近年AIの活用はいたるところでみられ、動画視聴や音楽プレイリスト、購入履歴をもとにした提案など多くの場面で活用されています。ビジネス面においても、データ分析や解析、データを基にした新たな打ち手の提案なども徐々に活用されています。
AI活用の中でも近年特に注目を浴びているのが生成AIによる社内活用や新規事業の推進です。既に多くの企業で生成AIを活用した新規事業が進んでいる一方で、これから生成AIを活用した新規事業に取り組む方も多いようです。
そこで本記事では「生成AI×新規事業」に焦点をあて、生成AIによる新規事業創出を進めるためにおさえておくべき6つのポイントをご紹介いたします。
■目次
1.急拡大する生成AI市場とLMM(大規模言語モデル)の可能性
生成AI市場は2022年11月頃から注目され始め、2023年6月には一般的に広まり国や業界の垣根を越えてさまざまな活用がされるようになりました。その背景にはChatGPTがあります。
大量のテキストデータを使ってトレーニングされた自然言語処理のモデル、いわゆるLMMによって、人間のように自然な会話ができるAIチャットサービスで、2022年11月に公開され、革新的なサービスとして注目を集め、生成した文章の見事さや人間味のある回答がSNSなどで大きな話題となりました。
現在ではChatGPTやその他の生成AIを活用した事業が次々と生まれ、生成AIに関わる市場は急激に成長しています。ペンシルバニア大学ウォートンスクール准教授でAI教育に長年携わっているイーサン・モリック氏は「この変化の重要性を理解していち早く行動を起こす企業は、大きな優位を得るだろう」と語っています。
現にいち早く状況を把握し、新規事業を推進している企業はマーケットにおいても競合優位性を獲得しています。一方で、まだまだ生成AIに関わる市場は大きく伸長すると考えられています。具体的にどのくらいの市場と予測されているのか世界と日本国内の市場について詳しく見ていきましょう。
海外における生成AI活用
日本国内だけではなく、世界でも生成AIの注目度は非常に高くなってきており、世界各国で生成AIを活用したサービスが日夜誕生しております。
人工知能やディープラーニングの進化により、マーケティングやアートなどのクリエイティブアプリケーションやコンテンツ制作から人の代わりとなり応答するAIチャットが有名でしょう。
また、エンジニアの代わりとなりコーディングをする生成AI、クラウドストレージの革新によるデータアクセスを容易化するバックエンドエンジニアの代替となる生成AIなど多種多様な使われ方が既に存在しています。
MarketsandMarketsは、2030年までに市場規模が750億~850億米ドル(約10.9兆~12.3兆円)に達すると予測しており、生成AIの期待度が伺えます。
国内でもビジネス導入が伸長する生成AI
日本では過去数年間、AI技術の著しい普及が見られました。日本の生成AIの成長を促進する主な要因としては、AIとディープラーニングの進化、コンテンツ制作やクリエイティブアプリケーションの増加などが挙げられます。
生成AIにおいて、日本はアジア太平洋地域で3番目に大きな市場です。2023年から2028年までのCAGR(年平均成長率)は41.9%にも達し、2028年には28億米ドル(約4,070億円)の収益を生み出すと予測されています。
2.生成AIを導入する際のメリット
生成AIを活用することで、さまざまなメリットが得られます。日本国内において労働力不足が懸念される中、労働力不足の解消や業務品質向上、生産性向上の点においては大きなメリットを感じることができるでしょう。
また、今まで人員を確保してビジネスプロジェクトを推進したり、マーケティング活動をおこなっていたことを生成AIに一部置き換えることで人件費削減などよりコスト負担を軽減することもできるようになりました。ChatGPTのような生成AIによるコミュニケーションの円滑化やカスタマーサポートなどの顧客満足度向上にも既に活用されており、生成AIの導入メリットを実感している企業が多いようです。
AIやRPAなどの定型業務を自動化する流れとは一変して、画像などのクリエイティブ面でも多くの生成AIツールがサービス化され利用されています。このように、今後も多くの生成AIをベースとした新規事業やサービスがリリースされていくでしょう。
3.生成AI活用のリスクとリスクコントロール
生成AIはさまざまな導入メリットがある一方で、もちろんデメリットや気を付けるべき注意点もあります。
特に生成AIで注意しないといけない点は責任の所在地です。生成AIをベースにデータを収集、フレームワークを構築したとしても100%完璧なものになるとは限りません。もし、間違った回答や期待通りのアウトプットが出てこなかった場合に、そのアウトプットが正しいものだと真に受けることがないようにしなければなりません。どのようなアウトプットでも最終的にはひとがアウトプットを確認し、正しいか否かを判断するような仕組みが必要となります。
また、いろいろなビジネスで生成AIを利用する上で、発生し得るさまざまな問題に対策を講じておく必要があります。いままでのセキュリティ対策では対応できないことも発生する可能性もあるでしょう。そのため、セキュリティインシデント対応などの問題発生時のマニュアルや生成AIを利用する際の注意点などユーザーに認識してもらうこともリスクコントロールの一つとなります。
4.生成AIを構成する要素技術の理解
生成AIを新規事業として立ち上げる際に「生成AIとは何か?」を理解する必要があります。生成系AIモデルは、ニューラルネットワークを使用して大規模なデータセットからパターンを識別し、新しいオリジナルのデータまたはコンテンツを生成します。
ニューラルネットワークは、機械学習(ML)モデルや深層学習(DL)モデルの基盤であり、複雑な構造のアルゴリズムを使用して大量のデータ(コード、画像、テキスト、など)を処理します。ニューラルネットワークのトレーニングとして、予測される出力と必要な出力の差を最小限に抑えるために、ニューロン間の接続の重みまたはパラメータを調整します。
これにより、ネットワークは間違いから学習し、データに基づいてより正確に予測することができるようになります。
5.「生成AI×新規事業」に向けたビジネスフレームワーク
企業が生成AIを活用した新たな事業を推進するにあたり、特に重要な点は「マーケット需要があるのか」と「不正確なものが生成され拡散された場合のリスク」の2つがあります。
マーク・ザオ=サンダーズ氏とマルク・ラモス氏がHavard Business Reviewで紹介している生成AI新規ビジネスにおけるフレームワークではマーケット需要とリスクを考慮したポジショニングが重要だと唱えています。
自動生成による人手不足の対策や生産性向上、新たなアイディアの創出などあらゆる場面での生成AI利活用の需要を感じられる一方でリスクもあります。
生成AIのリスクは、真実でないものや不正確なものが生成され、拡散する可能性はどれほどあり、どの程度の損害を与えるのかという点です。
また、生成AI活用の需要については、生成AIのアウトプットに対する現実的かつ持続的なニーズは何か、という視点を持ち、検討しなければなりません。
これら2面の不確定要素を考えることで、新規事業を推進するにあたり大まかなポジショニングがわかるようになるでしょう。
あなたの企業や部門で検討している業界や業種などのマーケットはどこに位置するでしょうか?
既に生成AIでの新規事業に取り組んでいる方も改めて「需要」と「リスク」のフレームワークで事業のポジショニングを確認してみてはいかがでしょうか。
6.「生成AI×新規事業」の人材確保と組織組成
生成AIを活用した新規事業創出及び推進をするにあたり、最も重要と言っても過言ではないのが組織組成です。どれだけ1人で頑張っても事業として推進するには限界があります。
そのため、事業全体を把握するPMOや開発に携わる必要があるのであれば、エンジニアやデータサイエンティスト人材は新規事業に必須となるでしょう。
また、しっかりと収益を上げるためには、販売戦略に関わる営業組織やマーケティング組織との連携ももちろん必要となります。生成AIの新規事業を推進し続けるための、組織組成をした上で、社内の人材が不足している場合や社員の採用が難しい場合は、外部のプロ人材リソース活用を検討することも視野に入れる必要があるでしょう。
7.まとめ
本記事では、生成AIによる新規事業創出を進めるためにおさえておくべき6つのポイントをご紹介しました。国内外で生成AIによる新たな新規事業の市場は伸長すると予測されています。新規事業を開始する前に生成AIの導入メリットを理解し、生成AIの需要とリスクのフレームワークを活用することで、より明確なポジショニングを把握することが重要です。
また、生成AI新規事業推進において生成AIに知見のあるプロフェッショナル人材やターゲット市場となる業界に詳しい人材を確保することで事業を着実に推進できる組織を組成することができます。
なお、株式会社みらいワークスは
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