組織構築

【分かりやすく解説】「組織は戦略に従う」の意味とは?|実際の組織戦略から自社のあり方を考える


「組織は戦略に従う」とは、アメリカの経営史学者であるアルフレッド・チャンドラーが提唱したもので、「組織」は「戦略」が決まってはじめてその在り方が決定されるべきである、という意味です。

企業の中には「新しい市場や製品を展開したい」「新しい市場で成功したい」というニーズはあるものの、どのようなアプローチが必要なのか、悩んでいるところも多いでしょう。その悩みは「組織は戦略に従う」の意味を正しく理解し、戦略の方向性、組織の体制を整えることにより解決されます。

本記事では「組織は戦略に従う」の意味や、業務遂行のための重要なポイントを解説します。戦略や組織構成に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

1.「組織は戦略に従う」と「戦略は組織に従う」の違いとは

「組織は戦略に従う」と「戦略は組織に従う」の両者の明確な違いは、組織が戦略に先行するのか、戦略が組織に先行するのか、という方向性の違いにあります。

わかりやすくまとめると以下の通りです。

組織は戦略に従う 戦略は組織に従う
提唱者 アルフレッド・チャンドラー イゴール・アンゾフ
考え方 戦略が先

(組織は手段)

組織が先

(戦略は手段)

ポイント 戦略にあわせた組織作り 組織にあわせた戦略策定
導入企業 アップル、トヨタ、ユニリーバ IKEA、富士フィルム

2つの考え方は全く逆のことを言っているため、どちらを採用すべきなのか悩ましいと思う方もいるのではないでしょうか。
基本的には「組織は戦略に従う」を優先することをおすすめします。

経営に問題がなければ、組織を優先しても問題ありません。しかし、経営に問題が生じている、または近い未来に生じる可能性がある場合は、まずは戦略を見直すことを優先すべきでしょう。

アルフレッド・チャンドラーの唱えた「組織は戦略に従う」の意義

「組織は戦略に従う」の意義は、環境の変化に適応するために、戦略にあわせて最適な組織(事業部制)を構築することが重要であるということです。

戦略の方向性が決まらないとどのような組織が必要かわかりません。そのため、戦略が先に立ち、組織はあくまでも手段に他ならないことを念頭に置きましょう。

たとえば、業績不振や不祥事でとりあえずトップを交代させる人事変更も多いですが、戦略なき組織の変更は社内の混乱や不安を招きます。プラスに作用することもありますが、多くの場合、結局は元のトップが返り咲く流れとなってしまうでしょう。

組織変更には多大な時間と労力を費やすため、まずは戦略を明確にすることが「組織は戦略に従う」の意義と言えます。

イゴール・アンゾフの唱えた「戦略は組織に従う」の意義

イゴール・アンゾフの唱えた「戦略は組織に従う」の意義は、環境の変化に適応するため、これまでに培ってきた企業文化や風土をもとに戦略を立案することにあります。アルフレッド・チャンドラーが提唱したものとは相反する説です。

ただ、環境の変化についていくにあたって、失敗するケースも少なくありません。たとえば業務の効率化を推進するためにITシステムの導入を行う流れとなったものの、目的や意義が浸透していないため、途中で頓挫してしまうケースもあります。

戦略がすばらしいものでも、企業文化や風土、組織にフィットしなければ表面的な取り組みに終わってしまうことは想像に難くありません。保守的な企業ほど変革を嫌う傾向にあるため、まずは組織の特性を知った上で最適な戦略を実行することが大切だと言えます。

2.「組織は戦略に従う」により効率的に事業を行っている具体例

たとえば、トヨタ自動車株式会社の場合、「地球規模での生産と販売」を戦略とし、海外の各地域で独立した組織を構築しています。今ではアメリカやカナダをはじめ、15カ国以上もの国でトヨタ車が生産され、日本のみならず海外でも人気のある車として販売中です。

このように戦略ファーストで組織体制を整えることにより、現在も順調に業績を伸ばしており、 2023年度は1,123万台を販売しました。これは、フォルクスワーゲンなど世界の各有名自動車メーカーを抑え、世界首位の販売台数となっています。

また、ヘアケア製品やスキンケア製品など、暮らしを豊かにする製品を展開するユニリーバも戦略ファーストの組織づくりを行っている企業です。
ユニリーバは「多様な消費者ニーズに対応した製品展開」を戦略に掲げ、製品カテゴリー別に事業部を設けて各部門が自律的にマーケットに対応できるような組織を構築しています。
複数の製品カテゴリーを1つの事業部で担うと、各カテゴリーの知識が浅くなり、製品の課題や問題点に気づきにくくなります。

しかし、ユニリーバのように製品カテゴリーごとに事業部を立てることで、そのカテゴリーに特化して知識を取り入れることができるため、課題や改善点も見つけやすくなり、事業の成長スピードも各段にあがります。
このような戦略をもとにした組織体制を構築することで、ユニリーバはあらゆる有名ブランドの確立に至り、2017年には消費財業界(家庭日用品・パーソナルケア)部門において、世界2位の売上高である605億米ドルを達成しています。

3.組織戦略を行う際に必要な組織マネジメントの考え方

優れた戦略を練ることは重要ですが、戦略だけが優れていても事業が上手くいくことはありません。情報化が進んだ現代において、各企業の技術に大きな差がなくなっており、なによりも重要なのは戦略を遂行するための組織体制を整える、組織マネジメントだと言われています。

そして、組織マネジメントにより戦略を遂行できる組織を作るためには、以下の3項目がマスト事項となります。

  • 組織全体が共通の目的を認識している
  • 従業員がお互いに協力する意志がある
  • 円滑なコミュニケーションが取れる体制である

上記の3つが不十分である場合は、まずは上記3つを整え、組織全体が同じ戦略に向かって連携を取れる体制にすることが重要です。

なお組織内で連携を行うにあたり、マッキンゼー社が提唱する7Sモデルが全て揃っているかを確認する必要があります。

■組織の7S(マッキンゼー社が提唱)

戦略(Strategy) 目標達成への取組(優先順位や方向性の決定など)
組織構造(Structure) 組織運営を円滑行うための組織構造や形態
システム(System) 企業内でのルールや規則
共通の価値観(Shared Value) 企業の価値観や理念の共有化
スキル(Skill) 他社にはないスキルやノウハウのこと
人材(Staff) 各メンバーの特性
組織風土(Style) 企業独自の雰囲気や文化

上記はいずれも相互関係があるため、どれかひとつだけを整えても意味がありません。たとえ優れた「戦略」を立てても、それを遂行するだけの「スキル」がなくては、事業の成功は難しいでしょう。そのため、組織体制を整える際はすべての項目に考慮した組織マネジメントを行う必要があると言えます。

また、組織の7Sを導入して組織マネジメントを成功させるには、以下の4つを実践しましょう。

●現状分析により改善の方向性を探る
現状分析を行うにあたって、全社員向けのアンケートやヒアリングなどあらゆる手段を講じて、データ収集を行います。

●課題の優先順位付け
課題全てを解決に導くのが難しい場合は、課題に優先順位をつけて、最重要課題から取り組むことが重要です。

●計画案の作成
課題について計画案を作成します。限られた費用の中で、どこまでの改善ができるのか検討しながら計画を作成することが必要です。
同時に目標値の設定をし、改善後の検証比較に利用します。定量、定性両面で検証できる目標値にしましょう。

●改善の実施と結果検証
改善を実施し、目標値に対してどの程度改善したか検証します。比較検証後、さらに改善が必要な場合は、現状分析に立ち返りましょう。

これらは言い換えれば、PDCAを繰り返すということです。
ただし、注意点として、以下の点には気を付けましょう。

  • 経営課題に対して、必ずしも組織の7Sを活用した組織マネジメントが有効なわけではない
  • 改善には時間を要することもある

4.組織設計の5原則

組織設計とは、経営課題に対し効率的な対応を行うことのできる組織体制の構築を指すことです。強固な組織を作るために、以下の5原則を意識して行いましょう。

  • 責任、権限一致の原則
  • 命令一元化の原則
  • 統制範囲の原則
  • 専門家の原則
  • 権限委譲の原則

5つの原則を理解、実行することで相乗効果をもたらし、生産性の高い組織に生まれ変わることができます。

①責任、権限一致の原則

責任、権限一致の原則とは、任命された職務において与えられた権限と責任を同程度のものにするという仕組みです。

個人のキャパを超える責任を押し付けたり、必要以上の権限を持たせたりすると、組織がうまく機能しなくなり組織作りの弊害になってしまいます。

与える権限と責任の重さを比例させ、組織の腐敗を防ぐことが責任、権限一致の原則です。

②命令一元化の原則

命令一元化の原則とは、指示系統を一元化することを指します。ひとつの事象に対して旗振り役が複数人いると、指示を出される側の人間に混乱が生じ、統率力が著しく低下します。

また、確認作業に時間を取られることで生産性を大幅に落とすことになるでしょう。指示系統のフローチャートを明確にし、無益な混乱を招かないための原則が命令一元化の原則です。

③統制範囲の原則

統制範囲の原則とは、管理者が管理することのできる人数には限界があるという原則です。1人の上司が管理できる適正人数のことをスパン・オブ・コントロールといい、概ね5名〜7名程度が適正人数とされています。

ニュースでよく取り上げられている保育園や幼稚園での虐待は、スパン・オブ・コントロールの限界を超えた子どもの人数になっていることが、ひとつの要因とされています。管理者の能力にもよりますが、限界値を見極めた上で適正人数を決定することが大切です。

一方で人件費を考慮して、統制範囲の限界値を無理なく拡大させることも検討することをおすすめします。

④専門化の原則

専門化の原則とは、業務を分業制にすることで、専門分野のスキルアップを効率的に行えることを指します。

この原則により、一分野に特化することで作業効率が上がり、生産性も向上するでしょう。経営資源も一か所に集中できるため、コスト面から見ても経済的と言えます。

また、個人の成果指標を作成することが容易になるため、従業員のモチベーションアップにつながる重要な原則と言えます。

⑤権限委譲の原則

権限委譲の原則とは、管理者が抱えている業務や権限の一部を部下に任せることを指します。大きな判断は管理者が行いますが、細かい判断については部下に差配を任せることで、意思決定がスピーディーに行える効果があります。

また、適度な権限委譲を行うことで、部下のモチベーションや部門全体の士気向上につながるでしょう。しかし、納期や求められる成果がある場合は、上司が途中で進捗確認をすることでゴールの共有を行う必要があります。

なお、適正な権限を委譲することも重要なポイントです。

5.組織戦略を成功させるためには3つの事業部制組織が重要

事業部制組織とは、各事業部が独立採算制をとっている会社の組織体制のことです。

たとえば「製品」「地域」「顧客」など、領域で分類した事業部をつくることにより、各事業部ごとに特化した戦略を立てることができ、さらに開発、生産、販売など、事業の遂行に必要な機能を一気通貫で行えるようになります。ひとつの事業部で事業を担うことにより、業績に影響する問題箇所が判断しやすく、事業の成長スピードも速いと言えるでしょう。

それではここからは「製品」「地域」「顧客」を例に、事業ごとに事業部を分けるメリット、デメリットについて解説していきます。

①製品ごとに事業部を分ける

製品ごとに事業部を分ける方法が最も一般的です。製品別事業部で有名なヤクルトであれば、「食品事業本部」「化粧品事業」「医療品事業」など、それぞれ独立した権限を持っています。

製品別事業部制のメリット、デメリットは以下の通りです。

【製品別事業部制のメリット】

経営の効率化 事業部単位で責任が明確化されているため、迅速な対応ができる
専門性の育成 特定の製品について専門性の高い人材を育成できる
市場ニーズへの対応 日々変わる市場のニーズへの対応力が早くなる

【製品別事業部制のデメリット】

リソースの重複 事業部単体での生産ラインを保有しているため、工場間でリソースの重複が発生し、無駄が生じる
組織全体の統制が難しい 事業部単位で責任が明確化されているので、事業部が独自の運営をすると本社との軋轢が生じ、組織統制が難しくなる

②地域別に事業部を分ける

地域別に事業部を分ける方法とは、主要都市に事業部を配置し事業を展開することを指します。全国規模、世界規模での成長を目指す企業にとって、迅速に事業化を達成できるでしょう。

地域別事業部制を導入している企業として、無印良品が有名です。全国12地域に地域事業部を配置し、店舗出店計画から商品開発業務まで、地域に根ざした事業モデルを展開しています。

地域別事業部制のメリット、デメリットは以下の通りです。
【地域別事業部制のメリット】

地域根ざした戦略 各地域独自のニーズや特性にあわせた戦略を構築できる
意思決定の迅速化 地域の市場特性を熟知できるため、意思決定を迅速化できる
事業展開のスピード化 地域特性に合わせた製品を投入できるので、事業展開が早い

【地域別事業部制のデメリット】

リソースの重複 地域別に運営されるため、店舗間でのリソースの重複が発生し、無駄が生じる
地域別リスクの顕在化 地域特有の慣習や政治的状況の変化により、地域リスクが顕在する可能性がある

③顧客別に事業部を分ける

顧客別に事業部を分ける方法とは、顧客の特性にあわせて事業部を分けることを指します。顧客のニーズや特性を把握でき、ターゲットを絞った事業展開が可能です。

たとえば、個人向けや法人向けのサービス、貯蓄を多く抱える高年齢層など、特定の顧客層を狙ったサービスを提供します。

顧客別事業制のメリット、デメリットは以下の通りです。

【顧客別事業部制のメリット】

意思決定の迅速化 顧客情報にあわせたサービスを提供できるため、意思決定が迅速化できる
専門知識の共有 顧客のターゲット層が絞られているため、専門知識の獲得や共有がしやすい
顧客ニーズの把握 特定の顧客をターゲットにしているため、ニーズが把握しやすく、対策を講じるまでのスピードが早くなる

【顧客別事業部制のデメリット】

リソースの重複 組織内で共有化できるリソースの重複が発生し、無駄が生じる
顧客セグメントの設定が難しい 顧客セグメントの設定を見誤ると、マーケティングに大きな影響を及ぼし、売り上げの減少につながる

6.まとめ

今回はアルフレッド・チャンドラーが提唱した「組織は戦略に従う」の意味や、組織のあり方についてご紹介しました。

「組織は戦略に従う」で重要なポイントは、以下の通りです。

  • 戦略に合わせた組織の構築を行う
  • 戦略を優先しつつ、組織も考慮する
  • 組織マネジメントの方向性を明確にする
  • 事業部制による意思決定の迅速化を図る

戦略と組織構造にミスマッチがあれば、永続的な企業の成長はありません。「組織は戦略に従う」の真意を正しく理解し、企業経営に役立てましょう。

なお、「組織体制の改善を検討しているが方法が分からない」「思うように進まない」という方は、外部のプロフェッショナルを頼るのも1つの手段です。
みらいワークスは、日本最大級のプロフェッショナルデータベースを運営している企業です。企業様の悩みに合わせたプロ人材を見つけることができます。
お気軽にお問い合わせください。



(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

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