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最終更新日:2024.08.28
人事/組織構築/業務改善

【徹底解説】リスキリングとは?DX時代に話題になっている理由や助成金制度も合わせて紹介

近年、ニュース等で「リスキリング(学び直し)」というキーワードを耳にする機会が増えています。新しいスキルの習得を目指すリスキリングは技術革新が進む今の時代にこそ必要とされており、業種、職種を問わずリスキリングに挑戦する人が増加しました。なかには会社規模で従業員のリスキリングを行なっているケースもあり、人材育成や教育の一貫として主流にもなりつつあります。

本記事では、リスキリングとは何か詳しく解説します。DX時代の今リスキリングが話題になっている理由や、お得に活用できるリスキリング関連の補助金や助成金にも触れるので、ご参考ください。


1.今話題のリスキリングとは

リスキリングとは、その時代ごとの最先端技術や今話題の技術革新に関するスキルを習得する学びを指す言葉です。「学び直し」と呼ばれることも多く、今持っているスキルや知識を時代に合わせてアップデートしていくようなイメージで捉えるとよいでしょう。最先端ツールの使用法や話題となっているトレンドを学ぶのも、リスキリングのひとつです。

厚生労働省などの公官庁も、リスキリングの重要性について以下の通り語っています。

変化の時代においては、労働者の「自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直し」が重要であり、学び・学び直しにおける「労使の協働」が必要となります。

つまり、個人の努力の範疇でリスキリングするだけでなく、会社単位でリスキリングに取り組むのが重要であるとしています。ビジネスを取り巻く環境が急速に変化しており、労働者が働く年数も伸びている今の時代だからこそ、継続的なリスキリングが必要なのです。

リスキリングでは何を学ぶのか

リスキリングでは、主に下記について学ぶのが一般的とされています。

【リスキリングで学ぶこと】

  • ITリテラシー
  • 情報セキュリティ
  • プログラミング
  • マーケティング
  • データ分析
  • 英語(外国語)
  • IT化やDX化が進み、便利に使えるクラウドツールが発展している昨今、ITリテラシーの習得はもはや必須になりつつあります。それに伴い、個人情報などを厳重に管理するための情報セキュリティや、ツールを便利にカスタマイズして使いこなすためのプログラミングスキルも求められるようになりました。

    いずれもエンジニアやプログラマーレベルを求めるものではなく、あくまでも自分の業務の範囲内で便利にスキルを活用するのが目的です。専門的な部分は専門家に頼りつつ、ある程度のことは自社で内製化するイメージでスキルアップしていけば、目指すべきラインも見えてくるでしょう。

    また、スピーディーで確実な意思決定を支えるため、マーケティングやデータ分析の力も求められるようになっています。グローバル化している昨今、英語を始めとする外国語能力が合った方がビジネスチャンスを増やしやすく、TOEICの受験を積極的に推奨する企業も増えました。グローバルコミュニケーションができる人材や、データドリブンな意思決定ができる人材は、今後の時代でも重宝されていくと予想されます。

    2.リスキリングが注目を集める理由


    ここでは、リスキリングが注目を集める理由を解説します。定期的にスキルレベルを見直すのが重要であるというのは昔から言われていましたが、なぜ今の時代になって「リスキリング」という言葉で定着したのか、背景を探ってみましょう。

    DX・GXなどの産業改革により求められるスキルが大きく変化した

    DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)などの産業改革により、求められるスキルは年々変動しています。DXとはビックデータやAI、IoTなどのデジタル技術を活用してビジネスプロセスの見直しや効率化を行う取り組みです。

    GXは脱炭素社会に向けた取り組みを指す言葉であり、地球温暖化防止や気候変動の抑制のためカーボンニュートラルの実現を目指す社会的な動きとなっています。

    こうした産業改革についていくには、そこで働く「人」の知識もアップデートする必要があります。最新技術を使いこなせるようになるには従来のスキルだけでは不足することが多いからこそ、リスキリングのニーズが高まっています。

    リスキリングがあらゆる場所で宣言された

    前述したようなリスキリングニーズの高まりを受け、公官庁だけでなく市区町村や企業がリスキリングに関する宣言を始めています。たとえば「広島県リスキリング推進宣言制度」では、広島県内にある企業にリスキリング宣言してもらうことにより、リスキリングの推進を図ることが目的となっています。

    世界的に有名な企業のなかでも、大手通信販売サービス「Amazon」やアメリカに本社のあるスーパーマーケットチェーン店「ウォルマート」でもリスキリング宣言がおこなわれました。

    こうした世界的な取り組みに刺激され、日本国内でも大企業・中小企業問わずリスキリング宣言する会社が増えています。人材のリスキリングを最重要課題と捉える視点が当たり前になりつつあるからこそ、今後もリスキリングのニーズは伸びるだろうと予想されています。

    3.リスキリングとリカレントや他の学習制度との違い

    リスキリングと似た言葉として、下記が挙げられます。

    下記でそれぞれの言葉とリスキリングの違いを解説するので、正しく使い分けましょう。

    リカレント教育

    リカレント教育とは、高校・大学などの学校教育から離れて社会に出た人が、それぞれが必要とするタイミングで再度学校に通いなおすことを指します。「学び直し」という点ではリスキリングと同一ですが、リカレント教育で学ぶ内容はビジネスで求められる最先端技術でなくとも構いません。趣味に由来する内容であったり、スポーツや音楽であったり、もちろん経営に関する内容を学ぶのも自由です。

    原則として「仕事を辞めて学校に入り直す」ことをリカレント教育と呼びますが、近年はオンライン講義が一般的になり、仕事を辞めずにリカレント教育を受けることも可能になりました。また、従来から存在するビジネススクールや通信制大学の利用もリカレント教育に含まれており、定義が多様であるのが特徴です。

    OJT(On the Job Training)

    OJT(On the Job Training)とは、実務を通して仕事に必要なスキルや知識を得る手法です。社員教育手法のひとつとして語られることが多く、ほとんどの場合では入社間もない新入社員または異動間もない新任者を対象にした研修として実施されます。また、業務知識がゼロであることを前提に、先輩社員が業務上必要なスキルを指導する点が特徴です。

    リスキリングが「学び直し」であるのに対し、OJT(On the Job Training)は「新たな学び」を得る手法のため、根本的に異なることがわかります。また、OJT(On the Job Training)の対象者は、基本的に新入社員や若手社員に限定されるため、職場全体の教育を行う取り組みにはなりません。

    アンラーニング

    アンラーニングとは「学習棄却」や「学びほぐし」を意味する言葉であり、知識の取捨選択とも言われています。昔習得したけれど今は使っていない古い知識を捨て、新しい知識を入れ替えるような学びのスタイルであり、使う知識と使わない知識をふるいにかけていくのがポイントです。昔の記憶を完全に忘れてしまうのではなく、現代には適していないと思われるものの使用をやめて、新たなことを学び、アップデートさせていきます。

    一方リスキリングの場合、昔習得した知識とは関係なく役立つスキルや知識を習得していくことがポイントです。今の知識レベルは関係ないため、昔の知識が前提となるアンラーニングとは異なっているとわかります。

    生涯学習

    生涯学習とは、その名の通り生涯にわたって行うあらゆる学習のことです。幼児教育や学校教育だけでなく、老年になってからのスクール通学や趣味向け教室の利用など、学びに関することであれば何でも「生涯学習」に含まれるのがポイントです。また、知識をインプットする座学での学習だけでなく、スポーツ、ボランティア、文化活動なども「学び」に含まれます。

    人々が生涯に行うありとあらゆる学習が「生涯学習」であると考えるのであれば、リスキリングも生涯学習の一環といえます。ただし、リスキリングは業務に役立つ最先端技術を学ぶという明確な目的があることから、生涯学習との性質は異なることを理解しておきましょう。

    アップスキリング

    アップスキリングとは、今あるスキルのレベルアップを図る学びのことです。たとえば既に資格を保有している医師や看護師が時代に合った最新医療について学んだり、既にプログラミングスキルを持っている人が別のプログラミング言語に挑戦したりする事例が挙げられます。基礎となる知識があってこそのアップスキリングであり、自分の強みを伸ばす目的で活用されています。

    リスキリングはもともとの知識の有無が問われないため、アップスキリングとは異なります。また、個々の強みを強化する目的ではなく業績向上や市場価値向上を目的に実施されるのがリスキリングであることから、明確な違いがあります。

    4.リスキリングは助成金の利用が可能

    リスキリングには助成金の利用が可能であり、お金のかかるリスキリング負担を大幅に軽減できます。企業に支給される助成金もあれば、個人に支給される助成金もあるのでチェックしてみましょう。

    DXリスキリング助成金

    DXリスキリング助成金とは、都内中小企業が民間のDX職業訓練サービスを活用して従業員教育をおこなった場合、その費用負担額に応じた一定割合を助成金として支給する制度です。たとえば下記のような講座の活用が対象となります。

    【DXリスキリング助成金の対象となる職業訓練の一例】

  • DX推進のためのマネジメント講座の受講
  • リモートワークやクラウドの整備に伴う情報セキュリティ対策講座の受講
  • 営業力向上のためのプレゼンテーションソフト活用講座の受講
  • 業務効率化のために実施するExcelマクロVBA入門講座の受講
  • 申請できるのは都内に本社または事業を置く中小企業および個人事業主であり、訓練に要する経費を従業員に負担させていないことが条件となります。オンライン会議システムを使用した訓練も助成対象となるので、社外の研修期間を活用して社員教育しているときは支給要件に当てはまるかチェックしてみましょう。

    人材開発支援助成金

    人材開発支援助成金は、職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練を実施した企業に対し、その費用負担額に応じた一定割合を助成金として支給する制度です。厚生労働省主導の助成金制度であり、DXリスキリング助成金より幅広く助成対象項目があるのが特徴です。下記の通りさまざまなコースが設けられています。

    コース名 特徴
    人材育成支援コース 職務に関する知識・スキルの習得費用を助成
    教育訓練休暇付与コース 教育訓練休暇取得中の収入源を補う助成
    人への投資促進コース デジタル人材・高度人材の育成費用を助成
    事業展開等リスキリング支援コース 新規事業立ち上げに伴う知識・スキルの習得費用を助成
    建設労働者認定訓練コース 建設関連の訓練の実施費用を助成
    建設労働者技能実習コース 雇用する建設労働者にスキル向上を目的として実習を有給で受講させる費用を助成
    障害者職業能力開発コース 障害者の雇用促進や雇用の継続を目的にした訓練の実施時用を助成

    リスキリングについて助成を受けられるのは「事業展開等リスキリング支援コース」です。建築など特定分野に特化した人材教育や育成でも助成金を受けられるので、従来の指導法でも助成金の対象となるかもしれません。

    5.リスキリングを行うメリット

    通常の研修だけでなくリスキリングにコストと手間をかけるメリットがどこにあるのか、知っておきましょう。下記では主に企業目線でのメリットを紹介しています。

    業務の効率化に繋がる

    今の最新技術を業務に活かすことができれば、大幅に効率化できることも珍しくありません。たとえば自社の業務特性に合わせたクラウドツールを活用した場合、工数を最小限に抑えながらこれまでと同等の業務を行なえます。

    また、生産管理システムを複数人でのリアルタイムな情報共有に活用したりすれば、従来の業務で発生していたストレスを緩和できます。「効率よく最適な人事案が考えられるようになった」「連携ミスによるトラブルやクレームが減った」など確かな手ごたえも実感できるかもしれません。

    業務の効率化をしたいとき、特に何から効率化に着手すればよいかわからないときこそ、リスキリングに力を入れましょう。今の知識だけでは補えない新たな業務効率化法を実行できます。

    新しいアイデアが生まれやすくなる

    リスキリングで最新技術を使いこなせるようになれば、新しいアイディアも生まれます。たとえばChatGPTに代表されるAIツールは、アイディア出しにも使えます。自社では思いつかないキャッチコピーを考えてくれたり、ブレインストーミングで出た雑多な意見の共通点をまとめてくれたり、さまざまな活用法が存在します。「歓迎会で楽しめるイベント案を4つ考えてください」などの問いかけも可能で、行きづまったときの救世主になる可能性も高いです。

    AIなど高度な専門ツールを使いこなすには、当然プロンプトに関する理解が欠かせません。多彩な活用法を知っておけばアイディア出しに使う道も増えるため、リスキリングは重要といえるでしょう。

    人材不足の解消や、採用コストの削減に繋がる

    リスキリングのニーズが拡大しているからこそ、リスキリングに力を入れてる企業は転職市場でも高く評価される傾向にあります。「従業員教育に力を入れている企業」「時代に合った知識を習得しやすい環境」と評価されるため、学ぶ意欲の高い優秀な人材を採用しやすくなるのがポイントです。母集団形成もしやすく、人材不足の解消や採用コストの削減につながります。

    なお、採用面での効果を実感するには、ある程度リスキリング教育で成功しておくことが必要です。自社なりの教育法や実績をアピールできるようになれば、転職市場での露出も増えていくでしょう。

    社内の風土や文化の醸成ができる

    リスキリングに積極的になることで、社内風土や文化の醸成ができるのもメリットです。たとえば部署横断型のナレッジベースを構築できれば、社内に蓄積されたノウハウを部署不問で広げることが可能です。業務に役立つ知識だけでなく、成功した人のキャリアパスや新人教育の成功事例なども共有でき、全体の標準化にもつながります。

    社内FAQなど実務向けの情報共有とナレッジベースは異なるため、従業員にとってノウハウを共有しやすく、かつ使いやすいツールにしていく必要があります。リスキリングによって最新技術の活用法を知っておけば構築時に役立つので、参考にしてみましょう。

    社員のモチベーションの向上に繋がる

    「リスキリングにより絶えず自分の知識をアップデートできる」という安心感は、社員のモチベーションの向上に貢献します。知識欲がある人やハングリー精神旺盛な人であれば、更に高い満足感を抱いてくれるでしょう。年齢に関わらず自己成長できる環境であれば従業員満足度も上がりやすく、自社で働くメリットを実感して離職を検討する人も少なくなります。

    今現在、十分な社員教育ができておらず社員の意識が低下していると感じる場合は、リスキリングに力を入れることで、モチベーションを向上させることも可能です。

    6.リスキリングを行う際の注意点

    リスキリングは高いメリットがあると注目されており、実際に多数の企業で導入されていますが、一方で注意点もあるので確認しておきましょう。見切り発車でリスキリングに着手した場合「リスキリングをすること」自体が目的になりかねません。何のためにリスキリングをしたいか、本来の目的意識を可視化しながら下記に注意していくのが大切です。

    取り組みやすい環境づくりを行う

    社員がリスキリングに取り組みやすい環境づくりをおこない、気軽に参加できる場所にするよう意識します。研修参加にインセンティブを付与したり、最小限の手間で気軽に参加申し込みできるよう工夫すれば、全社的な取り組みとして盛り上がります。また、多くの人が参加しやすい曜日や時間帯で研修を実施するなど、研修参加が実務にダメージを与えないよう配慮することも欠かせません。

    もし、リスキリングに取り組みにくい環境のままスタートしてしまうと、リスキリング自体が形骸化してしまいます。「やっているつもりなだけ」のリスキリングになり、期待していたような効果は得られません。

    必要なスキルや知識を定める

    一口にリスキリングと言っても、学ぶべき内容はプログラミングから英語までさまざまです。全ての内容を網羅したくなる気持ちも出てきますが、まずは必要なスキルや知識の範囲をある程度固めた方が良いでしょう。実務に役立つだろうと思えるスキルにしたり、今特にカバーした方が良いと思われる課題に合わせて選んだりすれば、やるべきことも可視化します。

    もし、手あたり次第のリスキリング施策になった場合、学ぶことが膨大すぎて却って社員のモチベーションを下げる恐れがあります。通常業務に加えてリスキリング研修に参加するのは容易なことではなく「仕事に役立つはず」という期待感を持たせることが重要です。とにかく広範囲を学んでおけば良いという付け焼刃的なプランにならないよう、注意しましょう。

    必要なプログラムの準備を行う

    リスキリングに必要な教育プログラムは、早い段階から準備を始め、定期的に効果検証や改善していきます。どの分野の知識を強化するのか、参加対象者が誰なのか、登壇者やプレゼンテーターのアテンドが必要か、何日間に渡ってどこで開催するか…など、考えることはたくさんあります。通常の研修開催時と同じか、慣れない場合はそれ以上の工数が発生するケースも珍しくありません。

    可能な限り複数人で構成されているリスキリング用プロジェクトチームを立ち上げるなど、軌道に乗るまでは人員も工数も割く必要があります。どうしても難しい場合は外部の研修機関を頼り、プロ目線でプログラムを考案してもらうなど工夫しましょう。

    モチベーション維持のための仕組みを作る

    リスキリングは「やりっ放し」になっているだけでは意味がなく、参加する社員のモチベーションもどんどん低下してしまいます。人事評価項目にリスキリング研修参加の有無を加えたり、早速実業務で役立つツールの使い方に焦点を当てて研修したり、モチベーション維持につながる工夫を凝らしましょう。

    また「古い知識だけに頼らず新しい知識を入れていく重要性」「リスキリングが今後の業務に貢献する内容」などもきちんと指導する必要があります。リスキリングに向けてポジティブなマインドセットになりやすく「なぜリスキリングするのか」という目的意識を社員個人に持たせることができます。

    モチベーションを維持できないと最初の勢いだけで形骸化してしまう恐れがあるので、特に注意しましょう。

    7.国内企業のリスキリング導入事例5つ

    ここでは、リスキリングを導入して成功した国内企業の事例を紹介します。どの分野のリスキリングに力を入れ、どんな課題を解決できたのか、企業ごとの取り組みをチェックしてみましょう。

    Yahoo!

    Yahoo!では2022年11月に新規事業であるプログラミングスクール「Yahoo!テックアカデミー」をリリースし、プログラミングスキルに関するリスキリングを新たな商材としています。「今後のYahoo!、未来のYahoo!」をテーマにした社内イベント「未来妄想会議」で出たアイディアを発端としており、Yahoo!が持つ技術を日本のIT人材不足に活用する方策として立ち上がりました。

    2023年秋には経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」に採択され、受講料の70%(最大35万円)を受講生が受給できるようになったことで、更に門戸が広がりました。リスキリングに関するニーズを事業として発展させた事例であり、これを機に社内におけるリスキリング意識も改革できたことが大きなメリットとなっています。

    NTTデータ

    NTTデータでは新たに「リスキリング採用」を始め、中長期的な目線でデジタル専門人材を強化する方向性にシフトしています。従来は「もともとデジタル知識豊富な人を採用すれば良い」という考えでしたが、採用コストが高く、優秀な人材はそもそも数が限られているため採用も難航していました。以降は採用後に改めてリスキリングをしていく「リスキリング採用」にシフトし、学ぶ意欲の高い人材を優先的に採用することに成功しています。

    実際に「リスキリング採用」で雇用した人材が入社4年目でDAP(Digital Acceleration Program)に参加し、ブロックチェーンやクラウド技術を習得した事例も存在します。現在はリスキリングを社内に広めるべく、デジタル人材育成を主導する部門に在籍しており、先端技術に関する自社の強みを強化できるようになりました。

    人材不足を解消しながら社内のリスキリング機運を高めた事例であり、現在も効果的な教育が続いているとわかります。

    富士通

    富士通では、SIerを中心としたIT技術者向けのリスキリングに取り組んでいます。システムの管理にSEの労力が割かれている現状を解決しつつDXを実現する取り組みであり、専門スキルを持つエンジニアの育成に貢献しました。エンジニアの学習コンテンツ制作に強いテックピット社と共同しているのも大きな特徴です。

    現在は最新のテクノロジースキルが習得可能なリスキングプログラム「Global Strategic Partner Academy」が開発されています。より短期間で効率よくリスキリングするノウハウを蓄積しつつあります。大手企業とIT分野指導に強い企業のコラボレーションで生まれた取り組みであり、成功事例のひとつと言えるでしょう。

    ワークマン

    ワークマンではExcel活用にフォーカスしたリスキリングを導入しており「社員全員がExcelを使いこなし、データ活用ができるようになる」ことを目標に掲げています。これに合わせて社員の平均年収を5年で560万円から100万円上げると宣言し、社内のモチベーションを喚起しましいた。経営側も「年収を上げる約束をした」という覚悟を持つことができ、形骸化しないリスキリング施策として定着しています。

    平均年収の100万円アップを無事に達成したあともリスキリング施策は続き、2023年10月の調査段階では当初の平均年収560万円から750万円まで伸ばすことができました。活性化していない社員の再教育にも役立ち、組織全体の生産性が向上した事例です。

    KDDI

    KDDIでは2020年8月1日に「KDDI版ジョブ型人事制度」を導入し、専門領域を設定して人事評価するシステムにシフトしました。全従業員に必要な基本的なスキルだけでなく、DX人材に求められる部門ごとの特化スキルを正しく評価できるようになったことで、分野ごとのスペシャリストを育成しやすくなっています。もともとゼネラリスト志向の高かった社内体制を払拭する出来事となり、高度な専門知識を持つ人材の確保に成功しました。

    KDDIが掲げる専門領域は、現在30個の分野にのぼります。データサイエンティスト等IT関連の分野だけでなく、営業、法務、人事などの領域に整理したことで「自分の強みに合った
    リスキリングをしよう」という機運の醸成に成功
    しています。

    8.リスキリングを導入するステップ

    リスキリングを導入するステップは、下記の通りです。

    1. 事業戦略に基づいて必要なスキルや理想的な人材像を策定する
    2. リスキリングプログラムを確定する
    3. 参加社員の選定や指導員のアテンドなど準備を進める
    4. 学んだことを実務に活かす
    5. 効果検証・改善を繰り返す

    具体的なリスキリングプログラムの内容や無事開催するための準備も大切ですが、初めてリスキリングに着手する場合は「事業戦略に基づいて必要なスキルや理想的な人材像を策定する」ことを重視しましょう。自社にどんな課題があるのか、どんな最先端技術を習得すれば実務に役立てられそうか、現場からのヒアリングも含めて丁寧に情報収集していく必要があります。

    そのうえで現場のモチベーションも維持できるような教育プログラムが作れれば、長く続く教育手法として自社に定着していくでしょう。宝の持ち腐れにならないよう、学びを実践で活用することも目標に据えて、定期的に効果検証や改善を繰り返すのもポイントです。

    9.まとめ

    リスキリングニーズが拡大している昨今、業種や職種、企業規模問わずリスキリングに着手する企業が増えています。時代の最先端技術を上手に使いこなすことができれば、業務効率化や優秀な人材の確保、そして新たなアイディアの創出などさまざまなメリットを実感できるでしょう。

    みらいワークスでは、プロ人材と企業のマッチングを行うサービスを展開しています。「リスキリングに着手したいが領域を絞り込めない」「自社の課題に合ったリスキリングプログラムがわからない」など悩みがあるときは、お気軽にご相談ください。



    (株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

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