ビジネスコラムColumn
最終更新日:2024.10.31
人事/組織構築/業務改善

【人事向け】戦略人事の意味とは?業務上の役割や成功させるためのポイントも詳しく解説します

戦略人事とは、組織の競争力を高める目的で実施される人事面での戦略や、それを担う人事部そのものを指す言葉です。今後少子高齢化に伴って労働人口が減少すると予想されているなか、人材活用の最大化はどの企業にとっても急務と言えるでしょう。

本記事では、戦略人事の役割や必要性について解説します。既に成功している企業事例も紹介するので、ご参考ください。

1.戦略人事とは経営戦略に欠かせない手段

戦略人事とは、人材管理を企業の全体戦略と結びつけ、組織の目標達成に向けた人事戦略を策定、実行する業務を指す言葉です。単なる「人事事務」ではなく、経営に即した形で人事面から経営戦略を考える手法として確立しました。

なお、経営戦略とは企業が長期的に持続可能な競争優位を確立し、目標を達成するために策定する計画を指します。企業のビジョンやミッションを実現するための具体的な行動指針が「経営戦略」であり、その実現に向けて人材を戦略的に活用するのが「戦略人事」です。

近年は、戦略人事を実行する人事職そのものを指して「戦略人事」と呼ぶことも増えています。短期的な人事施策に留まらず、長期的な人材育成や組織文化の構築に焦点を当てられるのが強みであり、必要なスキルや能力を備えた人材を育てられます。

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戦略人事と人事戦略の違い

戦略人事と人事戦略の違いは、経営視点の有無にあります。戦略人事の場合、自社の経営目標、経営課題、MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)実現に向けて人事的な側面から経営戦略を考案するのが特徴です。一方、人事戦略では「人手が足りないから補充したい」「管理職の危機管理意識が低いからリスクマネジメント研修を開催したい」など、具体的な施策を考案していきます。

どちらも人的資源の育成、獲得を目的としている点では同じですが、戦略人事の方がより経営目線を持つことが多いです。なお、戦略人事は人事施策を実行した後の経営数値や収益に責任を持つこと、人事戦略は採用戦略、育成計画などの人事的な施策にのみ責任を持つことと責任の所在にも違いもあります。

2.戦略人事による人材マネジメントの3つの例

ここでは、戦略人事による人材マネジメントの例を紹介します。自社にとってのウィークポイントと照らし合わせながら、以下の手法が有効か検討してみましょう。

下記でひとつずつ解説します。

社員育成における戦略人事の事例

社員育成における戦略人事の例として、既存社員のキャリアパスの構築支援やスキルマトリクスの導入が挙げられます。

キャリアパスが明確になっていると将来なりたい自分像がわかるため、現在のスキルと将来的に必要とされるスキルの照らし合わせができます。結果、個人でのスキルアップ施策やキャリア構築のための社内立候補制度を利用した部署異動などが積極的に行われ、従業員が自ずとスキルレベルの向上に務めるようになるでしょう。

また、スキルマトリクスとは、各職務に必要なスキルや能力を一覧化し、社員が保有する現状のスキルと照らし合わせることで育成ニーズを把握する手法です。社員個々のスキルが分かることで、不足しているスキルやさらに伸ばせるスキルも分かり、個別研修プランを策定することができます。社員が必要なスキルを身につける手助けができるので、組織にとっても個人にとってもメリットのある取り組みとなるでしょう。

このように、キャリアパスの構築やスキルマトリクスは、既存社員を大切にしつつ、社員の成長を企業の成長に直結させたいときに有効な手段と言えます。既に有能な人材が揃っているはずなのに、スキルやモチベーションを有効活用できていないと感じる企業におすすめです。

社員採用における戦略人事の事例

社員採用における戦略人事の例として、インターンシッププログラムやリファラル採用の導入、ターゲット人材を明確にした採用活動などが挙げられます。

インターンシップやリファラル採用などの採用手法は、採用プロセスの透明性を高めやすく、これまでにない新しいタイプの人材を確保に繋げることが可能です。

ターゲット人材を明確にした上で採用活動ができれば、自社でほしい人材像に合っている人をピンポイントで雇用できます。次世代リーダーに成り得るポテンシャルの高い若手から、経験、実績、知識ともに豊富なプロフェッショナル人材まで、望むタイプの人を省エネで採用できるようになるでしょう。

また、オファーのカスタマイズやSNSを使った採用活動などに着手することで、より狙ったターゲット層に求人へ応募してもらうことも可能です。ただし、いずれもノウハウが必要な手法だからこそ、戦略人事に任せるのが安心です。

社員評価における戦略人事の事例

社員評価における戦略人事として、コンピテンシーモデルの導入や360度評価などが挙げられます。

コンピテンシーモデルとは、特定の職務に必要なスキル、知識、行動特性を明確に定義し、社員の働きを評価するための枠組みです。社内におけるロールモデルを決めるような取り組みであり、コンピテンシーモデルに合致している人材を積極的に高く評価していきます。社員にとっては「会社から求められていることがわかる」というメリットにつながるため、自発的な努力を喚起することに繋げられるでしょう。

また、360度評価は上司、同僚、部下など複数の視点からのフィードバックを収集して人事評価をする手法であり、上司ひとりの「好き嫌い」による評価の偏りを予防します。客観的な人事評価ができるため納得度も高くなり、自己認識の向上や改善点の特定が可能です。

3.戦略人事に求められること

戦略人事に求められることは、以下の通りです。

それぞれの要素について解説します。

1.自社の経営戦略についての理解

戦略人事は、自社の経営戦略に関する深い理解が欠かせません。人事労務に関する専門的な知識や一般論的な意見も大切ですが、会社経営の在り方はその会社ごとに千差万別です。自社のMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)、創業の背景、経営者の思い、市場から期待されていること…など、ありとあらゆる内容を理解しているのが望ましいでしょう。そのうえで「なぜこの経営戦略なのか」「この経営戦略を達成できると自社がどう成長するのか」など、将来的な視点を持っていることも不可欠です。

反対に、自社の経営戦略について知見がないまま戦略人事を進めてしまうと、経営層や現場における考えに対してミスマッチのある施策が実行されてしまいます。社内のモチベーションが低下したり、期待通りの効果が発揮されず社内風土として経営戦略が定着しなかったりする可能性が高くなるので注意しましょう。

2.従業員や経営者層とのコミュニケ―ション能力

戦略人事は、従業員や経営者層にアドバイスを行う他、経営層とフラットかつ対等なコミュニケーションができる専門的な立ち位置でもあるので、経営に関する視点も持ち合わせているのが理想です。まず、戦略人事が人事の視点で経営戦略を考える役割を持つ以上、社長、会長や取締役などの役員とのコミュニケーションが欠かせません。

同時に、実務面での人事業務や現場からのヒアリングを担当することもあるため、従業員とのコミュニケーションも多々発生します。経営層と現場とをつなぐ橋渡し的な存在として機能するためにも、現場目線を忘れすぎないよう意識しましょう。

3.戦略人事における専門的な知識

戦略人事における専門的な知識も必要です。労働法などリーガル面での知識、人事関連トピックスに関するトレンド理解、経営指標の読み解き、社会保険労務士など士業とのコミュニケーションなども求められます。場合によってはHRテックを使いこなす知識や、人材データベースやタレントマネジメントシステムの扱いにも長けている必要があるでしょう。

戦略人事は、経営者目線で人材管理を実施するポジションであり、従来の人事、労務や最高人事責任者であるCHROとは別の役割を期待されるシーンが多いです。個人、組織の状況や人事施策の効果を可視化するスキルを持っていれば、効果的な戦略人事として機能できるでしょう。

4.戦略人事に必要とされる機能と役割4つ

戦略人事に必要とされる機能と役割は、以下の4つです。

それぞれの役割について解説します。

1.HRBP(HRビジネスパートナー)

HRBP(=Human Resource Business Partner)とは、経営者目線で人材管理を実施する役職、業務のことです。「人的資源(=Human Resource)に関する協力者(=Business Partner)」という意味合いが高く、人事部門に特化した顧問役や人事コンサルタントのような外部人材を招いて設定することもあります。

求められる役割、スキルは、高いレベルでの人事や採用、育成に関する専門知識です。その他、同業他社を含む市場のトレンドや自社が置かれた環境、財務状況を正確に読み取るスキルや、経営指標と照らし合わせながら自社の人事課題を浮き彫りにする情報整理スキルも求められます。そのうえで、多角的な視点で人事的なアドバイスができる人材が就任するのです。

2.CoE(センターオブエクセレンス)

CoE(=Center of Excellence)とは、給与計算や福利厚生対応などの定型的な人事業務を集約し効率化する役職、業務のことです。人事、労務管理に関する深い知見と専門知識が求められるという点では「HRBP(HRビジネスパートナー)」と同一ですが、CoE(センターオブエクセレンス)はより実務に近い部分を担います。

具体的には、ルーティンワークや定例業務の効率化を任されることが多いです。そのため、労働法に関する知識や、直近の労働市場におけるトレンドなどに精通している必要があります。他にも、自社が持つ人的資源に関する研究拠点として機能することも多く、タレントマネジメントに基づく人事異動案づくりや適材適所での人材配置などのシーンで実力を発揮するのが特徴です。

3.OD、TD(組織開発、人材開発)

OD(=Organization Development)は「組織開発」を、TD(=Talent Development)は「人材開発」を意味する用語です。組織開発では、組織の構造、文化、プロセス、従業員同士の相互作用に焦点を当て、チームビルディングやインナーコミュニケーションの促進を進めます。

人事開発では組織内の個々の能力やスキルを向上させることを目的にしながら、キャリア開発やパフォーマンス管理に努めるのが特徴です。つまり、企業文化の醸成や組織の方向性の決定など、社風や企業風土を左右する部分の醸成に貢献するのが主な業務となっています。

組織内での成長や変革を促進し、人材の能力を向上させるためのプロセスやアプローチを組み立てていくため、元々ある自社の文化に関する深い知見や、現場からの情報収集を最適化する理解力や、リーダーシップが求められるでしょう。

4.OPs(オペレーション部門)

OPs(=Operations)とは、組織内で業務やプロセスの実行や管理を担当する役職、業務のことです。戦略人事の施策を運用する機能として活用されることが多く、勤怠管理、給与管理、各種手続きなど従来のルーティン業務や戦略人事の施策実行、効果検証、データ分析などを担当します。特に実務的な性格の強い業務であり、日常業務の効率化や戦略人事実現を裏から支えるデータベース部門として機能するのが特徴です。

会社によっては、OPs(オペレーション部門)におけるルーティン業務部分を完全にアウトソーシングするケースもあります。これにより自社の人事部社員が戦略人事に専念できるようになり、非定型業務のノウハウやナレッジを蓄積する効果が発揮されるのです。従業員数の増大や企業規模の拡大に伴い、ルーティン業務のボリュームが人事部全体を圧迫するようになったら、アウトソーシングを検討しても良いでしょう。

5.戦略人事導入のメリット

戦略人事を導入するメリットは、以下の通りです。

  • 経営目標達成に向けた育成、採用計画を立案できる
  • パフォーマンスを最大化させる組織開発ができる
  • オペレーショナルリスクを管理できる
  • 現場ヒアリングに基づくボトムアップ型の提案がしやすくなる

戦略人事を導入する目的は、あくまでも「経営目標達成に向けた育成、採用計画を考案すること」です。目先の欠員補充やルーティン業務の効率化ではなく、人的資本の観点で経営をサポートすることが目的と考えましょう。つまり、従来の人事部業務から切り離した「攻めの人事戦略」ができるようになり、企業成長に大きく貢献するのがメリットです。結果、既存従業員のスキルを最大限活用できたり、パフォーマンスが上げられたりなど、より良い組織開発が叶います。

また、戦略人事はオペレーショナルリスクの予防にも役立ちます。オペレーショナルリスクとはヒューマンエラーや瑕疵によって発生するトラブルやクレームのことであり、戦略人事では企業経営の存続が危ぶまれるような大きなリスクを予防できるのもメリットです。たとえば、法令違反、知的財産権侵害、個人情報や機密情報の漏洩、リコールなど、一発で自社の信頼を失ってしまうようなリスクに対応できます。リスクが生じない仕組み作りはもちろん、万が一問題が起きたときの報告システムや対処法なども戦略人事で考案するので、リスク対策として導入する企業も少なくありません。

戦略人事が正しく機能して組織内に根付くと、やがて、現場の意見が反映されやすいボトムアップ型組織として成長します。経営層と現場で働く従業員の橋渡し的な存在として戦略人事が機能すれば「会社が従業員から何を期待されているか」「どうすれば従業員のモチベーションやエンゲージメントを最大化できるか」などの視点を得られます。

より優秀な人材が長く定着してくれる組織に育てるヒントが得られるので、社内改革のきっかけとして戦略人事を活用しても良いでしょう。

6.戦略人事を導入する際に生じる課題

戦略人事を導入する際に生じる課題として「人事データを分析、活用できる人材が社内にいない」「企業文化の変革が進まず戦略人事が定着しない」などが挙げられます。

戦略人事をする際は、人事データの収集、分析、活用が不可欠です。しかし、それができる人材が社内にいなかったり、表面上の分析だけで終了してしまったりすると、理想的な戦略プランが描けません。結果、企業文化の変革が進まず、戦略人事が定着しないなどミスマッチが生じます。

また、戦略人事が一貫して実施されないと、社員からの信頼性や戦略効果が損なわれるのもデメリットです。試行錯誤しながら実行することも大切ですが、方針が定まっていないと却って社員に不信感や不安を与えてしまうので注意しましょう。

7.戦略人事を成功させるための組織づくりに必要な3つのポイント

戦略人事成功のための組織作りのポイントは、以下の通りです。

理想的な戦略人事のため、以下をチェックしておきましょう。

1.戦略人事と現場との信頼関係を構築する

戦略人事と現場との信頼関係は、円滑であり対等なコミュニケーションができることが重要です。パワーバランスが崩れてどちらかが圧倒的上位な立場についてしまうと、トップダウン型の意思決定しかできなくなったり、従業員から素直な意見を集められなくなったりします。また、現場の意見が強すぎても経営的な観点が抜け落ちてしまいやすく、経営目標や施策の迷走に繋がるため注意しましょう。

円滑なパートナーシップを構築するには、現場の期待に応える戦略人事である必要があります。現場にとっての働きやすさや利便性の高い業務改革などを意識しながら、経営面でも実務面でもwin-winな施策を考案するのがポイントです。

2.経営戦略を明確にする

人事戦略だけでなく、事前に自社の経営目標が何か、経営目標を達成するための課題点を整理し、改善、解消に向けた経営戦略を描くことで戦略人事としてするべきことが自然と理解できるでしょう。特に人事的な側面で貢献できそうなところがないかを浮き彫りにしていくことが重要です。

なお、戦略を考案した後は、プラン通りに実行することと効果測定をすることを意識しましょう。「実行しっぱなし」「戦略を策定しただけ」になって形骸化しないよう、具体的な数値目標を立てておくのもおすすめです。

3.施策に整合性を持たせる

施策に整合性がないと、説得力のある戦略人事になりません。なぜその戦略が自社の成長に貢献するのか、現場では具体的にどんな課題に悩んでいるのかなど、多角的な視点で分析しておきましょう。人事面だけの改革になっている場合、ただの「人事戦略」として終わってしまうため、必ず自経営戦略や経営目標と整合性が取れているか確認してください。

8.戦略人事を実施する手順

戦略人事を実施する際は、以下の手順で進めましょう。

  1. 経営ビジョンの理解
  2. 人材ビジョン策定
  3. 中長期経営計画の理解
  4. 中長期人事計画の策定
  5. 採用計画と人材育成計画の策定
  6. 組織人事戦略

まずは理想的な戦略人事にするため、経営ビジョン、経営目標、経営課題を理解しておく必要があります。課題のなかで人事的な側面から解決できそうなことがあれば、施策策定の前段階である人材ビジョンの策定に進みましょう。

その後は、中長期経営企画の理解、中長期人事計画の策定へと進み、実際の施策内容や実施時期などについて具体的に考えていきます。どんどん細分化していくことで採用計画と人材育成計画の策定も進むので、あとは組織人事戦略と合わせて実施の準備を進めるのがプロセスです。

9.戦略人事の成功した企業事例6つ

最後に、戦略人事に成功した企業の事例を紹介します。どのような課題を、どんな手法で解決したのか、参考にしてみましょう。

それぞれの経営課題に合った戦略人事に成功した事例として、参考にしてみましょう。自社に共通する部分があれば、アレンジしながら活用するのもおすすめです。

1.日清食品株式会社

日清食品株式会社では「会社の未来の価値を伸ばす人事」をテーマに、新しい食の文化を創造し続けるイノベーティブな組織を実現するための戦略人事を始めています。

創業者、安藤百福の理念を学ぶ創業者理念研修は、自分が日清食品に在籍していることを誇りに感じたり、自社の社会的役割や存在意義を学んでモチベーションに変換したりすることで、生産性向上に貢献しています。

その他、組織の中核を担う50代の社員を対象としたセルフデザインセミナーや、管理職としてのマインドセット習得を目的としたアウトドア研修なども豊富に実施しているのが特徴です。人的資本の育成にコストと時間をかけることで、自己啓発や資格取得支援もできるようになりました。

2.オムロン株式会社

オムロンでは、従業員が楽しみながら社会的課題を解決する「ソーシャルニーズの創造」にチャレンジできる環境づくりをテーマに、会社と従業員がともに成長できる状態になるよう戦略人事を始めています。「共鳴するマネジメント」をひとつのテーマとして設定し、グローバルリーダー作りや多様な人材の活躍にも焦点を当てました。

結果、将来自社の成長を担う可能性がある人財を発掘できるようになった他、優秀な人材をサクセッサーとして育成するノウハウが蓄積され、人材パイプラインの充足につながっています。実際に、グローバルコアポジションの約3分の1にあたる海外重要ポジションの現地化比率は、戦略人事を始める前と比較し70%の増加を叶えました。

3.セブン・イレブン・ジャパン

セブン・イレブン・ジャパンでは、タレントマネジメントシステムの導入による「適材適所の人材配置」を意識しています。タレントマネジメント、人事評価、人材育成管理を備えたシステムを導入し、人材情報を一元管理する戦略人事となりました。

結果、一人ひとり異なるスキル、経験、資格、属性、異動歴、過去の人事評価内容はもちろん、キャリアアップ思考やモチベーションなど定量評価されづらい部分も可視化できるようになっています。よって、人材異動シミュレーションや研修まで含めた人材育成が簡略化され、かつ離職予兆の抽出が可能になりました。

人事システムの再構築により、人事部門を事務業務から企画業務へシフトできたのも特徴です。人的資本をKPIとしてモニタリングできるようになり、戦略人事の成果も可視化しやすくなっています。

4.ヤフー株式会社

Yahoo!では、社員個人のスキルを引き出して活用できるよう、100以上の人事施策を行っています。人事の部署名を「ピープル・デベロップメント」に変更し、社員の現状や考えていること、本質的なニーズを理解しながら、人事戦略を考案する方向性にシフトしました。

これにより、1on1ミーティングやコアタイム時間の見直しなど働き方に関する部分や、育児休暇の規程充実化など社内就業規則に関する部分まで、幅広い改革が進んでいます。

また、事業や会社の動きに合わせ、評価制度も随時アップデートしたことで、時代に合った人事評価ができるようになりました。時短正社員やパート、アルバイトの働きぶりも正しく評価できるようになり、多様な人材が集まる会社として発展しています。

5.楽天グループ株式会社

楽天グループでは「勝てる人材、勝てるチームを作る」という基本目標に立ち返る「Back to Basics Project」を立ち上げ、大規模な人事改革プロジェクトを進めています。多様な人とアイデアがオープンに行き交う企業文化を作ることで、他にはない企業価値を創造すること、および世界におけるリーディングカンパニーとして機能することを目標に据えました。

多様性に富んだ従業員一人ひとりが最大限に力を発揮できるような制度を作ることで、世界中から優秀な人材が集まるようになり、現在では従業員の出身国、地域数が100を超えています。

6.ネスレ日本株式会社

ネスレ日本株式会社では「社員が最も重要な資産である」という意識のもと、人材の採用、適材適所の配置、能力開発のサポート、社員が「働きがい」を持てるような適正かつ公正な評価、処遇の実現を叶えています。

同時にパフォーマンスカルチャーの推進も意識しており、ネスレの報酬についての考え方である「Total Rewards Policy」を人事評価制度に組み込むようにしました。若手であっても勤続年数が低くても、パフォーマンス次第では高く評価される組織体制にしたことで、個々のモチベーションと生産性を上げ、収益を意識できる組織として機能できるようになっています。

目指すべきは働き方改革ではなく「経営改革」であるという考えを採用し、経営の観点から人事施策を考案、実行したのは、まさに戦略人事と言えるでしょう。なおかつワークライフバランスに優れるイノベーションカルチャーとして機能できれば、さらに生産性の高い組織として成長することが可能です。

10.まとめ

人事部に求められる役割は年々変化しており、より優秀な人材を長く安定して確保するためにも「戦略人事」の視点は欠かせないものになりつつあります。そのため、従来の人事、労務に関する業務だけでなく、経営に直結する人事戦略の考案を期待されるようになっているので、より専門性の高い人材や経営コミュニケーションのできる人が重宝されるようになるでしょう。

本記事で紹介した内容を参考に、自社に合う人的資源の最適化施策をイメージしてみてください。
もし自分たちだけで戦略人事含めた人事改革を進めるのに不安がある場合、外部のプロ人材の活用を検討することもひとつの解決策となるでしょう。
第三者の目線で、今まで気づくことのできなかったより良い解決策を生み出すことができる可能性もあるでしょう。

なお、株式会社みらいワークスは、日本最大級のプロフェッショナル人材データベースを運営している企業です。
「人事改革で外部の知見を活用したい」
「経営と人事の戦略を融合して、より良い企業活動に活かしていきたい」
などお考えの場合は、お気軽にお問い合わせくださいませ。



(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

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