近年では、世界的に生成AIによるDX(デジタルトランスフォーメーション)化が推進されています。
DX化を行うことで企業の業務効率改善や生産性を高めるだけでなく、顧客の満足度やサービスの快適さも向上させることができるため、多くの企業がDX化を検討していることでしょう。
今回は、DX推進を考えている企業のために生成AIを活用してできるDX推進事例や活用シーンについて解説しています。生成AIの活用メリットや注意点についても解説していくため、ぜひ参考にしてください。
1.生成AIとDXの関係性とは
生成AIは、DXを推進させる手段の一つです。
DX | デジタル技術により、企業のビジネスを変革させる |
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AI | 人間の思考プロセス、推論などの知的行動をプログラムにより行わせる技術 |
上記のようにそれぞれ定義されていますが、DXを実現するには、loTやクラウド、5Gなどさまざまな最先端技術が必要であり、生成AIもその技術の1つです。生成AIは、人間には対応出来ない膨大なデータの蓄積と分析を行うことができ、多くの企業に有益な存在と言えます。
生成AIがDXに重要な理由として、以下の2点が挙げられます。
- 膨大なデータの蓄積や分析、処理ができる
- 情報を精査し、新しい価値の提供が可能となる
多くの企業では、業務の効率化やビジネスの拡大、新規ビジネスの創成などが課題となっています。生成AIによるDX推進を行なうことで、これらの課題を解決に近づけることができるため、多くの企業がこぞって導入を進めています。
ただし、生成AIはあくまでDX推進の手段の一つであり万能ではないため、AIを導入する際には使いどころを見極める必要があります。安易にAIを導入しても革新的なDX化を図れるとは限らない点には注意しましょう。
2.DX推進に向けて生成AIを活用する効果
DX推進に向けて生成AIを活用することで、次の効果が挙げられます。
- 手作業をAIに任せることで省力化できる
- AI技術による顧客への新しい付加価値の提案
まず一つ目として、人間による作業を生成AIに任せることで手作業の手間を省くことが可能となります。これにより、コストの削減や業務の効率化が可能となり、企業の事業促進にも繋がるでしょう。リソース不足も解消され、やむなく外注化していたものを内製化することも期待できます。
また、生成AIにより顧客への新しい付加価値の提案も可能です。たとえば、近年急速に拡大している配車サービスは、タクシー乗り場を探したり、タクシーを探してさまよう必要性がないというメリットがあります。その他にも、スマート家電では遠隔操作により、その場を動いて手動で操作する手間がなくなりました。
このようにAIによるDX化は近年急速的に広まりを見せており、今後も拡大が見込まれます。企業においても、生成AIの活用は社内だけではなく、顧客への新しい付加価値への提供に役立つのです。
3.生成AIでできる4つのこと
さまざまな生成AIが登場している現在、生成AIによってできることは多種多様です。
それぞれについて詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
コンテンツ・テキスト作成
生成AIでは、テキスト生成や文章の要約が可能です。たとえば議事録の要約や資料作成、オウンドメディアに使う記事作成に利用できます。これらによく使われる生成AIの例を挙げると、OpenAIが開発したChatGPTやGoogleが開発したBardがあります。即座に返答をくれるため、考える時間の短縮にもつながり、業務効率の向上ができるでしょう。
なお、使い方としては生成AI上のフォームにプロンプト(指示命令)を入力するだけで、自分の思い描いたテキストを抽出してくれます。最近では利用する企業も増えてきているため、気になる方はぜひ一度利用してみると良いでしょう。
画像・デザイン作成
画像やデザイン生成AIは、テキストで作成して欲しい画像やデザインを指示することでイメージに近いものを生成できるのが特徴です。特に有名な画像やデザインの生成AIは、StableDiffusionやDALL・Eなどが挙げられ、主な使用用途としては次の例が挙げられます
- ロゴやアイコンの作成
- 写真やイラストの作成
- 画像の加工や修復
- 画像のスタイル変換
画像やデザイン作成ができる生成AIは、これまで専門のデザイナーに発注するにあたってかかっていたコストを削減することができます。また、即座にデザインや画像を抽出してくれることで、納品を待つ時間も短縮できるでしょう。
事業をよりスピーディに進める部分においても適しているため、ぜひ利用してみてはいかがでしょうか。
動画の作成
動画生成AIでは、他の生成AI同様にテキストや写真、動画で指示することで、イメージに近い動画を生成してくれます。動画の作成は高度な技術が必要であり、素人がすぐに作れるものではありませんが、動画生成AIの台頭により簡単に作成できるようになりました。
動画生成AIの活用用途としては、主に以下のとおりです。
- アニメーションや映画の作成
- スポーツやゲームのシミュレーション
- 動画の加工や修復
現在では、動画SNSの運用も容易となり、企業でもTikTokやInstaglamのリールによるPR活動が活発になっています。近年では、SNSへの参入しない企業は終わる、とも言われており、中でも動画SNSの人気は非常に高いです。まだ活用出来ていない企業は、今後の機会損失を防ぎ、事業を拡大させるためにもぜひ動画生成AIを利用してみてください。
音声の作成
音声AIでは、音声入力やテキスト入力により新たな音声を作成できます。とくに多言語間の通訳や翻訳にも役立つため、今後グローバルな事業を展開していきたい企業にとっては欠かせないツールです。
そのほか、音声生成AIを利用することで次の用途があります。
- 音楽や歌の作成
- 音声合成や音声変換
- 音声認識や音声翻訳
方言やスラングの認識にはまだまだ弱いものの、AIの学習によりさらなる発展が考えられます。細々とした議事録まとめや文字おこしにも最適ですので、この機会にぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
4.生成AIのビジネスでの活用シーン例
近年急速な発展を遂げている生成AIですが、すでに導入している企業も少なくありません。そこでここでは、生成AIを導入してDX化を図っている企業の活用事例をご紹介します。
アイデア次第でさまざまな応用ができるので、ぜひ活用事例を参考にして業務の効率化や新規事業の展開に活かしてみてはいかがでしょうか。
社内データの抽出
生成AIを活用することで、社内の膨大なデータから必要な情報を抽出することができます。
社内データは日々蓄積されていくため、データを探すことに時間がかかったり、見つからなくなってしまうという懸念点が挙げられます。とくに、設立してからの年数が長ければ長いほど、規模が大きくなればなるほど調べたい情報や知りたい情報へのアクセスが難しくなるでしょう。その点、生成AIによる社内データの抽出が可能となれば、情報調査の時間短縮につながり業務効率の向上に役立ちます。
実際にコカ・コーラでも導入されており、社内データをファイルから瞬時に抽出して、求める情報が得られるようになっています。
ニュースやWebサイトの文章を要約
生成AIは、ニュースやWebサイトに使う文章の要約にも役立ちます。
文章の作成は時間がかかりがちですが、生成AIにプロンプトを読み込ませて作成したい概要を伝えることで、簡単に文章の抽出が可能です。プロンプト次第では、初心者向け、上級者向けなど文章のレベルも変えられるため使い勝手がよく、近年多くの企業で生成AIによる文章作成がされています。
その他、音声AIを使えば、議事録の作成やインタビューした内容の記事作成も容易になるでしょう。
新規事業やキャッチコピーなどのアイデア作成
アイデアが必要な場合に、中々思いつかなかったり、似たようなアイデアばかり出てきたりしがちですが、生成AIを活用することで、新規事業やキャッチコピーなどのアイデアをいくつも提案してくれます。
たとえば運用型広告を扱うアナグラム株式会社では、アイデア出しやコピーライティングのたたき台にchatGPTを使用しています。抽出されたものを参考に、広告のクリエイティブを作成したり、ターゲティングのアイデアを拾ったりと幅広く活用されています。
また、ソフトウェア開発を行う株式会社Sun Asteriskでも、事業創成に生成AIが導入されています。数百個ものアイデアを生成AIから抽出し、それをもとに顧客と打ち合わせを行って事業を具現化しているのです。
このように、生成AIは企業のあらゆる部分で活用できます。無料で使えるものから有料のものまで数多くの生成AIが登場しているので、まずは一度試してみるとよいでしょう。
5.生成AIを活用したDX推進事例3つ
近年では生成AIを活用してDX化を図る企業が増加しています。そこで以下からは、実際に生成AIにより成されたDX推進事例を紹介します。
製造業の外観検査をAI化
AI技術は、画像認識の能力が高く実用化もされているため、製造業の製品や部品の外観検査に役立ちます。外観検査を正確におこなうことで、異常品を納品してしまうことが減り依頼先からの信頼度も向上するでしょう。
また、外観検査を必要とする製造業では、目視確認を行う人手が足りていないことが課題に挙げられていました。しかし、生成AIによる目視確認が行なえるようになれば、人手不足の解消にも繋がり、製造に注力できるため、売上や収益の向上にもつながるでしょう。
顧客対応をAI化
近年ではAI言語解析能力が進んでおり、顧客対応をAI化するというDXを推進しています。たとえば、次の業務をAI化できます。
- 定型的な質問の回答
- 24時間体制での質問の回答
顧客対応のAI化は、人的リソースの削減やコスト削減などにつながるのがメリットと言えるでしょう。
しかし、AIではユーザーの質問意図を正確には把握できず、100%正しいやり取りを期待はできません。チャットボットが対応できない場合を想定して、オペレーターに内容を引き継ぐ仕組み作りも必要です。
ECモールの商品説明を自動生成
自社商品がある企業で、ECモールへの出店を検討している企業も多くあるでしょう。しかし、ECモールに商品を掲載する際に商品説明文の作成が手間になる場合があります。また商品ごとに商品説明文が適切なのかをその都度考えるのは、時間も手間もかかります。しかし、生成AIによる商品説明文作成の簡略化や下書き作成を行えるようになれば、手間も減らして出品数の増加につながるでしょう。
6.生成AIを活用してDXを行う5つのメリット
生成AIを活用してDX推進を行うことにより、具体的には次の5つのメリットがあります。
以下から、5つのメリットについて事項から詳しく解説していきます。
生産性や効率が向上する
使い勝手の悪い既存のシステムを活用している場合、生成AIによるDX化を進めることで、生産性や業務効率を向上が期待されます。
たとえば、以下のような作業を生成AIによって簡略化できます。
- 画像生成
- 音声合成
- テキスト生成
- 3Dモデルの生成
- 動画生成
生成AIを活用すると、上記のことが短時間かつ素人でも簡単に行えます。これまで何時間もかけて作成していたものが簡単に作成できることで、業務効率が向上し生産性もあがるでしょう。
コスト削減につながる
生成AIに単純作業や定型業務を任せることで、コストの削減にもつながります。たとえばWebサイト制作や記事コンテンツの生成など、専門家に外注していた業務も社内でこなせたり、少人数で業務をまわせるようになります。
近年あらゆる生成AIが登場しているため、職種ごとやシーンごとに適した生成AIを活用することで、よりコストの削減が可能となるでしょう。
新ビジネスモデルの作成につながる
外部要因により変化が激しい市場で生き残るために、既存のモデルやスタイルに固執せずしない新たなモデルの確立が必要です。生成AIを活用することで、新たなアイデアや既存アイデアの改善案などを提案してくれるため、新ビジネスモデルの作成につなげられるでしょう。
意思決定のサポートをしてもらえる
意思決定のサポートをしてもらえるのも、生成AIを活用するメリットの一つです。たとえば、生成AIにデータの分析や予測を任せ、そのデータを活かすことで、自身の意思決定の参考にすることができるでしょう。
顧客満足度が上がる
生成AIを活用してDX化を図ることで、顧客ごとにパーソナライズされたサービスを提供できます。デジタル技術を用いて、顧客の行動分析や嗜好などのデータ分析を行うことができれば、顧客が満足する商品やサービスを用意でき、顧客満足度が上がります。
7.生成AIを活用する際の3つの注意点
生成AIを活用することで生産性が向上したり、コスト削減に繋がったりとさまざまなメリットが挙げられます。しかし、生成AIにはメリットだけでなくリスクもあるため、注意が必要です。
以下から、生成AIを活用する際の3つの注意点について事項から詳しく解説します。
情報の真偽を確かめる必要がある
情報収集に生成AIを利用する場合、抽出する内容が必ずしも正しい情報とは限りません。
生成AIによっては、最新の情報を検索できずに過去の情報しか参照できない場合やこちらの意図を上手く汲み取れないなどの問題で、間違った情報を生成する時もあります。そのため、生成AIが作成したコンテンツやテキストをそのまま利用せずに、一度情報の真偽を確かめることが大切です。
著作権に注意する
情報の真偽を確かめるだけでなく、著作権にも注意する必要があります。
生成AIは、現段階では著作権の有無や著作権の範囲を自身で判断できません。そのため、作成された画像やテキストが著作権を侵害してしまうケースもあります。著作権問題に発展すると、企業としての信用性が損なわれるため注意してください。
情報漏洩などセキュリティ面での懸念がある
生成AIは、機械学習やディープラーニングなどの技術を用いて、大量のコンテンツやデータを学習できたり、学習したデータを使って情報を生成することができます。
しかし、セキュリティ面での懸念が残ります。
たとえば、次の通りです。
- 情報漏洩や改ざんなどのリスク
- サイバー攻撃
- ハッキング
そのため、利用ルールやセキュリティガイドラインを定めたり、社員のリテラシー教育は必須です。実際に導入が決まった場合は、作業マニュアルの作成を行い、リスクヘッジを行いましょう。
8.生成AIを活用してDXを推進する手順
生成AIを活用してDXを推進する場合は、次の手順に従って進めていきましょう。
効率的にDXを推進するためにおすすめの手順となりますので、ぜひ参考にしてみてください。
現状を把握する
はじめに現状のビジネスや業務の状況を可視化して、問題点や改善点を洗い出しましょう。現状を把握するための手段としておすすめなのが、データ収集後にダッシュボードを使い、分析する方法です。
現状を把握することにも生成AIを活用することで、詳細な分析を行えたり、客観的な分析が行えます。
生成AIを活用して業務効率化
データの可視化が完了したら、データを元に手作業の業務やアナログな作業などを生成AIにより効率化できないかを検討します。たとえば、長文翻訳や文書からプレゼン資料の作成などは生成AIにより業務効率化が可能です。
生成AIを活用して業務効率化を進める際には、部署間の情報連携が途絶えないように注意しましょう。なお、プロンプトが異なると抽出される情報にも差異が出るため、決められた作業マニュアルのもと業務を行うことも大切です。
生成AIの活用により蓄積されたデータを共有する
業務で生成AIを活用してDXを推進していくと、数多くのデータが蓄積されていきます。蓄積されたデータが増えてきたら、社内で共有していきましょう。
全社員が同じデータを参照できるシステムを整備することで、社内全体でより業務効率化や業務改善が進みます。
なお、生成AIを活用して業務効率化を行い、過去のデータを共有しただけではDXを推進できません。生成AIを活用してDXを推進した後も定期的にPDCAサイクルを回し、改善を重ねていくことが重要です。
9.まとめ
この記事では、生成AIによるDXの推進方法を詳細に解説しました。生成AIは、さまざまなコンテンツやデータを生成することができ、DX化において大きな効果を発揮します。
生成AIを活用することで次のような多くのメリットを得られます。
- ビジネスの生産性や効率
- コスト削減
- 新ビジネスモデルの作成
- 意思決定のサポート
- 顧客満足度の向上
しかしながら生成AIを活用する際には、情報の真偽や著作権などセキュリティ面でもリスクがあるため注意が必要なことも確かです。
社内でその設計をうまくできない場合、外部のプロフェッショナルなどををうまく活用することで、生成AIの持つメリットを最大化できる可能性もありますので、検討が必要です。
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