人口減など地域の課題をテクノロジーで解決しようとする「スマートシティ」の取り組みが広がっている。こうした中で国内のスマートシティプロジェクトを数多く手掛け、注目されるのが株式会社ウフルだ。
クラウドやIoTをメインに、企業や自治体のDXを支援してきた同社。今回は同社を起業し、代表取締役CEOを務める園田崇史氏に、事業への想いや今後の展望を聞いた。
園田 崇史(そのだ・たかし)
1995年早稲田大学政治経済学部卒業、電通入社。4年半の勤務を経て、南カリフォルニア大学(USC)大学院に進学、経営管理学修士(MBA)を取得。その後モルガン・スタンレー証券、日興シティグループ証券を経て、ライブドア(現LINE)執行役員副社長に就任。2006年、株式会社ウフルを設立。
社名に込めたのは、「自由を実現してグローバルに展開したい」という想い
──もともと起業したいという想いがあったのでしょうか。
若い頃から起業したいと思っていました。ただ、起業する前にプロフェッショナルとしての経験が必要だと感じていたため、大学を卒業して10年間は、いろいろなところで起業に活かせる経験を積ませていただきました。
──電通、投資銀行、ライブドアと多彩な経歴をお持ちですね。
大学を出て就職する時、まずはいろいろな人と出会うことが大事だと考え、多くの人との繋がりを求めて電通へ入社しました。
電通には5年くらい在籍し、その後更なる知識と経験を求めて、アメリカの南カルフォルニア大学へ留学してMBAを取得しました。これは若いうちグローバルなビジネス経験をしておきたいと思ったからです。
その後、将来会社を経営する上で、財務会計や金融市場に対する考え方を身につけたいと思い、投資銀行に入りました。そこでは留学経験を生かし日本の事業会社と米国の機関投資家を繋ぐ重要な役割を担いました。
そんな中、当時ライブドアの社長だった堀江貴文さんと知り合う機会があり、私と同い年の堀江さんが起業家としてアクティブに活動されているのを見て、とても刺激を受けました。その後ご縁があって、ライブドアへ入社することになりました。
そこで初めてインターネットビジネスに触れ、インターネットとリアルを結び付けることで、新たなビジネスフロンティアが拓けると確信しました。
これまでに培った経験と、ライブドアで得た学びを融合させたら、社会の役に立つ会社がつくれるのではないかという思いで、ウフルを立ち上げました。
──「ウフル」という社名の由来と、込めている意味を伺えますか?
「ウフル」は、スワヒリ語で「自由」という意味です。創業時に私と共同創業者で、「事業をする上で最初に実現しなきゃいけないのは自由だよね」という話から、「自由」を社名に選びました。
スワヒリ語はケニアやタンザニアなどで使われる言語です。日本から遠く離れたサバンナにまで事業を拡げ、グローバルに展開していきたいという想いを込めました。ただ実際には「ウルフ」と間違えられることも多いので、もっと知名度を上げていきたいです。
自由な発想には多様性が必要。でも人と違うだけでは多様性は活かせない
──御社の事業について、教えていただけますか?
クラウドやIoT、ブロックチェーンといったテクノロジーを通じて、企業や自治体のデータを利活用し、世の中の無理・無駄をなくしていくこと。ヒト・モノ・コトがスムーズに行きかい、ストレスのない社会「SMOOTH WORLD」を創ることが私たちの目指す世界です。
そのための事業の根幹はクラウドです。特にSalesforceの導入支援は、創業以来コアビジネスとして推進してきました。その上で、IoTやブロックチェーンといった技術を組み合わせ、国内外のスマートシティプロジェクトや、カーボンニュートラル領域も手掛けています。
一言で言うと、使い古された言い方になりますが、「DX企業」です。ただ、もっと独自の方法で自己表現したいと常に考えています。
──他社との違いはどんなところですか?
リアルな世界との強い繋がりです。これには、地域社会との連携という意味のリアルと、物理的な空間やデバイスといったリアルの、両方を指しています。これは戦略系コンサルティングファームとの明確な違いだと思っています。
地方自治体のスマートシティプロジェクトで、各地で取り組みが進行中です。さまざまな地域の課題解決に向けて、自治体や企業の方々と協業しながら取り組んでいます。実際に現地にオフィスを設けて、そこに移住している社員もいます。また、福井県の拠点では、リアルなデバイスを作るチームもあります。クラウドからエッジまで手掛けることができるのがウフルの特徴です。
──会社として、大切にしていることは何ですか?
私たちは、「テクノロジーと自由な発想で、持続可能な社会を創る」。これを経営理念としています。
自由な発想とテクノロジーを融合させるには、多様なバックグランドを持つ人たちが必要です。新しいアイデアの創出や大きな成果は、多様性の中から生まれてくると思っています。
ウフルでは年齢や性別、国籍といった違いに加え、思考やスキルセットの多様性も大切にしています。
しかし、単に「私はあなたと違う」で終わってしまうと、多様性は活かせません。違うからこそ、お互いの枠を超えてトランスフォーメーションしていこうという発想が重要です。互いの「違いを楽しむ」「枠を超える」という姿勢を大切にし、社内の共通価値基準にも設定しています。
地域の課題解決を目指すには、プロジェクト遂行スキルと周りを巻き込む力が必要
──現在社員数は何名くらいですか?
社員は220名程です。この他に定期的に業務委託でお仕事をしてくださるパートナー様が100名程いらっしゃいます。正直、社員と業務委託の区別はあまり意識せず、皆が一体となって働いています。職種としては約7割がエンジニアで、あとはコンサルタント、セールス、バックオフィスなどです。
──オフィスを拝見したところ、女性の方々もすごく楽しそうに働いていらっしゃいました。
男女比率としては、エンジニアが多いこともあって男性7、女性3くらいです。もちろん女性もたくさん活躍していて、現在営業の責任者も女性です。
──働き方としては、リモートワークがメインですか?
職種にもよりますが、フルリモートOKというケースがほとんどです。国内では30近くの都道府県に社員が住んでおり、海外で勤務する社員もいます。フレックスタイム制度を導入し、働く場所だけでなく、働く時間も柔軟に選択できるようにしています。
──こんな人と一緒に働きたい、というイメージはありますか?
先ほどお話した理念をご理解いただくことが前提ですが、その上で今求めているのは、複雑な課題を顧客と伴走しながら解決するプロジェクトマネジメントができる方です。
おかげさまでビジネスオポチュニティは、すごく増えてきています。ただこれをチャンスとして見るだけではなく、しっかり完走させる必要があります。そこで、お客様と一緒に課題や時間軸を整理して、具体的な実行プランに落とし込める方、つまりコンサルタントやプロジェクトマネージャーの方を求めています。
──そうなると、コンサルタントの経験が必要でしょうか?
そんなことはありません。課題を整理して、提案して、プロジェクトを進めるスキルを持つ方は事業会社にもいらっしゃいますし、ご自身で事業をしている方にもいらっしゃるはずです。
あとは私たちの場合「チームを組成して実行できるか」も大切な要素です。一人で考えられる人はたくさんいると思います。しかし、私たちは常にチームベースで動くため、共同での取り組みを推進できる人、最近の言葉で言うと「プロンプトしていけるか」を重視しています。
──周りを巻き込んでいけるような方ですね。
おっしゃる通りです。地方自治体もそうですが、企業でもこれからDXに取り組み始めるところはまだまだたくさんあります。
従来のITプロジェクトだと、IT部門など専門部署のみとやり取りするケースが多いですが、私たちの案件は、業務部門などさまざまな立場の方と一緒に進めます。上から目線ではなく、同じ目線でものを考え一緒に解決していきましょう、というスタンスが必要です。
──御社で働く魅力は、特にどのあたりですか?
まず扱う技術の幅が広いということですね。クラウドがメインですが、IoTやハードウェアも扱います。技術が多岐に渡っているので、面白いと思います。
それを実行できるフィールドを多く持っていることも、強みですね。地域のスマートシティプロジェクトでは、すでに国内の約40以上の自治体に関わっています。
日本では多くの地域で人手不足など、様々な課題を抱えています。こうした中、自治体の観光や防災などの仕組みをどうDX化して解決するか。これは日本全体の大きなミッションだと考えています。最近はそこにカーボンニュートラルの要素が入るなど、より幅広くなってきています。
情報や人脈は持っている人に集まる。だからコミュニティ活動が大切
──多様なメンバーを統率するのは大変だと思いますが、どのようなコミュニケーションを大切にしていますか?
コミュニケーションで大事にしていることはいくつかありますが、まずは先ほどお話した「インターネットとリアルを融合させ、社会を良くしていく」という想いを常に意識して、共有するようにしています。「そもそも何を目指しているのか?」というのは、常に振り返っています。
2つめは「リアルとリモートの融合」です。私たちはリモートワークがメインですが、お互いをよく知って仲良くなるには、日々の些細なコミュニケーションや直接会うことも大切です。例えば中途入社者の同期会や、節目の懇親会などリアルな接点も意識的に持つようにしています。
私たちはスマートシティプロジェクトを通じて、さまざまな地域とご縁があります。その地域をハブにして、接点を創出するハッカソンやアイデアソンなども行っています。
以前いたオフィスでは、スペースの半分をコミュニティスペースにして、毎日イベントをしていました。毎日となるとコストもかかりますし運営するのも正直大変でしたが、その努力は多くの成果をもたらしました。イベントをきっかけにウフルを知っていただく方も増えましたし、中にはイベントにスピーカーとして登壇した方がその後入社したこともあります。
──コミュニティ活動に前向きな方が御社に合いそうですね。
そうですね。私自身も日本だけにとどまらず、サウジアラビアの投資会議のメンバーになっていますし、いろいろなところでコミュニティ活動をしています。
私たちがやっていることは、オープンイノベーションの要素が多いです。現在、私たちは200名程度の会社ですが、数万人規模の企業がやっていること以上のことを求められることもあります。そうなると、自分や自分の会社という枠を超えて、地域の方や社会全体を巻き込む必要があります。
もちろん守秘義務は順守する必要はありますが、どんなことでも情報は発信しないと入ってきません。
データや情報、人脈はそれを持っている人に引力が発生して、さらに多くのデータ、情報、人脈が集まります。
そのための意味を持ってくるのはヒトとヒトのご縁だと思っています。
──オフィスのビル敷地内にある神社の鳥居を建てられたとお聞きしました。こちらも地域のコミュニティ活動の一環ですか?
おっしゃる通りです。私たちは12年前に本社を東京・神谷町に移したのですが、それ以来すぐ近くの葺城(ふきしろ)稲荷神社にお参りをしています。数年前ビル一帯の再開発に伴って神社が建て替えられた際、鳥居を建てて奉納させていただきました。個人的な話ですが、毎日欠かさずお参りしています。
毎日お参りする理由はシンプルで、毎日仕事ができることに感謝の気持ちを込めてお参りしています。お参りは私にとって大切な時間です。
お参りの間はスマホも触らないですし、静かに振り返りができる時間でもあります。メディテーションに近いです。神社のおかげで、毎日自分の肩の荷を下ろせる時間が持てている。会社が成長してきた今、そんな神社に恩返ししたい思いで鳥居を奉納しました。
神社もそうですが、この神谷町という街に育ててもらったという気持ちが強く、実は神谷町町内会のメンバーになっています。IT系の会社は今のところ私たちだけですが、これからもっと活動を広めていきたいと思っています。町内会も地域のコミュニティと思っています。
人間が物理的な場所から全く切り離されて、楽しく生きることはできないと思っています。住む場所や、オフィスがある場所など、そういう地縁はすごく大切にしています。
──「縁」を大切にされているのが伝わります。
そうですね。人の縁も地縁も、今まで生きてきた中で「縁」はすごく大事にしています。今回こうしてこのインタビューをお読みいただいている皆さまとも、良いご縁があればよいなと思っています。
株式会社ウフル 企業情報
社名 | 株式会社ウフル |
役員 | 代表取締役社長CEO 園田 崇史(戸籍名:園田 崇) |
設立 | 2006年2月 |
資本金 | 1,000,000,000円(資本準備金含む) |
従業員数 | 234名(グループ合計) |
所在地 | 【本社】 〒105-6923 東京都港区虎ノ門4−1−1神谷町トラストタワー23階 WeWork内 【大阪オフィス】 〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町1-1 Links梅田8階 WeWork内 【白浜オフィス】 〒649-2211 和歌山県西牟婁郡白浜町2054-1 白浜町第2ITビジネスオフィス 【福井オフィス】 〒910-0005 福井県福井市大手3-1-13 大手門ビル803 【Uhuru United Ltd】 Bray Business Centre, Monkey Island Lane, Maidenhead, England, SL6 2ED |
事業内容 | システムインテグレーション事業 マーケティングクラウド事業 パブリッククラウド事業 データアナリティクス開発事業 クリエイティブ事業 IoTソリューション事業 |
主な取引先 | 外務省 法務省 文部科学省 アイフル株式会社 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 株式会社ALL CONNECT 全日本空輸株式会社 ソニー株式会社 第一三共株式会社 テプコカスタマーサービス株式会社 株式会社電通国際情報サービス 日本電気株式会社 ネスレ日本株式会社 株式会社マネーフォワード 三井物産株式会社 株式会社西武ライオンズ 株式会社LIXIL ロジスティード株式会社(50音順) |
グループ企業 | 株式会社システムフォレスト Uhuru United Ltd. |