取引先の持続可能な取り組みを促進する金融商品を開発する金融機関が増加、ESG人材をどう確保するかが課題に/環境省調べ

環境省は2026年3月6日、2025年度のESG金融の普及状況に関する調査結果を発表しました。地域課題の解決や地域経済の活性化につながる取り組み(ESG地域金融)の状況把握と今後の課題整理を目的としたもので、都市銀行や地方銀行、信用金庫、信用組合など、456の金融機関を対象に、ESG金融の取組体制、課題、資金需要などを聞いています。

金融機関は取引先とESGについてどんなことを話しているのか。対話の中で持ち上がるESG関連のテーマを聞いた結果が図1です。

図1:取引先との対話の中で持ち上がるESG関連の話題(出典:環境省大臣官房環境経済課環境金融推進室)

「ESG・SDGsに関する具体的な取組推進に向けた各種支援・補助金等の有無」と答えた割合がもっとも多く、50.1%でした。以下、「取引先(仕入先・販売先)等からの要請状況」(29.8%)、「話題に上がらない」(28.7%)と続きます。金融機関にヒアリングしたところ、「顧客は人材不足を課題として感じており、人材確保のためにESGへの取組アピールが必要と認識している。特に若手の経営者はESGに関心が高い」などの声もありました。

ESG関連への融資状況を聞いた結果が図2です。

図2:ESG関連融資の実施状況(出典:環境省大臣官房環境経済課環境金融推進室)

オリジナル商品に「融資実績がある」と答えた割合がもっとも多く、39.9%でした。グリーンローン、サステナビリティ・リンク・ローンも含め、融資実績のある金融機関の割合は、2024年度と比べて1~2ポイント程度増加しています。

ESG関連の債券に対する投資実施状況も聞いています(図3)。

図3:ESG関連債券に対する投資の実施状況(出典:環境省大臣官房環境経済課環境金融推進室)

再生可能エネルギー事業などの環境問題解決に役立つ事業である「グリーンボンド」関連債権に投資した実績の割合がもっとも多く、65.1%でした。「サステナビリティ・リンク・ボンド」関連債権への投資実績がある割合も52.2%と過半数を超えています。

では、金融機関はESG関連の知識を持った人材をどのように育成、確保しているのか。人材育成・確保に向けた取り組みを聞いた結果が図4です。

図4:金融機関におけるESG関連の知識を持った人材の育成・確保の方法(出典:環境省大臣官房環境経済課環境金融推進室)

「外部のセミナーやワークショップへの出席」と答えた割合がもっとも多く、46.3%でした。以下、「ESG人材の育成・確保のための取組を実施していない」(38.4%)、「ESG全般やサステナブルファイナンス関連の資格取得」(33.1%)と続きます。セミナー参加や資格取得、社内勉強会の実施などの取り組みで育成する金融機関が多いことが分かります。なお、金融機関にヒアリングしたところ、「研修などでスキルアップに努めているが、営業店の職員が取引先にESGの話題を投げかけるにはまだ課題感がある」といった声もありました。

ESG金融を担当する専門部署、もしくはESGやSDGsを考慮した金融業務に従事する専門部署の有無を聞いた結果が図5です。

図5:金融機関におけるESG金融(ESG・SDGsを考慮した金融業務)を担当する部課室の有無(出典:環境省大臣官房環境経済課環境金融推進室)

「独立した担当部課室は無く、現時点で当該分野を担当する部課室/チーム/担当者の設置予定はない」と答えた割合がもっとも多く、49.5%でした。「独立した担当部課室有り」と答えた割合は7.4%に留まります。「独立した担当部課室は無いが、当該分野を担当するチーム等有り」(13.2%)と、「独立した担当部課室は無いが、当該分野の担当者有り」(23.4%)を合わせると、約4割の金融機関はESG金融の担当者を配置していることが分かります。

サステナビリティ関連の情報開示状況を聞いた結果が図6です。情報開示をどのような用途で活用しているのかも聞いています。

図6:サステナビリティ情報開示について、自金融機関に当てはまるもの/サステナビリティ情報開示の活用方法について、当てはまるもの(出典:環境省大臣官房環境経済課環境金融推進室)

「サステナビリティ情報開示を行っており、問題なく実施できている」と答えた割合は4.4%で、「サステナビリティ情報開示を行っているが、課題がある」(23.5%)と合わせると約3割の金融機関がサステナビリティ関連の情報を開示していることが分かります。その一方で、「サステナビリティ情報開示を行っていない・行う予定はない」と答えた割合は60.6%で、半数以上の金融機関が自行のサステナビリティ関連情報を開示していません。なお、情報開示の用途は「投資家とのコミュニケーションやエンゲージメント」や「投融資先とのコミュニケーションやエンゲージメント」、「自金融機関の気候関連リスク・機会の理解深耕」といった回答が上位を占めています。

では、サステナビリティ関連の情報を開示する上での課題とは。課題を聞いた結果が図7です。

図7:サステナビリティ情報開示において、課題に感じる点(出典:環境省大臣官房環境経済課環境金融推進室)

「対応する人員確保など、自金融機関の体制整備」と答えた割合がもっとも多く、81.8%でした。以下、「スコープ3カテゴリー15(ファイナンスド・エミッション)におけるデータクオリティ(品質)の向上」(50.7%)、「開示を踏まえた自金融機関のビジネスやエンゲージメントへの展開」(49.3%)と続きます。8割の金融機関がサステナビリティに携わる担当者の確保を課題にしていることが分かります。なお、金融機関にヒアリングしたところ、「開示情報を作成する担当者はいるものの、通常業務との兼務であり、優先順位も後回しになっているのが現状である」や、「開示した情報が機関投資家に活用されていることが見えない中で、内容についてどの程度の質を求められるのか、という点が悩ましい」といった声もありました。

スタートアップ企業の支援実績を聞いた結果が図8です。どの業界・事業分野に支援した実績があるのかも合わせて聞いています。

図8:スタートアップに対する支援実績等/支援実績があるもしくはニーズがあると感じる分野(出典:環境省大臣官房環境経済課環境金融推進室)

「スタートアップを対象とした商品・サービスを取り扱っていない」と答えた割合が50.8%で、「スタートアップを対象とした商品・サービスを取り扱っており、当該商品・サービスの成約実績がある」(44.5%)を上回りました。とはいえ約半数の金融機関が、スタートアップ企業向けの商品・サービスを扱っていることが分かります。支援実績のある分野は「産業・ビジネス(業務効率化、人材マッチング等)」と答えた割合がもっとも多く、65.7%でした。なお、「環境・エネルギー」分野に支援実績がある割合は37.3%で、2024年度の19.6%から2倍近くに増えています。金融機関へのリアリングの中には、「環境分野のスタートアップ企業にも投融資を行っている。例えば、CO2吸収や生物多様性等に関する分野で投融資を行っている」という声もありました。

【調査概要】
対象:都市銀行・信託銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合など
期間:2025年8月15日~2025年10月31日
回答金融機関:456金融機関

【関連リンク】
環境省大臣官房環境経済課環境金融推進室「ESG地域金融に関する取組状況について」
https://www.env.go.jp/content/000382634.pdf