無料法律相談や弁護士、法律事務所の検索を行えるポータルサイト『弁護士ドットコム』の他、電子契約サービス『クラウドサイン』などのサービスやメディアを展開する弁護士ドットコム株式会社。

 

その裏側を支えるクリエイティブ・サービスチームに所属する林貴洋氏は、2015年4月にヤフー株式会社に入社し、デザイナーとしてスポーツメディアに携わった後、2018年11月に弁護士ドットコムへ入社。デザイナーとして入社したにも関わらず、採用活動やセールスに至るまで林氏の業務は幅広く、ビジュアルデザイン、UIデザインなどといったいわゆる “デザイン” 以外の業務も担当しているという。

 

そこで今回は、なぜ彼は時に泥臭い、デザイナーの枠を超えた働き方を行うのか、林氏のキャリアに迫る。

デザイナーとして入社して半年「チラシを配ったり、スカウトのメッセージを送ったりしています」

―― 林さんの現在の業務内容について教えてください。

 

現在、2つのサービスを掛け持ちしています。1つは法律事務所に代わって、依頼者からの入電に対応する電話代行サービス、もう1つはいま準備を進めている、弁護士の業務支援を目的とした新規サービスです。

 

電話代行サービスでは、「新規の相談に関する電話だけ転送してほしい」といった弁護士のニーズをヒアリングして対応したり、セールスのための提案資料を作成したり、ときにはFAXのDMをつくって弁護士に送るといった販売するためのデザインも行っています。

 

新規サービスについては、最近までメンバーが自分含めて2人だけだったので、何から何まで「自分たちですべてやる」といった具合でした。最近ようやくエンジニアがジョインしたのですが、採用活動は非常に苦労しました。ダイレクトリクルーティングサービスでスカウトのメッセージを送ったり、カンファレンスに参加してチラシを配ったり。「まずはカジュアルに話をしましょう!」と多くの方と面談しました。また、現職がある人は夜来るのが難しいかもしれないと思い、朝から面談する会を企画したりもしたのですが、お菓子やコーヒーを用意したけれども人が集まらないみたいな(笑)。業務内容でいうと、必要なことは本当に全部やるという感じです。

 

―― 林さんはデザイナーとして弁護士ドットコムに入社したんですよね? まだ入社して半年ほどですが、振り返ってみていかがですか?

 

もともと「新規事業に携わりたい」「新しい事業を立ち上げたい」という思いがあり、弁護士ドットコムに入社しました。デザイナーとして入社して、サービスづくりに携われると思っていたのですが、そもそも新規事業ってサービスづくりの前段階、たとえば人を採用したり、経営陣にどう伝えてGOサインを出してもらうかなど、やるべきことがあるんですよね。

 

当たり前なんですが、前職ではそういったことを上のレイヤーの人たちがやってくれていたんだなと気づけました。この半年は新しい発見が多く、入社したときとはまた違った、新しいモチベーションが生まれて楽しいです。

 

また、これまで弁護士と接する機会がなかったのですが、弁護士ドットコムに入社して初めて弁護士にお会いして、「弁護士も人間だったんだ」とあらためて気づかされました(笑)。デスクに紙が山積みになっているのを見たりして、弁護士の業務をどう支援していくべきか、より具体的なイメージが持てるようになったなと感じています。

「エンジニアの採用面接をデザイナーの自分ができるのか」入社当初抱いた葛藤とは

―― 新規事業だけでなく、既存の電話代行サービスにも携わっていますが、現在の林さんのモチベーションはどういったところにあるのでしょうか?

 

そうですね、「新規事業をやりたい!」と思って入社しつつも、いまは業務の8割くらいは既存の電話代行サービスを担当しています。「電話代行」というひとつのサービスの認知獲得からセールス、そしてユーザーである弁護士の方々からのフィードバックに至るまで、一気通貫でサービスを見れるというのはとても面白いし、新規事業に取り組む上でのモチベーションになっています。

 

というのも、新規事業って必ず成功するとは限らないじゃないですか。そのため、すでにある既存のサービスをどう改善していくかというのは、新規事業を軌道に乗せていくためには非常に重要な経験で、学びがたくさんあります。

 

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―― 入社前に抱いていた理想と現実のギャップに葛藤はありませんでしたか?

 

やりたいと思っていたことに対してのギャップに葛藤はないのですが、ひとつは、自分ができると思っていたスキルに対しての葛藤はありました。たとえば、バナーづくり。前職ではスポーツメディアに携わっていたので、ビジュアルで目を惹くかっこいいバナーが求められていたんです。

 

一方、弁護士ドットコムでのバナー作成は、サービスの裏側にある価値をうまく伝えるためにストーリーを考え、情報設計することが重要で、当初はなかなかうまくバナーがつくれなかったんです。

 

会社が違うと、バナーづくり一つとってもこうも違うのかと思いましたし、求められるスキルが違うんだなと思いました。

 

もう一つは、新規事業でエンジニアを採用しなければならない、というときに「デザイナーの自分がエンジニアのことなんてわかるのか?」「エンジニアの面接を自分ができるのか?」という葛藤もありました。

 

ただ、1チームに何十人もいるような前職とは違い、2人だけの小さなチームだったので、採用活動は “仲間” を見つけにいく感じなのだなと気づけてからは、そういった葛藤もなくなりました。

 

「これはデザイナーの仕事じゃない」といったことは思わないようにしていて、「とりあえず、やってみる」ということを意識して仕事に取り組んでいます。

「自分はデザイナーというより、イチ会社員」その時々での自分の役割を担うことが大切

――いわゆる “デザイナー” の業務の枠を超えた仕事をしていて、林さんの中でのデザイナー像に変化はありましたか?

 

これまでは「いかにビジュアル的、設計的に綺麗なものをつくるか」といったHowの部分をうまくやることが役割だと思っていましたが、この半年を通じて、そもそもの “何かをつくる” といったことすべてがデザインなのだなと思うようになりました。

 

セールスシートの作成も売り方をデザインすることですし、デザインの取り組み自体は同じで、対象が違うだけ。みんながやっていることってデザインなんじゃないかな、と思うようになりました。

 

だから自分の肩書もデザイナーというより、イチ会社員でいいんじゃないかと(笑)。

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―― 一方で、ビジュアルをつくったりコードを書いたりしたい!と思うことはないですか?

 

ありますよ。でも、それはプロダクトのフェーズによるのかなと思っています。

 

新規事業が本格的に動き始め、サービスづくりのフェーズではビジュアルデザインやコードを書くことに集中しなければいけないため、いまは「いつかデザインをがっつりやるときが来るだろう」と楽観的な気持ちでいます。

 

会社や事業のフェーズに合わせた、その時々での自分の役割を担えればよいのかなと。

 

また、「クリエイティブなことをやっているデザイナーはすごい!」という気持ちではなく、イチ会社員として、会社のビジネスに貢献することが大切だと思うんです。それがインハウスデザイナーたる所以だと思いますし、ユーザーに喜んでもらうことはもちろん、会社の売上で自分たちはご飯を食べているので、いかに会社に貢献するか、ビジネスに貢献するかを考えるべきだと思っています。

弁護士は国内に4万人。「ユーザー」という単語ではない、ひとりの「人」と向き合う仕事の面白さがある

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―― 弁護士ドットコムならではの面白さを感じることは何かありますか?

 

前職はBtoCのメディアサービスだったので、自分たちがアクションしたことに対して何百万人といったユーザーが動く世界でした。そのため、ユーザーを “数字” として捉えてしまいがちで、違和感を感じていたんです。

 

しかし、弁護士は国内に約4万人しかいません。そのため、施策を打ってコンバージョンが生まれると、「ユーザー」という単語ではなく、「ひとりの弁護士」が登録してくれたんだと思えて、とても嬉しいです。

 

また、新規サービスのプロトタイプをつくった時には、埼玉にいらっしゃる弁護士に説明に伺ったことがあるのですが、それ以降サービスのフィードバックをしてくださるようになって。

 

そうやって弁護士に寄り添う形でプロダクトをつくっていけるのがとても楽しいですし、弁護士ドットコムは、いかに弁護士の働き方を良くしていくかということを本気で考える文化があるのが素敵だと感じています。

 

―― 最後に、林さんの今後の展望を教えてください。

 

SNSなどで、自分と同世代の方がCDOになって活躍していたり、起業して活躍していたりするのを見ると、どこか後ろめたさや悔しさを感じることがあります。だから、いま僕は27歳なのですが、30歳をひとつの壁ととらえ、この3年間で「やりきった」と言い切れるような働き方をしたいなと思っています。

 

また前職で「フリーライドしてはいけない」ということをよく言われていました。他人の成果やプロジェクトの成果に乗っかってはいけないと。だからこそ、フリーライドせずに自分自身の努力によって結果を出すことを大切にしたいですね。