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CAREER Knockは、みらいの働き方のデザインに役立つ情報を発信するメディアです。CAREER Knockを運営するみらいワークス総合研究所は、プロフェッショナル人材の働き方やキャリアに関する調査・研究・情報発信等を行っています。

みらいワークス総合研究所

  • 名称:

    株式会社みらいワークス みらいワークス総合研究所

  • 設置:

    2022年7月

  • 所長:

    岡本祥治

  • 所在地:

    〒105-0001 東京都港区虎ノ門4-1-13 Prime Terrace KAMIYACHO 2F

  • 活動内容:

    働き方・キャリア形成に関する研究

    各種調査分析・情報収集

    出版・広報

  • 連絡先:

    mirai_inst@mirai-works.co.jp

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前編:「知見やノウハウを得るだけではない効果があった」小田原箱根商工会議所が副業人材活用に成功した理由とは

CAREER Knock編集部 CAREER Knock編集部

2024.2.9 Interview

小田原箱根商工会議所 会頭 鈴木 悌介 氏

1955年神奈川県小田原市にてかまぼこ屋の次男として生まれる。上智大学経済学部卒。1981年から1991まで米国にて、スリミ、かまぼこの普及のため現地法人の立ち上げと経営にあたる。帰国後は家業である鈴廣の経営に参画。現在は鈴廣かまぼこグループの代表取締役副社長を務める。2013年より小田原箱根商工会議所の会頭、2023年より鈴廣の取締役相談役を務め、地域活性化に取り組む。

◆小田原箱根商工会議所◆
神奈川県小田原市と箱根町、2つの行政区にまたがる商工会議所。地域産業の振興と活気あるまちづくりを推進する。会員企業数は約3,300社、約8割を小規模事業者が占める。

※役職は、インタビュー実施当時のものです。

地方の中小企業が直面している大きな課題の一つが、人材不足。ポストコロナ禍を迎え事業や組織の変革を目指す一方、「新規事業やマーケティングなどの知見を持つ人材が確保できない」と悩む経営者も少なくありません。

こうした課題解決に向けて、都市部の副業人材活用に取り組んでいるのが小田原箱根商工会議所。約1年前から副業人材を3名採用して、広報や業務改革などの分野で成果が出ていると言います。

「外部人材の活用は初めてでしたが、大きな刺激を受けました」と語るのは、小田原箱根商工会議所の取締役相談役を務める鈴木悌介さん。前編では、「どうすれば地方の中小企業が副業人材を活用できるか」について、鈴木さんとみらいワークス代表の岡本が対談しました。

地元の人材だけではブレイクスルーしきれない。この課題を副業人材で解決したいと考えた


岡本:小田原箱根商工会議所として、副業人材を活用しようと思われた経緯を伺えますか?

鈴木さん(以下、敬称略):現在小田原箱根商工会議所には約20名の職員がいますが、ほとんどが地元の人間です。地元密着という点ではいいのですが、我々だけではなかなかブレイクスルーしないというジレンマを感じていました。今という激動の時代、DXをはじめいろいろなことを取り組まなければなりません。技術だけではなく、仕事の進め方や考え方なども外部から刺激をいただきたいと思ったのが副業人材活用をしようと思った大きな理由です。

私自身も地元企業の経営者ですが、地域では特にコロナ禍以降、既存事業の見直しや新規事業に取り組む機会が増えています。長く会社を経営していると人材もノウハウもそれなりにありますが、全く新しいことにチャレンジするとなると地域の人材だけでは難しいという課題があります。

一方で中小企業が新しい人材を採用したいと思っても、今は売り手市場でなかなか難しい課題もあります。こうした状況を踏まえると、地域の中小企業が副業人材を活用する時代が近いうち来るのではと考えました。そこでまず商工会議所として副業人材の活用をしてみようと思ったわけです。

昨年(2022年)に3名の副業人材の方を採用したところ、ノウハウや仕事の仕方も学ぶことができました。またそれだけではなく、大きな刺激を受けました。

岡本:それぞれどのようなミッションで募集したのか、またどのようなポイントで採用したのか、教えていただけますか。

鈴木:1つめは商工会議所のDXと業務改革の推進、2つめは商工会議所として会員を増やすための広報の見直し、3つめは小田原市が取り組んでいる「新しい美食の町プロジェクト」の企画です。それぞれのミッションで1名ずつ、3名を同時に採用させていただきました。

想定以上に多くの方からご応募いただきまして、しかも商工会議所が普通に募集をかけても絶対集まらないような方ばかりでした。選考ではまず書類を拝見して10名ずつに絞って、リモートで面談をさせていただきました。私たちとしては経験もそれなりにあって、かつ新しいことにもチャレンジしていただけそうかなということで、40代前後の方を中心に選ばせていただきました。

そこから5名ずつに絞り、さらに直接お会いする機会を設けました。直接お会いすることで、人柄などもよくわかりますから。

成果としては、例えば広報担当の方は手法だけではなく、広報の組織・体制についても相談することができました。業務改革担当の方もすごく熱心で、職員全員と面談していただき、我々が気づかないような課題を引き出してくれました。あらためて、中小企業にとって副業人材はすごく有効だと感じています。

副業人材を活用できた理由は、「ミッションを明確にしたこと」


岡本:3人同時に採用して、成果を上げていらっしゃるのは素晴らしいですね。以前から外部人材の活用をしていらしたのでしょうか?

鈴木:今回が初めてです。うまくいったのは、おそらく商工会議所が抱える課題、ミッションが明確だったことが理由ではないかと思います。

岡本:すごく参考になるお話です。ミッションや課題を明確にできる経営者の方は、意外と少ないのではないかと感じています。今後は小田原市内の中小企業の皆様にも副業人材を活用していただく予定ですが、やはりその際にも課題を明確にしてミッションを提示できるか、ここがキーになるということですね。

もちろん案件にもよりますが、副業人材の方には月10~15時間ぐらい稼働いただき、報酬としては3~4万円くらいというのが一般的です。とはいえ副業人材の方は本業では年収800~1200万くらい稼ぐので、普段から時間で働く感覚よりミッションや成果物、アウトプット重視という働き方が基本です。ですから、そういった副業人材の方には「こういう課題、ミッションがあるから手伝って欲しい」という表現の方が、モチベーションをアップできると思っています。

また直接会う機会を設けたというのも、うまく行ったポイントだと思います。副業人材として活躍する方は実力のある方ばかりですですから、スキルで選ぶというより経営者の方と相性がいいとか、経営者目線でコミュニケーションできるとか、そういう基準で選ぶことが大切です。

副業人材活用を通じて、人材の働き方・考え方が大きく変わっていることに気づかされた


岡本:今回応募された方々は、どのような動機で応募されたのでしょうか?

鈴木:理由を聞いたら面白そうだとか、小田原が好きだとか、報酬とは違うモチベーションで応募される方ばかりでした。

実は今回、ひとつ大きな気づきがありました。我々の世代は、新卒で入った会社に定年まで働くのが正しいと思っています。経営者としても、社員に長くいてもらうため退職金制度の整備などいろいろ取り組んでいます。

しかし実際に副業人材の経歴を見ると、転職歴が多い方がほとんどでした。さらに実際に話してみると、同じ会社に長く勤めることにはあまり関心がないようでした。「どこでどう働いたら能力が生かせ、社会の課題解決ができるか」というところで仕事を選んでいる方が多く、これにはすごく驚きました。そういう考え方、働き方に変わってきていることを目の当たりにしました。

一方で地域の中小企業に勤める従業員は、「この会社でずっと働こう」と思っている人が多いのが実状です。そういった従業員たちと異なる考え方を持つ副業人材を、ワンチームとして仕事をするには、やはり何か求心力が必要です。

何が求心力になるかを考えた時、会社の社会的な役割とか、ミッションとか、ビジョンが必要だなとすごく感じました。

岡本:おっしゃる通りですね。今は労働人口が減り、人が会社を選ぶ時代になりました。特に「社会的にどういう意味があるのか」「自分がそこにいることによってどう自己実現ができるのか」が重視されてきています。

プロ人材の方々も、応援したいとか、面白いことができるとか、報酬ではない理由で副業先を選ぶ方がすごく多いですね。だからこそミッションを明確にすることが大切だと思います。

プロジェクトのミッションが合致していれば、社員の方と外部の方がワンチームとして一緒に仕事をやっていけると思います。実際にこれまでも全国でそういった取り組みを数多く見てきました。

経営者のやりたいことや想いを、プロ人材に熱く語ることが大切


鈴木:今回みらいワークスさんと小田原市と提携を行い、地域の中小企業の方々にも副業人材の活用を推進していきます。地域の中小企業が副業人材を活用する上で、気を付けるべきことがあれば教えていただけますか?

※小田原市・小田原箱根商工会議所・みらいワークスの提携についてはこちら
https://mirai-works.co.jp/news/news9729/

岡本:先ほど鈴木さんがおっしゃったように、副業人材の方のモチベーションは報酬ではない理由がほとんどです。経営者として、ミッションやビジョンを言語化してどれだけ魂を持って語れるか。これが重要だと思います。

対価をしっかり払うということも、ポイントだと思います。今回の提携では、副業人材の募集にかかる費用は自治体様にご負担いただくスキームです。しかし毎月の報酬は、中小企業様から副業人材にお支払いいただきます。

他の自治体では「毎月の報酬も自治体で負担したい」とお話いただくケースもありますが、弊社ではお断りしています。中小企業様の負担が無料になってしまうと、どうしても「タダだから」という気持ちになり、ミッションが曖昧になりやすい。そうなるとプロ人材もいい仕事はできません。たとえ金額が高くなかったとしても、対価を支払う・受け取るという関係性が大切です。

経営者様の方はご自身の想いをしっかりぶつけて、それに対する対価も出す。人材側も対価を受け取り、それに合わせた仕事をする。いい仕事をするためには、こういう関係が大切だと考えています。


後編:「人手不足に悩む地方の中小企業こそ、副業人材がブレイクスルーになる」小田原箱根会議所が目指す新たな地域活性化策とは
https://mirai-works.co.jp/media-career/interview/interview-odawarahakone-shokoukai2/

対談動画はこちら(小田原箱根商工会議所)
https://www.odawara-cci.or.jp/information/skillshift-cci.html