人生に「リスキリング」は欠かせないものになる──東電とみらいワークスがリスキリングサービスを提供する理由
2022.11.28 Interview
リスキリング・リカレントは当たり前の時代──こう言われてもピンとこない人のほうがまだ多いかもしれません。ですが、「人生100年時代」といわれ平均寿命と労働寿命が急速に伸びるなか、これまでのような働き方が通用しない時代がもうそこまでやってきているのも事実。そのような時代に対応するため、東京電力ホールディングスとみらいワークスは共同でリスキリング・リカレントサービス「プロフェッショナル・キャンパス」の提供を開始しています。なぜエネルギー会社が“みらいの働き方”に着目しているのか、なぜいまリスキリングなのか……背景を探りました。
そもそもリスクキリングとは?
リスキリングというのは、技術革新やビジネスモデルの変化によって新たに発生する業務などに対応するため、役立つスキルや知識を学ぶことを指します。リカレントが、大学に入りなおすなど「みずからの意思でスキルアップを目指す、学び直す」といった意味なのに対し、リスキリングは、「企業が新しい業務に対応してもらうため、従業員にスキルを身につけてもらう」といった意味が含まれています。
アメリカの経済学者P・F・ドラッカーは『プロフェッショナルの条件』のなかで「特に知識労働者が、雇用主たる組織よりも長生きすることを覚悟しなければならない」といい、アメリカの学者キャシー・デビットソン教授は、「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」とニューヨークタイムズで語っています。世界の潮流を先読みする学者たちの多くが、今までの働き方が通用しない時代がくると予言しているのです。
これまでの働き方は、終身雇用のなかで入社後3年ほどが業務スキルを身につけるための教育の期間。25〜60歳まで仕事をし、60歳に引退という流れでした。人生100年時代、少子高齢化の日本でいつまで、今ある形での社会保障制度を維持できるでしょうか。どう楽観的に考えても60歳で引退は現実的ではありません。60歳まで1つの企業内にとどまったとしても、デジタル化に対応できないなど技術革新やビジネスモデルの変化についていけなければ、いつの間にか会社に居場所がなくなり労働市場での価値も低下していた……なんてことになりかねません。
AIやロボットさらにはまったく別の技術革新に応じて、新しい知識やスキルを「何歳になっても」再習得しながら働く。1つの企業にとどまることなく、会社員として雇用される形だけでなく、独立した立場でフリーランスとして働くこともあるでしょう。たとえば「週3仕事、週1ボランティア、週1NPO活動」など、個人の状況、それぞれのタイミングで「キャリアポートフォリオ」を組み直す……そのような働き方をする未来がもうそこまできているのです。
実践型リスキリングサービス「プロフェッショナル・キャンパス」
新しい知識やスキルを身につける学びもまた、新しいやり方が必要です。「とりあえず資格を取得しよう」ではなく、知識やスキルを必要とされる現場で即戦力としてどう生かすかが重要視されています。ただ、「プロフェッショナル人材と人材を必要とする日本中の企業を結びつけるマッチングビジネスを通じて感じているのが、1つの企業のなかでリスキリングを進めるのは難しいということ」と弊社の代表・岡本は言います。リスキリングを進めるには座学だけでなく、「実践の場」と「伴走者」が必要だからです。
自分に今、どのようなスキルや知識があり、何ができるのか「自身のスキルの棚卸し」をする。今のニーズにあった仕事をするために足りないスキルや知識を身につけるための座学による研修に加えて、副業マッチングサービスの案件を通した実践。このような「プロフェッショナル・キャンパス」の一連のリスキングプログラムは、みらいワークスに登録しているプロフェッショナル人材が伴走者として相談にのることができます。プログラム修了後は、副業経験者や副業人材を活用したい企業や自治体との交流会などで、人脈作りやさらなる学びの機会を提供します。こういったプログラムや交流会を行う場は、東京電力が展開しているテレワークオフィス「SoloTime」です。
東電が「挑戦の場」となるシェアオフィス運営に取り組むワケ
「電気、ガスに続く第3のインフラとしてテレワークオフィスを提供しています」と、東京電力ホールディングス・ビジネスソリューション・カンパニー ソリューション推進室の佐藤和之氏は説明します。テレワークオフィス「SoloTime」は、育児や介護と仕事のバランスや通勤ストレスといった働く人々が抱える問題を解決するため、3年前にスタートしました。
「よくある有休土地活用ではなく、テレワークオフィスが必要とされている場所、多くのお客様にとって使い勝手が良い場所として、住宅地が広がる郊外を中心に駅から徒歩数分以内の立地を選んでいます。生活の場に近い場所で通勤や移動に時間を取られることなく集中して仕事に取り組める場があれば、在宅勤務よりも生産性を向上させることができると考えるからです。
“いつでも、どこでも、誰とでも働く”。本業と副業をいったりきたりするみらいの働き方を想定すると、例えば、平日の日中は出社し帰宅後、家族との夕飯を終えて21時から23時の間はテレワークオフィスで働く、あるいは、平日は残業なし、日曜日はテレワークオフィスで働く、といったこともあるでしょう。みらいの自由な働き方をサポートするために、SoloTimeは店舗を拡大しています。」(佐藤氏)
働き方の選択肢を広げるリスキリング・リカレント
大企業で会社員として勤務するのかベンチャーで働くのか、副業するのか、起業するのか、離職して子育てや介護をするのか。生活のため、食料を得るための仕事「ライスワーク」、夢や自分の好きなことを追い求めるための仕事「ライフワーク」それぞれどのくらいの配分でいくのか。職場に近い都市部で暮らすのか、郊外か、それとも自然に近い地方で暮らすのか……。リスキリングやリカレントによって、働き方、暮らし方の選択肢は広がっていきます。
「単一の企業や個人ではなかなかできない実践型のリスキリング・リカレントをサポートすることで、個人のスキルアップや大企業の人材教育、副業推進といった課題解決の一翼を担いたい」と弊社代表・岡本は意気込んでいます。
Ranking ランキング
-
「おカネをもらう=プロフェッショナル」と考える人が見落としている重要な視点
2024.6.17 Interview
-
さすがにもう変わらないと、日本はまずい。世界の高度技能者から見て日本は「アジアで最も働きたくない国」。
2018.4.25 Interview
-
評価は時間ではなくジョブ・ディスクリプション+インパクト。働き方改革を本気で実践する為に変えるべき事。
2018.4.23 Interview
-
時代は刻々と変化している。世の中の力が“個人”へ移りつつある今、昨日の正解が今日は不正解かもしれない。
2018.4.2 Interview
-
働き方改革の本質は、杓子定規の残業減ではなく、個人に合わせて雇用側も変化し選択できる社会になる事。
2018.3.30 Interview