knock 未来の扉をたたく、働き方マガジン

CAREER Knockは、みらいの働き方のデザインに役立つ情報を発信するメディアです。CAREER Knockを運営するみらいワークス総合研究所は、プロフェッショナル人材の働き方やキャリアに関する調査・研究・情報発信等を行っています。

みらいワークス総合研究所

  • 名称:

    株式会社みらいワークス みらいワークス総合研究所

  • 設置:

    2022年7月

  • 所長:

    岡本祥治

  • 所在地:

    〒105-0001 東京都港区虎ノ門4-1-13 Prime Terrace KAMIYACHO 2F

  • 活動内容:

    働き方・キャリア形成に関する研究

    各種調査分析・情報収集

    出版・広報

  • 連絡先:

    mirai_inst@mirai-works.co.jp

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そもそも「プロフェッショナル」って何?

CAREER Knock編集部 CAREER Knock編集部

2023.3.29 Interview

プロフェッショナルとは何か――。「プロフェッショナル」に特化した人材サービスとソリューションを提供する「みらいワークス」では、つねにこの問いかけを大事にしています。そこでプロフェッショナルとして活躍している4人の方々に、ご自身が考えるプロフェッショナルについて語っていただきました。

「仕事が好き」がプロフェッショナルの共通点

フリーアナウンサー・文筆家の住吉美紀さん

先陣を切ってプロフェッショナルについて語ったのは、元NHKアナウンサーで「プロフェッショナル 仕事の流儀」でキャスターを務めた4年ほどの間に約150人のプロフェッショナルな方々と向かい合ったフリーアナウンサー・文筆家の住吉美紀さん。「プロフェッショナルの共通点は仕事が好きな人」だといいます。

「2022年よりSpotify でポッドキャスト番組『その後のプロフェッショナル仕事の流儀』を毎週配信中なのですが、その第1回目が星野リゾート社長の星野佳路さんでした。テレビ番組でお話をお聞きしてから15年後の今、観光業界はコロナ禍で大変な状況です。でも星野さんは、“やった!俺の出番だ!”と腕まくりをしたというんです。嬉々として話される様子が印象的でした」(住吉さん)

コロナ前、インバウンドに湧く観光業界で星野リゾートはフラットな組織を作り上げ、トップである星野社長が指示しなくても動く「自走する社員」が中心となっており、社長の出番はほとんどなかったといいます。そこにやってきた未曾有の危機。自走する社員たちが「社長、どうしたらいいですか?」と聞いてきます。そこで星野社長は「やっと俺の方を向いてくれた!」と大喜びで新型コロナ感染拡大による影響の対策にあたったというのです。

「番組でお会いしたプロフェッショナルな方々は、コミュニケーションが得意な人、得意ではない寡黙な人、自信がある人、自信がない人、正反対なように感じられる方々もいました。ただみなさん、仕事が好きな人だというのは共通点だと感じています」(住吉さん)

この住吉さんの言葉に、デンソー東京支店長の光行恵司さんは大きくうなずきます。光行さんは、地方副業マッチングプラットフォーム『Skill Shift』を通して群馬県の柴田合成で副業しているプロフェッショナル人材です。

デンソー東京支店長の光行恵司さん

「本業のデンソーは自動車部品メーカーで、副業で参画している柴田合成様はプラスチック加工メーカー。同じメーカーとはいえ、製品はまったく違います。2社で働いて気付いたのが、モノができあがっていく過程が大好きで、同じような価値観を持った正直で実直な信頼おけるメンバーが現場で楽しそうに働く環境も好きだということ。プロとして本業でも副業でも活躍するための大事な要素のひとつがこの好きという気持ちだと考えています」(光行さん)

加えて、プロフェッショナルとして副業先の企業で働くときの心構えとして、光行さんが重要視しているのが「謙虚であること」。「経験がある、知見があるからといった上から目線ではなく、初体験の工場で初めて出会う方々と仕事をする「新参者」として取り組み始めることこそが、プロフェッショナルの原点」だと光行さんは感じています。

求められたことをやりきる、期待を上回る

南紀白浜エアポート社長の岡田信一郎さん

南紀白浜エアポート社長の岡田信一郎さんは、経営者視点で次のように話します。

「どのような分野でも、お客様に求められたことを“やりきる”ことを大事にしている人がプロフェッショナルといえると考えます。目標を定めたらそこに到達するため、スキルを磨き、体力を維持し、最高のチームを作り上げる。あとは僕自身、プロフェッショナルとして逆境にも明るく立ち向かうようにしています。コロナ禍で打撃を受け全便運休したときは“飛行機が飛ばない空港”としてPRしたところテレビ局が取材にきました。そもそも業界全体が大打撃を受けているなか、もともと観光ランキング下位だった和歌山県のいわば周回遅れの空港にとってみたら追いつけるチャンスだ!と考えているんですよ」(岡田さん)

「やりきる人」がプロフェッショナル。これに呼応して住吉さんが言います。

「日々取材でプロフェッショナルの方々のお話をお聞きし憧れ、自分の足で立ちたいとNHKを飛び出し独立しました。独立してから意識しているのは、依頼してくれた方の期待に少し上回った仕事ぶりで応えていくということ。安請け合いせず、自分の能力ではそれができないと思ったらできないと伝えますし、必要な資料をいただかないとできないといったこともお仕事をお受けする前に伝えます。仕事の前日が休みでないと体力的に厳しいといった生活面も調整し、期待を1ミリでも上回ることを大事にしています」(住吉さん)

続く、元日本マイクロソフトのITコンサルタントで、現在は圓窓の代表取締役、日立製作所Lumada Innovation Evangelist、数多くの企業の顧問やアドバイザなどいくつもの顔を持ち、社内外の人々のメンタリングも手掛ける澤円氏のプロフェッショナル観は、未来をも見据えます。

圓窓の代表取締役の澤円さん

「想定外に起こるできごとに対応できるのがプロフェッショナルだと思うんですよね。想定内のできごとに対応するのは当たり前で、想定外のできごとが起きても、軽々と越えて最高の姿を見せる人。これについてはまさに!というエピソードを聞いたことがあって、1940年代後半から40年以上、ジャズの世界を中心にトランペット奏者として活躍したマイルス・デイヴィスがピアニストのハービー・ハンコックと一緒にライブをしたときのこと。ハービーがある曲でコードを間違えて弾いてしまいました。マイルスはそこで演奏を止めることなく、ハービーの間違えたコードを“生かした”アドリブ演奏を続けたそうです。マイルスが想定外に対応したことで、観客にとってはミスではなく新しい演奏として届いた。大事なのはミスなく演奏することではなく、最高のライブをすることなんですよね。プロフェショナルというのは、そういうことなんじゃないかなと」(澤さん)

うなずきながら住吉さんが続けます。

「『プロフェッショナル 仕事の流儀』でお話させていただいてから15年以上が経ち、『その後のプロフェッショナル仕事の流儀』でお話させていただく方々は、“人生の想定外”に対応し今もバリバリやられている方が多いんですよ。

たとえば、電子基盤の検査装置の開発、製造、販売を行うサキコーポレーションの創業者、秋山咲恵さんは番組に出演されたのが2006年。2018年に社長を退任されているのですが、その間にはリーマン・ショックありリストラありさまざまな困難を経験されて、日本郵政やソニーなどさまざまな企業の社外取締役や政府審議会の委員などをやられています。次々と直面する想定外に対応し、組織にしがみつくことなくキャリアデザインしていくのも一流のプロフェッショナルだからできることなのかな、と思いますね」(住吉さん)

失敗は糧に、高い目標を設定する

写真左・住吉さんの話に呼応する写真右・光行さん

自動車部品メーカー・デンソーでつねに業務のムダや業務効率化といった改善を行ってきた光行さんはその業務のなかで若い頃、「プロフェッショナルだな」と感じた先輩の言葉を思い出したと話します。

「先輩に今からどのくらいの改善を達成できるんだ、と質問されて、20~30%の改善なら絶対やり切ります!と答えたんです。すると先輩は、その2倍、3倍目指せと言うんです。40~90%の改善なんてムリだ!と思いますよね(笑)先輩は続けて、30%の改善ならどのくらいの確率で成功するのかと聞いてきたので、私は8、9割の確率でやれると答えました。だったら90%の改善を目指したら少なくとも半分の40%の改善はできるんじゃないかと。確実にできる、失敗しないところに目標を設定するのではなく、高いチャレンジングな目標を設定して仕事に取り組むことの大切さにそのとき気付かされました」(光行さん)

岡田さんは次のように言います。

「成功、失敗でいうと、南紀白浜エアポートのように小さな空港では、失敗をおそれずどこよりも早く新しいことにチャレンジしないと成功もないと考えています。DXにしても、地方創生の取り組みにしても、前例がないことしかやらない。後追いではダメなんです。失敗してこれはダメだとわかったらやめればいい、気楽なものです(笑)失敗しても誰も責めずに、何がダメだったのか、穴を見つけ潰していく。ブレイクスルー、イノベーションはここから起きると考えています」(岡田さん)

空港では、ハイジャック対応訓練などいざというときの対応手順を確認する日が設けられています。訓練というと、事前に準備されたシナリオ通りにいざというときの動きを確認していくようなものをイメージするかもしれません。南紀白浜エアポートでは、「シナリオを読んでいいのは前日まで。当日はガチンコ勝負」(岡田さん)。「ダメだ!そうじゃない!」「どうしてそんな動きになるんだ!」と本気の言葉をぶつけ合い、情報不足によるミスが起きます。そこで初めて、今の自分たちに何が足りないか、ミスなく対応するには何が必要かを頭にも体にも叩き込むことができると岡田さんは考えています。これに対して澤さんは、「成功なのか失敗なのか、それはマインドセット次第だ」とあるエピソードを話します。

写真右・澤さんの言葉に笑顔で賛同する写真左・岡田さん

「僕より若いチームメンバーの一人が、あるとき“僕、失敗したことはないんです”と言うんです。ただ、“自分が思っていた結果になったためしがないんですよ”、と。彼は、失敗とは受け取らず、つねに自分が思っていた結果とは違ったな、と受け取っているわけです。つねに違う結果がデータとして蓄積されていって、その集まったデータを共有すると喜んでもらえると言う。こういうマインドセットの人はうらやましいですね」(澤さん)

その澤さんの話に、「そのチームメンバーの方の気持ち、よくわかります!」と言うのは住吉さん。

「インタビューで思いもよらない返答がきたり、中継であいているはずの扉があいておらず鍵がかかっていて走り回ったり(笑)生放送中のハプニングは本当にあせるのですが、逆にそれが楽しくて。思っていた通りに進むと逆におもしろさを感じない。がんばって力を合わせてハプニングを乗り越えた仕事が、いちばん思い出深い仕事だったりする。これから先、ずっと笑えるネタをもらったなと明るい気持ちになるんです」(住吉さん)

失敗しても世界は終わらない、1つの笑えるエピソードにしてしまおうーープロフェッショナルたちの言葉は未来に向けて、明るく締めくくられました。