がデジタルマーケティングを通して伝えたいことは、同社の理念です。

理念に共感を得てファンになってもらうことに注力しており、顧客が商品開発に参加する場も設けています。また、SNSで得た共感は数値化され、指標として活用されています。

自社アプリ「MUJI passport」のダウンロード数は、2021年8月末現在で2,451万※です。2020年11月にはオンライン決済サービス「MUJI passport Pay」を導入し、キャッシュレス・カードレスでの支払いを可能にしました。店舗とEコマースの顧客情報を一元化するアプリも、顧客とのコミュニケーションを取るための有益なツールとなっています。

2022年8月にスタートした中期経営計画には、プロ人材を100名規模で採用してデジタル組織をプロ化するプランが掲げられており、デジタル技術の活用はさらに加速しそうです。

※出典:数字で見る良品計画

◇ローソン

コンビニエンスストアを展開する株式会社ローソン(以下ローソン)は、店舗ごとの状況に応じて最適な売り場を実現するため、日本マイクロソフト株式会社と協業して「店舗運営支援AI」の活用に向けた実験をおこないました。

今後、店舗カメラやマイクで取得したデータを個人が特定されない形で可視化し、POSの売り上げデータなどと合わせて分析し、売り場の改善と店舗利益の向上に活用していく方針です。

ウォークスルー決済システムやリアルタイム在庫管理システム、生体認証によるレジ無し店舗システムなども実店舗での実験段階に入っています。

ローソンでは人手不足に対応するために、以前からレジ業務の自動化などを進めていましたが、さらにワークスケジュールを共有できるタブレットを全店に導入し、経験の少ない店舗従業員にも働きやすい環境を整えました。

また、AIを活用した需要予測に基づく商品発注システムに加えて、AIの値引きアドバイスにより商品を効果的に売り切る仕組みを整えるなど、フードロスの解消にもデジタル技術を活用しています。

4.DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例3選【情報・通信業】


つづいて、DXに欠かせない通信ネットワークとICTを本業とする通信業界からは、3社の事例をご紹介します。

NTT

日本電信電話株式会社の事業は、NTTグループ(以下NTT)全体の経営戦略の策定および基盤的研究開発の推進です。NTTでは、総合ICT事業、地域通信事業、グローバル・ソリューション事業などをおこなっています。

また、将来の労働力不足やリモート型社会へのシフトといった変化に対応するため自らDXに取り組み、そこで得た知見も活かして、他社を顧客としたDX推進支援を展開しています。

NTTが目指すのは、抜本的な業務の見直しと自動化、既存システムのクラウド化・共通化によるデータ共有といった、業務・システム両面での変革です。

巨大組織のNTTはビジネスプロセスが膨大で可視化が困難なため、共通の下敷きとしてエンタープライズアーキテクチャー(EA)を用いました。EAはビジネス構造を業務、データ、システム、テクノロジーの4つに分けて整理しますが、NTTでは独自に「ルール・組織・文化」を5つ目として加えました。

データ量も膨大なNTTでは、2軸のアプローチでデータ活用を進めています。一つは、グループ各社が保有するデータの標準化やガバナンスなど、データ活用の前提になる基本ルールを策定する、トップダウンの「Enterpriseアプローチ」です。もう一つは、現場社員も含めた多様な層からさまざまな意見を取り入れて共有する、ボトムアップの「Communityアプローチ」です。

KDDI

KDDI株式会社は、通信事業をベースに、法人向けに業務効率化支援、経営課題解決などのデジタルソリューション提供を事業として拡大しています。

「マネージド ゼロトラスト」は、テレワークの普及などで持ち出される機会が多くなったデバイスやデータをセキュリティ上の脅威から保護するソリューションです。

「IoT世界基盤」は、データ分析、通信回線提供、各国の法制度の調査など、企業のグローバル展開を支援するビジネスプラットフォームです。

また、東日本旅客鉄道株式会社と協業し、リアルネットワーク(交通)と通信の融合により、場所や時間に捉われない豊かさを享受できる分散型まちづくり「空間自在プロジェクト※」の事業化を目指しています。

さらに、社内人財育成機関「KDDI DX University」で研修をおこない、DX人材のなかからさらに中核を担う「DXコア人財」の育成も計画しています。

※出典:JR東日本とKDDIが仕掛ける「100年先の心豊かな暮らしを見据えた分散型まちづくり」

ソフトバンク

ソフトバンク株式会社は、モバイル通信、ブロードバンド接続、携帯端末の販売などの通信関連事業に加えて、法人向けのデジタルソリューション提供※を事業として展開しています。あらゆる産業でDXの取り組みを推進することで目指すのは、すべての人にとってデジタルの恩恵を受ける機会があるデジタル社会です。

社会課題解決につながるDXによる事業創出には、多くの職員が取り組んでいます。とりわけ事業創出の励みとなっているのが、独創的な取り組みで事業に貢献した社員やチームを表彰する社内制度や新規事業提案制度を設けたことです。

さまざまな業界のリーダーや異業種との連携・共創を進めることによって、新たな事業を起こすことができるという考えのもと、パートナー企業との連携を積極的におこなっています。

※出典:ソフトバンクの概要 -事業概要・成長戦略-

5.DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例5選【金融・保険業】

フィンテックの進歩で異業種からの参入が相次ぎ、競争力強化の必要性を肌で感じてきた金融業界からは、事例を5社を紹介します。

【DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例5選【金融・保険業】】

ソニー損害保険

ダイレクト自動車保険を主力商品とするソニー損害保険株式会社(以下ソニー損保)は、AIやセンシングなどの先端技術を活用し、運転特性から事故リスクを計測する「GOOD DRIVEアプリ」をリリースしています。

専用のデバイスを自動車に装着すれば、エンジンの動作と連動してスマートフォンのアプリが稼働し、運転の安全度合いを表す運転スコア・特性に対する運転アドバイスや、走行記録が表示される仕組みです。

ソニー損保で運転特性連動型自動車保険「安全運転でキャッシュバックプラン」に加入すると、安全運転することによって、保険料の最大30%をキャッシュバックとして受けられます。スコアの向上を念頭に置いて運転すると、実際に事故リスク低減効果も見られます。

また、2022年1月より、同社で保険を契約していなくても無料でGOOD DRIVEアプリを利用できるようにした※ことで、社会全体の交通事故減少にも貢献できる取り組みとなりました。

※出典:GOOD DRIVE

東海東京フィナンシャル・ホールディングス

証券業界から唯一「DX銘柄2021」「DX銘柄2022」に連続選出された東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社は、東海東京証券を核とする総合金融グループの持株会社です。同社は、生産性向上と新しいビジネスの創造の2軸でDXを推進しています。

営業の生産性向上策として見られるのが、AIを活用したデータベースマーケティングへの取り組みです。

AIは、顧客属性、保有銘柄と残高、約定情報、営業担当のコンタクト履歴などの顧客データに顧客アンケート結果や株価などの外部データを追加して「商品別購買確率予測リスト」を作成します。

それによって営業内容を標準化し、個人向け証券営業担当者の技量差による営業の質のばらつきと生産性の大幅な改善に成功しました。

ビジネス創造の面ではフィンテックを活用し、資産管理アプリ「おかねのコンパス」、加入保険を可視化する「そなえるコンパス」、地域金融機関との協業ツールにもなる地方創生へ向けたプラットフォーム、手軽に投資ができるスマホ専業証券「CHEER証券」を展開しています。

鹿児島銀行

株式会社鹿児島銀行は、外部企業にスキルトランスファー型のDX支援を受け、自行口座を保有する顧客向けのキャッシュレス決済アプリ「Payどん」を開発しました。サービス開始に合わせてキャッシュレス専用の商業施設を銀行の本店別館ビルにオープンし、地域のキャッシュレス決済普及に貢献しています。

2022年には鹿児島県とDX推進で連携協定を結び、行政サービスのデジタル化支援を開始しました。同じ九州フィナンシャルグループに属するIT子会社、九州デジタルソリューションズ株式会社と協業して取引先の地場企業にDX支援をおこなうなど、地域のDX推進に貢献する活動が目立っています。

SBIインシュアランスグループ

SBIインシュアランスグループ株式会社は、グループ内の保険会社の経営管理を主要業務とする持株会社です。新しい顧客体験の提供と業務効率化を図り、DXを推進しています。

SBI損害保険株式会社の「カシャッピ®」は、スマートフォンで撮影された契約中の自動車保険証券をAI搭載型OCR(光学式文字読取システム)が読み取り、すぐに概算保険料を表示するサービスです。

同じ仕組みを使った「AI保険金査定システム」は、がん保険の保険金請求に必要な書類を撮影すれば、保険金の支払い対象かどうかを自動判定します。システムの正確性や顧客の反応を見ながら改良を加え、将来的には支払いの業務プロセスをすべてデジタル化していく計画です。

東京センチュリー

東京センチュリー株式会社は、祖業のリース、ファイナンス・サービスに加えて他社との共創により次々と事業領域を拡大しています。

パソコンでの定型作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入し、一元管理するための「ロボットポータルサーバー」を自社で構築しました。結果的に年間約8,000時間を要していた約9万件の業務の自動化に成功し、テレワーク中のロボット操作も可能になりました。

2020年12月にはDX戦略部を立ち上げ、既存ビジネスの変革と、新規ビジネスの創出にデジタル技術を活用する新たな戦略の構築を進めています。「変化に対応するのではなく、自ら変化を創り出す企業」を自負する同社の強みは、高い専門性と柔軟性を兼ね備えた従業員が多数在籍し、参入障壁の高い事業を提案・推進できることです。

サブスクリプションがビジネス変革の要だととらえる同社は、サブスクリプションビジネスの事業化を早期に実現するための事業基盤(課金・請求・取引管理など)を、クラウドサービスで提供する仕組み「TCplats®」をパートナー企業に提供しています。

6.DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例3選【不動産】

ここで取り上げるのは、不動産業でDX化に成功した企業です。老舗の企業から比較的若手の会社も紹介するので参考にしてください。

【DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例3選【不動産】】

長谷工コーポレーション

株式会社長谷工コーポレーションでは、アメリカ発祥といわれるBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)が日本で紹介されてすぐ、導入に向けた研究が始められました。

BIMとは、コンピューター上に3次元建物モデルを構築する設計手法です。建材パーツや設備機器の仕様やコストなど、設計以外の情報も盛り込めるため、施工・販売後の維持管理に至るまで活用できます。

マンションに特化した「長谷工版BIM」を構築した同社は、BIMを「建物情報を統合するデジタルプラットフォーム」ととらえ、さらなるデータ活用を目指しています。また、建物や設備の点検・修繕・稼働状況から得られるデータなどをもとに暮らし情報を一元化する、長谷工独自の概念「LIM」(リビング・インフォメーション・モデリング)と連携させたプラットフォームの構築により、価値創造へと向かいます。

BIM導入当初は、入力する情報量が多くワークフローを再構築する必要があったことから設計者の作業量が5倍ほどになりました。前の仕組みに戻してほしいという声も上がり、一時社内は大混乱に陥りましたが、業務の外部委託などで困難を乗り切り、10年がかりでBIMを根付かせました。それをリードしたのが、2020年の就任直後にDX推進室を立ち上げた現社長の池上一夫氏です。

SREホールディングス

SREホールディングス株式会社は、2014年にソニーグループ株式会社(旧・ソニー株式会社)発のベンチャー、ソニー不動産として創業しました。起業した西山和良(にしやま・かずお)代表取締役社長兼CEOが、不動産を事業対象に選んだ理由として「デジタル技術を使って業界を消費者の利益に沿うように改善したかったから※」という趣旨の発言をするほどのDX企業です。

同社は、自社開発のAIテクノロジーを融合させることによって不動産テック事業に進化し、他社に請われて始めたデジタルツールの外部販売は、業務支援型クラウドサービスやAI導入コンサルティング事業として成長しました。

現在同社が不動産業界や金融業界に提供しているデジタルツールには、不動産売買価格の自動査定、不動産売買契約書と重要事項説明書の作成時間短縮、不動産価格推定エンジン、不動産売却検討者の集客支援のためのクラウドソリューションなどがあります。

同じフロアに不動産のプロとAIエンジニア60~70人がいて、協議しながらツールを開発しています。

※出典:ソニーを飛び出して会社設立 SREホールディングス西山和良社長に聞く不動産テックの展望

GA technologies

株式会社GA technologiesは、不動産会社に勤務していた代表取締役社長執行役員兼CEOの樋口龍氏が、旧態依然とした不動産業界をテクノロジーで変えようという志を持って2013年に設立したインターネット不動産会社です。

いわば不動産業界のDXを実現するためにスタートした会社で、DX志向の組織や制度を最初からトップダウンで構築する、DX推進に理想的な状況だったといえるでしょう。

同社の主要業務は、インターネット不動産マーケットプレイス「RENOSY」の開発・運営です。非対面で取引を完結させられる、投資用物件のみ対象としています。管理・賃貸を専門に扱うグループ会社もありますが、それらも内見ニーズが低いなど、デジタルとの親和性が高いことがその背景にあります。

他社向けSaaS(Software as a Service、クラウド上で提供するソフトウェア)の開発・販売を手がけているのも、業界全体のDX推進に貢献している一因です。

7.DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例3選【化学】

ここでは、三菱ケミカルグループ株式会社に加え、DX銘柄2022の2社、旭化成株式会社、富士フイルムホールディングス株式会社の事例を紹介します。

【DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例3選【化学】】

三菱ケミカルグループ

三菱ケミカルグループ株式会社(旧名株式会社三菱ケミカルホールディングス)は、大企業での変革という難題をクリアし、全社員にDXマインドの浸透を図る仕組みを整えました。

その仕組みとは、各拠点から自主参加可能なDX推進のための会議と、デジタルツールに関する情報共有プラットフォームです。成功例と失敗例を紹介し合い、有志による交流会を企画するなど、構成員のDXに対するモチベーションアップを図っています。

同社では、経営のDX基本方針を踏まえ、現場社員の自主性を尊重した化学プラントDXを展開しています。化学プラントの課題は、設備の高経年化に対する安全性確保の問題、労働力人口の減少への対応です。

一例として、工程が複雑で熟練技能者の手作業でしか対応できないとされてきた、作業負荷が大きく安全面でのリスクが高い重要作業を自動化する取り組みが挙げられます。エンジニアリング担当者と製造現場担当者との協力のもと、開発と検証が実施されました。

旭化成

旭化成株式会社では、事業から生まれるデータと、データを活用する人を価値の源泉ととらえ、DXは経営基盤強化における重要テーマの一つです。

同社は、情報科学を用いて素材開発の期間短縮と高度化を可能にする「マテリアルズ・インフォマティクス」により、多くの成果を上げています。また、設備などを3Dで再現するデジタルツインによって、プラントを遠隔から操作し故障対応できる仕組みを実現しました。

また、特許データから知的財産情報を分析するIP(Intellectual Property)ランドスケープで自社のコア技術を把握し、経営戦略策定に活用する取り組みもおこなっています。

さらには、デジタル共創本部を設置し、事業部門ごとの縦割り組織にDXを横展開していくため、各事業部門と本部の連携体制(リレーションシップマネージャー制度)を整えたほか、社内外のデジタル関連人財の交流を促進する仕組みをつくり、DXを進めています。

デジタル人材の育成と採用でデータプロフェッショナル人数目標を設定し、達成してきています。

◇富士フイルムホールディングス

富士フイルムホールディングス株式会社のグループ事業会社(以下富士フイルム)では、4領域の事業を展開しています。医療機器や医薬品などの「ヘルスヘア」、各種産業向けの高機能材料などを製造する「マテリアルズ」、「ビジネスイノベーション」(オフィス・ビジネスソリューション)、写真・光学電子映像関連の製品・サービスを提供する「イメージング」です。

富士フイルムでは、各事業部にDX戦略を策定するDX推進チームをつくり、チーム統括者が主導してDX戦略を実行に移す体制をとっています。事業横断的にICT・経営企画・人事などの関連部門や外部専門家がDX推進をサポートする仕組みです。CEOを議長、CDO(Chief Digital Officer)を副議長とする「DX戦略会議」で、グループ全体のDX推進に関わる意思決定をおこないます。

顧客のDX推進支援や、読影レポート生成技術の提供で医師の画像診断を支援する取り組みなど、グループの力を融合させて、デジタル技術を活用した製品やサービスで価値を提供しています。

8.DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例5選【運輸・物流業】

運輸・物流業界からは、計4社のDX銘柄2022、株式会社日立物流、SGホールディングス株式会社、株式会社商船三井、ANAホールディングス株式会社に加えて、日本交通株式会社のDX推進事例を紹介します。

【DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別成功事例5選【運輸・物流業】】

日立物流

株式会社日立物流は、企業の物流業務の包括的受託や事務所などの大型移転などを事業内容としています。

サプライチェーンに関わるSCDOS(Supply Chain Design & Optimization Services)と輸送に関わるSSCV(Smart & Safety Connected Vehicle)、SWH(Smart Warehouse)の3つのDXソリューションを開発しました。

SCDOSは、顧客のサプライチェーン上の情報を一元管理・可視化し、課題の分析・解決およびシミュレーションによる業務の最適化を図る仕組みです。

SSCVは、IoTを駆使して、輸送事業者の業務効率化と事故ゼロ化を支援するプラットフォームです。

SWHは、Eコマース事業者向けに在庫保管・梱包・発送・データ連携という4つの物流業務を、自動化・標準化されたオペレーションとともにパッケージで提供し、利用者にシェアしてもらう仕組みです。

上記3つのDXソリューションを運用して自ら事業領域を拡大するだけでなく、多様な業種の企業に外部販売をおこなうことで、産業界全体のDXにも貢献しています。

SGホールディングス

SGホールディングスグループでは、SGホールディングス株式会社がDX戦略を策定、事業会社が企画し、グループ内のITを統括するSGシステム株式会社が仕組みを構築するという役割分担でDXに取り組んでいます。

人手不足とEコマースの普及による需要拡大により、同社にとってDX戦略は重要性を増しています。

システムの開発、保守の内製化によって2025年の崖を早々と乗り越えた同グループは、サービスの強化、業務の効率化、デジタル基盤の進化の3施策を掲げ、DXに取り組んでいるところです。サービス強化のために佐川急便株式会社と協力会社のネットワークをデータベース化し、荷物と車をマッチングさせる物流プラットフォームの構築と活用をおこなっています。

効率化の具体例として挙げられるのは、AIを活用した手書き伝票のデジタル化です。また、佐川急便の営業部門にはSGシステムのアジャイル開発専門部隊が常駐し、システム構築やアプリ開発を機動的におこなっています。

◇商船三井

株式会社商船三井(以下商船三井)がデジタル技術を活用しているプロジェクトから、DX銘柄2022に選定される決め手となった2つの事例を紹介します。

その一つが、運航船から情報を集めて構築したクラウド上のデータプラットフォームを活用するFOCUS(Fleet Optimal Control Unified System)プロジェクトです。開発したアプリ「Fleet Viewer®」で、航行中の船舶から約6,000点の航海・機関データを1分間隔で収集※し、船舶の状態や位置などの情報を陸上と共有できるようになりました。データを環境負荷の低減に活用するアプリ「Fleet Performance®」も稼働させています。今後さらにデータの活用範囲を拡大し、安全運転強化・船舶運航の最適化などの実現を目指しています。

もう1つのプロジェクトは、100%出資子会社「KiliMOL株式会社」の設立によるアフリカへ中古農機を販売する新規事業の開始です。越境Eコマースサイトを利用して、商船三井の高品質な海上輸送を活かします。途上国での農業生産性向上に貢献すると同時に、商船三井の新しいビジネスへの足がかりになる取り組みとして評価されています。

※出典:当社運航船の航海・機関関連ビッグデータの利活用 「FOCUSプロジェクト」

ANAホールディングス

ANAホールディングス株式会社(以下ANA)が顧客利便性向上のために実施した身近なデジタルソリューションは、ANAアプリの機能追加です。渡航書類の事前登録や機内食の予約が可能になり、出発時刻や搭乗口の変更、大幅な遅延・欠航時の振替便の案内がプッシュ通知で表示されるようになりました。

また、ANAを身近に感じてもらうために、毎日の移動でポイントが貯まるアプリ「ANA Pocket」を開発、リリースしています。

現在ANAでは、デジタル技術を活用した新しい事業Universal MaaS(Mobility as a Service)に取り組んでいます。「サービスとしての移動」に長く携わり蓄積してきたノウハウを活かし、「何らかの理由で移動にためらいがある人たちがストレスを感じず快適に旅を楽しめる」社会を実現するためのプロジェクトです。

そのためのサービス基盤として、介助・サポート情報、ワンストップでの航空便の予約・決済、荷物の別送、バリアフリー情報などを一元化した「MaaSプラットフォーム」の構築に取り組んでいます。

日本交通

日本交通株式会社は、1928年創業のハイヤー個人営業から始まったタクシー会社です。同社のDXの始まりは比較的古く、個人のスマートフォン保有率がまだ15%弱であった2011年にさかのぼります。創業者の孫で3代目、代表取締役会長の川鍋一朗氏が、社長在任中に日本初のタクシー配車アプリを開発したことが始まりです。社長就任時の赤字経営から脱却を図るなかで打ち出した新事業でした。

その後、他社や個人タクシーも利用可能なアプリをリリースし、サービス適用地域が拡大していきます。アプリの機能も充実し、地図上での乗車位置指定、到着時間予測と到着連絡、降車時の支払いなどが可能になっていきます。

こうして自社の利益を目指すだけでなく、タクシー利用者の利便性を向上させ、タクシー業界の発展にも貢献しているのです。

川鍋氏は、IT化を進める側が現場をリスペクトすることと、アプリによる配車件数増加を現場に示すことで、現場にデジタル技術を浸透させていきました。DXを始めるには、まず本業を安定させ、安定したキャッシュフローを確保することが重要だとも説きます。

なお、川鍋氏はアプリ事業立ち上げの際にIT子会社「日交データサービス」の社長となって社名をJapan Taxi株式会社に変更しました。Japan Taxi株式会社は、2020年に株式会社ディー・エヌ・エーのタクシー配車アプリ部門と事業統合し、2022年現在、日本交通株式会社にとって関連会社となる株式会社Mobility Technologiesがタクシーアプリ「GO」を運営しています。

9.DXに成功している企業に共通すること

DXの成功している企業には、下記の要素が共通しています。

  • データドリブンな意思決定をしている
  • 内製化を意識してDXに取り組んでいる

データドリブンとは、統計データや過去の情報を活用した将来予測をおこない、データに基づいた経営判断をすることを指します。データ活用ができていると、意思決定が「思い込み」「経験」「勘」など属人的な判断に左右されることがなく、客観性や実現の可能性が高いアイディアが生まれやすくなるのが特徴です。

時代のトレンドや消費者ニーズが大きく変化しても、データドリブンな判断が社風として根付いているのであれば、ビジネスリスクを最小限にできる可能性が高いでしょう。

10.DX(デジタルトランスフォーメーション)化を成功している企業事例の3つの共通点

DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させるためのポイントは、次のとおりです。

DXを成功させるために、上記のポイントを押さえておきましょう。

①中長期的な視点で小さなところから取り組むこと

共通点の1つ目は、中長期的な視点で小さなところから取り組むことです。

急に大きな部分を変更しようとすると会社全体がDX化に対応出来ず、DX化が失敗してしまう恐れがあります。そのため、中長期的な視点で小さなところから取り組むと良いでしょう。

たとえば、今まで手動で行っていた作業をAIや便利なシステムに移行してすることで時短に繋げたり、これまで利用していたツールを最新のものに変更したりする等です。他にも、紙媒体で行われていることをデータ化したりすることでコスト削減になるほか、管理の簡略化にも繋げることができます。

このように小さなところから少しずつDX化を行っていくことで、最新の技術やシステムに抵抗がある社員にも慣れて貰うことが可能です。小さなDXをコツコツ行っていくことで、データやノウハウも蓄積されるため、大きなDXに対する心構えも行うことができるでしょう。

②デジタル技術の活用が得意な人材を確保する

2つめの共通点は、デジタル技術の活用が得意な人材を確保していることです。

デジタル技術の活用が得意な人を確保することで、よりスムーズにDX化を行うことができます。

DX化には、デジタル機器に関する基礎知識や、データ分析を行うスキルや知識が必要です。知識のない人材をDX化推進のために抜擢した場合、思っていたようにDX化が推進されないことも考えられます。

せっかくの企業成長のチャンスのため「人材がいないからDX化を諦める」ということは非常に勿体ないです。そのため、社内にデジタル技術に精通した人材がいない場合は、専門性の高い人材の採用や外部の専門機関へのアウトソーシングを検討することをおすすめします。

社内にDXのノウハウを蓄積するためにも、デジタル技術の活用が得意な人材を獲得して、技術の使い方やノウハウを組織内に取り入れましょう。

③体制の構築に投資する

DX人材育成のために社内体制を強化していることも、DX化に成功している企業事例の共通点として挙げられます。体制を構築しておかないと、社内でDXが浸透しなかったり、思うように進まなかったりと失敗に終わってしまうでしょう。DX化を成功させるためには単にデジタル技術を導入するだけでなく、活用できる人材の育成が必要です。

実際、DX化に成功している企業の多くは、システムの導入だけでなく社員のエンゲージメント向上のための仕組み化を行ったりと、社内体制を整えることで人材育成を推進しています。企業全体を大きく成長させるためには、体制構築の投資にも力を入れることをお勧めします。

10.DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が必要とされている理由

なぜ今DXが求められているのか、その背景を見てみましょう。

少子高齢化による人手不足

少子高齢化の進行で生産年齢人口は減少の一途をたどり、将来的に人材の確保が困難になることが予想されます。持続的な経済成長のためにも、生産性を向上させることが重要です。

少ない労働投入で多くの付加価値を生み出すためには、付加価値の増加へ向けた資本を投入する必要があります。古いシステムの保守に使っていた費用を、新しい技術に回すタイミングが到来しているといえるでしょう。

また、デジタル技術を活用して場所にとらわれない多様な就業の可能性をさらに高めれば、働きたくても働けない人の労働参加を促すことができ、人手不足の解消につながります。

さらには、女性や高齢者の労働参加機会が増え、地方にいる人材と都市部にある企業のマッチング機会も増えるでしょう。デジタル化によって労働負荷が少ない職種が増え、働くことへのハードルが下がることも期待できます。

消費者行動形態の変化

デジタルツールが普及して生活インフラとして定着し、今までなかった製品やサービス、ビジネスモデルがどんどん生まれています。Eコマースはもはや一般的な購買手段となりました。多くの情報が簡単に手に入るため、商品仕様や口コミ情報の入手後に買い物をする消費者も増えています。

さらには、インターネットで大勢の顧客にリーチできるためニッチ市場が拡大し、消費者の嗜好はますます多様化し、ニーズが細分化してきました。

このように、消費者の行動形態がデジタルによって変化している状況では、デジタルを活用したサービスやビジネスを創出できない企業は競争力を失います。そのため、デジタル技術を活用してビジネスを創り出すDXが求められるのです。

既存のビジネスモデルの変革

現代は変動性・不確実性・複雑性・曖昧性(VUCA)の時代といわれています。異常気象やパンデミック、技術の急激な進化などの事象により、予測困難な時代だという意味です。
状況の変化に即応した、経営戦略の再構築が求められる時代だといえます。

機動的な戦略構築にあたっては、データに基づき客観性の高い事象把握をして、迅速な意思決定をしなければなりません。しかし、多くの企業では、データが部署ごと、システムごとに標準化されていない状態で存在し、統合して判断に活かしにくいという問題があります。

その問題を解決するためにはシステムや業務プロセスの変革が必要で、その変革を実現する手段がDXなのです。

11.DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のメリット

DXを推進することでさまざまなメリットを得られる可能性があります。おもなメリットを見ていきましょう。

生産性の向上

「少子高齢化による人手不足」で少し触れましたが、DX導入には、生産性向上というメリットが期待できます。

DXは、社内向けの「守り」と、顧客や社会全体など社外向けの「攻め」に分けて論じられることがありますが、生産性はその両面で高めることが可能です。

守りの面では、社内の業務プロセスを可視化してデジタル技術の活用により自動化し、労働投入量を減らします。コールセンターのチャット移行や、東京センチュリー株式会社の事例で出てきたRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などがわかりやすい例です。

攻めの面では、生み出す付加価値を大きくすることで生産性を高めます。DX導入で達成する場合は、デジタル技術を活用した既存製品・サービスの高付加価値化や新規製品・サービスの開発、新規ビジネスの開始などで実現を目指します。

レガシーシステムからの脱却

冒頭に「2025年の崖」を紹介しました。経済産業省の「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」によると、2017年時点で日本企業の約8割が、2025年にブラックボックス化するおそれがある「レガシーシステム」を抱えています。

レガシーシステムは、保守・運用できる人材が枯渇し、安定的に稼働できなくなる懸念があるうえ、保守費用もかさみます。また、レガシーシステムは、新しいデジタル技術を導入しても連携ができず、限定的なデータ活用しかできないでしょう。

すなわち、DXを推進するためには、レガシーシステムからの脱却が前提です。このように、経済産業省が危惧するレガシーシステムのデメリットを避けられることは、DX導入のメリットといえます。

新規事業の創出

製品やサービスにはプロダクトサイクルがあり、現時点で大きな需要がある製品も、いずれはより高性能な代替品に取って代わられます。変化が激しい現代ではプロダクトサイクルが短期化しているため、企業活動を継続していくためには新規事業を常に視野に入れておかねばなりません。

変化が激しい時代だからこそ、新規事業が生まれやすいという側面もあります。デジタル技術の進歩で、今まで数値化できなかったものも含めて多様なデータが取得できるようになっています。さらに、多くのものがインターネットとつながることで、デジタルデータの蓄積が容易になりました。

DXを進めて顧客データと自社製品などを一元管理すれば、データを分析して顧客インサイトを得られるでしょう。加えて、データ分析によって新規事業につながるアイデアが生まれることが期待できます。

11.DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の課題

DXの推進はメリットだけでなく、デメリットもあります。おもなデメリットを理解しておきましょう。

全社的な協力が必要であり、部署間の利害関係の調整が難しい

DXは、ビジネスモデルや組織・業務プロセス・企業文化・風土まで変革しようとする取り組みであるため、最も望ましいのはトップダウンでの実行です。DXの目的や効果を共有して進むためには、経営者が積極的に関与する必要があります。

部署横断的に活用できるシステムを構築する際には、部署間の連携と調整が課題です。しかし、従業員は通常業務も抱えているため、忙しさを理由にプロジェクトを自分事として考えないメンバーも現れるでしょう。

また、古いシステムであっても、使い慣れていれば手早く処理できてしまうことから、DXは不要との意見も出てくるかもしれません。実際、株式会社長谷工コーポレーションの事例で見たように、新しい技術の採用が反発を買う可能性もあります。DXへ取り組むにあたっては、いかに全社的な協力を得るかがカギとなります。

システム移行に大幅なコストを要する

2021年3月の総務省の調査によると、DXの取り組みを進めるにあたっての課題として「費用対効果が不明」という回答をした企業は約33%で、人材不足の約53%に次いで多くなっています。※

DXによって「人員を何人削減できる」といった定量効果は測りにくく、「より正しい経営判断ができる」、「顧客の動向がわかる」といった定性的な効果を求めて導入することになります。定性的な効果を評価して投資を決定するルールがない場合は、導入に踏み切れないケースもあるでしょう。

「対効果」を考慮しない場合でもシステムの刷新には多大なコストを要するため、実施当初にはDXは赤字部門となります。足元の収益だけを考えると、デメリットと見えるでしょう。

結果が出るまでに相応の時間がかかる

一般的に、DXの効果が目に見えるまでには3年~5年程度の期間が必要といわれています。成果が出る前に経済環境が変わることも考えられるため、柔軟な対応ができるようにしておくことが大切です。

2025年が崖であるとすれば、あまり長い時間をかけると、DXを進めるメリットの一つ「レガシーシステムからの脱却」がうまくいかなくなる可能性があります。

最初は1部門から始めるなど、小単位でDXプロジェクトを進めると、結果的に時間短縮につながるでしょう。

DX人材が不足している

DX人材の不足もDX推進の課題として挙げられます。

DX戦略の推進においてはDX人材の獲得が重要になりますが、DXのスキルやマインドを持ち合わせている人材はそう多くありません。しかし、DX戦略の実行を外部の企業に全て頼りきっていると、万が一トラブルが起きたときにすばやく対応ができず、大きな損害となる場合があります。

DX戦略の推進に取り組み、成功した企業の多くは、全てを外部の企業にすべて任せるのではなく、一部の必要なスコープを外部人材を活用しカバーし、さらに社内のDX人材の育成にも力を入れています。DX戦略を活用して企業全体を大きく成長させるためには、DX人材の育成計画も必須と言えるでしょう。

なお、DX戦略の実行ではなく、DX人材の育成を行う際は、外部の企業に頼るのもひとつの手です。

12.DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させるためのポイント

ここからは、DXを成功させるために押さえておくべき5つのポイントをご紹介します。DXを成功させるためにも、以下のポイントをしっかりとチェックしておきましょう。

1.目的の設計を行う

DXを成功させるためには、DX戦略における目的をしっかりと設計することが大切です。目的が明確にされていないと、せっかく実行しても思うように進められなくなる場合があります。

また、目的を明確化していなかった場合「導入したのに全然売り上げが伸びない」など、結果を得られないということも起きてしまいます。DXを成功させるためにも、本質的な目的を設計しておくことは非常に大切です。

2.経営層が中心となって目標を設定する

DX成功のためには、IT担当者に丸投げせず、経営層が中心となって自社のDXにおけるビジョンの明確化、推進管理を行うことが大切です。

経営層の認識が曖昧なままで進めてしまうと、実行のスピードが鈍化したり、現場がさまざまな意見に振り回されてしまったりする可能性があります。そのため、現場スタッフの声や他社の現状などをデータ化して取り入れ、経営層が中心となりしっかりと目標を設定することが必要です。

3.自社の課題と関連させる

DX戦略を進めていく際は、自社が抱えている課題をどのように解決するか、自社の強みをどのように活かしていくかなどを明確化することで成功しやすくなります。

なお、自社の課題や強みの分析を効率的に進めたいならSWOT分析を用いるのがおすすめです。
SWOT分析を用いれば、既存事業の改善点はもちろん将来的なリスクも見つけやすい
のでぜひ活用してみてください。

4.DX人材育成に投資する

DXの成功のためには、DX人材育成への投資が必須です。スキルを学ぶための環境を用意してあげることはもちろんのこと、それにかかる予算の確保も重要です。

まずはDX人材の選定、採用からはじめ、スキルアッププログラムの設置、技術や手法の最新情報の取得する方法の確定、情報共有のために社内コミュニケーションを強化したりなど行うべきことを洗い出します。洗い出しが行えたら、それぞれにどのくらい投資をすべきか検討していきましょう。

なお、DX人材の育成への投資が遅れることで、社内のデジタル化が遅れビジネスチャンスを逃してしまう危険性もあります。将来、ビジネスをさらに拡大していくためにも、DX化の推進のためにどのような投資を行うべきかよく検討してみてください。

5.PDCAを徹底する

ビジネスや組織を成長させたいなら、PDCAサイクルも徹底させましょう。DX戦略に取り組んだ結果を詳しく分析し、目標までのルートを検討し直すことで、過程が明確化します。

DXは一時的に行うのではなく、定期的に振り返りを行って改善点を見つけ出し、長期的に行うことが重要です。確実な成長につなげるためにも、PDCAサイクルをまわしましょう。

13.まとめ

企業におけるDX推進のカギは、それぞれの課題感によってさまざまです。
さまざまな課題に対して解決策を講じるためには、類似した他社事例をもとに、独自の策を講じる必要があります。
そのためには、世の中に出回っている事例を頭に入れていく必要があることでしょう。

しかしながら、全ての事例に触れることは非現実的です。
そこで頼るべきは、DXを専門に実施している外部企業や外部のプロフェッショナルになります。
多くの企業さまへの支援実績から、課題解決ノウハウを非常に多く持っているためです。

より社内にノウハウを残しながら、DX化を推し進め、自前で運用していくためにはプロフェッショナル人材を招へいすることをおすすめします。
外部プロフェッショナル人材は、自分のプロジェクト対応事例を増やしていくため、社内の方々に伴走して課題解決に当たり、いずれは社内の方のみで対応ができるようにスキルトランスファーを行いながら対応を実施してくれるためです。

自社の課題に最適なプロフェッショナルを探してみることが、DX化の第一歩となるかもしれません。

みらいワークスは、国内最大級(24,000名以上)のプロフェッショナル人材データベースを運営している企業です。
社内だけで生成AIを活用したDXプロジェクトを実行することに不安がある会社はお気軽にご相談下さいませ。



(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)