音楽レーベル『カクバリズム』に所属して作品をリリースし、TVアニメ『とんかつDJアゲ太郎』の音楽を担当するなど、アーティストとして活躍する藤原大輔氏。しかしラナデザインアソシエイツ(以後、ラナデザイン)でも勤務し、映像制作、Webデザイン、ディレクション、サウンド制作などの他領域なクリエイティブ制作に携わっている一面を持つ。
なぜ彼は、レーベル所属のアーティストでありながらラナデザインに入社し、クリエイティブ制作に携わるのか? 入社した経緯から仕事に対するモチベーション、また二足のわらじを履いた働き方について自身はどう考えているのか、お話を伺った。
レーベル所属アーティストが制作会社に入社した理由「偶然の出会いみたいなもの」
―― ラナデザインに入社した理由を教えてください。
なんというか、偶然の出会いみたいなものですかね(笑)。音楽活動の方でMVを作ったりしていたので、映像の仕事をやってみたいなと思って検索して見つけたのがラナデザインで。
たまたまですね。タイミングが良かったというか、ラッキーだったというか(笑)。
―― 実際に入社されて、どのような業務を担当されてきたのでしょうか?
映像制作はもちろん、Webデザインや名刺のデザイン、撮影でのカメラや照明など、とりあえずなんでもやらせて頂きました、って感じです(笑)。
もともとCDのジャケットやTシャツをデザインするためにIllustratorをなんとなく使ったことはありましたけど、動画編集やWebデザインなどは実際やったことはなかったので、案件を進めながら先輩に教えてもらったり、海外のHowto動画を見たりしながら覚えていって。
入社してすぐのときはWebのキャンペーンサイトのディレクションを担当することになったのですが、規模の大きい案件だったにも関わらず、右も左もわからない状況でしたから、いま思うとよくやらせてもらえたなと思います(笑)。
THE GINZA (project management / sound)
GROOVE X (sound)
SPACE SHOWER STORE (Produce & Sound Edit)
clé de peau BEAUTÉ | 資生堂(Motion Graphic / Sound)
―― 音楽活動との両立は大変ではありませんでしたか?
たとえば、会社の仕事が終わって深夜に音楽のことをやるといったことに抵抗がないタイプなので両立が大変だと思ったことはないです。会社も懐の広い感じで見守ってくれていますし(笑)。
各プロフェッショナルの力を借りて、自分のアイデアを形にするモノづくりが理想だと思う
―― “たまたま” 入社されたとのことですが、藤原さんの仕事に対するモチベーションは何でしょうか?
なんですかね。その時に関わる様々な人たちに対する興味って感じですかね。
一緒に作業するスタッフさんやクライアントさん然り、外注で関わるエンジニアさんとか。
打ち合わせで会う時に、服装とか持っている物から、人となりを想像するのは好きです(笑)。
あと例えば、かなり厳しいシチュエーションになった時に、ひとり抱え込むのではなく、出来る限り周りの方々の意見を聞いたり、力を借りた方が、視野も広がり問題も乗り越えやすいのではと思っています。
というのも、自分の力なんてたかが知れているし、もし全部自分ひとりでやったら、「全部自分でやった」という満足感があるかもしれないけど、逆に自分の出来ること以上の物は作りだせないというか。
音楽であれば、歌詞や曲は自分でつくるけど、実際の声入れは、好きな歌い手さんにお願いするみたいに、各プロフェッショナルの力を借りて、自分のアイデアを形にするモノづくりって素晴らしいなと思いますし、理想だと思っています。
クライアントワークは様々なジャンルの方々の思惑を知れるのが面白い
―― これまでの案件で、印象に残っている案件は何かありますか?
以前に資生堂さんの案件で、空間演出を含めた音楽制作を担当させていただいたんですね。
コース料理に物語があって、料理が運ばれてくるごとにビジュアルと音がセットで変わっていく、という企画で。
もともとライブなど映像と音楽でお客さんに楽しんでもらうというのはよくありましたが、この企画ではSONYの卓上ライトの様だけど音の凄く良いスピーカーを設置して食卓に溶け込ませたりと、聴かせるインターフェースごと会社で演出させてもらいました。
映画が総合芸術だと思っているのですが、この企画では、さらに「食」という要素が入ってきたので、いろいろなジャンルの思惑がミックスされた空間が作りだせたと思いました。ただカッコいい音楽というのではなく、味のことを考えながら音楽をつくることも初めてだったので面白かったです。
シェフの方にもとても喜んでいただけて、シェフのつくった「料理」と僕がつくった「音」がリンクしてお客さんの感覚に届いたと思うと、嬉しかったですね。
―― ご自身の音楽活動と比較して、「会社の仕事」の面白さはどんなところにありますか?
自分の音楽は、ただただ自分のやりたいことを形にするもの。
だけど会社の仕事は、基本的にクライアントさんからの要望を、なるべく要望以上に応えるもの、と思っています。
だからこそ、クライアントさんがどういったことを大事にしたいかを聞いていくと、「あっ、そういう部分なんだ!」と、自分のわからない感覚を知れるのが凄く興味深いです。
たとえばメーカーさんの案件であれば、つくり手だからこそのこだわり、大事にしたいポイントがあって。ただキレイとかカッコいいアウトプットをすれば良いわけではなく、そういった大事にしたいポイントをふまえた演出が重要だったり。
同じモノづくりでも、自分の仕事と会社の仕事ではその過程が異なってくるので、何かしらの気付きがありますし、様々なジャンルの方々の思惑であったり、各々の世界観を垣間見れるのは本当に面白いですね。
様々なモノづくりを通過すると、それぞれの新しい視点に気づけるようになる
―― 会社に入って仕事をするようになって、自分の中で何か変化はありましたか?
いろいろな制作に携わるようになって仕組みを知ったことで、クリエイティブに対する捉え方は変わったかもしれません。たとえば映像の編集ソフトを使うようになってからは、海外のミュージックビデオなどを見ると「ここが大変そうだな」とか作業の裏側が少しわかるようになりました(笑)。
また、会社の仕事だと予算やスケジュールなど、様々なことで交渉しないといけない場面が多いので、交渉スキルが身についたかもしれません(笑)。
―― 藤原さんのような、ある意味 “二足のわらじ” を履いた働き方について、ご自身ではどのようにお考えですか?
自分では、特別なことをしているという意識はないのでなんとも言えないのですが、手塚治虫さんが「漫画は漫画以外の事から学べ」みたいなことを言っていたらしいので、それは僕もまさにそうだな、と思っていて。
様々なモノづくりを通過すると、また、それぞれの新しい視点に気づけるようになるイメージがあるので、それを体験できるのは有り難いと思います。
―― 今後やっていきたいことは何かありますか?
とりあえず、たくさんの面白い人に会いたいって感じですかね。
やはり、すべては人と人の付き合いだと思っているので、そのお客さんやスタッフさんとの距離感を仕事でも「良い人と人との付き合い」にしていきたいというのは常に思っています。
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