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USJが劇的に変化した、たった1つの考え方|マーケター森岡氏の仕掛けたマーケティング戦略を解説

USJは2001年に開園しましたが、来場者数が伸びず業績悪化が続いていました。そんな経営危機に陥ったUSJを救ったのが、2011年に就任したマーケターの森岡氏です。

この記事では、森岡氏が行ったUSJのマーケティング戦略や事例、企業を成長させるためのフレームワークを解説します。USJのマーケティング戦略を知ることで、業績向上や企業の成長が実現できるでしょう。

自社の経営状況を改善したいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

1.USJのマーケティング戦略が成功したポイント

USJのマーケティング戦略が成功した最大のポイントは「消費者視点」です。

消費者視点とは、サービス提供者側が顧客の頭の中を十分に理解して顧客が求めるものを提供していく考え方を指します。当たり前だと思う方が多いかもしれませんが「顧客が本当に求めるもの」と「顧客が喜ぶだろうと企業が思っているもの」を混同しているケースは少なくありません。

USJは、消費者視点に立ったマーケティング戦略により、つくったものを売る企業から、売れるものをつくる企業に変革しました。よって、失敗するアトラクションやイベントが激減し、USJの企画成功率は9割以上となったのです。

2.USJの経営状況がV字回復したマーケティング手法

経営危機に陥っていたUSJは、以下のようなマーケティング手法によりV字回復を果たしました。

  • USJのブランドの価値を上げた
  • ターゲット市場を特定した
  • 価格戦略とプロモーション活動
  • 商品戦略

ここからは、V字回復を実現した4つのマーケティング手法を解説します。

①USJのブランドの価値を上げた

1つ目のマーケティング手法は、ブランド価値の向上です。

パーク内でのクルーとのコミュニケーションや、画期的なアトラクションによる顧客の体験価値向上を実現することにより「世界最高品質のエンターテイメントを届けるテーマパーク」へ進化させました。

よって、現在では、興奮や感動を心と体で楽しめる「エンターテイメントへの入口」と認知されています。さらに、日本アニメや和の要素を取り入れたアトラクションなど「日本文化を体験できる場」として海外からの認知度も高いです。

USJのブランド価値は、映画やキャラクターはもちろん、さまざまな特徴を持つエンターテイメントを高い品質で提供することで、唯一無二のポジショニングを確立しているといえるでしょう。

②ターゲット市場を特定した

2つ目のマーケティング手法は、ターゲット市場の特定です。

以前のUSJの顧客ターゲットは、映画ファンをターゲットとしていました。しかし、ターゲットの幅が狭いことから、テーマパークの規模に伴う来場者数は得られませんでした。

そこで、ターゲットを映画ファンだけではなく、ファミリー層や関西圏、海外からの来場者に広げることにしたのです。それに伴い、ユニバーサルワンダーランドなどのファミリー向けのアトラクションの充実や日本の人気アニメとのコラボを実施しました。それぞれのターゲット層のニーズを把握して、アトラクションやショー、季節のイベントなどを提供することで、あらゆる顧客層に対して来場のきっかけを与えることに成功したのです。

USJに幅広い層の顧客が集客できるのは、各ターゲットの市場ニーズを特定した戦略によるものといえるでしょう。

③価格戦略とプロモーション活動

3つ目のマーケティング手法は、価格戦略とプロモーション活動です。

USJでは、過去の安価な価格戦略から脱却し、提供サービスに対する適性な価格設定を行っています。入場に必要な基本料金に加えて、優先入場や特定のアトラクションを体験できる特別チケットの販売、シーズンや曜日による価格調整など、その時々の価値に合わせた価格設定を実施しております。来場者が体験できる価値に対して適切な価格を設定することによって、効果的な価格戦略を打ち出しているのです。

また、プロモーション活動では、幅広い層にUSJの魅力を届けて集客につなげるため、マルチチャネルに展開しています。テレビやラジオ、新聞などのマスメディア広告に加え、FacebookやX、InstagramなどのSNSを活用した双方向のコミュニケーションを行い、幅広いターゲットに対して自社の魅力を届けているのです。他にも、メディア企業や映画スタジオなどとコラボすることで、お互いにPRしながらブランド価値を向上させる取組みも活発に行っています。

④商品戦略

4つ目のマーケティング手法は、商品戦略です。

USJでは、来場者が映画やキャラクターの世界に入り込むことで、感動や興奮、思い出などの「感情の変化」という商品価値を提供しています。

普段の生活では目にしないような華やかで魅力的なパフォーマンスやアトラクションにより、顧客は忘れられない経験を手に入れることができるのです。さらに、USJ内で販売される飲食物やキャラクターグッズも、映画の世界観が体験できるような商品を提供することで、帰宅後も忘れられない思い出になるように考えられています。忘れられない体験ができることで、顧客は「また訪れたい」と思うようになるのです。

さまざまな商品を通じて、顧客にとって「USJに行くことが特別な体験」となりリピーター化していくことが商品戦略といえるでしょう。

3.USJのマーケティングフレームワーク事例4つ

USJは、森岡氏による独自のマーケティング手法によりさまざまなヒット作を生み出すことで、V字回復を果たしてきました。

森岡氏のマーケティングフレームワークを活用した事例には以下のようなものがあります。

  • ユニバーサルワンダーランド
  • ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド~バックドロップ~
  • ハロウィン・ホラー・ナイト
  • ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター

ここからは、USJのマーケティングフレームワークを活用した4つの事例を紹介します。

事例①ユニバーサルワンダーランド

「ユニバーサルワンダーランド」とは、スヌーピーやセサミストリート、ハローキティなどのコンテンツが一堂に会するファミリー向けエリアです。

開園当初のUSJは「映画好きの大人が楽しめるテーマパーク」がコンセプトでした。そのため、多くのアトラクションには身長制限があり、子ども連れでは楽しめないイメージが定着していたのです。

危機感を感じた森岡氏の提案により、あらゆる世代が訪れることのできる場所へコンセプトを変えるため、ユニバーサルワンダーランドが開発されました。母親向けのデザインや子ども向けのアトラクションを取り入れた結果、これまで逃していたファミリー層から支持される人気エリアが誕生したのです。

ユニバーサルワンダーランドは、映画のテーマパークという売り手視点のこだわりを捨て、消費者視点に転換した成功例といえるでしょう。

事例②ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド~バックドロップ~

「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド~バックドロップ~」とは、ジェットコースターが後ろ向きに走る絶叫アトラクションです。

このアトラクションは、元々あったジェットコースターを反対向きに走らせただけですが「ジェットコースターは前向きに走る」という常識を覆す画期的なアイデアは、来場者に大きな反響を呼びました。ジェットコースターの走り方を変えることで、USJの提供価値である「アトラクションを体験したときに起こる感情の変化」を生み出したのです。

約3分の乗車時間に対して、アトラクション待ち時間の日本記録である「9時間40分待ち」という空前の大ヒットとなりました。

経営危機の状況から、可能な限りコストと手間、失敗を減らし、集客を行いたかったUSJにとって、ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド~バックドロップ~は、自社が持っているリソースを最大限活用して、できる限り費用を抑えた成功例といえるでしょう。

事例③ハロウィン・ホラー・ナイト

森岡氏の着任当初は、経営が厳しく予算がない状況で集客をしなければいけなかったことから、キャストがゾンビに扮装し、パーク全体をゾンビで覆いつくす「ハロウィン・ホラー・ナイト」を実施しました。

日頃ストレスが溜まりやすいにもかかわらず、ストレスを発散する機会がない「独身の若い女性層」をターゲットとし「大声で叫んだり思いっきり騒げる空間」を提供することで価値が生まれると考えたのです。その結果、7万人程度だったハロウィンシーズンの来場者は40万人以上に増加し、関西を代表するハロウィンイベントに成長しました。

このようにハロウィン・ホラー・ナイトは、目標、戦略、戦術を正確に設定することで集客に成功したといえるでしょう。

事例④ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター

「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」とは、日本でも大ヒットしたハリー・ポッターシリーズの世界観を再現した人気エリアです。

森岡氏の就任後はヒット作が次々に生み出され、来場者数は拡大していきます。しかし、USJは「関西のテーマパーク」というイメージが強く、関西圏の集客にとどまる課題がありました。

そこで、森岡氏は日本全国から集客する目玉として、あらゆる世代から絶大な支持を得ている「ハリー・ポッター」に目をつけます。総工費450億円もの投資により作品の世界観を忠実に再現し、数々のアトラクションも充実させました。その結果、日本全国から多くの来場者が訪れるようになり、USJは全国区のテーマパークとして認知されるようになったのです。

ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッターは、消費者視点で分析を行い、勝てる場所にリソースを集中投下した成功例といえるでしょう。

4.USJの経営危機を救ったマーケター森岡毅氏のフレームワーク

USJの経営危機を救うヒット作は、森岡氏のマーケティングのフレームワークから考えられてきました。森岡氏のフレームワークには、以下の要素があります。

  • 戦況分析
  • 目的設定
  • 目標設定
  • 戦略決定
  • 戦術決定

ここからは、上記5つのフレームワークについて解説します。

戦況分析

戦況分析とは、自社が「戦うべきポジション」を分析することです。

どんな企業でも、限られたリソースを最大限活用しながら利益を生み出していかなければなりません。そのためには、自社が置かれている状況を分析し、ビジネスが成功できる場所を選ぶことが必要です。
戦況分析を行うには、以下のようなポイントについて考えましょう。

  • 自社を取り巻く市場環境や顧客の状況
  • 自社にとっての競合先とその動向
  • 自社が提供している価値

戦況分析にはさまざまな切り口がありますが、中でも「3C分析」が最も有効です。顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の観点で分析し、自社にとって勝ちやすい場所を特定しましょう。

目的設定

目的設定とは、自社にとって「果たすべきゴール」を設定することです。

目的が明確になることでやるべきことがはっきりし、スピード感のある企業活動が実現できます。また、設定した目的を達成することで、従業員のモチベーションも向上するでしょう。

なお、設定目的は、以下のようなポイントを満たす必要があります。

  • 努力すればギリギリ到達できるレベルか
  • 誰が見ても明確でわかりやすいか
  • すべての従業員にとって魅力的か

USJの再建当時は「オープン初年度の来場者数である1,100万人」を目的として設定していました。誰もがわかる来場者数を対象にし、過去に実現している数値にすることで、従業員に対して到達の難しさを感じないようにしたのです。

上記のように、従業員が目指したいと思えるゴールを設定しましょう。

目標設定

目標設定とは、自社の商品、サービスについて「誰をターゲットにするか」を設定することです。

目標設定は、以下のようなポイントで検討します。

  • 売りたい顧客を特定できているか
  • 特定した顧客の中で「絶対に逃せない顧客」を設定できているか
  • ターゲットの特徴や本心を探れているか

顧客全体を広く対象とするほうがビジネスの可能性が高いと考えがちですが、ニーズは千差万別なため、誰にも刺さらない中途半端なものになりかねません。ターゲットとなる顧客の解像度を上げることで、顧客に対して提供すべき価値も明確になり、効果的に売ることができます。

また、競合と比べて優位なポジションを確立することで顧客の獲得に繋がるため、目標設定は重要です。

戦略決定

戦略設定とは、自社の商品、サービスにより「どんな価値を提供するか」を決定することです。商品、サービスそのものの価値ではなく、利用した際に顧客が見出す価値に注目することで、本当のニーズを捉えることができるでしょう。

価値を決定する際には、以下のようなポイントが重要です。

  • 商品、サービスが生み出す価値とは
  • 商品、サービスを利用することで「感情」を提供できているか
  • 商品、サービスによる「感情」を一言で表せるか

たとえば、USJでは「アトラクションを体験した際に起こる感情の変化」を価値としました。商品、サービスの価値とは実利がともなうものだけでなく「うれしい」「楽しい」などのポジティブな感情も含まれることを意識しておきましょう。

戦術決定

戦術決定とは、自社の商品、サービスについて「どうやって売るか」を決定することです。目的、ターゲット、提供価値が決まっても、売り方が確立されていなければ顧客に商品、サービスを届けることができません。

売り方を検討するうえでは、マーケティングで使われる「4P分析」が便利です。4P分析は以下の要素で検討します。

要素 詳細
商品(Product) 顧客に提供する商品、サービス
価格(Price) 商品、サービスの対価
流通(Place) 商品、サービスを顧客に届ける場所、経路
プロモーション(Promotion) 商品、サービスを顧客に認知してもらう方法

4つの要素を順番に検討することで、スムーズにマーケティング施策が立案できます。また、戦術決定により売上や利益を最大化できるでしょう。

5.まとめ

今回の記事では、USJのマーケティング戦略や事例、企業を成長させるためのフレームワークについて解説しました。

USJは開園後に経営危機に陥る状況でしたが、消費者視点に立ったマーケティング戦略を実践することでV字回復を成し遂げました。さまざまなヒット作を生み出し、現在では日本を代表するテーマパークとして多くの顧客から愛されています。

自社の経営状況に満足していない方であれば、USJを立て直した森岡氏が提唱する「目的→誰に(who)→何を(what)→どうやって(how)」というフレームワークを活用してみてはいかがでしょうか。
なお、自社のマーケティング戦略に悩んでいるという方は、外部のプロフェッショナルを頼るのも1つの手段です。

なお、みらいワークスでは、19,000名以上のプロフェッショナル人材が企業の経営課題を解決しております。マーケティングコンサルなど専門的な知識を持つプロ人材もアサイン可能です。興味を持った方は、ぜひお気軽にご相談下さいませ。



(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

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