「現状維持か転職かフリーランスか?」で迷ったときの考え方
2024.5.20 Interview
「退職金と年金で悠々自適の第2の人生」といった定年退職後を夢見ている人はいま、日本にどのくらいいるでしょうか? 退職金と年金だけでは心もとない40~50代にとって、会社にも国にも依存せず定年退職後の定期収入を確保するための新たな働き方、生き方はもっとも重要なテーマです。
第2の人生を早期にデザインし準備するための考え方とフレームワークを教示する書籍『ライフキャリア:人生を再設計する魔法のフレームワーク』の著者のひとりである千葉智之さんと、みらいワークス社長・岡本祥治がキャリアパスをテーマに語りました。
「ライフワーク」はどうやって見つける?
岡本:千葉さんが提案されている、人生100年時代の「キャリア未来地図」全体フレーム(上図、詳細は『会社人生「一本道」にならないキャリアマップの描き方』)は、自身のキャリアパスと照らし合わせると見える景色が変わってきますね。
私は大学卒業後、外資系コンサルティングファームで会社員として働きベンチャー企業の経営企画部門への転職を経て、フリーランスコンサルタントと大企業をつなぐ人材マッチングサービスで起業しました。プライベートでは100カ国以上、47都道府県を旅しています。
みらいワークスを設立した当初、「3つのやりたいこと」がありました。1つは大手コンサルでの経験を生かした中小企業・ベンチャーの支援。2つめは地方創生、3つめは海外との繋がりを持つことです。旅を通して高まった思い「日本を元気にしたい」は、地方副業サービス「Skill Shift」などに結実していますし、ベンチャー支援につながるアクセラレータープログラムなども積極的に進めています。ただの趣味だった旅もアイデンティティからくる自己実現欲求もビジネスにつながった。そう考えると、ビジネス領域とプライベート領域の両軸が絡みあって「ライフワーク」ができあがっていくのだなとあらためて気づかされました。
千葉:自分のやりたいことや好きなことを追い求めるための仕事「ライフワーク」と、日々の生活のために稼ぐ仕事「ライスワーク」の考え方をフレームに落とし込んだわけですね。それでいうとライフワークは、キャリア未来地図のプライベート領域に当てはまりそうですが、ビジネス領域にもライフワークが入り込んでいるということでしょうか?
岡本:というより、自分にとってのライフワークがどうやって発生したのかあらためて理解したといったほうが正しいかな。ライフワークというのは私はこういうことがやりたい、極めたいんだ!と強く願う仕事であり、天職とか生きがい、やりがいにつながる仕事と考えているんですね。だからライフワークは、趣味や学びといったところではなくアイデンティティから発生するものだとなんとなく思っていたわけです。
たとえば私自身の話でいうと、20代後半で転職市場でのキャリア価値がゼロどころかマイナスになったと感じたことがありました。絶望のなかで本を読み、起業家の話を聞き、47都道府県を巡る旅に出るなど「自分探し」をしていたこの時期、ねぶた祭りを見学するなかで地元の方々の情熱や人生の充足感に触れ「日本を元気にしたい!」と起業を決めました。スタート地点は旅行が好きという趣味からのように思われるかもしれませんが、その根幹には日本人である自分、日本が大好きな自分というアイデンティティがあったからこそ「日本を元気にしたい!」という強い思いが湧いてきたんだと思うんですよね。
千葉:わかります。キャリア未来地図全体フレームでは、「学び/趣味」と簡素化して書いていますが、ここには「やりたいこと」「好きなこと」といった自分が大切にしていることももちろん入ってきます。やりたいこと、好きなことに強い思いが重なると、特技になり仕事との相乗効果が生まれるんです。
岡本:ビジネスとプライベートの相乗効果のところもまた、私自身のキャリアを当てはめて考えたら自分自身の強みがどうやって生まれたかがクリアになりました。新卒で働き始めたのは大手コンサルで、クライアントも大企業。会社のなかだけで生きていたら大企業の世界だけだったと思います。ところがプライベートで飲み歩くのが大好きだったので、いろいろな人が集まる場に行っている間にフリーランス、ベンチャー企業で働く人たちと出会い交流を続けてきました。大企業とスタートアップ両方のネットワークを持つ経営者は少ないから、あらためてこれは私独自の資産(オリジナル・アセット)だなと。
スタートアップ界隈の集まりに積極的に顔を出して聞いていた課題感と大企業の課題、2つを繋ぎ合わせたら解決につながるのではないかと考えたことが、みらいワークスの事業として形になっています。
千葉:プライベートで飲み歩いて知り合ったベンチャー企業の人たちのネットワークが本業でも生きたわけですね。一方で本業のコンサルティングのスキルが、ベンチャー企業の人たちとのつながりにも活用されたことになります。ビジネス領域とプライベート領域それぞれに影響を与え合いキャリア資産が形成されています。
キャリアパスは「OR」ではなく「AND」で考える
岡本:千葉さんは著書のなかで「仕事か家庭か、仕事か趣味かではなく仕事も家庭も趣味もうまくいく道がある」と言われていますね。「OR」ではなく「AND」でキャリアを考える人生の模索と実践を提案されています。そういった点で振り返ると、大手コンサルからベンチャーに転職したとき最初は大手コンサルに籍を置いたまま「お手伝い」という形でスタートしました。
大学時代の先輩からベンチャー企業に来ないかと誘われたとき、現在のポジションや給与より高い条件を提示されて心が揺れたものの急な誘いに決めかねたからです。専用のデスクを用意してもらって非常に刺激的で魅力的な時間を過ごしていたのですが、3カ月ほど経った頃に本業で新しいプロジェクトに任命されました。そのプロジェクトはクライアント常駐型で、ベンチャー企業の仕事を手伝いながらはとてもできないものでした。
当時はちょうど、ホリエモンこと堀江貴文氏がライブドア本社を六本木ヒルズに移したり、球団買収で盛り上がっていた頃です。楽天やサイバーエージェントなどインターネット業界を中心に新興市場がキラキラ輝いていた時代でした。結果、大手コンサルを辞め先輩の会社に転職したわけですが、本業を続けながら手伝いをしたことでその魅力に気づきベンチャーに行く選択をしました。大手コンサルの世界しか知らず転職活動に進んでいたら、まず選ばなかった道だと思います。やってみないとわからない。本業と副業のダブルワークが自分の可能性を広げることになるのだなということが体感としてあります。
千葉:僕はまだサラリーマンなので保守的なのかもしれませんが、転職や独立って失敗したらどうしようと考えるし、かなり勇気もいる。本業を続けながらいろいろな縁のなかでお試しでやってみて、本業より向いてるかも!これがやりたいことだ!と気づきを得て、少しずつ本業から軸足を移していくというやり方もいいと思います。分散投資ではないですが、キャリアの柱が複数あると1本折れてももう1本あるから耐えられるということがあります。本業1本に100%依存するより、本業のほかライフワークに関わるもの、プライベートの特技などを組み合わせたキャリアポートフォリオはリスクヘッジになる。
岡本:いまは多様な選択肢がある時代です、2つでも3つでもやりたいことをやり、会社に依存しないキャリア形成を目指してほしいと思います。
(敬称略)
「やりがいのある好きな仕事を、自由に選び取る」生き方を手に入れるための方法を紹介する『LIFE WORK DESIGN 人生100年時代を味方につける自分だけの仕事の見つけ方』(プレジデント社)
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