【完全版】SES契約(システムエンジニアリング契約)とは?派遣や請負との違いから、メリット、デメリットまで解説
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最終更新日:2024.12.02
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【完全版】SES契約(システムエンジニアリング契約)とは?派遣や請負との違いから、メリット、デメリットまで解説

SES契約とは、派遣会社に依頼してエンジニアを派遣してもらい、そのエンジニアの労働時間に対して報酬を支払う契約形態のことです。人材不足の解消やリソース削減などのメリットを得られるほか、業務効率化や売り上げの向上につながるとして、IT業界で多く用いられています。

ただし、よく知らないまま導入すると、偽装請負などの法律違反を犯してしまう可能性があるのです。

そこで今回は、SES契約の基本情報について詳しく解説します。SES契約と派遣契約や請負契約の違い、SES契約を利用するメリット、デメリットも解説するため、人材不足で悩んでいる企業担当者の方はぜひ最後までご覧ください。

SES契約(システムエンジニアリング契約)とは?

SES契約とは、派遣会社から派遣されたエンジニアに労働力や技術力を提供してもらう契約形態の一つです。書面上ではSES契約ではなく、準委任契約と表されるため留意しておきましょう。

契約したエンジニアは、主にシステム運用や保守、インフラ環境構築などを行います。高いスキルを持ったエンジニアへ部分的に仕事を依頼することで、業務効率化に繋がることから、IT業界ではSES契約が多く用いられています。

なお、SES契約は、成果物ではなく労働時間に対して報酬が支払われるのが一般的であり、成果物のクオリティによって報酬が左右されることはありません。労働時間に対する報酬の支払い漏れが無いよう、きちんと理解しておきましょう。

SES契約の報酬を決定する方法

SES契約におけるエンジニアの報酬は、SES企業(=エンジニアを派遣する会社)によって決められたエンジニアの単価と、発注元の企業が希望する労働時間を掛け算した結果に基づいて決定する場合が多いです。

たとえば、月額60万円のエンジニアを1ヵ月発注した場合、60万円×1ヵ月で報酬は60万円になります。

なお、SES契約におけるエンジニアの報酬は、エンジニア自身が持っているスキルおよび経験によって左右されることが多いです。小規模なアプリの開発しか担当したことないエンジニアと、大規模なアプリの開発にかかわった経験のあるエンジニアでは、後者の方ほうが単価が高くなります。SES企業によって決められたエンジニアの単価によって支払う報酬額が大きく異なるため、まずは相談してみるのがおすすめです。

ただし、単価が高いからといってプロジェクトとの相性がいいとは限りません。スキルや経験があっても、プロジェクト内容と嚙み合わない可能性があるため、依頼するエンジニアは慎重に選びましょう。

2.SES契約と他の契約形態の違い

ここからは、SES契約と他の契約形態の違いについて紹介します。契約形態ごとに指示を行う者と報酬の対象が異なるため、自社に合った契約形態を選ぶためにもそれぞれの特徴を理解しておきましょう。

契約形態 指揮監督権 報酬の対象 成果物が完成しない可能性 法律行為の有無
SES契約 派遣元の企業 労働時間 あり なし
派遣契約 派遣先の企業 労働時間 あり なし
委託契約 委任者 労働の提供や労働提供の成果 あり あり
請負契約 派遣元の企業 成果物 なし なし

なお、SES契約には準委任契約が利用されます。準委任契約とは、業務委託契約の一つであり、成果物の完成責任を行わないのが特徴です。

人材確保を検討している企業やエンジニアの不足に悩んでいる企業は、ぜひ以下の内容を参考にしてみてください。

SES契約と派遣契約の違い

SES契約と派遣契約は、指揮命令権を持っている者に違いがあります。

SES契約の場合、エンジニアへの指揮命令権が派遣元の企業にあるため、自社からエンジニアに対して直接命令することができません。ですがその分指示を出す手間がなく、リソースが確保しやすい点がメリットです。

一方、派遣契約の場合は指揮命令権が派遣先の企業にあるため、派遣先の企業がエンジニアに対して直接指示を行うことができます。指示を出す分手間が増えてしまいますが、自社の求めている成果を確実に得られることがメリットです。

そもそも、派遣契約は派遣会社が雇っている社員を送り出し、派遣先の企業から定められた労働に従事する際に結びます。SES契約と派遣契約では、指揮命令権を持っている者や業務内容が異なるため、混同しないようにしっかりと確認しておきましょう。

SES契約と委任契約との違い

SES契約と委任契約は、依頼する業務が法律行為に関わる業務かどうかの違いがあります。

SES契約は、法律行為に関わらない業務が契約内容である一方、委任契約は法律行為に関わる業務が含まれる契約内容です。たとえば、弁護士に対して弁護を依頼する場合には、委任契約が用いられます。

なお、エンジニアの仕事には法律行為にかか2わるものがないため、基本的に委任契約が用いられることはありません。

SES契約と請負契約の違い

SES契約と請負契約は、指示を行う者と報酬の対象に違いがあります。

SES契約は派遣元の企業の指示に従って業務を遂行しますが、請負契約は派遣先の企業の指示に従って業務を遂行します。また、SES契約における報酬の対象は労働時間ですが、請負契約の報酬の対象は成果物です。

請負契約の場合、労働時間に対して報酬は発生しないため、その点に留意しましょう。

3.SES契約の5つのメリット

SES契約のメリットは主に以下の5つです。

SES契約をうまく活用するためにも、5つのメリットをチェックしておきましょう。

1.自社の目的に合ったエンジニアを確保しやすい

SES契約を利用すれば、さまざまな経歴や特徴を持つエンジニアの中から人材を探せるため、自社の目的に合わせた求めている人材と効率的に出会うことが可能です。たとえば、システムの保守をする目的であればセキュリティ対策やプログラミングスキルが高いエンジニアと契約することで、滞りなくプロジェクトが進行できます。

自社に知見がなく人材育成が難しい場合、教育の必要がないSES契約はうってつけでしょう。自社の目的に合ったエンジニアを確保したいと考えている企業は、SES契約の利用を検討してみてください。

2.時間や人数の制限がないため人材不足が解消できる

SES契約は、即戦力となる人材とすぐに契約できることから、早急なエンジニア不足の解消が期待できます。「今すぐ人材が欲しい」「一時的にだけ人材が欲しい」といった場合には、SES契約が最適と言えるでしょう。

また、SES契約は、契約期間が定められていないうえに契約人数の制限が設けられていません。求めているスキルや資格を持った人材と長期間にわたり契約が行えるため、数ヵ月単位のプロジェクトはもちろん、数年単位のプロジェクトもスムーズに進められます。

3.エンジニアを教育するコストやリソースを削減できる

SES契約を活用すれば、教育や研修などを行わずに有能な人材を獲得できるため、教育にかかるコストやリソースを削減できます。システム開発を円滑に進めるには、高いスキルを保有したエンジニアの存在が欠かせません。そこで、SES契約を活用することで、未経験の人材を一から教育するコストを削減できるでしょう。

また、採用活動にかかる工程や時間を短縮できるのもSES契約の大きな特徴です。一般採用の場合は、企業と求職者の相性などもあるため雇用に時間を要しますが、SES契約の場合は、必要なタイミングで労働契約を結ぶだけで人材が確保できるため、時間がかかりません。そのため、採用を行うよりも速く優秀な人材を確保できます。

採用や教育にかかるコストを最小限に抑えつつ、優秀なエンジニアを獲得したいと考えている企業は導入するのがおすすめです。

4.一部の工程ごとに依頼できるため、人材確保とコスト削減が同時に行える

SES契約を使えば、人材が不足しているプロジェクトに対して、必要な人数だけ採用できます。プロジェクトが終わり、保守運用だけの段階になったら、必要な人数だけ残して契約を解消することも可能です。人数を最小限に減らせば、運用にかかる人件費を大幅に削減できます。

プロジェクトごとにエンジニアの入れ替えが可能な他、高い能力を持ったエンジニアだけを確保できるため、さらなる成長を図りたい企業にぴったりです。

5.エンジニアが常駐してくれる

契約したエンジニアは自社に常駐してくれるため、スムーズにやり取りが行えます。オンラインでは説明がしづらい部分があったり、早急に対応してほしいことが出てきたりした場合でも、スピーディーに問題が解決できるでしょう。

また、突発的に案件が舞い込んできた場合でも人手が充足しているため対応しやすく、結果的に売上の向上にも繋がります。

4.SES契約の4つのデメリット

SES契約のデメリットは主に以下の4つです。

思わぬトラブルを防ぐためにも、4つのデメリットをしっかり押さえておきましょう。

1.契約期間中にプロジェクトが完遂しない可能性がある

SES契約は、プロジェクトの進捗管理に問題があったり、頻繁に仕様変更が行われたりすると、契約期間内にプロジェクトが終わらない恐れがあります。その場合、契約延長のために追加コストがかかってしまうほか、他のプロジェクトに影響が及んだり、クライアントに迷惑がかかってしまったりすることも多いです。

契約期間中にプロジェクトを完遂させるためにも、管理体制の確立や余裕を持った契約を心がけましょう。

2.エンジニアのスキルに差がある

依頼するSES企業によっては、自社でエンジニアを選定できません。SES契約で求めていたスキルや技術を持っていないエンジニアが派遣されてしまった場合、プロジェクトの進行に大きな影響を与えます。

エンジニアのスキルに満足できない場合は契約する人材の入れ替えを行う必要があり、その分手間や時間がかかってしまうため注意が必要です。
エンジニアとのミスマッチを防ぐためにも、契約前にSES企業と求めている技術レベルのすり合わせを行っておきましょう。

3.技術的な指導は法律違反になる

企業がSES契約をしているエンジニアに対して技術的な指導をしたり、現場の判断で指示をしたりすると「偽装請負」と呼ばれる法律違反になってしまいます。偽装請負に該当した場合、企業がペナルティを負うことになってしまうため、SES契約を行う際は必ず契約内容や法律をチェックしておきましょう。

次項からは偽装請負について詳しく解説していくため、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。

4.引き抜きはできない

SES契約で採用したエンジニアは、SES企業の正社員です。そのため、優秀なエンジニアがいたとしても、引き抜きや正社員雇用をするのは原則禁止となっています。契約書に引き抜き禁止の旨やペナルティが記載されていることもあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。

また、SES契約ではなくフリーランスエンジニアであれば本人との直接契約となるため、本人に正社員雇用の打診をすることが可能です。人手不足の慢性化を解消するために、試験的にエンジニアを採用して、実力を測ってから正社員雇用したいと考えている場合にはフリーランスエンジニアとの契約がおすすめです。

5.偽装請負とは?SES契約を結ぶ際の3つの注意点

偽装請負とは、エンジニアがSES契約を交わしているにもかかわらず、自社で直接エンジニアに対して指揮命令を行う違法行為のことです。直接エンジニアに対して指導した場合、SES契約ではなく偽装請負と判断されて罰金などのペナルティが課せられます。

また、エンジニアに対して業務に必要な機材や備品を提供する場合も同様です。SES契約ではなく偽装請負と判断され、ペナルティを課せられる恐れがあります。

知らず知らずのうちに偽装請負にならないよう、以下の内容をしっかりとチェックしておきましょう。

1.契約する前に指揮命令権について確認しておく

指揮命令権とは、SES契約の受託会社がエンジニアに対して指導や命令をする権利のことを指します。

指揮命令権を持っているのはあくまでもSES契約の受託会社であり、自社ではありません。自社が現場でエンジニアに対して指導や命令を行った場合、偽装請負と判断される可能性があるため注意しましょう。

指揮命令にあたる行為の例

指揮命令にあたる行為は以下の通りです。

  • 使用中のものとは別のプログラミング言語を使用させる
  • 業務の優先順位を変更して別の業務を行わせる
  • 突然の仕様変更に基づいて修正対応を行わせる
  • 別プロジェクトの業務を行うように指示する
  • 作業時間に関する指示を行う
  • 業務場所に関する指示を行う

エンジニアに対して上記を行った場合、指揮命令に当たり、偽装請負と判断される可能性があります。企業とエンジニアは雇用関係になく、業務はエンジニア側が自発的に遂行するものというスタンスを覚えておくことが大切です。

2.トラブルになりやすい要素は契約書で明確にする

ペナルティを課せられないためにも、トラブルになりやすい要素はあらかじめ契約書で明確にしておきましょう。トラブルになりやすい要素は以下の通りです。

  • 始業時間または終業時間の変更
  • 契約書に記載のない残業に関する指示
  • 勤務場所の変更
  • システム開発と関係のない事務作業の依頼
  • 朝礼への参加を義務付ける

依頼者(発注元の企業)はエンジニアに対して、始業時間または終業時間を変更したり、残業を指示したりすることができません。作業時間に関する指示を行う権限がないため、作業時間に関する見直しを行いたい場合はSES契約の受託会社に相談しましょう。

なお、エンジニアの勤務場所を別の事業所や本社へ変更したい場合も同様です。契約書に記載された業務場所以外でエンジニアを作業させてしまうと、指揮命令にあたります。エンジニアの勤務場所を変更したい場合は、事前にSES契約の受託会社へ相談し、話し合いを行いましょう。

3.偽装請負が発覚すると大きなペナルティが与えられることも

知らず知らずのうちに偽装請負をしてしまっていて、それが発覚した場合、大きなペナルティが与えらます。

たとえば労働者派遣法違反となってしまった場合、労働者派遣法59条1号によると「派遣元事業主に対して1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科されます。その他職業安定法や労働基準法に違反した場合にも懲役または罰金の対象となるため、必ず注意しましょう。

ペナルティを受けてしまうと従業員や経営層に大きなダメージを与えるだけでなく、社会的評価や株価が低迷してしまうなどさまざまなデメリットがあります。SES契約を行う際には、必ず偽装請負に注意するようにしましょう。

6.SES契約を結ぶ方法

SES契約を結んで優秀なエンジニアを獲得したいなら、SESの派遣会社に依頼するのがおすすめです。SESの派遣会社はさまざまなエンジニアを保有しており、契約期間や求めているスキルを提示するだけで最適なエンジニアを紹介してもらえます。営業担当者が親身に相談に乗ってくれる場合もあるため、SES契約を活用しての人材獲得が初めての場合でも安心です。

また、派遣会社ではなく、プロ人材会社の営業担当者に相談するのも良いでしょう。プロ人材会社の営業担当者に相談することで、最適な人材を効率的に紹介してもらえます。
なお、派遣会社だけにこだわると、なかなか思ったような人材を見つけられない場合があります。優秀な人材を効率的に見つけたいなら、派遣会社だけでなく、業務委託を専門としている企業に相談して契約形態の変更も検討しましょう。

7.まとめ

今回は、SES契約の基本情報について紹介しました。SES契約は、人材不足の解消やリソース削減だけでなく、業務の効率化にも効果が期待できます。

また、SES契約はエンジニアを教育するコストの削減にもつながるため、エンジニア不足で悩んでいる企業は、ぜひSES契約の導入を検討してみてください。

なお、株式会社みらいワークスが運営する「フリーコンサルタント.jp」では、貴社のプロジェクトにマッチしたエンジニアを紹介いたします。スキルや雇用期間、人数をしっかりとヒアリングしたうえで最適な人材を紹介させて頂きますので、お気軽にお問い合わせください。




(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

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