日本企業の上場を通じ、日本経済の活性化を支援したい HeartCore Enterprises, Inc. CEO 神野純孝氏インタビュー

HeartCore Enterprises, Inc. 神野純孝氏

アメリカ・デラウェア州で設立されたHeartCore Enterprises,Inc.は、2022年2月に日本企業として3社目となるNASDAQ証券取引所(以下「NASDAQ」)への新規上場を果たした。     

同社はその上場経験をもとに、日本企業のNASDAQを始めとした海外市場への上場を支援する専門的なコンサルティングサービス「GoIPO」を2022年3月より開始。その後HeartCore Financial,Inc. をアメリカに設立し、2024年5月に東京支店を立ち上げた。取締役として神野純孝氏、東京支店 支店長として石黒氏が就任し、今回は創業の背景や事業への思いなどについて聞いた。

神野 純孝(かんの・すみたか)

1965年8月、大阪生まれ。小学生の頃からインテルが販売を開始したマイコンチップを使って自作のパソコンをつくりはじめ、高校時代、様々な企業のソフトウェアの開発や、ハードウェアの開発にも携わり、日本で初めての商業パソコン通信の会社のハードウェア制作を担当。大学卒業後、航空自衛隊パイロットとして勤務。その後、起業し、スポーツ用品を取り扱い、日本国内でスノーボードの一大ブームを作る。2001年、外資系のソフトウェアベンダーのブロードビジョンに就職し、大手企業のソフトウェアの販売や構築を担当。2007年にハートコア株式会社(旧・株式会社ジゾン)を創業(設立は2009年)。「私たちは幸せ屋です」という企業理念のもと、CMSシェア日本一、プロセスマイニング業界で日本国内のリーディングカンパニーとなる。2022年2月10日、日本企業として3社目となるNASDAQ市場への新規上場を果たす。企業のCX/DX戦略支援やVRサービスを行いながら、ベンチャー企業支援のため、自社の経験と実績をもとにNASDAQをはじめ、海外市場IPOコンサルティングサービス「Go IPO」を開始。著書に『年商10億円以下の小さな会社がNASDAQに上場する方法』(アチーブメント出版)がある。

目次

自衛隊パイロット、スポーツ用品販売、会社員を経て、CMSベンダーを創業。自力でNASDAQ上場実現へ

——まず、神野社長のご経歴から伺いたいと思います。大学卒業後に航空自衛隊のパイロットを務められ、退役後にスポーツ用品を取り扱う会社を起こされました。起業した理由をお聞かせいただけますか?

きっかけはスノーボードとの出会いでした。スノーボードは1970年代後半には日本に伝わり、少しずつ知られるようになってはいたものの、当時はスノーボードができるゲレンデ自体がほとんどないような状況でした。そのスノーボードを日本で広めたいと考え、日本全国のスキー場に許可を得てスノーボード可能な場所を開拓するところから始めました。その甲斐あって、スノーボードが大流行。最初年商5,000万円ほどだった私の会社も、年商60億円を超えるまでに成長しました。

ところが、若気の至りで倒産という事態を招いてしまいます。数億円の借金を抱えた私がとったのは、起業してビジネスを育て売却するという方法。いわばシリアルアントレプレナーです。これを必死で繰り返してどうにか借金を完済し、アメリカのソフトウェアベンダーであるブロードビジョンに就職しました。ブロードビジョンでは大手企業を対象としたソフトウェアの販売やサポートを担当し、ソフトウェアの開発・販売、大手企業の顧客との関係構築など、多くのことを学びました。そうして5年半ほど経験を積んだのち、独立して当社を創業しました。

——CMSベンダーとして名を馳せるとともに多角的に事業を展開、2022年2月には日本企業として3社目となるNASDAQ上場を果たされました。

当初我々は東証上場を目指しており、5年以上にわたり試行錯誤を繰り返していました。しかし東証上場の壁は厚く、残念ながら実現には至りませんでした。そんなとき、「アメリカで上場する」という選択肢にふれる機会があったのです。

その方法を調べたり出資をいただいていた株主と折衝するなかで、その道のりも決して楽なものではないということが分かってきましたが、その大変さにかえって私のチャレンジ精神に火がつきました。社員ですら半信半疑でしたが(笑)、様々な資料を集め、アメリカで上場を経験した方に話を聞くなどして情報を収集し、ほぼ一人で準備してNASDAQ上場を実現しました。

——上場後には書籍『年商10億円以下の小さな会社がNASDAQに上場する方法』(アチーブメント出版)を出版されています。どのような経緯から出版されたのでしょうか?

私がNASDAQ上場を目指して準備を始めた当時、直近20数年間でNASDAQに上場した日本企業はゼロでした。上場支援コンサルタントなどもいませんでしたし、日本のビジネスパーソンに尋ねても誰もNASDAQに上場する方法を知りませんでした。そのような状況の中で上場を達成した私は、その経験で得たノウハウを蓄積できました。

このノウハウを共有することで、東証上場の高いハードルを前に悩んでいる日本企業に新たな選択肢が生まれるかもしれない。本来なら数年かかっていた上場準備期間を半分に、あるいはもっと少なくできるかもしれない。そうすれば、多くの日本企業が米国で上場できるようになるかもしれない——。そんな思いから上場準備の傍ら本を書き上げ、上場の約5カ月後に出版しました。

根底にある思いは「日本企業の米国をはじめ海外上場を通じ、日本経済の活性化を支援したい」

——そして御社は、日本企業の米国上場に向けたIPOコンサルティングサービス「Go IPO」を2022年3月より開始。2024年5月にはHeartCore Financial,Inc.をアメリカに設立し、その後、東京支店を立ち上げました。

書籍を通じてノウハウをある程度共有できましたが、とはいえ海外上場の壁はやはり厚く、苦労される企業は少なくありません。そうした企業の皆様に伴走し、日本企業の上場を一層強く支援できればと考え、事業として展開を開始しました。

——神野社長のお話からは、日本企業の上場を支援したいという並々ならぬ意欲が窺えます。その背景にはどのような思いがあるのでしょうか?

かつての東証上場には、年商数億円規模の企業が上場して数百億円を調達するなど多額の資金調達を可能にする力があり、その資金を元手に企業は飛躍的な成長を遂げることができました。しかし現在は、上場ハードルが高く、上場で調達できる金額が数億円程度であることも珍しくありません。そもそも上場準備には数億円程度の費用がかかりますし、数億円程度の資金では成長への投資は限られたものになります。そこで日本企業がNASDAQや海外市場に上場できるようになり、多額の資金調達が可能となれば、大きな成長が見込めるでしょう。企業が成長すれば雇用が生まれ、経済が潤います。

これまで200社以上の中国企業がNASDAQに上場しており、のべ1兆4000億ドルほどの資金が調達されました。これは、アメリカ市場が約200兆円を中国に投資しているのと同じことです。同様にアメリカ市場から日本に資金を引き入れることができれば、日本の経済は上向くはずです。我々は日本企業の海外上場を通じ、日本経済の活性化を支援したい。これがこの事業を立ち上げた根底にある思いです。

——今回、その上場支援コンサルティング事業で正社員を募集されています。社長として人材に求めることはどのようなことですか?

端的に言うと、プロフェッショナルであろうと努力することを怠らないこと。そのために必要なことの一つには、プロフェッショナルとして仕事をするための学びを怠らないということがあります。クライアント企業の方々は、上場を目指し大変勉強されています。クライアントに信頼を得るためには、知識と経験が必要でしょう。家電量販店で商品のことを自分より知らない店員さんから商品を買いたいと思わないのと同じです。

我々は、クライアントから報酬をいただいているプロフェッショナルのコンサルタントです。人一倍多くの情報収集をし、誰よりも納得できるような回答を用意し、クライアント企業を上場へ導くことが求められます。プロフェッショナルとして仕事をする以上、プロフェッショナルとしての自覚をもち、プロフェッショナルとしてお客様をサポートできる、それだけの知識をつけてほしい。その努力をしてほしいと思います。

もう一つ、非常に大事なことは、失敗を恐れず、諦めずに挑戦し続けるということだと思います。完璧な人間はこの世に存在しません。人は失敗することもあるでしょう。でも、失敗しても諦めずに挑戦を続け、最終的に成功すれば、そこまでの失敗は「成長の糧」になります。白熱電球を発明したトーマス・エジソン氏、青色発光ダイオード(LED)を発明した中村修二氏、iPS細胞の作製に成功した山中伸弥氏……どの偉業も1回で成功したわけではなく、何年もかけ、何百回、何万回と失敗を重ねて、初めて成功と言える成果を生み出したのです。

——何かを続けられることも一つの能力ですね。

失敗は、「失敗だ」と諦めて挑戦を終えた瞬間に初めて「失敗」になります。逆に言えば、失敗をリカバリーできれば失敗ではないのです。失敗を恐れず挑戦を続けていくことは、プロフェッショナルにとって重要な要素です。そして、企業の人材がそうあるためには、企業が社員の挑戦を後押しすることが不可欠です。減点主義からはチャレンジは生まれません。挑戦をすることで、人は成長します。当社は失敗も許容する会社です。 怖がらずにどんどん挑戦を続け、成長してください。共に成長していきたい方の入社をお待ちしています。

業務では日本とアメリカで多様なやりとりが発生。仕事と英語でのコミュニケーションに慣れてほしい

——ここからは石黒さんにお話をうかがいます。石黒さんの経歴をお聞かせいただけますか?

私は長く政府系金融機関に在籍し、そのあと複数のコンサルティング企業で勤務しました。直近では大手コンサルティングファームで戦略コンサルタントを務めていたのですが、そのときに当社の上場支援コンサルティング事業を知りました。数多く存在するコンサルティング企業のなかで、日本で東証の上場を支援するコンサルティングサービスこそあれども、海外の市場への上場を支援するコンサルティングは私にとって聞いたことがない未知の領域でした。そこに強く魅力を感じ、飛び込んでみようとジョインしました。

——正社員5名、業務委託約20名で、13社のクライアント企業をサポートされていると伺いました。どのような体制で各案件を進行しているのですか?

平均して1人あたり2〜3社のクライアントを担当しています。各案件は主担当となるコンサルタント、サポートするスタッフ、翻訳担当スタッフなどがチームを組んであたります。案件の進行状況などに応じてチームの人数を適宜調整し、滞りなく進行できるようにしています。新たに入社いただく方には、まず1社を担当していただき、業務に慣れていただければと思っています。

——御社の皆さんの働き方について教えてください。

勤務時間はフレックス制で、案件の進行に応じて各自で調整します。日本国内でクライアント企業と打ち合わせすることもあれば、アメリカの関係者とやりとりすることもあります。そのため、時差も考慮しながら必要なときに仕事をして、休めるときに休むという感じですね。

勤務場所は基本的に自由です。霞ヶ関にオフィスがありますが、自宅で作業することもあれば、クライアント企業で仕事をすることもあります。社内のメンバーはTeamsでつながっており、適宜コミュニケーションをとっています。

——アメリカの関係者とやりとりがあるとのことですが、英語スキルは必要ですか?

案件の進行に際しては、上場を目指すクライアント企業、日本でいう主幹事証券のような役割を担うアンダーライター、アンダーライターの弁護士、上場手続きに必要となるアメリカの弁護士や監査法人とのやりとりが発生します。ですので、英語のコミュニケーションは必要になってきます。

ただ、メールなどの文章は翻訳ツールでもある程度対応できますし、入社当初はまず話を聞いて内容を理解する場面も多いと思います。ですので、最初から英語スキルが十分にあるという方でなくても、入社して仕事に慣れながら英語で話せるようになっていただければ、それでもかまいません。とはいえ、英語を聞いて内容を理解する力はやはり必要かと思います。

クライアントを鼓舞しながら上場に向けて伴走。顧客の運命が変わる瞬間に立ち会える仕事

——上場を目指す企業がクライアントということですが、コミュニケーションをとるのは経営者が多いのでしょうか。

はい、企業の経営者やCFO、またはそれに準ずるポジションの方が大半です。また、日本およびアメリカの弁護士や会計士、監査法人とのコミュニケーションも日々発生しますので、ビジネスパーソンとして適切な言葉遣いや立ち居振る舞いは必要になります。

——これから来られる人材に求めることはありますか?

基本的には先ほど神野が申し上げたようなことですが、追加するとすれば「まず自分で調べ、考えてみる」という動き方ができることです。各案件ごとに、進み方も必要となる作業も異なります。分からないことや悩むことがあればもちろん相談していただきたいですが、事業自体が始まったばかりであり、一人一人が最大限の努力をして良い事業をつくりあげる段階だということをご理解いただきたいです。     

——コンサルティング経験の有無についてはいかがですか?

コンサルティング経験のある方であれば、仕事を理解しやすいという面は多少あるかと思います。ですが、一般的なコンサルティングとはまったく異なりますので、経験は必須ではありません。

——「御社で仕事をするとこういうところがおもしろい」というポイントがありましたらお聞かせください。

学ぶ意欲のある方にとっては勉強しがいのある環境だと思います。常に新しい情報が入ってきますし、クライアント企業をはじめ国内外の弁護士や監査法人、アンダーライターとの関わりを通じて多様なつながりを得ることができます。

ただ、実際の業務は非常に泥臭いです。例えば、クライアント企業の契約書に問題がないかどうかアメリカの弁護士によるデューデリジェンスを行いますが、そのためにあらゆる書類をデジタル化・英訳する必要があります。また、日本でいう目論見書のような登録届出書を米国証券取引委員会(SEC)に提出するのですが、数百ページに及ぶ資料を作成することになります。

作成した書類は非常に細かいところまでファクトチェックが行われ、ちょっと曖昧な表現をしようものなら厳しく確認が入ります。仕事量も多く、国内外の多くの関係者と連携しながら、細かいところまで神経を行き届かせて対応する必要があります。     

簡単に上場できる企業はありません。その過程には常に紆余曲折があります。我々は、必死に上場を目指すクライアント企業を鼓舞しながら上場に向けて伴走する、非常に重要な立場です。そうした紆余曲折を経てクライアント企業の運命が変わる瞬間はとてもドラマチックです。その瞬間に立ち会うことができる意義深い仕事であり、その過程を楽しめる方にとっては、大きなやりがいがある仕事だと思います。

HeartCore Financial,Inc. 企業情報

事業内容IPOコンサルティングサービスは、2022年2月に実際にNASDAQへダイレクトリスティンをしたハートコア社の経験と実績をもとに、米国上場を支援するサービスです。
■米国市場上場支援コンサルティング
代表者名取締役:神野 純孝(本名:山本 純孝)
役員The President, Chief Compliance Officer, the Financial and Operations Principal, the Secretary:ゲイリー・クッチア
東京支店 支店長:石黒聖也
設立2023年1月
所在地東京支店:東京都千代田区霞が関3-2-5 霞ヶ関ビルディング6F
〒100-6006
代表番号03-6206-7570

HeartCore Financial,Inc. 求人情報

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