生成系AI活用プロジェクトで外部人材を起用。PJ責任者が感じた、社員とは全く異なる外部人材のメリットとは?
フリー株式会社 CIO(最高情報責任者:Chief Information Officer)土佐 鉄平氏
はじめに
スモールビジネス向けのクラウド型会計ソフトで、国内トップクラスのシェアを誇るフリー株式会社。最近はバックオフィス業務の支援サービスも展開するなど、新しい技術を取り入れながら進化を続けています。
急成長によってフリー社の経営課題のひとつとなっているのが、社内のナレッジマネジメントです。そこでフリー社では、ChatGPTベースの問い合わせ対応bot開発プロジェクトを立ち上げました。しかしプロジェクト発足時は、どこまでの効果が出るかが曖昧な段階。一方でプロジェクトにはスピード感が求められていました。
プロジェクトの責任者であり、フリー社のCIO(最高情報責任者:Chief Information Officer)を務める土佐鉄平さんは、外部人材の起用を決断。土佐さんは「技術力や理解力に優れた外部人材の方のおかげで、本当に助かりました」と語ります。
今回は土佐さんがフリー社のCIOになるまでのご経歴をはじめ、外部人材の起用に至った経緯、外部人材を活用するメリットついて伺いました。
フリー株式会社
2012年創業。「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、スモールビジネス向けのクラウド型会計ソフトをはじめ、スモールビジネスの経営効率化につながるサービスを開発・提供する。2019年には東京証券取引所マザーズ(現在の東京証券取引所グロース)への上場を果たす。2023年3月時点で、法人向け会計ソフトの国内シェア1位を誇る。
※役職は、インタビュー実施当時(2024年2月)のものです。
メガバンク系列のシステム会社を経て、社内ITの全責任を負うCIOに就任
私はフリーに入社する前、実は13年ほどメガバンクのシステム系子会社にいました。大学での専攻は文系でしたが、プログラミングのアルバイトをしていたので、金融ITをやりたいという想いで入社しました。ただ実際はキャッシュカードや通帳の紛失といったオペレーション関連の担当になりまして。それはそれで重要ですが、私としては思っていた仕事と違うなと感じていました。
その後は内製プロジェクトも担当するようになったのですが、とはいえ銀行の子会社という立場ですと、ウォーターフォールの最も上流のところを担います。要件定義やベンダーのマネジメント業務がメインで、実装はほぼ行いません。私としてはもう少し実装するところに関わりたいと思いながら、働いていました。
入社8年後にようやく念願の研究開発部門に異動できました。当時はビッグデータに注目が集まっていた時期で、そういった新しい技術に近いところで仕事ができたので、すごく楽しかったですね。
5年ぐらいその仕事を続けていましたが、5年経つとコンフォートゾーンに入ってしまっていることに気づきました。自分自身で新しいチャレンジを作っていかなければいけないと考えていた時、もともと知り合いだったフリー社の社長である佐々木から「新しいオフィスに遊びに来ませんか」と声をかけてもらいました。
素直に遊びに行ったつもりが、気づいたら面接になっていまして。もともと転職するつもりはなかったのですが、これもひとつの縁だなと感じ、フリー社に入社しました。
以前から自分の中にあった「金融ITをやりたい」という想いとマッチする会社だと思いましたし、スタートアップへの憧れもありました。前職では研究活動に取り組む中でベンチャーの方とやり取りする機会が増えていて、自分もスタートアップでバリバリやってみたいという想いが出てきた頃でした。
2015年フリーへ入社しまして、最初の2年間は会計ソフトのエンジニアをしながら、兼務でCSIRT(※Computer Security Incident Response Team :情報セキュリティに関する事故などの事象を対応する組織)も担っていました。弊社では当時、他のメンバーも何かしら兼務をしていたと思います。
2年くらい経った時に上から専任になって欲しいと言われまして、CISO(Chief Information Security Officer:最高情報セキュリティ責任者)を名乗ることになりました。
ただCISOになってみて、CISOは経営においてブレーキ役になることも多い仕事です。そこで「アクセル役となるCIOを新たに採用しましょう」と経営陣に進言したところ、「じゃあ君がやって」と言われ、CIOをすることになりました。このあたりはスタートアップならではという感じですね。
そんな流れで、フリーに入社して3年目くらいから、CISO兼CIOという肩書になりました。その後入社したメンバーにCISOを任せることができましたので、現在はCIO専任となっています。私の組織にはメンバーが約40名いまして、社員と業務委託の方が20人くらいずつという構成です。
外部人材の活用を考えたきっかけは、さまざまな企業のCIOが集まるコミュニティ
実はみらいワークスさんにお願いするまで、フリーランスを受け入れた経験はありませんでした。前職で銀行の子会社にいた時も、エンジニアの方などは基本的に大手Sierにお願いしていたので。Sierに委託する中で、もしかしたら個人事業主の方がいらっしゃったかもしれませんが、個人の方を直接受け入れるケースはほとんどありませんでした。
みらいワークスさんのことを知ったのは、あるコミュニティがきっかけでした。いろいろな会社のCIOが集まって情報交換するコミュニティがあり、私も参加しています。このコミュニティには、某通情報・通信業でCIO兼システム本部長をされている方や、某小売業で非常勤CIOをされている方など、著名な方も参加していらっしゃいます。
みらいワークスさんのようなフリーランスのコンサルタントの方々を紹介する業態自体、実は知りませんでした。でもCIOのコミュニティに参加している方々からみらいワークスさんの良い評判を聞きまして。そこで数年前に一度お願いしました。
その時、プロジェクトが曖昧な段階でも外部の方をアサインできるところがすごくありがたいなと感じていました。今回も同様にすごく曖昧なフェーズで、何を作るのかとか何がゴールなのかとか、明確ではない状態でした。この段階で動ける人材を確保するには外部人材の方が必要だと考え、みらいワークスさんにご相談しました。
スキルを持つ人材は社内にもいます。ただ期待効果が曖昧な段階のプロジェクトですと、どうしても他の重要な仕事を担当している社員をすぐにアサインできません。そうなるとひとまず私ひとりで頑張ることになりますが、私自身も他の業務がありますので、なかなか手が回りません。そういう時にすぐ即戦力となる人材を投入できるところは、すごくメリットがあると感じています。
外部のフリーランスの方に依頼する場合、「曖昧な状態ではどこまでお願いしていいかわかりづらい」というケースもあるかもしれません。私の場合はまず「自分ならこう動くだろう」というところを明確にして、やりたいこと、まず着手すべきことをお伝えするようにしています。ここが共有できれば、スムーズに進むと考えています。
フリーランスを受け入れるにあたって、数名の方とお顔合わせさせていただきました。今回は、誰もやったことのない新しいことをしようという案件です。これまでの経験を見るというよりは、ふわっとした説明でも「こういうことですね」という反応をいただけるかを確認しました。仮説しかない中でもやりたいことを共有でき、通じ合えるか。ここをすごく重視しました。
外部のフリーランスの方には、求めていたこと以上のサポートをしていただいている
お顔合わせの結果、1名の方にプロジェクトに参加していただきました。実は、当初フリーランスの方に技術的なところをお願いするつもりはありませんでした。しかし今回お願いしたフリーランスの方は技術面でもバックグラウンドをお持ちで、技術面でのサポートもしていただいています。「こういうことを試したい」と話すとすぐに理解してくださり、成果物を出していただけるので、大変助かっています。
さらにマネジメントスキルもお持ちの方でしたので、今回数名の派遣メンバーの取りまとめ役も担っていただいています。
また人柄も素晴らしいですね。今回のプロジェクトではAI関連のベンダーと連携していまして、フリーランスの方が弊社とベンダーの間に入って会話を翻訳していただき、助かりました。
難しい局面でもフリーランスの方が柔軟でフラットに対応してくださったおかげで、話をスムーズに進めることができました。正直言うと、ここまでお願いできるとは考えていませんでした。
弊社では社員は週に5日出社という働き方ですが、フリーランスの方には週に1日出社していただき、定例会に参加していただいています。やはり定期的に対面で話した方が、お互いにとってやりやすいと思いましたので。それ以外はリモートで対応していただいています。
インパクトが出るかわからないけれど、スピード感は求められる。こんな時に外部人材はすごく有効だと思う
抽象的でどこまでのインパクトが出るかわからない、でもスピード感は求められる。そういったシーンで、スポットでお願いできるみらいワークスさんのサービスはすごく使いやすいと思います。
おかげさまで今回も、プロジェクトの方向性がかなり見えてきました。現在は社員にもプロジェクトに入ってもらい、フリーランスの方と社員が連携しながら進めています。もう少しでリリースできそうなところまで来ている段階です。
今回のプロジェクトは社内向けの開発ですが、ChatGPTに与えるナレッジを徹底的にチューニングして、そのノウハウを社外向けサービスにも展開できるかもしれないと考えています。
今回のような、体制がないというだけで諦めてしまうのは惜しいテーマは、今後も出てくると思っています。今後も同様のテーマが出た時には、ぜひ外部のフリーランスの方にサポートしていただきたいと考えています。既存のリソースにとらわれず、新しいことにチャレンジする姿勢を、大事にしていきたいですね。