Vol.2 フリーランスの存在が、
社内のミッションに対する意識を一変させた
タメニー株式会社
(旧社名 株式会社パートナーエージェント)
担当者名:経営企画部長 久保理 氏
1975年千葉県出身。1997年早稲田大学政治経済学部在学中に公認会計士二次試験合格。翌年卒業し、プライスウォーターハウス(現在のプライスウォーターハウスクーパーズ)に入社。その後デロイトトーマツ ファイナンシャルアドバイザリー社へ転職、一般企業や投資ファンドなど幅広いクライアントへM&Aの意思決定サポートを行なう。2019年7月にタメニー社へ入社。主な著書は『手にとるようにわかるM&A入門―会社を揺さぶる「合併・買収」!』(かんき出版)。
※役職は、インタビュー実施当時(2020年2月)のものです。
https://tameny.jp/
2006年9月の創業以来成約率にこだわった婚活支援サービス事業を手掛け、一般的な結婚相談所の成婚率が約10%と言われる中、タメニー社では約27%という業界1位の成婚率を誇る。専任のコンシェルジュが活動プランを計画、PDCAサイクルを繰り返しながら成婚までをサポートする独自のサービスメソッドを開発。全国24か所の結婚相談所を通じてマンツーマンの婚活支援サービスを提供する。
2015年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たし、その後も積極的にM&Aを行ない婚活支援サービス以外の結婚関連事業にも進出。2019年4月にはカジュアルウェディング「スマ婚」事業を手掛けるメイション社を完全子会社化、2020年3月にはフォトウェディング事業を手掛ける「Mクリエイティブワークス」を完全子会社化。グループ従業員数は436名(2019年9月末現在)。
2019年には「スマ婚」で知られるメイション社をグループ化してカジュアルウェディング事業にも取り組むなど、婚活から結婚式まで総合的な結婚サービスを手掛ける企業へと成長を遂げています。
タメニー社ではこうした事業の拡大に伴う人材不足を解消するため、経営企画や財務、経理といった部門の正社員の採用を検討しました。採用にじっくり時間をかけるため、正社員の採用が決まるまでの期間一時的にフリーランスのプロフェッショナル人材を活用。会社としてフリーランス人材の活用は今回が初めてでしたが、明確なミッションを背負うフリーランスが組織に入ることで社内にもいい刺激があったそうです。今回はフリーランスのプロフェッショナル人材を組織に導入したことでどんな効果があったのか、またスムーズに社内に導入するためにどんな取り組みを行なったのか、コーポレート本部経営企画部長である久保理さんにお話を伺いました。
フリーランスのプロフェッショナル人材を活用するには、マネジメントする側のスキルも必要
先回りして次はこれをやりましょうとリードしてくれる人と、リアクティブに対応する人、2つのタイプに分かれる感じでしょうか。
もちろんタイプにあわせてこちらもやり方を変えていきますが、先回りしてリードしてくれる方だとこちらの負担は少ないですね。
今回入っていただいた方の一人は、すごく周囲とのコミュニケーションをとってくれて、気を遣っていただきました。リードしてくれるタイプの方で、とても頑張っていただいたと思います。
フリーランスの方とスムーズに仕事をしていくには、マネジメントする側のスキルも重要だと思います。現在の会社に入る前の職場では、全くこちらの言うことを聞かないメンバーばかりでしたので、対応力は鍛えられたかもしれません。「自分はこれをやりたいです、以上!」みたいな人たちばかりでした。ただし、こういうタイプの人はうまく誘導していけば、あとは放っておいてもゴールを決めて勝手に進んでいってくれる良さがあります。手取り足取り教える必要がなかったという意味では、恵まれていたと言えるかもしれません。現在一緒に仕事をしているフリーランスの方はもちろんこんなことは言いませんが、前職でのマネジメント経験は多少役立っているかなと感じています。
それとフリーランスの方は「プロフェッショナル」という意識をお持ちなので、基本的にこちらがモチベーションをアップさせる必要がありません。これはマネジメントする側としては、労力が少ないですね。フリーランスの方にも気持ちよく働いてもらう環境づくりは当然必要になってきますが、正社員と比べるとモチベーションなどの意識を高める比重は低いと思います。やはりミッションクリティカル。ミッションありきというのは、すごくわかりやすいですね。
そうはいっても「みんなで一緒にゴールを目指そうよ、理念も大事だよ」みたいなウェットな世界には、それなりのよさもあります。マネジメントする側がスキルを磨いて、相手によってうまく使い分けるべきだと思います。
個人のミッションが明確になっていれば、ひとりひとりに任せられる
弊社は現在フルフレックス制度を設けています。しばりつけるよりは自由にしたほうがかえっていいという判断ですね。やらなければいけない仕事はありますので、実際には出社している人がほとんどです。ただ会社にいる時間は人によってまちまちで、各自のペースでやっているようです。仕事を時間ではなく、アウトプットで見るという感じでしょうか。
フルフレックス制度の導入は私がタメニー社に入社する少し前なので、2年経ったぐらいでしょうか。だいぶ社内でフルフレックス制度は定着してきたように感じますが、リモートワークを手放しで認める段階にはまだ来ていないと思います。やはりそこまで行くとマネジメントが難しくなってきます。意識が高い人は放置しておけますが、人によっては目が届く範囲にいないとやっているかどうかチェックしきれないですから。
私が所属しているパートナー本部の本部長で取締役でもある貝瀬がリクルート出身ということもあって、ミッション制度を導入しています。まずはグループ全体のミッションを設定して、そこから個人ごとのミッションにブレイクダウンしていくというスタイルです。
フルフレックス制度で個人に自由を与えるためには、こういった各自のミッションを設けることが必須だと思います。個人のミッションが決まっていれば、あとのペース配分などは各自に任せることができますから。これは正社員でもフリーランスの業務委託でも、共通だと思います。
マネジメントする側もされる側も、どちらも意識改革が必要
日本の大企業では、こういったミッション思考を持つ企業はまだ少ないかもしれません。
これを変えていくには、マネジメントする側がどういう意識、意図を持てるかが大きいと思います。
マネジメントする側がまずゴールを描くことができないと、難しいでしょう。ゴールを決めることで、達成するためのステップが具体的に見えてきます。
個人的には、日本の会社の管理職の方は、これができていない方が多いのでは、という感じもしています。部下に対して「よきにはからえ」という曖昧な指示で報告だけしてもらい、それでよしとする。こういうやりかたでは、ミッションの達成はできません。
リーダーとして「こうしようよ」という方向性を打ち出して、それぞれの部下にミッションをアサインしていかないといけないですよね。ミッションが明確になっていれば、マネジメントされる側も緊張感が出てくるはずです。当然部下がさぼっていたら、最終的に合意したミッションがクリアできませんから。マネジメントする側もされる側も、どちらも意識改革が必要ではないでしょうか。双方がミッションを重視して緊張感を持つことが、お互いの成長につながると思います。
やはりミッションがあってこそ。「自分のやりたいことはこれ」というミッションがあって、そこから具体的に進めるステップを構造化して考えることが必要です。フリーランスでも正社員でも、これがないと厳しいでしょう。時間ではなくアウトプットで仕事をする人、ToDoではなくミッションで仕事をする人が今後求められると思います。
今回フリーランスの方に業務委託というかたちで社内に入っていただいたことは、会社全体にとってもいい刺激になったと思います。明確なミッションを背負ってひとつのスキルに特化した方が組織に入ってきて、社内で頼られる存在になっていました。ルーティンがメインのスタッフの中には「こういう働き方、こういう存在の人がいるんだ」と初めて認識した人もいたようですから、新しい気づきがあったのではないでしょうか。私たちの会社のこれからの働き方にとっても、今回の経験はプラスになっていくと思います。
会社に依存していない若い世代の起業が増えれば、世の中はもっと変わる
今の若い世代は「会社が面倒見てくれる」なんていう期待はしていないでしょう。期待がないから、変化も自然なものとして受け入れられている。
そういう人たちがフリーランスのプロフェッショナルとして自分の強みや個性を磨いていき、自分の力でやっていく道が開けるというのは日本全体にとってプラスになると思います。