57.6%の企業が業務委託活用を加速 2023年度はキャリアと人生がリンクする「3Dキャリア」の時代へ ~新卒採用と比較し、業務委託活用が進む。みらいワークス総合研究所、業務委託人材のキャリアに関する2022年度総括と2023年度展望を発表~

2023.3.29 Report

現在、働き方に大きな変化が起きていることは、多くの人が実感しています。
「大手企業に入社し、昇進していく」ことだけが理想的なキャリア形成ではなくなりました。終身雇用の終焉を先に見越しながら、働き手は、時間や場所の制約から解放されたい、自分のライフスタイルを優先させたいといった理由から、フリーランス(業務委託)としての独立を意識するようになり、企業もまた即戦力となる社外のプロ人材を求めています。また「働き方の変化」の背景には「働くことに対する価値観の変化」がありますが、今後、多くの人にとって働く意味は「生活をするため」だけではなくなるでしょう。
では、どのような変化があったのか。みらいワークス総合研究所(みらい総研)は、フリーランスや副業といった業務委託人材のキャリアという観点から、2022年度の総括と2023年度の展望を発表いたします。
フリーランス人口は増加傾向
内閣官房、内閣府、中小企業庁、厚生労働省などの調査(※1)では、フリーランス(本業において雇用されながら業務委託などの形で副業に従事する者を含む)の人口は360~470万人程度と試算されています。弊社の調査(※2)によると、フリーランスのプロ人材を活用した事がある大企業の割合はこの1年間で16.7%から30.7%へと大幅に増加しており、フリーランス人口は増加傾向にあることが推測されます。

副業解禁が会社員の独立を後押し
今後、フリーランスとして独立するプロ人材が増加する最初の段階として、副業の広がりがあります。政府が2018年に改訂した「モデル就業規則」により、事実上の副業解禁が行われましたが、「副業・兼業ガイドライン」は2022年7月に2度目の刷新が行われ、国は労働者の副業・兼業を積極的に応援する姿勢を示しています。一般社団法人日本経済団体連合会が2022年10月に行った調査においても、常用労働者数が5000人以上の企業は83.9%が副業を「認めている」または「認める予定」と回答しています(※3)。これまで、「会社を辞めて独立する」というのは大変勇気のいることであり、一部の人に限られていた傾向がありました。しかし、副業解禁により、「まずは、会社員として安定収入を得ながら副業としてやってみて、目処が立ったら独立する」という道筋を立てることができるようになったのです。

今後副業をする予定の人は2人に1人
実際、副業を検討する人はどのくらいいるのでしょうか。リクルートの副業動向調査(※4)によると、2021年時点で5.5人に1人が副業をしている、またはしたことがあり、今後副業をする予定の人は2人に1人とのことです。これまで副業は、企業にとって情報漏洩や人材流出の懸念があるとの印象を持たれているケースもありましたが、調査結果によると、従業員のモチベーションや定着率の向上、スキル・能力開発につながる機会になると捉えられ始めているようです。他社の従業員を副業人材として受け入れることについても、単に人手不足を解消するだけでなく、イノベーションの創発や新事業開発に繋げる、組織文化や風土を変革するなど、新しい風を取り込むことへの期待をもって実施している企業も一定数あることが分かります。
新卒採用より即戦力の業務委託人材を求める動きも
企業側が、プロ人材をフリーランス(個人事業主)、または副業人材として受け入れることが活発化されることも、独立するプロ人材の増加を後押しするでしょう。弊社の調査(※5)においても、83.4%の企業が、「今後プロ人材の業務委託が必要になる」と回答しています。その理由としては、自社内における「プロフェッショナル人材の育成の難易度が上がっているため」が最多で、多くの企業において、時代が急速に変化を遂げている今、そのスピードに合わせて社内の人材を育成することは難しいと判断しているようです。さらに、57.6%の企業が、新卒採用ではなく、業務委託の活用が活発になると回答していることから、今後、即戦力となる人材を求める傾向がより強くなると考えられます。

「終身雇用が難しくなるため」業務委託は加速
実際、すでにフリーランスとして独立し活動している働き手側も、活躍の場は広がると感じているようです。時給単価4,000円以上の業務委託人材に実施した弊社の調査(※6)によれば、業務委託として働く課題として、「安定性に欠ける」という声が挙がる一方で、業務委託人材の67.6%から、今後業務委託の活用は「加速する」という答えが挙がりました。

その理由として以下のものが挙げられました。
・終身雇用が難しくなるため:69.0%
・今後も副業での働き方が加速するため:50.5%
・ジョブ型を導入する企業が増えているため:47.3%
・収入獲得ルートを増やしリスクヘッジが進むため:31.8%
・業務委託のエージェントが増えているため:20.9%
つまり、会社に属していても独立しても将来への不安が消えないのであれば、「得意な分野に集中しスキルアップし、社会から求め続けられる人材になったほうがよい」という思考が高まっていると考えられます。また、業務委託のエージェントが増え、人脈のみに頼らず案件探しができることも安心感につながっているでしょう。
法制度面では、フリーランスが安心して働くための仕組みが出来つつある一方で、インボイス制度への対応に迫られ不安を感じる方も
フリーランスとして独立する方が増える一方で、フリーランスの方が安心して働くための仕組み作りも進みつつあります。2021年3月には、内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省により「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が策定されました。また2022年9月には、内閣官房により「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」が公表され、パブリックコメントの募集が行われました。
一方で、インボイス制度の導入が迫る中、制度の内容がよく分からず不安に感じるフリーランスも多いようです。ランサーズが行った調査(※7)によると、インボイス制度を「理解している」と回答したフリーランスは3割に満たず、「課税事業者になるためのメリットデメリットが不明」「制度施行後に収入がどうなるかわからない」「情報を知るために誰に聞いたら良いかわからない」といった不安を挙げるフリーランスが多くいることが分かりました。

「働き方」の変化は表出したものですが、その前提や前触れとして「働くことに対する価値観の変化」、つまりキャリア観の変化があります。みらい総研では、2023年度以降広まるであろう、「3Dキャリア」という考えを持っています。
2023年度展望|みらいの働き方である「3Dキャリア」とは?
3Dキャリアとは、人生を「ライフ」「ライスワーク」「ライフワーク」の3軸で捉えるキャリア観のことを言います。
ワークは仕事、ライフは生活を意味しますが、みらい総研では、ワークはさらにライフワークとライスワークに分かれると考えています。ライスワークは、生活の(食糧を得る)ための仕事及びその時間、ライフワークは自己実現の仕事及びその時間です。別の言い方をすれば、ライスワークがお金を第一の目的とするのに対し、ライフワークは生きがいややりがいを第一の目的とする生産活動のための時間です。
これまでは、人生をワークとライフの2軸で捉え、いかに2つのバランスを取っていくかが人生を充実させることに繋がるという考えが主流でした。しかし、みらい総研では、これからはワーク(仕事)がライスワークとライフワークに分かれ、時にはライスワーク、時にはライフワークに比重を置いたり、3つのバランスを取ったり、ライスワークとライフワークを一致させたりと、個々人で軸とバランスを見つけることで自分独自の3軸のキャリアを築いていくことが重要になってくると考えます。

3Dキャリアに至るまでの時代別変遷
1D(ワーク=ライフ)、1.5D(ワークとライフの分離)を経て、2D(ワークライフバランス)へ
3Dキャリアに至るまでには、時代を追うごとに、「1D」「1.5D」「2D」といった変遷がありました。戦前から戦後直後までは、ワークとライフが一致した個人商店のような働き方が主流で、「1D」の時代だったと考えます。その後、高度経済成長期において、出社型勤務が一般的になったことで、時間的・空間的にワークとライフが分離し始めましたが、ライフを犠牲にしてでもワークが大事だという価値観があり、まだワークの方に比重が置かれる時代でしたので「1.5D」の時代だったと言えるでしょう。そして経済の成長が停滞し始めた90年代以降、いくらハードワークしても給与が上がらない、大企業の相次ぐ倒産など大企業に所属していても雇用が守られないといった現実を突きつけられるようになると、「ワーク・ライフ・バランス」の考え方が広まってきます。ここでワークとライフを両立させる「2D」のキャリア観が出てきたと言えます。
ワークがライスワークとライフワークに分かれ、3軸から成る「3Dキャリア」へ
こうしたキャリア観の変遷を経て、いよいよ「3Dキャリア」時代に突入します。
3Dキャリアにおいてはライフワークが鍵となります。新卒で入社する時にやりたかった仕事であっても、年数を重ねると、ある時からやりたい仕事ではなくなることがあります。その理由の一つは、「お金を貰うこと自体が目的化してしまう」ということです。しかし、他にやりたいことがあっても、給与面を考えると動けないというケースが、大企業に務める30代・40代の間でよく見られます。そうなると、今の仕事をライスワークとして続けながらも、副業や外部の活動でライフワークを実現する方が出てきます。ライスワークとライフワークが一致していることが理想かもしれませんが、実際はそのようなケースはわずかです。ライスワークとライフワークでしっかりとポートフォリオを作り充実した職業生活を送っている人もいます。
生活資金を稼ぐためにITエンジニアの本業を継続しつつ「いつか本腰を入れて取り組みたい」と思っている酒造業界での副業にライフワークとしてチャレンジする、その一方で家族との時間も大切にする方。子育てに良い環境を求めて地方に移住し生活する傍ら、AIに興味を持ち、コンサルティングの仕事とAI領域の講師や書籍執筆といったライフワークをパラレルワークの形で実践する方。仕事以外で自分が落ち着ける時間を重視しつつ、人材育成に興味を持ち、長年勤め上げた企業内でエンジニアリング部門から人事部門へ異動し、ライスワーク=ライフワークとして人材育成に取り組む方。いずれもライフ・ライスワーク・ライフワークの3軸を持ってキャリアを形成している3Dキャリアの事例です。
3Dキャリアの理想形は「ライスワークとライフワークの一致」
本業の仕事と並行して別の活動も行うなど、ライスワークとライフワークを両立するケースも多いかもしれませんが、3Dキャリアが理想とするのは、ライスワークとライフワークの一致です。結果として、3Dから2Dのような形に戻るように見えますが、ライスワークとライフワークが一致した「新たな2D」を作ることを目指しています。これが人生100年時代を生き抜く鍵になってくると考えているからです。
世代別3Dキャリアの位置付け
20代はライスワーク、30代はライスワークとライフのバランスを確立
世代で考えるならば、年を重ねるごとにライフワークの重要性が高まってくると考えます。まず、20代に関しては、まずは必死に働きライスワークの軸を確立することが求められます。これが基礎としてできなければ、先述した仕事のポートフォリオを作ることが出来ません。30代になると、家庭を持つようになるなど生活環境が変化すると共に、仕事での裁量も大きくなってきます。30代が、ライスワークとライフのバランスを整えながらキャリアを形成し始める世代だと考えます。
40代からは「ライフの軸」に比重
40代になると、子どもがいる場合は、子どもが大きくなると共に子育てから少し解放される方も出てきます。そうなった時にライフの比重が落ちることで、ライフワークの軸を考え始める人が多く、当社が行った調査(※8)でも40代になるとライフワークを重視する割合が増えます。しかし、実はここでライフワークの軸について考え始めても、30代で選択肢を作れていなければ、40代でいきなりライフ・ライスワーク・ライフワークの3軸のキャリアに移行するのは難しいというのが現実なのです。「3Dキャリア」に移行するためには、ライスワークでしっかり食べていける力、ライフワークを実践する力が必要な要素です。やりたいと考えたライフワークでも、それを実践する職業能力や人脈などのポータブルスキルがなければ実行出来ません。よって、そういった力を20代・30代のうちに磨いておくことが重要なのです。そして、50代になると更に比重が変わり、よりライフワークが重くなってきます。ライスワークの終わりが見えたこのタイミングでは、思い切ったライフワークへのシフトができるのではないかと考えます。

人生観の上にキャリア観を設計。そして人生を変えていく
これからの時代は、「キャリア」と「自分の人生」そのものがよりリンクしていきます。これまでは、キャリアを考える時にどうやったらお金が稼げるかというライスワークの視点で考えることが多かったと思います。しかし、人生において何を成し遂げたいのかを考える時、お金の視点ではなくなるのです。自己実現を目指す時代においては、キャリア観ではなく、人生観の中で選択肢としてライスワークが存在するようになります。これまで別物で考えられてきた人生設計とキャリア設計が、今後限りなく重なっていきます。つまり、これからのキャリア観は、人生観なしでは設計できなくなるということです。逆に言えば、人生観を持っていない人のキャリア観では、ライスワークしか設計されません。キャリアに生きがいややりがいを求めるのであれば、キャリアという視点に閉じず、人生全体の視点で自己実現を希求し、その中でキャリアを設計していく、という考え方になるのではないでしょうか。
※1 内閣官房日本経済再生総合事務局『フリーランス実態調査結果』
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/report.pdf
※2 株式会社みらいワークス『フリーランス・プロ人材活用実態』
https://mirai-works.co.jp/media-career/report/knock7968/
※3 一般社団法人日本経済団体連合会『副業・兼業に関するアンケ―ト調査結果』
https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/090.pdf
※4 株式会社リクルート『兼業・副業に関する動向調査データ集2021』
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20220720_hr_02.pdf
※5 みらいワークス総合研究所『「企業の業務委託利用」に関する実態調査』
https://mirai-works.co.jp/media-career/report/knock002/
※6 みらいワークス総合研究所『「業務委託人材」に関する実態調査』
https://mirai-works.co.jp/media-career/report/knock003/
※7 ランサーズ株式会社『インボイス制度に関するフリーランスの意識調査』
https://www.lancers.co.jp/news/pr/21754/
※8 みらいワークス総合研究所『キャリア設計に関する実態調査』
調査方法:インターネット調査
調査期間:2023年1月5日〜同年1月6日
有効回答:キャリアプランについて十分に考えたことがある会社員331名(20代:110名、30代:110名、40代:111名)
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