ここ数年でChatGPTを皮切りに多くの生成AIが誕生し、活用されています。たとえば、大手企業であるパナソニックコネクトやサイバーエージェントなどもいち早く生成AIを事業に導入し、社内業務改善や業務効率化などの成果を上げていることで有名です。なお、経営企画においても、市場環境や競合調査のために生成AIを導入し、業務効率化をすることができます。
今回は生成AIを活用してできること、メリットやデメリットについてご紹介します。生成AIの特性を知ることで「生成AIは本当に良いのか」といった漠然とした不安を払拭し、経営企画業務をより効率的に運営できるでしょう。ぜひ最後までご覧下さい。
■目次
生成AIとは?
生成AIとは人工知能のひとつで、入力されたデータから分析して処理を実行し、新たな技術やアイデアを生成するAIを指します。
生成AIでできることは、主に次の通りです。
- 新しいアイデアの創出
- データ収集
- 意思決定の手助け
- 単純作業(計算や分析処理)
なお生成AIの詳細を知りたい方は、以下の記事をご覧下さい。
2.生成AI導入で経営企画を効率化できる
生成AIを導入することで、経営企画業務を効率化することができます。なぜなら、経営企画を作成するための意思決定に必要な情報をピンポイントで得たり、壁打ちをする前のデータを収集したりなど、作業時間を短縮してくれるからです。
経営企画を立てるためには、市場の動向把握や競合他社の調査、自社のデータ分析が必要になります。AIでデータ収集を行うことにより、大幅な時間短縮に繋がり業務を効率化することができるでしょう。
実際に生成AIを導入した企業の具体例として、下記の2つが挙げられます。
- 旭化成株式会社(第三者の客観情報としての意思決定)
- アサヒグループ(技術に関する利活用の知見を蓄積)
アサヒグループのように、日本を代表する大企業でも生成AIが活用されており、今後も生成AIを利用する企業は増加すると予想されます。
ただし、生成AIを有効活用するには、下記の点に注意が必要です。
それぞれの注意点について解説します。
生成AIを経営企画に活用できる可能性は未知数なことに注意
生成AIを有効活用する企業が増えている一方で、経営企画に活用するには慎重な企業も多く見られます。その理由は生成AIの信頼性を担保できていないからです。
実際に生成AIの代表格である「ChatGPT(対話型AI)」では、事実ではない情報を生成する現象(ハルシネーション)を起こすことも多く、企業としては不正確な情報を経営に盛り込んでしまう危険性は見過ごせません。
他にも信頼性を損なう回答の例として、以下の2つが挙げられます。
- バイアスのかかった回答
- 論理的に説明できない回答
上記から分かる通り、まだまだ発展途上の技術であり、未知数な部分が多いことから経営企画に活用するには慎重にならざるを得ないでしょう。不完全あるいは不正確なデータは、誤った結論に繋がる可能性があるため、取り入れるデータの品質と正確性が求められます。
経営企画に生成AIを導入するには「時間の捻出」が必要
経営企画に生成AIを導入する際の注意点として、生成AIを思い通りに使えるまでの「時間の捻出」が課題です。
生成AIの構造上、大量のデータを収集し学習させることで、高精度の分析や予測が可能になります。何を学ばせるか、どんな指示を与えるかで結果が大きく変わるため、生成AIを使う人間側の習熟度が鍵になるでしょう。
3.生成AIができる4つのこと
生成AIには、今まで人間が行っていた作業を代替できる機能があります。ここでは、生成AIができる4つの機能について解説しますので、ぜひチェックしてみてください。
時間の短縮
経営企画では、市場や競合他社についてのデータ収集が重要になります。データ収集には長時間を要する場合もあることから、新たな経営の施策や検討に時間を使うことが難しい場合もあるでしょう。実際にデータ収集などの既存業務に追われて、経営企画のための時間を作ることができないと課題化されています。
しかし生成AIでは、データ収集やデータ生成にかかる時間は数秒〜数分程度です。市場や競合他社についてのデータ収集が多く、複雑になるほど、時間短縮の効果が大きくなります。
意思決定の手助け
生成AIでは、意思決定の手助けを行ってくれます。なかでも重要な意思決定はデータだけでは行うことは難しいですが、実際に日本IBMがオンラインで行った調査レポート「CEOスタディ2023『AI時代の到来で変わるCEOの意思決定』にて、43%のCEOは生成AIから得た情報をもとに戦略的な意思決定に利用していると述べています。
とくに経営企画においては、企業全体を軸に考え、これからどのような会社にしていくのかゴールに至るまでの課題解決方法を提案する重要な役割です。そのため、企業全体の今後の方向性を決める意思決定の手助けとして、生成AIを活用するのも1つの方法と言えるでしょう。
企画書やプレゼン資料の作成
生成AIは、企画書やプレゼン資料の作成を自動化することが可能です。企画書、プレゼン資料の作成に生成AIを利用するメリットとして、次の3点が挙げられます。
- 作成時間の短縮
- プロが作成したようなデザイン
- 専門的知識が不要
テーマを絞ったプロンプトを入力すれば、数分で企画書やプレゼン資料が完成するAIツールもあり、資料作成の味方になることでしょう。
アイデア提案
生成AIでは、0から1を生み出す力を持っており、アイデア提案の補助を行ってくれます。
経営企画では、企業のビジョンを実現するための経営戦略の立案や、経営計画の管理や新規事業の創出などを行います。しかし進捗報告の資料作りや部門間調整など、短期的な既存業務に追われて経営企画を考案するための時間が取れない企業担当者が多いでしょう。目の前の業務に忙殺されている中で、経営企画を立案するための時間を割くことが難しい企業の方は、生成AIをぜひ活用してみるといいでしょう。
4.経営企画に生成AIを導入するメリット5つ
経営企画は経営計画の立案や経営課題の改善など、中長期的な戦略に関わる企業の根幹を担うポジションです。
経営企画において生成AIを導入した場合、考えられるメリットは5つあります。
それでは各メリットを解説します。
①企画アイデアを生成してくれる
先述したように、生成AIはアイデア出しから深掘りまで、アイデア創出のサポートを行ってくれます。生成AIが活用される主なビジネスシーンとしては、課題に関する質問をAIに投げかけて「壁打ち」の相手になってもらうケースが挙げられます。
「壁打ち」の効果的な質問の仕方は、次のとおりです。
- 回答の文字数制限をする(例:100文字以内で回答してください)
- 理解しやすい簡潔で具体的な質問をする
- 「はい」または「いいえ」で答えられる質問は避ける
- 箇条書きで質問する
- 最初の回答にさらに質問を重ねる
企業が安定して成長できるための企画を生み出すためにも、1つの方法として生成AIの活用をおすすめします。ただし、生成AIが理解しやすいように質問を工夫する必要があるため、生成AIに質問する際は適切なプロンプトを書くようにしましょう。
②会議の手間を削減できる
会議において、手間のかかる作業を削減できるのが生成AIのメリットです。意見をまとめたり、ポイントの集約や整理などを行うことで、大幅な時間短縮にもつながります。
たとえば、生成AIでできることとして次のような点が挙げられます。
- 議題や課題(アジェンダ)の抽出
- どんな内容について話し合うべきかテーマ設定をしてくれる
- ブレストによるアイデア出し
- 議事録の作成
経営会議では、経営企画の進捗や企業が成長するために取り込むべき課題などについて、取締役や執行役員など経営幹部が話し合いを行います。議論や会議をスムーズに進めるためにも、生成Aiを活用すると良いでしょう。また生成AI活用に合わせ、事前に資料を配布したり、意見が対立しそうな議題があれば予め実施して備えたりなど、対策を考えておくことをおすすめします。
③比較評価に活用できる
生成AIは、企画案の比較評価に活用することができます。これまでは人による比較評価であったため、評価基準にあいまいさが残り、評価すること自体が難しいとされていました。しかし、生成AIは様々な評価観点から企画案の評価をしてくれるため、比較評価は人より優れていると言えます。
また、生成AIは過去の企画と比較することで、企画の出来を上手に評価することが可能です。そのため、企画の改善をサポートするのに役立つでしょう。
④プロジェクト管理に活用できる
プロジェクトマネージャーがこれまで行っていた計画の立案や運営管理、評価レビューなどを、生成AIで自動化できます。今後はプロジェクトメンバーの編成や管理など、人的資本に対する仕事が人間の役割になるでしょう。
ただしプロジェクトの運営管理を任せるには、生成AIの舵取りをする人間側の知識や理解が必須です。生成AIに何ができて何ができないのかを熟知した上でプロンプトを入力しなければ、期待通りの効果を受けることはできません。プロンプトを入力する際は、生成AIで何ができるのか事前に確認しておきましょう。
⑤KPI収集に役立つ
KPIとは目標達成するまでの過程において、業績を評価する指標のことです。生成AIは進捗管理や課題抽出を行うため、KPI収集に役立ちます。
KPI収集により得られる効果として、次の3つが挙げられます。
- 高度な解析モデルの分析
- ビッグデータの活用
- 固定概念に囚われない分析
人に頼った分析ではバイアスがかかる可能性やデータの見落としが起こるため、KPI収集には生成AIが重宝されるでしょう。
経営企画に生成AIを導入するデメリット4つ
生成AIは経営企画において多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。
上記について解説します。
①あくまで一般論としての知識しか有していない
良質な経営企画を作成するには、定量的に評価する手法と過去企画のデータを評価することが望ましいとされています。しかし、生成AIはあくまで一般論としての知識しか有していないため、企画の善し悪しを評価するには情報が足りていません。
生成AIで経営企画を作成することはできますが、必ずしも自社に最適なものであるとは限らない点に注意しましょう。
②品質が安定ではない
生成AIは品質にばらつきがあり、安定性にかける一面があります。生成AIは既知のデータを活用しているため、生成を繰り返すうちに類似した企画ばかりになってしまうでしょう。
また、どのようなプロンプトを書くかで企画が大きく変わってしまうため、企画の方向性にあった適切な指示を行う必要があります。生成AIに経営企画のアイデア創出を手助けしてもらう際は、適切なプロンプトを書くようにしましょう。
③機密情報が洩れる可能性もある
機密情報が生成AIツールを通じて、他のユーザーに洩れる可能性があります。これまでにも大手企業の機密情報が漏洩した事例が報告されており、どこまでの情報を生成AIに利用するかの判断基準が大事になります。
特に注意が必要な職業としては、次のとおりです。
- 企業情報を扱う部署(開発・財務関係者など)
- 公共性のある職業(医療従事者・教職員など)
- 機密情報を扱う企業(メディアなど)
機密情報を扱う頻度が高いほど漏洩するリスクは高まるので、生成AIを活用する際は細心の注意を払って扱うようにしましょう。
また、生成AIが作成した文章はネット上のデータを参照して出力されているため、必ずしも正確性の高い情報とは限りません。日本ディープラーニング協会のガイドラインによると「AIが生成した内容には虚偽が含まれている可能性がある」と指摘されているほどです。
生成AIを盲信せずに、情報の因果関係やエビデンスを慎重に確認しましょう。
④法律や規定の整備が必要
生成AIを業務に活用する機会が増加している中、機密情報の漏洩や倫理違反、プライバシーの侵害などを疑われるケースが散見されます。日本でもガイドラインに則った運用が定められていますが、ガイドラインには法的拘束力がないため、今後生成AIの悪用を規制するための法律や規定の整備が進んでいくでしょう。
実際にEUではリスクのレベルに合わせた法的拘束力のあるAI規制が始まっており、EU域外の国でもこの流れが加速している現状があります。
生成AIを活用するために不可欠な要素2つ
生成AIを最大限に活用する為に不可欠な要素が2つあります。
生成AIを活用するためには、上記のような特性を知ることが重要です。次項から解説するので、ぜひチェックしてください。
①テクノロジーの理解
テクノロジーの理解なくして、生成AIを活用することは難しいです。生成AIの得意な分野や苦手な分野を知ることで、生成AIの限界値を把握しましょう。
得意な分野は主に技術やスキル関係であるのに対し、苦手な分野は人間の感情に左右されるスキルです。
得意な分野 | 苦手な分野 |
製品開発 | 人との会話 |
製造過程の改善 | 人間味のある感情表現 |
マーケティング戦略 | 高度な専門知識が必要とされる分野 |
革新的技術の創造 | 倫理的な判断 |
カスタマーサービス | 長文の質問への回答 |
人とAIの役割の違いを知ると、更に効果的な運用ができるため、事前に確認しておきましょう。
②適切な組織体制の構築
経営課題に対して全社的に取り組む適切な組織体制の構築が、生成AIを活用するために不可欠な要素になります。どんなに生成AIが万能であっても、最終的には人を介する技術のため、適切な組織体制の構築は欠かせません。
実際に生成AIを活用する際は、経営企画に携わる人達が生成AIへの理解を深めることが重要です。生成Aiでは一体何ができるのか、メリット、デメリットを予め理解した上で活用するようにしましょう。
【カテゴリ別】おすすめの生成AIサービス5選を紹介
多くの生成AIがありますが、その中でもおすすめの5つサービスをご紹介します。
【資料作成】Tome
文章を入力するだけで資料作成を行ってくれるのがTomeです。言語理解能力に優れたOpenAI社のGTP-4を使用しているため、正しく文脈を理解し、長文でも違和感のない文章を生成してくれます。PDFや画像ファイルとしてダウンロードすることも可能なため、経営会議などで資料が必要な場合に役立つでしょう。
なお、Tomeを使うとできることは、主に下記の通りです。
- 物語調のスライド資料作成
- 文章と画像が入ったプレゼン資料作成
- マーケティング資料作成
ほとんどの作業をTomeが自動で行ってくれるため、効率よく資料作成ができる優れた生成AIサービスと言えるでしょう。経営企画の策定やKPI管理などでリソースが足りず、プレゼン資料を作ることができない方におすすめです。
【資料作成】SlidesGPT
SlidesGPTはChatGPTを活用しているため、リサーチ能力に優れており、効率的にプレゼン資料を作成できる生成AIサービスです。また、登録不要でほとんどの機能が使えることも魅力のひとつと言えます。ツールを開くとすぐに機能を使うことができるため、早急に資料が必要な方におすすめです。
なお、SlidesGPTを使うとできることは、下記の通りです。
- ChatGPTによる自動リサーチ
- スライド資料作成
- スライドのレイアウト設計
どのようなテーマを入力するかでスライドの作成時間は異なりますが、概ね数分あれば作成が完了します。なお、スライド資料を保存したい場合は、ダウンロード1回につき日本円で大体360円※(2.5ドル)必要です。(※2023年12月時点でのドル価格)
またSlidesGPTでは、ビジネス戦略に関するアイデアを創出することもできます。経営企画の施策立案に行き詰まった際は、案候補の1つとして利用してみるといいでしょう。
【議事録作成】RIMO Voice
RIMO Voiceは、日本語によるAIの文字起こしサービスのひとつです。会議の議事録やリアルタイムでの音声の文字起こしなどを得意としており、文字の手入力は必要ありません。
なお、RIMO Voiceを使うとできることは、下記の通りです。
- 音声ファイルや動画から文字起こし
- シンクスライダー機能によりピンポイントで聞き直し
- ChatGPTを利用した要約作成(議事録作成)
- 文字起こしデータのチーム共有
1時間の音声ファイルであれば、約5分程度で議事録にまとめてくれます。ただし、料金プランは個人と法人で異なりますが、どちらも従量制の料金体系になっているため注意が必要です。
経営会議をスムーズに進めるためにも、簡単に議事録を作成してくれるツールは利用してみるといいでしょう。
【市場調査・競合分析】SimilarWeb
SimilarWebを使用することで市場調査や競合分析が行えます。通常では確認することができない、競合他社のホームページのアクセス数を把握できるのが強みです。無料で使用できるため、多くの企業がマーケティング戦略に活用しています。
なお、SimilarWebを使うとできることは、下記の通りです。
- 競合サイトの把握
- 競合サイトとの比較
- 検索の上位表示への分析・提案
- キーワード分析による広告運用サポート
ユーザーの行動履歴や競合他社の集客パターンを把握できれば、マーケティング戦略上の優位性は高まります。有料プランは安いものでも月額1万円以上するので、まずは無料プランから使ってみてはいかがでしょうか。
【市場調査・競合分析】Quid
Quidとは生成AIのディープランニング機能を活用し、膨大な情報から知見の獲得をサポートする次世代リサーチプラットフォームです。現時点で保有している大量のテキストデータから検索をかけ、視覚化することで新しいアイデアの創出を行います。
なお、Quidを使うとできることは、下記の通りです。
- 他業種・他分野に対応した市場動向調査
- 消費者ニーズの調査
- テキストデータの視覚化
- 新たなアイデアの提供
既に自動車や製薬メーカーなど多くの業界で利用されており、今後のトレンドや競合他社の分析ツールとして活用できるでしょう。
まとめ
経営企画業務における生成AIの活用と、メリットやデメリットについて解説してきました。
生成AIを導入すると、経営企画業務を効率化することが可能です。しかし、あくまで一般論としての知識しか有していないなどのデメリットもあるため、メリットとデメリットを把握した上で導入することをおすすめします。
- 企画アイデアを生成してくれる
- 会議運営の手間を削減できる
- 比較評価に活用できる
- プロジェクト管理に活用できる
- KPI収集に役立つ
【4つのデメリット】
- あくまで一般論としての知識しか有していない
- 品質が安定ではない
- 機密情報が洩れる可能性もある
- 法律・規定の整備が必要
生成AIを正しく理解した上で活用すれば、経営企画の効率化が期待できるでしょう。
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