高校野球のイメージといえば?と聞かれると多くの人が
- 強制的に坊主
- 長い練習時間、拘束時間
- 監督を頂点としたトップダウン構造
を思い浮かべるのではないでしょうか?
そんな高校野球に変革が起こっています。
2023年の高校野球実態調査において、「部員の頭髪の取り決め」について「丸刈り」と答えた学校は26.4%に留まり、前回調査の2018年時から約50%の減少となりました。
『とは言え、、それは強豪校の話ではないでしょ?』と思う方もいらっしゃると思いますが、そんなこともないのです。
2023年WBC日本代表にも選ばれたダルビッシュ有選手の出身校であり、2023年のセンバツ(春の甲子園)にも出場している東北高校では、2022年の夏以降、髪型が自由となっています。
ではなぜ高校野球に変革が起こっているのかをひも解いていき、東北高校の事例から見て取れるビジネスにも通ずる考え方まで解説していきます。
1.2023年度高校野球実態調査の結果
日本高野連(公益財団法人日本高等学校野球連盟)が1993年から5年に1度実施している「高校野球実態調査」(全国の加盟校に対するアンケート形式で実施)において、2023年にアンケートを行った結果(全3,818校、回答率99・2%、回答高校数3,788校)、部員の頭髪について、「丸刈り(坊主)」を指定している高校が26.4%でした。2018年の同調査の結果が、76.8%だったため、5年間で約50%減少となっております。(※1)
その他、スマートフォンの利用制限や、長時間の練習、食に関する制限などの幅広い項目で前回調査と比較で大きく減少しております。慣例に囚われずに、変革を行っている高校が増えてきているということです。
2.なぜ高校野球に変革が必要なのか?
これまでの慣例や常識に囚われずに、脱坊主や脱長時間練習などの変革を行っている高校の野球部が増えてきておりますが、逆にいうと、そうした変革が必要な理由があるのです。
それは、少子化による高校生の絶対数減少と、野球人口そのものの減少です。
こちらも高野連が発表している「部員数統計(硬式)」において、2023年の部員数は128,357名であり、この数字は平成以降最小の人数でした。また、2014年を境に年々減り続けている状況です。(※2)
昔から、“坊主が嫌だから”“練習がきつそうだから”という理由で高校では野球をやらないという方もいましたが、野球人口が多かったため、そこまで問題視されていませんでした。しかしながら今では、そういった層を取りこぼす訳にはいかないというのが実情でしょう。
事実、前述の高校野球実態調査における監督としての悩みという項目では「部員不足」が最多回答となっており、野球人口の減少が顕著になっております。そのため、高校野球全体で変革が必須となっているのです。
他方で、坊主をルールとしている高校も26%あり、部員数が100名を超える高校も1.4%あります。いわゆるマンモス校、強豪校と呼ばれるチームが該当すると考えられますが、そういった高校はOB会などが強く、伝統を重んじる傾向にあるため、なかなか変革が難しいでしょう。
そんな中、創部100年を超える伝統校であり強豪校でもある東北高校が、いち早く野球部内の変革を行い注目を集めています。
3.東北高校の変革
東北高校は1904年創部で、春夏通算40回以上の甲子園出場を誇る、県内屈指の強豪校であり、2023年現在メジャーリーグでも活躍するダルビッシュ有選手の出身校としても有名な高校です。その東北高校が野球部内の変革を行ったのが、2022年の夏でした。きっかけは、新しく佐藤 洋さん(元プロ野球選手)が監督に就任したことです。
佐藤監督はプロ野球引退後、約20年間小中学生向けの野球スクールを行っておりました。スクールでの野球少年との触れ合いに加え、研修で訪れたアメリカの少年野球現場での経験により、これまで伝統的に行われていた日本の野球指導が、心から野球を楽しむ少年を減らし、野球人口の減少につながっていることを肌で感じました。
これが東北高校での自立、自主性を重んじる指導につながっております。
【東北高校野球部の変革内容】
- 髪型自由
- 練習中の服装自由
- 練習中の音楽自由
- 自主性を重んじる練習スタイル
- 指導しない(選手から聞かれれば答える)
- 試合でサインをださない(選手から求められば出す)
もちろんこの変革だけではなく、元々の選手の素質や、前監督の指導の成果もあるでしょうが、東北高校野球部は2023年センバツに12年ぶりの出場を果たしております。変革の成果が問われるのは、もう少し先になるのかもしれませんが、出だしとしてはこれ以上無い結果を出したと言えるでしょう。
また、この東北高校野球部の取り組みは、高校野球に限ってではなくビジネスでも参考になる点が多々あります。
4.ビジネスにも通ずる考え方
東北高校の事例がビジネスでも参考になる点として以下の3点が挙げられます。
業界の慣習や常識に囚われない発想が変革を生む
東北高校で、佐藤監督は「高校野球はこうあるべきだ、これが伝統だ」という慣習などの固定概念を覆すことで、野球部員が自発的で能動的に行動できる、“人”として成長できる環境へ作り変えていっています。
ビジネスの現場でも、業界や会社での慣習や常識に縛られてしまうと、新しい発想が生まれにくくなってしまいます。
今は周囲の状況が目まぐるしく変わるVUCAの時代と言われ、デジタル活用を基本としてビジネス自体の変革が求められるDXが声高に叫ばれています。
そんな時代に慣習や常識に囚われてしまうと、VUCAについていけず、DXの波に飲まれてしまうことでしょう。
もちろん伝統は大事ですが、今は伝統に囚われずに今までとは異なる発想ができる方が求められているのです。
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自身で考える、内製化を生む環境作り
佐藤監督は、野球部員に自分達で考えさせることを徹底しておりますが、これは“指示待ち人間を無くす”ことを目的とされております。
野球に限らず、上意下達の構造は指示を受ける側が自分で考え、工夫することを放棄してしまいがちです。
前述のように今はVUCAの時代であり変化が激しいため、上位者の考えが絶対に正しいとする思想そのものが危険と言えるでしょう。
上位者だけではなく、ITの活用シーンにおいて情報システム部門や、ITアウトソーシング企業に業務を一任してしまい、現場の方が状況を詳しく把握していない、口出しできないような状況では、時代の変化についていけなくなってしまう可能性があります。
ビジネスの主役は現場部門だからです。DXの文脈においても、時代の変化についていけるようにしていくためには、現場主導でのIT利活用が必須条件です。そのためにも、業務を丸投げせずにできる限り自分たちのみで業務を回していく、内製化の環境を作っていく必要があるのです。
外部のプロフェッショナル人材が新しい風を運んでくる
東北高校では、元プロ野球選手でかつ20年以上少年向けの野球スクールを行っていた佐藤監督が、同校の慣習や常識を覆しました。
このように変革を起こすためには、外部プロフェッショナルの招へいが一番早いと言えます。
それは内部人材の場合、どうしても内部の常識や過去の成功体験に引っ張られてしまい、常識を覆すようなアイデアを出していくのが難しいためです。
たとえば、佐藤監督自身も東北高校野球部出身ですが、もしプロ野球選手にならず、野球スクールをやらずにずっと東北高校の野球部に携わっていたとしたら、今回のような部の変革を行うことは難しかったのでは無いでしょうか。それだけ、常識を覆すことは難しいということです。
企業でも全く同じです。
しかしながら、いくら外部プロフェッショナル人材が優秀だとしても、全てを一任して丸投げしてしまうことは避けなければなりません。上述した通り、内製化がキーワードだからです。
外部プロフェッショナル人材を活用しつつ、内製化を行うのは中々難しいですが、その手段として、フリーランスのプロフェッショナル人材を活用する方法があります。
内部人材だけでは難しい変革の一助となってくれることでしょう。
5.まとめ
今回、高校野球で起きている変革の流れと、東北高校での事例をご紹介しました。
また東北高校の事例は、ビジネスにも生かせる要素が詰まっているため、そのポイントを解説してきました。
ポイントとしては
- 慣習や常識に囚われない発想
- 内製化を生む環境作り
- 外部のプロフェッショナル招へい
上記の3点です。
中でも、外部のプロフェッショナル人材活用と内製化を両立することは難しいですが、フリーランスのプロフェッショナル人材活用が課題解決に向けたひとつの選択肢となるでしょう。
フリーランスプロフェッショナル人材に新しい風を運んでもらいつつ、社内人材にスキルトランスファーしてもらうことで内製化にもつなげる、といった取り組みが有用です。
なお弊社は、日本最大級のフリーランスプロフェッショナル人材のデータベース運営企業です。
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といった企業様は、ぜひお気軽にご相談(無料)くださいませ。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)
出典
※1:「丸刈り」激減 「時短」進み、スマホ自由度も増 高校野球実態調査(朝日新聞)
※2:部員数統計・硬式(公益財団法人 日本高等学校野球連盟)