「SIerとはどんな職業?仕事内容は?」「就職先としておすすめ?」など、SIerに興味を持っている人の中で疑問に感じている人も多いことでしょう。
SIerは、システム開発のすべて工程を担う受託開発企業であり、要件定義や設計・開発などさまざまな業務を行います。大手企業ともなれば年収も高く好条件の待遇を用意していることもありますが、納品に追われて残業や休日出勤が必要となるリスクもあります。
今回は、SIerとはどんな職業かや仕事内容、働くうえでのメリットやデメリットを詳しく解説します。SIer業界の将来性や現状の課題、求められるスキルについても解説していくため、ぜひ参考にしてください。
※本記事に記載されている企業や求人に関する情報などは2023年時点のものです。
SIer(システム インテグレーター)とは?
SIer(読み:エスアイヤー、正式名称:システム インテグレーター)とは、システム開発においてすべての工程を請け負う開発企業のことを指します。
SIerでは、システムの要件定義や設計、システム開発、運用、保守とあらゆる業務を担います。非常に幅広い業務が必要となるように思えますが、実際には多重下請け構造となっており、元請SIerでは、クライアントの希望を把握、分析したり、下請けの管理やスケジュール調整などプロジェクトの運営が主な仕事となります。
SE・SESとの違い
そもそもSIerは、システム開発を受託する「企業」を指す言葉です。一方でSEとはシステムエンジニアのことを指し、SESはシステムエンジニアリングサービスのことを指します。
もう少し詳しく解説すると、SIerはクライアント企業の業務課題をまとめたり、システム開発から運用、保守までを一貫して担う企業を指します。業務課題は各クライアント企業で異なるため、システム開発の他にも行う業務は多岐に渡ります。
また、SEはクライアントの要望にあわせて最適なシステム開発を行う技術職のことをいいます。システム開発を実際に行う現場において、システム設計やプログラミングなどを手がけるのもSEの役割です。
そしてSESは、システムエンジニアリングサービスを指しますが、システムエンジニアが担う役割や能力を提供する委託契約の一種です。システム開発のために必要なエンジニアの技術力を提供するサービスを言います。
上記のとおり、SIerとSE、SESは似て非なるものです。明確に意味合いが異なるため、正しく理解しておきましょう。
SIer(システム インテグレーター)の主な仕事内容
SIerの仕事はシステム開発から運用、保守までを一貫して行うもので、その内容は多岐にわたります。非常に多いですが、順を追って見ていきましょう。
SIerの主な仕事内容
- システムの導入計画の立案
- システム開発・設計
- ハードウェア・ソフトウェアの選定
- 社内管理システムの構築
- 開発システムの運用・管理
システムの導入計画の立案
SIerでは、いきなりシステムの開発や設計に取り掛かるのではなく、導入するにあたって必要となる計画の立案を行います。
企業によって、抱えている課題は異なり、事業内容や企業の規模なども大きく異なります。そのため、システムの導入方法は企業ごとに最適な形を考案することが重要です。
まずは、SIerが依頼元となる企業のヒアリングを行い、今抱えている課題をもとに最適なシステムを提案して、具体的な企画と導入計画を固めます。なお、必ずしもSIerが何もかも最初から取り掛かるのではなく、依頼元がすでに具体的な企画を作ってあるケースもあります。
システム設計・開発
考案された計画を元に、システム開発および設計を行うこともSIerの役割です。
まずは基本設計から始め、依頼元のヒアリングを元に要件を明確にし、そこから大まかに基本設計を行います。基本設計が固まったら、より詳しいところに踏み込んで詳細設計を作成します。
基本設計、そして詳細設計が固まって仕様書まで完成したら、システム開発へと移ります。
ハードウェア・ソフトウェアの選定
SIerの仕事内容には、ハードウェアやソフトウェアの選定も含まれます。
システムを運用するにあたって、使用するパソコンやプリンターといったハードウェア、ソフトウェアの存在は欠かせません。
また、選定だけでなく、発注や設置などを行うのもSIerの仕事です。このようにインフラ構築までSIerは行うため、働くにはネットワークやサーバーに関する知識も必要となります。
社内管理システムの構築
SIerは、依頼元となる企業の社内管理システムの構築も担います。
代表的なものとして、勤怠管理システムや人事管理システムが挙げられます。これらは、企業が事業を効率よく進めるために欠かせません。
SIerはシステムに関する知識だけでなく、依頼元の業務に対する理解や勤務形態に関する知識なども必要です。
開発システムの運用・管理
システムが完成したからといって、SIerの仕事はそこで終わりではありません。
完成したシステムを依頼元に渡したあとも、正常に運用できるようにサポートを行います。どれだけ細かく練られた計画に基づいて作成したとしても、実際に運用することでわかってくる部分もあります。実態に合わせて調整を行うのもSIerの仕事です。
また、システムを正常に稼働し続けるには、定期的なメンテナンスが欠かせません。定期的に見直しを行い、もし問題が発生した際は原因を探って解決策を導きます。
SIer(システム インテグレーター)の5つの分類
SIerは、さまざまな分類に分けられます。
- メーカー系SIer
- ユーザー系SIer
- 独立系SIer
- 外資系SIer
- コンサル系SIer
以下から、各種分類で分けられたSIerごとの特徴を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
メーカー系SIer
ハードウェアメーカーの開発部門から独立して生まれたのが『メーカー系SIer』です。
元はパソコンやネットワーク機器といったハードウェアの開発を専門としていたこともあり、親会社のハードウェアやソフトウェアを用いた開発に強いのが特徴です。
大規模なシステム構築を行う場合も多く、複数のメーカー系SIerと共同で仕事を行うことも少なくありません。
そんなメーカー系SIerのメリットは以下のとおり。
メーカー系SIerのメリット
- 上流工程のスキルを身につけやすい
- 大手企業が親会社のため経営が安定している
- 待遇が良い
- 資格取得を行いやすい
メーカー系SIerは、研究開発部門があったりと技術力が重視される傾向にあるため、スキルを身につけやすい傾向にあります。
また、親会社が大手である分、経営が安定しており待遇が良いメリットもあります。その他資格取得も行いやすいため、キャリアアップも行いやすいと言えるでしょう。
ユーザー系SIer
メーカー系SIerとは異なり、ハードウェアメーカー以外の企業から独立したタイプのSIerが『ユーザー系SIer』です。
親会社にはさまざまな種類があり、通信や金融、商社といった企業のIT部門が独立したケースもあります。親会社の取引実績に影響している部分が多く、さまざまな業界と携わっていた場合、その子会社であるユーザー系SIerにも幅広い開発実績があるとされます。
ユーザー系SIerのメリット
- 大手企業が親会社のため経営が安定している
- 待遇が良い
- 資格取得を行いやすい
- ホワイト企業が多い
ユーザー系SIerは他社のクライアントを抱えるメーカー系SIerと違って、親会社に対するシステム開発を行うことが多いです。他社にクライアントを抱えているわけではないため、比較的ホワイトな環境で働けます。
独立系SIer
メーカー系SIerやユーザー系SIerのように、親会社から独立して生まれたのではなく、最初からSIer事業を行うために立ち上げられたのが『独立系SIer』です。
独立系SIerにもさまざまな特徴がありますが、なかには前職のシステム開発部門での実績をもとに独立や起業したケースもあります。
親会社があるメーカー系SIerやユーザー系SIerとは違い、親会社からの要望がないため、より幅広い選択肢からシステム開発が行えます。
しかし、必ずしも優秀な実績を持っているとも限りません。なかには他社SIerからの下請けとして一部の工程のみを担当しているケースもあります。そのため、システム導入を一貫して請け負った実績が少ない独立系SIerも存在します。
<独立系SIerのメリット>
- 開発に伴う制限が少ない
- システム開発がメイン業務
- 成果主義のため実力次第で昇進できる
独立系SIerは、親会社がいない分、設計や開発の進め方に指定がなく、より効率的に仕事を行えます。
また、システム開発がメイン業務のため、設計書の作成やその他の細々とした業務に手をとめられることがなく、スキルアップがしやすいと言えるでしょう。また、基本的に成果主義のため、実力次第で昇進・年収アップに繋がりやすいことも魅力です。
外資系SIer
海外にある大手IT企業の日本法人がSIer事業を手がけているのが『外資系SIer』です。これまでに挙げてきた日本のSIerと比較すると、コンサルティングの部分を強みとしています。
国内のSIerと比較してグローバル規模の技術やプロセスに携われることが特徴で、海外の最先端な技術に触れることもできるでしょう。
経費の削減や生産性を向上させるため、海外の人材を活用する機会もあるため、英語力に自信がある人におすすめと言えます。
<外資系SIerのメリット>
- 国際的なプロジェクトに関われる
- グローバルなソリューションやプロセスに触れられる
- 成果型のため実力が評価される
なによりもメリットとして大きいのが、グローバル基準の技術に触れる機会が多いということです。また、実力評価の企業も多いため、実力に自信がある人は挑戦してみてください。
コンサル系SIer
とくにコンサルティングを得意としているタイプのSIerが『コンサル系SIer』です。
近年台頭してきたジャンルで、人手不足や物価高など経営課題の悩みを抱える企業に対して、最適な分析や企画、改善策を提案、そしてシステム開発まで行います。
経営課題の解決を目的としているため、SIerとしての仕事はもちろんのこと、課題解決を行うスキルや経営に関する知識も必要不可欠と言えるでしょう。
<コンサル系SIerのメリット>
- さまざまな業界に関われる
- システム開発スキルの他コンサルティングスキルも身につく
- 安定した企業が多い
コンサル系SIerは、さまざまな業界に関われることであらゆる専門知識が身につくことが魅力です。また、コンサルティングに必要なコミュニケーション能力、論理的思考力、課題解決スキルなどあらゆる技術が身につくことにより、今後のキャリアに役立つでしょう。
SIer(システム インテグレーター)で働くメリット
5つの分類に分けたSIerの特徴・メリットを紹介してきましたが、SIerに総じて言えるメリットが何なのか気になりますよね。
SIerの仕事には、ほかの職業にはないさまざまなメリットがあります。
- 高い給料と待遇が受けられる
- 汎用的な技術が身につく
- IT以外のスキルも身につけやすい
- 安定した企業が多い
以下から、各項目について詳しく紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
高い給料と良い待遇が受けられる
国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、日本人の平均給与は458万円です。
その点SIerの給料を調査してみると、400万円~650万円以上の場合も少なくありません。実力をつけることで、年収1,000万円を超えるケースも多く、日本の平均給与よりも高年収を実現できるでしょう。
とくに大手SIerは大きなプロジェクトを行うことも多く、その分報酬も高いため、高収入を得られるケースが少なくありません。
汎用的な技術が身につく
SIerが担う業務の範囲は多岐にわたります。システム開発に関する知識や技能を身につけることはもちろん、設計したシステムを運用するために、インフラ構築に関する技能も必要となります。
身につけなければいけない要素は非常に多いですが、だからこそどのような場面でも役に立つような汎用的な技術が身につくともいえます。汎用的な技術を身につけることで、今後のキャリアにも大きく役立つため、積極的に技術を学ぶと良いでしょう。
システム開発以外のスキルも身につけやすい
SIerに求められるのは、システム開発のスキルばかりではありません。
なぜなら、業務をこなすにあたって、プロジェクトマネジメントやスケジュール管理、資料作成などあらゆる業務も必要となるためです。それにより、コミュニケーション能力や、スケジュール管理スキル、マネジメントスキルといったものも身に付きます。
ビジネスの世界で求められるさまざまなスキルが身につけられるでしょう。
安定した企業が多い
働く職場にもよりますが、とくにメーカー系SIerやユーザー系SIer、外資系SIerは、親会社が大手企業である場合が多いです。そのため、その子会社であるSIer企業は安定した企業が多いとされています。
独立系SIerの場合は後ろ盾になる親会社がないため、よりたくましく営業努力を積み重ねる必要があります。また、安定よりも自由度や柔軟性を優先したいという人には、独立系SIerがおすすめと言えるでしょう。
SIer(システム インテグレーター)で働くデメリット
SIerとして働くことには多くのメリットがありますが、もちろんデメリットも存在します。
<SIerで働くデメリット>
- 最新技術を学ぶ機会が少ない
- ブラックな環境の場合がある
- 下請けの場合指示待ちになり案件のコントロールができない
実際に働く際は、双方を正しく理解しておいたほうが良いでしょう。
それでは以下から、SIerとして働く際に懸念される3つのデメリットを紹介します。
最新技術を学ぶ機会が少ない
SIerは規模の大きなプロジェクトに携わるチャンスがある一方で、最新技術を学ぶ機会が少ないというデメリットが存在します。
依頼元の相談内容を踏まえて最適な改善策を提案し、実行するのがSIerの仕事内容です。豊富な開発実績を頼りに依頼元から依頼される場合が多い一方で、実際に手がける案件は既存のノウハウによるケースに偏りがちな傾向があります。
身につけた技術で大きな舞台で役立たせたい方には最適ですが、最新技術を学んで成長し続けたい方は、仕事以外の時間で勉強する必要があります。
ブラックな環境の場合がある
SIer企業は、その労働実態がブラックなケースが珍しくありません。
SIer企業は、多重下請け構造で成り立っていることから、ブラックと呼ばれることもあります。
多重下請け構造は下層になるほどに利益が減る一方で作業負担が増えていきます。納期があるため、どれだけ利益が少なくて作業負担が多くても業務を進めなければいけませんし、また、依頼元によって振り回されるケースもあります。
すべてのSIerがブラックというわけではありませんが、働き先は業界的特徴を踏まえて選びましょう。
下請けの場合指示待ちになり案件のコントロールができない
下請けの仕事を多く請け負っているSIer企業は、案件のコントロールが難しく、結果的に納期に追われる危険性があります。
下請けとして案件に携わる場合、依頼元からの指示を待つ時間が発生します。指示待ちの時間が長いと労働のためのリソースを余している状態が続きます。逆に複数の取引先から一度に次の指示が出て忙殺されるケースもあるでしょう。
SIer(システム インテグレーター)の現状と今後
クライアントとなる企業のシステム開発を担い、要件定義や設計、開発、運用までを行うSIerは長い年月に渡って重要な役割を担ってきました。DX案件の内製化が進むことにより、SIerは衰退を辿る、という意見も少なくありませんでしたが、現在まで事業傾向の悪化はおきていません。むしろコロナ禍の中でも増収を達成したという事実もあります。
しかし、SIerに限った話ではありませんが慢性的な人手不足に悩まされていることも事実であり、経済産業省の「DXレポート」では17万人もの人手が足りていないという課題も公開されています。
つまり、技術さえあれば就職がしやすい業界と言える一方で、過重労働に悩まされる危険性もあるということです。
SIer業界の課題
前述したとおり、SIer業界に限らずIT業界は慢性的な人材不足であり、長時間労働にさらされる危険性があります。
そのため、今後も職を失うリスクは少ない一方で、労働環境の是正が課題と言えるでしょう。それらが解消されれば、高年収が見込めるSIer業界はさらなる成長を見せ、日本のあらゆるサービスをサポートする重要な仕事として注目を集めることが考えられます。
SIerで働くのが向いている人
SIerには、ほかの職業にはない多くの特徴があります。それらを踏まえ、どういった人がSIerで働くのに向いているか見ていきましょう。
- 大規模システムの構築に携わりたい人
- コミュニケーション能力が高い人
- 計画を立てその通りに実行を移すのが好きな人
- さまざまな企業と関わる仕事をしたい人
- 年収・福利厚生が充実した企業で働きたい人
大規模システムの構築に携わりたい人
SIerではシステムの計画から運用、保守まで一貫して担います。すべての案件がそうだとは限りませんが、なかには大規模システムの構築に携われるケースもあるでしょう。
案件の規模が大きくなるほど、スタッフ一人ひとりに任せられる業務のレベルが上がりますし、達成した際の実績にもなります。それにより、自らの成長が促せることはもちろん、キャリアアップにも繋がることが考えられます。
コミュニケーション能力が高い人
SIerの業務は、個人で行うものではありません。システムの計画から運用、保守まで行う都合上、多くのスタッフがチームとなって業務を行います。
オンライン会議や対面での打ち合わせなども多く、さまざまなスタッフと関わるため、コミュニケーション能力が求められます。いろんな人と話すのが好きであったり、チームプレイが得意だったりする方にSIerはおすすめと言えるでしょう。
計画を立てその通りに実行を移すのが好きな人
SIerは、依頼元とヒアリングを重ねて、全体の計画を細かく決めてからシステム開発やその後のフローを進めていきます。
計画を立て、その通りに物事が進むように実行させるのが好きな人にSIerは非常におすすめです。
さまざまな企業と関わる仕事をしたい人
SIerは、さまざまな企業と関わりたい人におすすめです。SIerの仕事は、自社だけで完結しません。依頼元となる企業や一部工程を委託する下請け企業など、多くの企業や所属する人たちと関わることになります。
自社だけでなく、さまざまな企業と関わることは多くの経験に繋がるでしょう。
年収・福利厚生が充実した企業で働きたい人
SIer企業にもさまざまな種類がありますが、なかでも案件を継続して請け負っているタイプの安定した企業であれば、年収や福利厚生が充実している場合が多いです。
人によって働き先に求める基準は異なりますが、収入や福利厚生は決め手になり得る要素の1つです。安定した労働条件で働きたい人に、SIerはおすすめできます。
SIer(システムインテグレーター)になるにあたって必要なスキル・役立つ資格
SIerの業務内容は多岐にわたるため、求められるスキルも多いです。以下からは、SIerになるために必要なスキルや役立つ資格について、具体的に見ていきましょう。
<必要スキル>
- プロジェクトマネジメント力
- 論理的思考力
- コミュニケーション能力
- システム開発&設計スキル
<取得がおすすめの資格>
- 基本情報技術者
- 応用情報技術者
- プロジェクトマネージャ
スキル(1)プロジェクトマネジメント力
プロジェクトマネジメント力とは、プロジェクトを円滑に進めるために必要なスキルの総称です。
SIerはシステム開発におけるさまざまな工程をこなすため、細かな工程管理が必要になることはもちろん、担当者の割り振りやスケジュール管理、予算の確保まで適切に管理する必要があります。
リスクを考えて先回りで対処するスキルやリーダーシップも必要なため、総じてSIerでの経験値が求められます。
スキル(2)論理的思考力
SIerでは、物事を整理し、課題を解決するために現実的なアイデアを考案する論理的思考力が求められます。
たとえば、システムの基本設計や詳細設計、仕様書を作成する段階で矛盾が起きたり筋道が飛躍したりすると、結果的に欠陥品を作ることになってしまいます。また、システム開発の段階で障害発生が起こる場合もあるでしょう。
論理的思考力を有していれば、どこに矛盾が生じているのか、どこが原因で障害が発生しているかを冷静に見極められ、結果的に最短の道筋で解決に導くことができるのです。
スキル(3)コミュニケーション能力
SIerにはコミュニケーション能力が欠かせません。
依頼元となるクライアントや下請け先となる協力会社、社内のチームメイトなどと、スムーズにコミュニケーションをとる必要があります。また、依頼元に対しては最適で実現可能なシステム、協力会社や社内のチームメイトには主に進捗管理を行わなくてはいけません。
これらをスムーズに行うには、各社との信頼関係を築くためのコミュニケーション能力が必須と言えるでしょう。
スキル(4)システム開発&設計スキル
SIerはシステム開発および設計、そして運用や保守を目的とした事業です。そのため、システム開発や設計に関するITスキルも当然持っていなければいけません。必要となるのは基本的なプログラミングに関するスキルのほか、データベースやネットワーク、セキュリティ、アルゴリズムに関する知識です。
実際にプログラミングを担当することはなかったとしても、プロジェクトに携わる立場上、設計や開発の内容を理解することは大変重要です。仕様書を作成する部分でも役に立ちます。
資格(1)基本情報技術者
基本情報技術者は、IPAが実施する国家試験のひとつです。ITに関する資格として有名なものの1つで、取得できればITを活用した課題解決能力やシステム開発に必要な基礎知識を持っていることを証明できます。
さまざまなスキルのベースになっている部分もあり、基本情報技術者を取得できればシステムの設計や開発、運用に発展することも可能です。本資格を有していることにより就職活動でアピールできるため、SIerへの就職を目指す方は取得をおすすめします。
資格(2)応用情報技術者
基本情報技術者と同様にIPAが実施する国家試験で、基本情報技術者の上位資格にあたります。
基本情報技術者を取得したうえで、次のステップを目指したい方におすすめできる資格です。システムの開発や運用、保守における方針を踏まえ、技術的な課題や業務に取り組めるスキルを持っていると証明できます。
資格(3)プロジェクトマネージャ
プロジェクトマネージャは、応用技術者試験の上位互換の資格で、国家試験の一つでもあります。合格率も平均15%ほどと低く、非常に難易度が高いと言えるでしょう。「自分の技術の裏付けをしたい」「さらなるキャリアアップを目指したい」という人にはおすすめと言えます。
ただし、SIerは基本的に実力主義。実務経験があるか否かがもっとも大きな採用基準となるため、実務経験を伴わない場合は、大きく就職に有利に働くことは少ないでしょう。
【年収ランキング】SIer(システム インテグレーター)の企業一覧
SIerには、いくつか有名な大手企業が存在します。業界で有名なSIerの大手企業を紹介します。
- 野村証券
- 電通総研(旧:電通国際情報サービス)
- SAPジャパン
- 伊藤忠テクノソリューションズ
- オービック
野村総合研究所(ユーザー系SIer)|1,242万円
野村総合研究所はコンサルティングや金融IT、産業IT、IT基盤といったIT系のコンサルティングに関する事業を手がけています。SIer業界でもっとも年収が高く、有価証券報告書によると平均年収は1,242万円(2023年3月期)とされています。
SIer業界のなかでもっとも年収が高いことから、規模の大きなプロジェクトについて多くの実績があると考えられるでしょう。年齢によって基本給が変動し、ボーナスの支給も年に2回あります。
とくに、昇進した際のボーナスの上がり幅が大きいのは魅力的と言えるのではないでしょうか。
電通総研(ユーザー系SIer)|1,128万円
続いて、日本のSIer業界で2番目に年収が高いのが、電通総研(旧:電通国際情報サービス)です。2022年12月の有価証券報告書を見ると平均年収は1,128万円とされています。
電通総研は電通グループの1社であり、コンサルティングのほか、ソフトウェアの販売やサポート、アウトソーシング事業などを手がけています。
期待できる年収は大きく業績によっては賞与も高くなる場合がありますが、一方で基本給は大きく変わらないとの意見もありました。
SAPジャパン(外資系SIer)|1,099万円
SAPジャパンは、ヨーロッパで最大級の規模を誇るIT企業SAPの日本法人で、OpenWoekの口コミを見ると平均年収が1,099万円とされています。今回のランキングのなかでは唯一の外資系SIerに分類されます。
給与は年俸制となっており、ボーナスは成果や評価によって変動するため、実力を評価してほしいという方にはぴったりと言えるでしょう。ちなみに業務についての取り組み方や結果ばかりでなく、後進の育成といった要素によっても評価される仕組みです。
伊藤忠テクノソリューションズ(ユーザー系SIer)|1,029万円
伊藤忠テクノソリューションズは、2023年3月期の有価証券報告書を見ると平均年収が1,029万円とされています。伊藤忠商事グループの1社で、IT関連の開発や販売、保守、情報処理サービスなどを手がけている企業です。
伊藤忠テクノソリューションズは、役職の等級が設定されており、役職なしでもっとも低いS1~S3という等級は年功序列で昇格していきます。その分、昇給もあまり期待できないと言えるでしょう。主任や課長といった役職は実力次第で勝ち取ることができ、役職がもらえれば大幅な給料アップが見込めます。さらに業績がボーナスに反映されるため、好調であれば相応の金額が望めます。
オービック(独立系SIer)|1,006万円
オービックは、2023年3月期の有価証券報告書を見ると平均年収が1,006万円とされています。SIer事業のほか、システムサポートやオフィスオートメーションといった事業を中心に手がけています。
基本給や賞与だけでなく、成績によってインセンティブがあるのがポイントです。そのほか、社員一律で支給額が上がるケースもあるとされています。
SIer(システム インテグレーター)に関するよくある質問
SIerについて、気になる質問をいくつかまとめました。
SIerの年収はいくら?
SIerの年収は、20代で424万円ほど、30代で578万円ほどとされています。SIerはシステム設計から開発、運用、保守まで幅広く対応する都合上、IT業界のなかでも比較的収入が大きい部類に入ります。
SIer業界は残業や休日出勤が多い?
SIer業界は、残業や休日出勤が多いとされています。システム開発には納期がつきもので、なかにはかなり納期が短い場合もあります。加えて、依頼元からの要望が頻繁に変わることも珍しくなく、そのたびに対応しなければいけません。
仕事内容を踏まえると作業負担が多く、通常の労働時間外で対応しなければならないシーンは珍しくないでしょう。
まとめ
SIerとは、システム開発のすべての工程を担う受託開発企業を指します。
仕事内容も、以下のとおり多岐に渡ることが特徴です。
- システムの導入計画の立案
- システム開発・設計
- ハードウェア・ソフトウェアの選定
- 社内管理システムの構築
- 開発システムの運用・管理
SIerが担う役割は、非常に幅広いです。すべてを一人のスタッフが手がけるわけではありませんが、チームの一員として働くのであれば、さまざまな工程で何が行われているのか理解できていたほうがよいでしょう。
SIerでは多くのスキルが求められ、さまざまな企業やスタッフと関わることになります。大変な仕事ではありますが、その分身に付く経験ややりがいは確かなものです。慢性的な人手不足に悩まされ、大手企業ともなれば高年収を期待できる分野でもあります。