2006年に創業したパースペクティブ株式会社は、長年にわたる業務経験を生かし、製薬企業をはじめとするライフサイエンス・ヘルスケア業界を中心にサービスを提供する。事業の柱は「マネジメント・コンサルティング事業」と「リアルビジネス事業」。2つの事業が相乗効果を生むサイクルを形成し、提供価値の最大化に意欲的に取り組んでいる。
同社の特徴は、徹底した顧客第一主義。自らを「顧客とともに走り、二人三脚でゴールを目指す“伴走者”」と位置づけ、顧客の成功への貢献に徹底してコミットしている。「お客様の成功が私たちの成功であり、お客様の成長が私たちの成長」と語る西谷社長に、起業の経緯や同社の事業、顧客第一主義への想いなどについて聞いた。
西谷 弘毅(にしたに・ひろき)
1992年同志社大学商学部卒業後、株式会社内田洋行に入社、新規事業企画・立ち上げ、サービス開発・ソリューション開発を経験。1999年11月、プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社(現・日本アイ・ビー・エム株式会社)に入社、製薬ライフサイエンス業界における企業統合・事業譲渡、戦略立案、構想策定、組織設計、業務改善、ITシステム導入・運用プロジェクトをリード。製薬コマーシャル領域におけるコンサルティングサービス責任者として、日本アイ・ビー・エムの製薬企業向けビジネス拡大に貢献。2006年4月、パースペクティブ株式会社を設立、代表取締役に就任。以後18年にわたり代表取締役として同社をリード。
製薬業界のコンサル経験を経て独立。背景にあったのは「お客様の成功にコミットしたい」という思い

——西谷社長は、プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社(現・日本アイ・ビー・エム株式会社)では一貫して製薬業界のコンサルティングに従事されました。
最初にアサインされたのが製薬会社のプロジェクトで、そのお客様にご評価いただいたことを契機に、ほとんどの期間、製薬業界のプロジェクトを担当しました。私が在籍していた2000年代前半は製薬会社の合併が非常に多く、製薬会社の合併や事業分割・統合、一部事業を切り出して別会社に移転するといったプロジェクトやそれに伴うシステム導入などの案件にも多数携わりました。
——そして2006年に御社を設立されました。どのような思いから起業されたのでしょうか?
大企業の分割・合併に関するプロジェクトでは、多くの場合統合初日までがコンサルタントの仕事です。しかし、企業を単純に統合しただけでは「1+1=2」の状態でしかなく、統合したシナジーはその後の取り組みによって初めて生まれます。
私はその部分にも携わり、本当の意味でお客様が成功を収めるまでお手伝いしたかったのですが、大手のコンサルティングファームともなるとお客様の金銭的負担も相応のものになり、長期間にわたり伴走するというのはなかなか実現するものではありませんでした。そこでお客様の成功にコミットし、本当の意味での成功までの道のりをお手伝いする仕事をできるようにしたいというのが起業の背景にあった思いです。
もう一つ考えていたのが、自分自身でサービスをつくりたいということです。コンサルティングファームの社員という立場では、会社の予算で自由に投資をして新規事業を立ち上げるというのは困難。でも自分の会社であれば、コンサルタントとしてプロジェクトを手がけ、そこで得た利益を自身の思うビジネスに投資することも可能になります。創業メンバーは私を含めて5人。ファームで一緒に働いていた仲間が一緒にやろうと言ってくれたことも、独立の後押しになりました。
——社名の由来を教えていただけますか?
パースペクティブは、「展望」「物の見方、考え方」「大局観」などを意味する言葉です。コンサルティング企業としてお客様に伴走し、お客様の見つめる方向をともに見通したい。客観的な第三者としてお客様に適切な提言を行うために、お客様のことを見通したい。そして、自社サービスを提供する企業として、市場や顧客を見通したい。そうした願いを込めました。
「コンサルティング事業」と「リアルビジネス事業」で相乗効果を生むサイクルを回し、提供価値を最大化

——御社の事業についてお聞かせください。
当社の事業は大きく分けて2つあります。1つ目はマネジメント・コンサルティング事業です。これは、会社経営の視点に基づき、お客様の経営、業務、システムなどに関する課題に対してコンサルティングサービスをご提供するものです。各案件は目的・ゴールを設定したプロジェクトというかたちで進行し、平均して3カ月から半年程度携わります。
2つ目はリアルビジネス事業で、これはコンサルティングではなく、当社が投資して開発・提供している自社サービスです。主要商品は「tebra」という製薬企業向けデータ利活用プラットフォームで、セールス・マーケティングに必要なデータの収集からレポート・分析ダッシュボードの提供まで、クラウド環境でご提供するものです。そのほか、お客様のデータ分析・メンテナンス業務やBPO設計・運営などのお手伝いも行っています。
——リアルビジネス事業は、どのようなご発想から展開されたのでしょうか?
お客様の課題解決や目標達成を支援するにはコンサルティングサービスは有効ですが、当社は大きい組織ではなく、ご支援できる範囲はどうしても限られてしまいます。しかし、同じ製薬業界のなかでは同様の課題をおもちの企業も少なくありませんし、私たちとしてはできるだけ多くのお客様の力になりたいという思いがあります。そこで、我々が長年のコンサルティング経験を通じて蓄積した製薬業界の課題解決に関するナレッジを抽象化・標準化し、ITを活用して多くのお客様に安価で届けられればと考え、実現したのがリアルビジネス事業です。
また、コンサルティング事業ではお客様の成功に向けて伴走するとはいえ、プロジェクトはどうしても限られた期間になります。他方、リアルビジネス事業はお客様の業務を支える基盤になり、お使いいただいている間は当社がお客様に伴走することができます。そのため、お客様に何かお困りごとが生じた際にも当社がご相談をお伺いしやすいのです。
そうなれば、お客様を幅広いフェーズでご支援できるのはもちろん、そのやりとりで得た知見やお客様のニーズをコンサルタント事業にフィードバックすることで、より価値のあるコンサルティングサービスの開発につなげることができます。このように、マネジメント・コンサルティング事業とリアルビジネス事業でサイクルを回し相乗効果を生むことによって、提供する価値を最大化しています。
——御社の特徴、強みについて教えてください。
我々は、お客様の成功のために何ができるかを誰よりも深く考え、お客様と対話し、一緒に悩み、あるいは励ましながら、ともに走り二人三脚でゴールを目指す“伴走者”であると位置づけています。そしてお客様の成功に直接貢献することにコミットし、お客様がなすべきことを提案・提言しながら、計画から実行、クローズに至るまでフルサポートしています。
加えて、パートナーとしてお客様とともに成長するという意識も重視しており、その実現のためにプロフェッショナルであり続ける努力を怠らず、お客様に寄り添いながらも能動的・主体的に動き、お客様をリード・支援することに努めています。
エンジニアを擁するグループ企業がありテクノロジーに強いことも当社の特徴で、お客様に対し新たな価値を提供するべく、社内での新規サービス開発にも積極的に取り組んでいます。社内のメンバーにも、お客様の課題解決をサポートするなかで「こういうサービスがあれば課題解決に資するのではないか」「こういうサービスはビジネスチャンスがありそうだ」といったことを積極的に見出し提案してほしいと伝えています。
階層構造を設けないフラットな組織体制、メンター制度など、組織改革や人材育成にも意欲的に取り組む

——御社の皆さんの人数や働き方を伺えますか。
現在、グループ会社も含めて約40名在籍しているほか、社外にパートナーがおり、必要に応じて業務を委託しています。社員については、月6回は出社するというルールがあるほかお客様のところに伺うこともありますが、ほとんどはリモートワークで、お客様ともWebで打ち合わせをしているケースも多いです。
——御社は非常にユニークな組織体制をとられています。具体的にはどのような体制なのでしょうか?
当社は社員に階層構造を設けない、フラットな組織にしています。コンサルタントとして、ディレクタ、シニアマネージャ、マネージャ、シニアコンサルタント、コンサルタントというスキル別のポジションがあり、このあとご説明するようにリーダーというポジションのメンバーはおりますが、いわゆる上司や管理職はいません。
リーダーは私を含めて6人おり、会社の業績責任や人材採用などの業務、サービスの開発・推進のリードといった役割を担います。リーダー以外のメンバーである「プラクティショナー」は、自身が携わりたいプロジェクトやサービス開発を選び、手を上げることができます。コンサルティング案件については会社としてのオーダーも加味してアサインしますが、メンバー自らがサービス開発を提案してプロジェクトを立ち上げることも可能です。
——メンター制度もあると伺いました。
シニアコンサルタントおよびコンサルタント、スタッフについては、マネージャ以上のメンバーがメンターとなって目標設定やスキル開発をフォローし、成長をサポートします。マネージャ、シニアマネージャ、ディレクタについては、リーダー6人を含む特定の対象者がコーチとなり、やはり目標設定やスキル開発などをフォローします。
——このような組織体制にされた背景を教えていただけますか?
創業メンバーは経験豊富なプロフェッショナルの集まりではありましたが、組織としてはまとまりがありませんでした。そこで事業を育てながら、一般的な企業のように事業部制をとり階層構造を設けた組織として体制を整え、会社として大きく成長を遂げました。しかしその反面、組織の縦割りによる問題や指示待ち社員の発生、社内手続きの煩雑化などが散見されるようになりました。
その結果、社内に内向きで受け身な側面が見受けられるようになり、メンバーそれぞれのプロフェッショナリズム、主体性をもつ個としての力が弱まってしまったのです。コロナ禍によるコミュニケーション不足も拍車をかけました。しかし、もともと私が目指していたのは、個としての主体性をもちつつも組織としてもまとまることで、生産性のより高い仕事ができる組織、お客様の成功にコミットできるプロフェッショナル集団です。そこに立ち戻ろうと考え、2022年よりこのような体制をとりました。
この体制に変えて業績も伸びましたし、私自身は一定の評価をしています。ただ、ケアすべき課題も見えつつありますし、人数が増えると立ち行かないだろうとも考えています。組織体制や人事制度、社内のルールなどは「1回つくったらそれでずっと大丈夫」ではなく、時代や環境に応じて変えていく必要があるものです。当社はそういう変化ができる、風通しのいい企業だということは、自信をもってお伝えできるかと思います。
コンサルタントに求めるのは「当事者意識」「自他の尊重」「積極性」。変化する市場で主体的にチャレンジしてほしい

——今回、コンサルタント人材を募集されています。製薬業界またはコンサルティングファームの業務経験は必須ですか?
マネージャやシニアコンサルタントについては経験者の方が対象になりますが、そうでないコンサルタントについては未経験でも優秀な方がいればお会いしたいと思っています。いずれの求人についても当社が重視しているのは、業務経験やスキルよりはマインド、資質の部分。具体的には「Accountable」「Assertive」「Proactive」の3つを求めています。
「Accountable」とは、自分自身の責任として物事をとらえ、自ら行動を起こすことができる主体性・当事者意識・自発性を指します。限られた人数で運営している企業として、自分の役割だけにとどまることなく、お客様の期待を超えて大きな価値を提供するためにすべきことを自分自身で考えて行動できる力が必要です。
「Assertive」は、他者も自分も尊重すること、そして自分の意見を誠実かつ率直に表現することができること。フラットな組織でメンバーどうしが対等な立場で仕事をすることができる当社では、お互いを尊重する意識が欠かせません。いわゆる上司の指示もありませんので、自分の考えを率直に誠実に伝え、いい仕事をしていただきたいと思っています。
「Proactive」は、チャレンジできる機会をチャンスととらえ、自分と他者双方の成長・成功に向けて積極的かつ前向きに取り組むこと。お客様のビジネスを成功に導くことにコミットし、成功にたどりつくまで必要なことを積極的に前向きに提案し、取り組んでいただきたいと思います。
——「御社で仕事をするとこういうところがおもしろい」というポイントがありましたらお聞かせください。
日本で少子高齢化が加速し社会保障費が増加しているなか、厚生労働省は「保健医療をキュア中心からケア中心へ転換していく」という方針を示しています。「キュア」とは病気の治療や生命維持を目的とする医療、「ケア」とは病気を抱えていてもQOLを維持・向上できるようにすることを目指す医療を指します。医療のステージを「予防」「診断・治療」「予後・モニタリング」に大別すると、従来のキュア中心の保険医療は「診断・治療」に重点を置いたものでしたが、ケア中心の保険医療では「予防」や「予後・モニタリング」も重視されることになります。
また厚生労働省は、ケア中心の時代へ転換していくためには情報基盤や医療に関わるさまざまなデータの収集・連係・活用が必要だとしており、IT・データが果たす役割はこれまで以上に大きくなると想定されます。そこには従来の製薬企業をはじめとするライフサイエンス・ヘルスケア企業のみならず、食品、家電、保険など多様な業界の企業がプレイヤーとして関わってくることになるでしょう。
そうなれば、業界を取り巻く環境は大きく変わることになります。当社としては、製薬業界をコアなお客様とすることはこれからも変わりませんが、同時に、これから「ケア」の領域でサービスを展開していくであろう多様なプレイヤーにもそのご支援の幅を広げ、「ケア」中心の時代の実現に貢献したいと考えています。
そうした変化の只中にある当社では、製薬業界のコンサルティングや先ほど申し上げたような新規サービス開発などはもちろん、さまざまなチャレンジをしていただけるチャンスがあります。それは、当社ならではのおもしろみ。これから入っていただく方にも、好奇心とチャレンジ精神をもって、ぜひ主体的に取り組んでいただけたらと思います。
パースペクティブ株式会社 企業情報
会社名 | パースペクティブ株式会社 |
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設立 | 2006年3月 |
本社所在地 | 〒102-0084 東京都千代田区二番町3-10 白揚ビル8階 |
資本金 | 3,000万円 |
代表取締役 | 西谷 弘毅 |
取引銀行 | みずほ銀行 恵比寿支店 三菱東京UFJ銀行 本店 |
決算月 | 12月 |
事業内容 | マネジメントコンサルティング事業:会社経営の視点に基づくコンサルティングサービスの提供 リアルビジネス事業:ICT技術を活用したシステムサービス、BPO の設計・導入・運営 |
認証 | ISMS JIS Q 27001:2014(ISO/IEC 27001:2013) 2016年4月21日取得 |
認証範囲 | データサービス事業(tebra)運用・保守 |
顧問事務所 | 鈴木哲郎税理士事務所(会計税務) インテックス法律特許事務所(法務) |
グループ企業 | パースペクティブ・イノベートクロス株式会社 |