D2Cのグループ会社として設立されたD2Cソリューションズは、2016年[D2C dot」へと社名を変更。それに伴い、企業文化から組織体制、そして評価制度に至るまで、企業として大きな舵を切りましたが、その背景にあったのは「組織としての統一感の薄さからくる危機感」でした。

 

今回、D2C dot代表取締役社長・四栗崇氏、取締役・山口浩健氏、コーポレート室・中山学氏のお三方にお話を伺い、当時の会社の雰囲気から、いまの様子、そして会社を成長路線に乗せていくためにどのようなアプローチを取ったのか、社名変更プロジェクトの裏側に迫ります。

もともとは組織として統一感の薄い会社「ただ同じ箱に集まっているだけだった」

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代表取締役社長・四栗 崇 氏

―― 2016年に「D2C dot」へと社名変更されましたが、それ以前のD2Cソリューションズ時代は、どういった会社だったのでしょうか?

 

四栗:D2Cソリューションズは、もともと親会社であるD2C側で活動していたプロモーション案件を受託する事業部とドコモのコンテンツサービスを運用する事業部が母体となって2013年に設立したのですが、のちに別会社2社の制作部門も弊社に事業譲渡され、これらが1つの会社に統合されました。

 

別の会社で事業をやっていた人たちが1つになるわけですから、当然企業文化もそれぞれ違うわけです。しかも、それぞれ各々の事業だけでも成り立っていたので、メンバーたちが無理に交わる必要もなかったんですね。

 

D2Cソリューションズとして明確なビジョンがなかったことも問題がありました。縦割り感が半端ない、お互いが交わることもなく、隣の人が何をやっているかもわからない、ただ「同じ箱に集まっているだけ」という雰囲気の組織でした。

 

―― そういった状況の中、なぜ社名変更に至ったのでしょうか?

 

四栗:設立当時、私はまだいち事業部の部長であり代表ではなかったのですが、あまりいい状況ではないと思っていて。そこで、私が社長になったタイミングで、「なにか、この状況を変えるキッカケをつくろう!」と検討の結果、社名変更に踏み切りました。

社名変更には大きく2つの意味合いがあります。

 

1つは、事業ドメインをあらためて見直すためです。 “ソリューションズ” というワードが社名に付いていると、僕らの想いとは別に外部からするとシステム会社、制作会社というイメージが勝手に先行してしまっていました。

 

しかし、私たちの強みは企画・プロデュースだと思っていたので、事業ドメインをシステム会社というポジションから、「企画・プロデュースから制作までできる」というポジションへ変えなければいけないと思ったのが1つです。

 

そして2つめは、すべてを一回リセットしたいと思ったんですね。メンバー同士が干渉し合わない状況、事業譲渡で新たに参加したメンバーももしかしたら遠慮してしまうような雰囲気があるのかもしれない、そういったのをすべて変えるためにはいったんゼロからやり直してみんなで新たにスタート地点に立つべきだなと。

 

実は社名変更前からも、そういった文化や制度などを変えようと動いていたのですが、なにか大きなキッカケがないと前の文化を引きずって「なんで変えないといけないの?」と疑問や抵抗が生まれてしましまいかねない懸念があったんです。

 

しかし、社名変更をキッカケに、「新しいD2C dotという会社はこういう会社だから」と全員を新たなスタート地点に立たせることができるなと。そういったこともあり、社名変更を行うことになりました。

芽生えてきた “自分たちの会社” という意識――「dotとして」という会話が増えた

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取締役・山口 浩健 氏

―― 社名変更によって、社員の方々の意識はどう変わったと感じますか?

 

山口:社名を変えたから社員の意識が変わったというよりかは、「社名を変更する」ということ自体を “みんなゴト化” してやったからこそ、社員のマインドが徐々に変わっていったなと感じています。

 

「そもそも、俺たちはなんの会社なんだっけ?」「すべての事業に共通するテーマってなんだろう」といったことを、みんなで話し合うことに時間を使いましたし、ホームページのリニューアルや名刺デザインの変更なども、幹部陣だけでなく、社内のメンバーを巻き込んで進めていったんですね。

 

いろいろなことを、「上が勝手に決めた」とするのではなく、みんなでつくっていくというのを大事にしていきました。

 

そういった行動を通じて、「自分たちの会社」という意識はやっぱり高まったなと感じます。普段の会話の中でも、「dotとしてはこうした方がいいんじゃない?」といった、 “dotとして” というワードが出てくるんですよ。

 

これまでは各々が自分たちの仕事をやるだけでしたから、「会社として」といった会話は生まれませんでしたからね。

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コーポレート室・中山 学 氏

中山:あと、企業によっては「社名」って永久に変わらないところもあるじゃないですか。むしろ、社名は変わらずに “守るもの” というくらいの会社が多いと思うんですね。

しかし、D2C dotは社名変更を通じて「僕らは変わるよ」「僕らはずっと同じではないんだよ」というメッセージを社内に伝えられた気がします。

 

会社にいると、変わらないことって多くあると思うのですが、僕たちは社名という、本来変わることのないものまで変えてしまう。僕らは変化し続けるのだ、というメッセージが込められたプロジェクトだったのかなと。

 

四栗:社員の意識もそうですが、組織体制も評価制度も、このタイミングで大きく変えました。まず、事業部ごとに縦割りだった組織を、横串の職能制にしたんですね。そうすることで、これまで交流のなかった他事業部のやっていることが伝わるようになったり、事業を越えてリソースのやり取りをできるようになりました。

 

なによりも、事業部を越えた会話が生まれるようになって、一体感が生まれたなと感じます。

「結果を出せばプロセスは自由」社員自らが考え、行動するようになった

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―― 評価制度はどのように変わられたのでしょうか?

 

四栗:基本的に私は、「やりたいことをやってください」という考え方なんですね。仕事に対するモチベーションって人それぞれじゃないですか。でも僕らがやるべきことは全員一緒で、クライアントの課題を解決すること。ゴールが一緒ならば、その結果に向かうプロセスは自由でいいと思っているので、社名変更をして組織、文化を変えても、仕事のやり方まで無理やり全員合わせようとは思っていなくて。

 

ただ、「どういう人材でいてほしいか」は明確にして打ち出すべきだなと思っていて、評価制度はそういった会社として大事にしたい根幹となる部分を評価する設定内容になっています。

 

たとえば、スキルが高くても、協調性がなければ評価されませんし、何も新しいことにチャレンジしない人も評価されません。逆に、チャレンジしたことはすべて評価しています。

 

そして、「自分はデザイナーだからこれだけやっていればいい、ここまでが自分の仕事だ」みたいな、自分の領域を勝手に決めさせることもしていません。

 

現状維持を望んだ人間にさせないような評価制度になっているので、大それたことでなくていいから、なにか新しいことにチャレンジしようと。

 

そういった評価制度に変えたことで、社員自らが考えて行動するプロセスが生まれたのは、D2C dotになって大きく変わったことだなと思います。

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山口:何でも自由にやっていいと言われるのは、最初はツラいですよ(笑)。面談をしても、社員からは「何にチャレンジすればいいんですか?」と言われていました。しかし、それを繰り返していくと、社員が自発的に「これに挑戦したいです!」となっていくんですよね。

 

評価シートにも何にチャレンジするのかを書く欄があるのですが、2年前の評価シートとかを見ると、恥ずかしくなりますもんね。こんなのやっていたんだ(笑)みたいな。

 

だけど、その恥ずかしさの差分が成長であって、では次の未来どう動くか、というのも見えてくるんですよね。

 

中山:D2C dotでは評価の中に、他部貢献、他者貢献も評価に入れています。基本は結果を出せばプロセスは気にしないというスタンスではありますが、「じゃあ、数字さえ出せばどんなやり方でもいいのか」というと違ったりするじゃないですか。

 

「自分だけよければいい」「自分はやってるんだからいいでしょ」ではなく、組織でやる意味を考えるバランスを大事にしています。

 

四栗:「評価制度ではじまり、評価制度で終わる」と言っていいくらい、D2C dotにおいて評価制度は大事なものだと考えています。そのため、私もできるかぎり社員全員の評価面談に入りますし、結果をしっかりと評価するからこそ、やりかたは自分自身で考えて自由にやっていい、というのが成り立っているなと。

「細かいルールがあると仕事がつまらなくなる」会社が社員のために選択肢を用意してあげるべき

―― 「プロセスは自由」「チャレンジを評価する」といった方針によって、社員の行動は具体的にどのように変化しましたか?

 

中山:「セミナーを開催したい」「海外の広告賞にチャレンジしてみたい」など、各々勝手に活動する人が増えたなと感じています。「結果を出せるなら自分でやり方は考えて行動していいよ」と裁量権のある会社って、あるようで意外とないと思っていて。

 

しかし、プロセスではなく結果を見る評価制度にしたことによって、D2C dotの社員は自由に行動できるようになったなと思います。

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四栗:細かいルールがあると、仕事がつまらなくなるじゃないですか。だから最低限のルール以外は細かいルールは設けていなくて、むしろ自由であるからこそ、自己責任感は強くなっていると感じています。

 

そしていまは職能制にしたことで、もともとサービス運用系の案件しかやっていなかったメンバーが稼働の一部で別事業のプロモーション系の案件をやったり、その逆もしかりで、事業を越えた仕事の取り組み方が増えました。

 

というのも、一般的に人が転職する理由って、キャリアプランが描けない、スキルアップができないというのが大きかったりしますよね。しかし、それは会社がそれらの機会を提供していないことが問題で。

 

D2C dotはデジタルマーケティングのほぼすべての領域を担当しているので、転職に近いことを会社の中で行えるようになっています。そのため、ディレクターがデザイナーになったり、ディレクターがプロデューサーになったりといった職能転換もしやすくしています。

 

やりたいことをやるのが、一番成長しますよね。みんな違って、みんないいとうい考え方なので、これからも社員がやりたいことをやれるようにしていきたいな、と思っています。

 

―― あらためて、D2C dotへと社名変更をして良かったと思えることを教えてください。

 

中山:昔は「D2Cソリューションズとして?わからない」みたいな形で、誰も会社としての想いを語れなかったんですよ。だけどいまは「dotはこうだよね」と、自分たちで考えたからこそ、自分たちの言葉で会社を語れるようになったのは良かったなと思います。

 

山口:社名変更は変化の断片でしかなく、社内の文化、マインド、組織などが次に向かうための進化の1つだなと。常に進化し続けなければいけないと思うのですが、社名変更というプロジェクトは、会社としての進化をドライブするための1つの良いキッカケでしたね。

 

四栗:想像以上に「良かった」と言えるプロジェクトでした。これまでの組織体制や文化、マインドの革新は、どこかで絶対やらなくてはいけないことだったんですね。社名変更というキッカケがなければ、会社が変わるのにもしかしたら数年必要だったかもしれないところを短縮できたのは、非常に良かったと思います。

 

ちなみに、僕は三代目社長なんですが、自分たちで考えて創り出した社名への変更で、ある意味「初代社長」のような気持ちになれて、会社への愛着をさらに持つことができました(笑)。

 

いろいろなことが大きく変わったタイミングだからこそ、社名変更をした10月1日は僕たちにとって大きな意味を持つ日で。10月1日に祝賀会をしたりノベルティをつくったり。

何か新しいことを始めるときも、10月1日を起点に考えるようにしています。先日10月1日にオープンした沖縄オフィスも、「なんとかこの日に間に合わせよう!」とヒヤヒヤしながら準備をしてきました。

 

そして社名変更したタイミングで、「伝えたいコトを伝わるカタチに」という明文化した理念をつくりました。エンジニア、デザイナー、ディレクター、プロデューサーと様々な職種があって、いろいろな事業を展開していますが、我々が共通して行っているのは、「表現」なんですね。

 

消費者の生活環境も、インターネット環境も変化している中で、私たちは伝えたいコトを伝わるカタチにする表現を通じて、社会に貢献できればなと考えています。