『キャリア採用と中途採用はなにが違う?』
『キャリア採用にはどんなメリットがある?』
と考える方は多いのではないでしょうか。
キャリア採用とは、募集したい職種のスキルや経験を持つ人材に絞って採用を行う方法です。即戦力となる人材が獲得でき、育成にかかるコストも抑制できる採用方法として注目されています。
本記事では、キャリア採用の概要やメリット、デメリット、成功させるポイントなどを紹介します。キャリア採用に興味がある方は、ぜひ最後までお読みください。
■目次
1.キャリア採用とは?近年注目される理由
キャリア採用とは、企業が募集する職種に対して即戦力となる人材を採用する方法を指します。具体的には以下のような要素がある人材を採用することです。
- 対象職種の就業経験がある
- 対象職種に関するスキルがある
- 専門知識や資格がある
近年キャリア採用が注目される背景には、転職が一般的になったことが挙げられます。以前は定年まで同じ企業に勤めることが当たり前とされており、転職に対してネガティブなイメージがありました。
しかし終身雇用制度が崩壊した現在は、スキルのある人材の転職はむしろポジティブに捉えられるようになっています。また、変化の激しい現在の社会において、新たなアイデアやノウハウを吸収できる点でも企業として歓迎すべきことと言えるでしょう。
2.キャリア採用と中途採用の違い
キャリア採用と中途採用の違いは「求める人材」の違いで、キャリア採用は中途採用の一部といえます。
中途採用は、社会人として働いた経験がある人材すべてが対象です。新卒採用と対比した言葉と考えたらよいでしょう。そのため、業界未経験の人材や社会人3年以内の第二新卒も対象となっています。
一方で、キャリア採用は募集する職種において資格や職務経験がある人材が対象で、入社後すぐに即戦力として活躍することを期待されています。
また、募集要項においても、それぞれ以下のような違いがあります。
採用方法 | 募集要項 |
キャリア採用 | ・〇〇の経験が〇年以上 ・〇〇ができること |
中途採用 | ・〇〇の経験がある方を歓迎 ・未経験者歓迎 |
上記のとおり、中途採用が社会人経験のある人材を広く募集する採用であるのに対して、キャリア採用は特定の経験があって、即戦力となる人材を募集する採用です。
3.キャリア採用を導入する3つのメリット
即戦力の人材を求めるキャリア採用には、以下のようなメリットがあります。
ここからは、キャリア採用を導入する3つのメリットについて解説します。
即戦力の人材が手に入り、事業成長スピードが上がる
キャリア採用による1つ目のメリットは、即戦力人材の獲得により事業成長スピードが上がる点です。
キャリア採用では、募集する仕事についてスキルや業務経験を持つ人材を獲得します。そのため、未経験者と比べて入社後早くから活躍してくれることは間違いありません。
たとえば、営業において新卒のような未経験者が入社した場合、当然ながらすぐに高い実績を出すことはできません。一方で、同業種での営業経験者が入社した場合は、自社商品について理解してもらうための教育をするだけで、即戦力としてすぐに独り立ちしてもらうことができます。
そのような即戦力人材を多く採用することで、事業の成長をさらに促すことに繋がるでしょう。
人材育成のコストを削減できる
キャリア採用による2つ目のメリットは、人材育成にかかるコストを削減できる点です。
キャリア採用の場合は、社会人経験に加えて業務経験や実務スキルを持ち合わせています。そのため、企業理念や考え方、仕事の進め方など特有の知識は学ぶ必要がありますが、専門スキルについては必要な育成コストは少ないです。
一方で、新卒採用であれば社会人としてのマナーや心構え、基礎的な知識を研修などから行なわないと、そもそも現場に配置ができません。また、中途採用であっても未経験者の場合は、業務に関する知識を一から指導する必要があります。
人材育成にかかる時間やコストの面に加え、現場で指導する従業員が自身の業務時間を費やす面を考えても、キャリア採用は人材育成のコストが低いといえます。
新しいアイデアとノウハウが吸収できる
キャリア採用による3つ目のメリットは、新しいアイデアやノウハウが吸収できる点です。
キャリア採用で入社する人材は、過去のさまざまな経験から以下のようなものを培っています。
- 自社にはない経験やスキル
- 自社とは異なる業務フローやノウハウ
- 自社とは異なる価値観
これまで自社では当たり前になっていたことでも、採用者の新鮮な視点を取り入れることで、自社の課題が改善したり、さらなる成長を実現したりするきっかけになります。
変化が激しい社会で生き残っていくためには、常に変化をし続けていくことが必要です。そのため、新たな価値観やノウハウを持つ人材の採用は、積極的に行っていくべきといえるでしょう。
4.キャリア採用を導入する3つのデメリット
キャリア採用にはメリットだけでなく、以下のようなデメリットもあるので注意が必要です。
ここからは、キャリア採用を導入する3つのデメリットについて解説します。
採用コストが高くなる
キャリア採用による1つ目のデメリットは、採用コストが高くなってしまう点です。
キャリア採用は即戦力となる人材をターゲットとするため、紹介料金が高い人材紹介サービスなどを利用する必要があります。また、専門スキルや資格を持つ人材は多くの企業が必要としているため競争率が高いです。そのため、新卒や未経験者と比べてはもちろん、他の企業よりも良い条件を提示しなければなりません。結果として1名当たりのコストは高くなります。
しかし、採用後の育成コストは少なくすんだり、業績への貢献はプラスになったりとメリットがあることも間違いないので、入社後に企業に及ぼすメリットとコストを比較して計画的にキャリア採用を行うことをおすすめします。
社内を乱す原因になりかねない
キャリア採用による2つ目のデメリットは、キャリア採用者が社内を乱す原因になりかねない点です。
キャリア採用で入社する人材は、他社で同じ職種のスキルや経験を積んできています。そのため、自分なりのやり方や考え方を確立している方も少なくありません。それがプラスに働いて職場が活性化する場合もありますが、マイナスに働く可能性もあります。
たとえば、自分のやり方に固執するあまり自社のルールに反してしまったり、上司や部下とぶつかったりすることで、社内の雰囲気を乱す原因となってしまいます。せっかく業務能力が高くても、職場での関係性を構築できなければ良いパフォーマンスを発揮することはできないでしょう。
そのため、採用時にはスキルや経験だけでなく、自社の社風に合った人材かも判断基準とする必要があります。
離職率が上がる可能性がある
キャリア採用による3つ目のデメリットは、離職率が上がる可能性がある点です。
キャリア採用で入社した人材は、自分なりのポリシーが強い傾向にあります。そのため、自分のポリシーと企業側の方針が合わなかったり、元々在籍している社員との関係性を良好に築けなかったりと会社に馴染めない場合も多く、それが原因で退職してしまうケースも少なくありません。
また、最近では「キャリアアップ」を目的に転職をする人材も増えており、より高みを目指したい、より高い条件で働きたいという考えから、せっかく入社しても条件の良い職場が見つかるとすぐに転職してしまう可能性があります。
どちらの理由にしても、せっかくの即戦力人材を逃さないためには、入社前に企業とマッチした人材かどうか、面接や面談を通して見極めておくことが重要です。
5.キャリア採用を積極的に行うべき職種
ここまでキャリア採用のメリット、デメリットを解説してきましたが、キャリア採用はとくに以下のような職種に適しています。
ここからは、キャリア採用を積極的に行うべき職種について解説します。
営業、営業企画
営業や営業企画は、キャリア採用を積極的に行った方がよいでしょう。
営業という職種において基礎となるコミュニケーション能力や交渉スキルは、これまで培ってきた経験に裏打ちされたものであり、短期間で得られるものではありません。とくに、自社と同じジャンルの製品を扱ってきた人材は、即戦力として成績に貢献できるでしょうし、これまでの経歴で築いた人脈も企業にとって貴重な財産となります。
また、営業企画においてもキャリア採用がおすすめです。営業企画において必要となるスキルには「マーケティング」「商品が売れるスキームの構築」など、一長一短でこなせる仕事ではないからです。
営業、営業企画のどちらも未経験者がすぐに結果を残せる仕事ではないため、即戦力人材を求めるのであれば、キャリア採用がおすすめと言えるでしょう。
人事、法務、財務
人事、法務、財務などバックオフィスで専門性の高い職種は、キャリア採用が合っています。
人事については、人員採用や人員計画の策定、人事トラブルへの対応など、人事としての経験がないと難しい業務が多いことが特徴です。また、法務については、大前提として法律知識が絶対条件です。そのうえで、コンプライアンスが重視される社会環境を踏まえ、ハラスメントや情報漏えいなど会社が抱えるリスクに対処できる人材が求められます。また、財務については、財務に関する基礎知識に加え、金融機関からの資金調達や決算業務など、ミスが許されない業務を担っています。
上記のいずれの職種においても、専門性が高く企業においても重要度の非常に高い仕事です。未経験者や社会人としての自覚が薄い新卒では荷が重い仕事とも言えるので、キャリア採用での人材確保をおすすめします。
エンジニア
プログラマーやSEなどのエンジニアも、キャリア採用がぴったりの職種です。
エンジニア職は、プログラミング言語などの基礎知識はもちろん、昨今ではDX推進やAIの活用などにより求められる知識も多様化しています。今やシステム構築は企業経営の根幹をなすものであり、システム構築やアプリ開発など、スピード感を持って進めていかなければならない状況です。
未経験者を採用した場合、実務で活躍できるようになるには相当の時間がかかるだけでなく、万が一経験不足が原因でトラブルが発生した場合には取り返しがつかない状態になる危険性もあります。そのため、エンジニア職にはスキルや実務経験の豊かな人材が必要であり、キャリア採用が適しています。
研究、開発職
研究や開発を行う職種は、キャリア採用が求められる職種です。
研究や開発を行う職種においては、対象となるテーマについて費用対効果の高い研究成果を求められます。そのため、社会人として研究、開発の経験がありコスト意識が高い人材が理想です。また、研究や開発は基本的にチームで取り組んでいくため、コミュニケーション力や協調性を備えていると円滑に業務が進んでいきます。
企業にとって有益な研究や開発を行っていくためには、未経験者を採用するよりも、研究、開発の経験があり人間関係を構築するスキルが備わった人材を獲得できるキャリア採用が望ましいでしょう。
6.キャリア採用を成功させるための4つのポイント
キャリア採用で希望する人材を採用するには、以下のような点に気をつけましょう。
ここからは、キャリア採用を成功させるための4つのポイントを解説します。
採用基準を明確化させる
キャリア採用を成功させる1つ目のポイントは、採用基準を明確にすることです。
キャリア採用は「採用担当の人事職」「新規開拓の営業管理職」のように募集する職種やポジションが決まっています。そのため、求める人物像を明確にすることが可能です。
もし曖昧な基準で採用すると、採用後に「思っていた人材と違う」という事態になるかもしれません。採用後のミスマッチを防ぐためにも、採用基準は明確にしましょう。
採用基準については、以下のような側面から検討していきます。
採用基準 | 内容 |
スペック | ・職務経験や関連する資格 ・マナーや一般常識 ・コミュニケーション能力 |
人間性 | ・積極性や向上心 ・順応性や協調性 ・誠実さやコンプライアンス意識 |
キャリア採用では、給料水準が未経験者に比べて高くなるため、ミスマッチを避けるための対策は非常に重要です。そのためにも、採用の際はより自社の社風や方向性に合う人材か、求めるスキル水準を満たしているかよく考えて採用を行いましょう。
職種がキャリア採用に適しているか確認する
キャリア採用を成功させる2つ目のポイントは、キャリア採用に適した職種であるかを確認することです。
職種には、キャリア採用がふさわしいものとそうではないものがあります。具体的に言うと、専門スキルを要しない職種についてはキャリア採用を行なうべきではありません。たとえば、自社の受付業務や総務などが挙げられます。比較的誰でもこなせる職種のため、キャリア採用を行うと給与などのコストが必要以上にかさむ形になります。
また、自社特有の業務を行う職種や経験の有無にかかわらず、努力によって成果が出せる職種についてもキャリア採用者の強みは発揮しにくいでしょう。無理にキャリア採用を行うことでコスト負担が増加したり、既存社員の活躍機会が阻害されたりするデメリットも発生します。
そのため、やみくもにキャリア採用を行うのではなく、充足すべき職種やポジションによって採用方法を使い分けることが成功するコツです。
採用希望に沿った環境を用意する
キャリア採用を成功させる3つ目のポイントは、採用希望に合わせた環境を用意することです。
キャリア採用で求めるような即戦力人材は、多くの企業も同様に求める人材であることを忘れてはいけません。給与水準や待遇、労働条件などが他社に劣っている場合は採用できる可能性は低くなるため、かわりに応募者が魅力的に感じるような条件を提示することが必要です。
また、キャリア採用者はさらなるキャリアアップを目指して転職をしてしまうケースが少なくありません。勤務時間や労働環境などを整備するとともに、キャリアアップができる環境作りも重要と言えるでしょう。
キャリア採用した人材に過度な期待はしない
キャリア採用を成功させる4つ目のポイントは、キャリア採用した人材に過度な期待を寄せないことです。
キャリア採用によって採用した人材は、周囲が「キャリア採用なんだから」「即戦力として活躍してもらわないと困る」と過度なプレッシャーをかけてしまうケースがあります。その結果「このくらい出来て当たり前」と正しい評価ができず人材の不満に繋がったり、プレッシャーで心を病んでしまったりと、退職に追い込んでしまう可能性もあります。
一般的に、過去のスキルや経験を活かすためには、まずは企業の文化や風土に慣れ職場になじむことが重要です。同じ業種経験があっても、長い目で育成する姿勢が成功するコツです。
7.キャリア採用の面接で質問しておくべき内容
新卒採用とは異なり、キャリア採用の面接では以下のような質問をすると採用のミスマッチが起こりにくくなります。
ここからは、キャリア採用の面接でしていくべき4つの質問について解説します。
キャリアビジョンに関する質問
キャリア採用の面接で、キャリアビジョンに関する質問は必ずしておきましょう。
キャリアビジョンを質問する目的は、入社後のミスマッチ防止です。自社では実現できないようなキャリアを想定しているのであれば、早期離職が懸念されます。また、キャリアビジョンの明確さから、自社への志望度や長期的な視点を持った人材かどうかも見えてきます。
具体的には、以下のような質問が考えられます。
- 入社したらどんなことに挑戦してみたいか
- 仕事を通じてどのように成長したいか
- 10年後にはどのような自分になっていたいか
キャリアビジョンに関する質問は定番のため、応募者も準備していることがほとんどです。曖昧な回答しかできない人材は、採用するには不適切な人材と考えられるので注意しましょう。
仕事への価値観に関する質問
キャリア採用の面接では、仕事への価値観に関する質問も大切です。
仕事への価値観を質問する目的は、早期退職者の振るい分けにあります。これから社会人になる新卒採用とは異なり、社会人経験があるキャリア採用者であれば何かしら仕事に対して価値観があるはずです。
スキルがあっても働くことに対する価値観が浅い場合は、辛いことがあるとすぐに退職してしまうことが懸念されます。また、企業の従業員は同じ方向の価値観を共有しているケースが多く、あまりにかけ離れた価値観を持った人材は馴染めない可能性が高いです。
具体的には以下のような質問をしてみましょう。
- 仕事における価値観は何か
- 仕事で大切にしていることは何か
- 仕事におけるやりがいは何か
上記のような質問から、仕事に対して何を求めているのか、どのように捉えているのか見極めましょう。
自社との相性を確認する質問
キャリア採用の面接では、自社との相性を確認する質問も忘れずにしましょう。
自社との相性を確認する目的は、キャリア採用した人材が実力発揮できるかどうかの見極めです。募集する職種に対してどれだけ有能な人材であっても、企業理念や職場風土に合わないと本来の実力を十分に発揮できません。最悪のケースでは、不満を抱いて早期退職してしまうでしょう。
具体的には、以下のような質問をしてみることをおすすめします。
- 自社のどのような点に魅力を感じているか
- 転職先を選ぶ基準は何か
- 転職先として他にどのような企業を検討しているか
自社に対する思いや転職活動の状況から、応募者の本音が引き出せるように意識して質問してください。
スキルに関する質問
キャリア採用の面接において、スキルに関する質問は必須です。キャリア採用に応募する人材と言っても、そのスキルのレベルはさまざまです。そのため、スキルに関して質問をしたり実践してもらうことで、自社が求める即戦力人材であるか見極めましょう。
面接前には明確化した採用基準を設定しておくことをおすすめします。資格や職務経験は履歴書でもわかりますが、具体的な経験や成果を掘り下げて質問することで、本当に即戦力として貢献できる人材かチェックできるでしょう。
具体的には以下のような質問をしてみてください。
- 自分がどんな取り組みを行い、どのような成果を出せたのか
- どのようなことを意識して業務に臨んでいるか
- 今までで最も難しかった仕事について、どのように乗り越えたか
キャリア採用を行うからには、即戦力として機能する人材を採用しましょう。
8.まとめ
この記事では、キャリア採用のメリット、デメリットや、キャリア採用を成功させるポイントなどについて解説しました。
キャリア採用は即戦力人材を獲得でき、育成にかかるコストも抑制できる点がメリットです。一方で、採用コストの高さに加えて社内が乱れる可能性もあり、結果として離職率が上昇するデメリットもあります。
そのため、キャリア採用を導入する場合は、募集する職種や採用基準、採用条件を検討したうえで、適切な選考を行なう仕組み作りを心がけましょう。そのうえで、キャリア採用であっても長い目で育成することを念頭に置いておくことをおすすめします。
なお、キャリア採用に関する課題を解決するための制度設計や、人材育成プランの制定などにお困りの方は、その道のプロフェッショナルを頼ることも重要です。
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