「フリーランス保護新法」で拡がる生産性向上に向けた新たな手法

2023.6.13 Interview

会社員としてではなく個人として働くフリーランスを保護する「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」が2023年4月末に参院本会議で可決成立し、5月に公布されました。この通称「フリーランス保護新法」は来秋までに施行される予定です。フリーランスとして働く方々も業務委託契約を結んだ副業人材や外部プロ人材とともに働く企業も、実際どのような影響があるのか不安に感じられているのではないでしょうか。フリーランスのプロフェッショナル人材向け案件紹介サービスのパイオニアとして市場を開拓してきた、みらいワークス社長・岡本祥治が今、どう感じているかをお伝えします。
新法で「当たり前」を周知徹底
「フリーランスの仕事の範囲や報酬額を書面、メールであらかじめ明示する」
「発注した仕事の成果物を受けとってから60日以内に報酬を支払う」
「ハラスメント行為に対する相談対応など体制整備」
フリーランス保護新法の概要を見て最初に思ったのが、「われわれが当たり前のようにやってきたことが、これから周知徹底されるのだな」ということでした。
みらいワークスの主軸サービス「フリーコンサルタント.jp」では、戦略立案や新規事業、IT導入、マーケティング、プロジェクトマネジメントなど月100万円以上の高単価案件でフリーランスのプロフェッショナル人材と大手企業をマッチングしています。このような業務内容の場合、企業の課題抽出から行うこととなり、抽出された課題によってその後の仕事の範囲やアウトプットの内容が変わっていく可能性があります。フリーランス保護新法で定められた「フリーランスの仕事の範囲をあらかじめ明示する」のが難しいわけです。
判断が難しい「仕事の範囲の明示」への対応法
たとえばフリーランスのデザイナーに企業ロゴを作成してもらうのであれば契約の際、発注内容として「企業ロゴ作成」と明確に提示できます。ですがフリーランスのコンサルタントが社員とともに新規事業を立ち上げるといったプロジェクトの場合、課題整理からともに推進するため、「⚪︎⚪︎をやる」と文言にしづらい状況もありえます。「フリーコンサルタント.jp」では「課題整備のフェーズと実行フェーズで契約を分ける」などこれまで積み上げたノウハウを用いて新法を遵守できる土台がありますが、これまで発注内容をあいまいに業務委託契約を結んできた業界や企業はあらためて運用を見直す時期がきたということになります。
保護されるフリーランスには副業をする人も含まれます。地方中小企業と都市部副業人材のマッチングサービス「Skill Shift」では、募集条項の時点で的確な表示を行うようにしています。ただ副業人材の活用に慣れていない企業の場合、「~~といった課題があります。解決方法を提案してください」で仕事の範囲を明示したことになるのか、具体的な業務内容ややって欲しい仕事内容を契約の際に明示しなければいけないのか……どうすれば法律を遵守し、副業人材を採用できるのかの判断が難しいかもしれません。
コロナを経て自然と「ジョブディススクリプション活用」に移行
ただ、考えてみてください。すでにコロナ禍を経て正社員として企業で働く人々の働き方も大きく変化しています。オンラインワークが当たり前となり、社員同士机を並べて働き「これ、よろしくね」で済んでいた業務について指示を明確にしなければならなくなりました。出社し机に座っている時間が仕事をしている時間と認識されていたものが、アウトプットベースで仕事の評価がなされるようになりました。すでに多くの企業には、ジョブディススクリプション(職務記述書)を活用したジョブ型雇用の下地ができていて、社員だろうとフリーランスだろうと明確な仕事内容の提示をもとにした生産性向上にグイッと舵を切っているのではないでしょうか。
人材不足が深刻な状況となるなか、正社員だけでなくフリーランスの優秀な外部人材にも選んでもらえる魅力的な会社となることが求められています。フリーランスとしてやっていける環境が整えば組織を飛び出し、時間や場所の制限なく働きたいと考えている人もいるでしょう。いろいろな課題はありますが、今回のフリーランス保護新法によって変化を余儀なくされれば、多様な働き方ができる世界へまた一歩近づくと感じています。
みらいワークス 代表取締役社長 岡本 祥治
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