
近年、企業がデジタル化を進めるなかで「プラットフォームビジネス」が注目されています。
プラットフォームビジネスとは商品、サービスの提供者と実際のエンドユーザーを結びつけるプラットフォームを提供するビジネスであり、オンラインマーケットプレイス、SNS、クラウドサービスなど、さまざまな業界でプラットフォーム型のビジネスが広がりました。
本記事では、プラットフォームの作り方について解説します。ビジネスモデル成功の秘訣や費用相場にも触れるので、今後プラットフォームビジネスを始めようか迷っている方はご参考ください。
■目次
プラットフォームの3つの種類
プラットフォームには、以下3つの種類が存在します。
ここではそれぞれの特徴について解説します。
➀BtoBプラットフォーム
BtoBプラットフォームとは、企業と企業とを結びつけるプラットフォームです。たとえば以下のようなプラットフォームサービスが挙げられます。
- Alibaba(BtoB向けECサイト)
- Amazon Business(BtoB向けECサイト)
- インフォマート(請求書の送受信サービス)
- Salesforce(オンラインマーケティング支援サービス)
- ASKUL(オフィス什器ECサイト)
BtoBプラットフォームは、製品やサービスの売買だけでなく、受発注管理、在庫管理、支払い処理などの業務もサポートするのが特徴です。従来の手作業や電話、FAXなどを使ったやりとりに比べて取引が効率的になりやすく、時間とコストを大幅に削減できます。
➁BtoCプラットフォーム
BtoCプラットフォームとは、企業と個人とを結びつけるプラットフォームです。たとえば以下のようなプラットフォームサービスが挙げられます。
- 楽天トラベル(ホテル予約サイト)
- クラウドワークス(クラウドソーシングサイト)
- LocoBee(地元商品の購買サイト)
- タイミー(スポットアルバイト求人アプリ)
- U-NEXT(映像、音楽等のサブスクサービス)
その他、個人向けのAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなども代表的なBtoCプラットフォームに含まれます。BtoCプラットフォームは顧客開拓と相性が良いのが特徴で、膨大なコンテンツ数を持つプラットフォームに個人商店や中小企業でも気軽に参入できるのがメリットです。
③CtoCプラットフォーム
CtoCプラットフォームとは、個人と個人とを結びつけるプラットフォームです。たとえば以下のようなプラットフォームサービスが挙げられます。
- メルカリ(フリマアプリ)
- ジモティー(地元情報交換サイト)
- ヤフオク(オークションサイト)
- タイムチケット(知識、経験、スキルの売買サイト)
- minne(ハンドメイド商品販売サイト)
代表的なサービスとしてフリマアプリやスキルマーケットが挙げられますが、近年はCtoCプラットフォームの種類も拡大しています。普段の自分ではなかなかコネクションを構築するのが難しい人とつながるきっかけにもなっており、消費者同士が直接商品やサービスを取引できるオンライン市場として大成しました。
プラットフォームの作り方3選
ここでは、プラットフォームの作り方を解説します。
以下でひとつずつ詳しくチェックしていきましょう。
➀ゼロからプラットフォームを構築する「スクラッチ開発」
スクラッチ開発とは、既存のソフトウェアやシステムをベースにせず、ゼロから完全に新しいシステムやアプリケーションを開発する手法です。外部のフレームワークやツールに依存せず、自分たちで最初からすべてを構築していくというアプローチができます。
メリットは、ゼロベースで構築するからこそのカスタマイズ性の高さと、柔軟性やスケーラビリティを担保できる点にあります。機能、デザイン、運用方法に至るまで、全てが既存のシステムにとらわれることなく構築できるので「既存のシステムではいいものが見つからなかった」という顧客にこそ効果的にアプローチできます。
デメリットは、コストと開発期間がかかること、システムの安定性やセキュリティのリスクが高いことにあります。ハイスキルな開発チームでないとプロジェクトが遅延したり、予期しない問題が発生したりする可能性があるので注意しましょう。
提供されているパッケージをもとに開発する「パッケージ開発」
パッケージ開発とは、特定の機能、目的に特化したシステムを、あらかじめパッケージ化して提供する開発手法です。汎用的なニーズを満たすシステムづくりと相性がよく、ニーズの高い機能を網羅して使い勝手の良さを提供していきます。メリットは、汎用性の高いシステムにできるため、売れ行きが良くなることが期待できること、迅速な導入ができるとアプローチできることにあります。
パッケージ開発は複数の企業、個人が利用できることを前提にしているため、汎用的なニーズを満たす標準的な機能を網羅するのが特徴です。カスタマイズせずそのままパッケージとして販売でき、ヒットすれば手間なく多額を稼げます。
デメリットは、カスタマイズに制限があること、ベンダーに依存しやすいことです。ある程度汎用的なシステムにする以上、個別の細かなカスタマイズには対応できません。こだわり派な顧客にはフィットしない可能性が高く、不要な機能が含まれてしまうリスクもあります。また、ソフトウェアの更新やサポートをベンダーに頼ることになるため、メンテナンスコストがかかるのもデメリットです。
プログラミング知識が不要で開発できる「ノーコード開発」
ノーコード開発とは、ビジュアルインターフェースやドラッグ&ドロップ機能を使って、手軽にアプリケーションやシステムを開発できる手法です。通常であればソフトウェア開発にコード記載は必須ですが、ノーコード開発ではある程度テンプレートを使って開発することができ、プログラムのコードを直接書かずにアプリケーションを作成できます。
メリットとして、プログラミングスキルがほぼ不要なので誰にでも開発チャンスがあること、迅速に開発できるのでタイムパフォーマンスが良いことが挙げられます。開発速度が大幅に向上するので簡単にシステムを構築でき、短時間でヒットするシステムを作れる可能性も高いです。
デメリットとして、複雑なアプリケーションや高性能を必要とするシステムの開発には向かないことが挙げられます。ノーコードで作成したアプリケーションの場合、パフォーマンスが低くなったり機能が制限されたりすることが多く、大量のデータ処理や複雑な計算が必要な場合には向きません。また、機能拡張に制約があるケースもあり、将来的にユーザー数やデータ量が急増した場合に想定通り稼働できなくなるリスクも孕んでいます。
プラットフォームの制作費用相場
ここでは、プラットフォームの制作費用相場を開発手法別に解説します。
| 費用相場 | |
|---|---|
| スクラッチ開発 | 500~3,000万円程度 |
| パッケージ開発 | 300~500万円程度 |
| ノーコード開発 | 初期費用:100~500万円程度 運用費用:2~5万円程度/月 |
プラットフォームの制作費用は、イチから開発するスクラッチ開発が最も高額になりやすく、次いでパッケージ開発、ノーコード開発と続きます。ただし、ノーコード開発した場合は保守、点検も含めて依頼されるケースがあり、この場合は開発費用とは別に運用費用として月額コストを支払うことになります。
実際の開発費用は、システムに搭載する機能の数、内容により大幅に変動します。その他、選択する技術スタック(使用するプログラミング言語やフレームワーク)、開発チームの規模、開発期間などによって変動することも多く、一概に「何円」と決めることはできません。特にマルチプラットフォーム対応、多言語対応、高度なセキュリティ対策、API連携などを行いたい場合は、高額になりやすい傾向があります。
プラットフォームビジネスの3つのメリット
プラットフォームビジネスには、以下のようなメリットがあります。
ここではプラットフォームビジネスのメリットについて解説します。
➀取得データをその他のビジネスに転用できる
プラットフォームビジネスにおいて、データは非常に重要な資産です。プラットフォームを通じて取引や交流が行われる中で蓄積される膨大なデータは、そのプラットフォーム自体の改善や最適化だけでなく、他のビジネスにも大いに活用できる強力な資源となるので活用しましょう。
たとえばプラットフォームに参加するユーザーの行動データ(クリック、検索、購入履歴など)を活用すれば、ターゲティング広告の最適化、プロダクトやサービスの改善などが叶います。ユーザーのプロフィール情報(年齢、性別、地域、職業など)を活用すれば、ターゲット市場のセグメンテーションやパーソナライズ化されたサービスにも活かせるでしょう。
データを有効に活用することで競争力を高め、新たなビジネス機会を創出し、効率的な運営が可能になるのがメリットです。
➁顧客数を増やしやすい
プラットフォームビジネスの最も顕著な特徴のひとつが「ネットワーク効果」であり、顧客数を増やすことに貢献します。「ネットワーク効果」とは、プラットフォーム上のユーザー数が増えることでプラットフォーム自体の価値が増し、さらに多くのユーザーを引きつけられるという効果を表す言葉です。
まさに「ユーザーがユーザーを呼ぶ」状態を作り上げられれば、強力な宣伝、広告がなくとも自然と人が集まるプラットフォームとなるでしょう。多くのユーザーが集まるとより多くの取引が発生し、手数料収入や情報蓄積の拡大が期待できます。収益が爆発的に拡大することもあり、ビジネスとして理想的な結果を招くかもしれません。
③ビジネスによっては開発費用を抑えられる
プラットフォームビジネスでは、最初に必要な「最小限の実用的な製品」を開発し、その後ユーザーのフィードバックをもとに改善を加えるというアプローチが一般的です。そのアプローチを取ることで、初期の開発費用を最小限に抑えながら、その後の改善を繰り返しながら支持が得られるプラットフォームに成長させていくことができます。
段階的に開発を進められるので一気に多額のコストを投下する必要がなく、オープンソースや既存のツールを活用しながらの開発にすることも可能です。またプラットフォームビジネスは収益化のスピードが比較的早く、その後の利益を再投資してさらにサービスを拡充していくなど、フレキシブルなビジネスモデルを採用できるのも大きな利点と言えるでしょう。
プラットフォームビジネスの3つの注意点
プラットフォームビジネスには多数のメリットがありますが、一方で注意点もあるので事前にチェックしておきましょう。
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ここでは、代表的なプラットフォームビジネスの注意点をひとつずつ解説します。
➀集客コストがかかる
プラットフォームに人を呼び込むためには、集客コストがかかります。プラットフォームの成功には「ネットワーク効果」が重要ですが「ネットワーク効果」はある程度のユーザー数が集まらないと十分に発揮されません。初期段階ではプラットフォーム上に十分な商品やサービスが揃っていない、もしくは参加するユーザー数が少ないため「価値が低い」とみなされてしまうことがあります。
プラットフォームに集客するためには、プロモーションや割引、紹介特典などのインセンティブをフル活用する必要がありますが、収益がコストを上回らないようバランスを注視しておく必要があります。また、集客後も、ユーザーがリピーターとなって定期的に利用してもらわなければ、収益が安定しないので注意しましょう。
➁後発参入は難しい可能性がある
既に多数のプラットフォームが提供されている昨今、後発参入は難しい可能性があります。既に強力な競合が存在している場合や、ネットワーク効果が強く働いている分野で、後発企業が成功するためには相当な戦略とリソースが必要です。
既存のユーザーはすでに信頼できるプラットフォームを使っており、わざわざ新しいサービスに乗り換える必要がありません。他のプラットフォームに移行するのが面倒だと感じる「スイッチングコスト」も発生するため、顧客獲得のためには乗り換えをしてでも使いたいと思うようなメリットを提示する必要があります。
③法規制に関しても注意する必要がある
プラットフォームが取り扱う商品やサービスが多岐に渡る場合、法的なリスクを適切に管理する必要があります。販売者責任と取引条件の明示について問われたり、クーリングオフ制度や不当表示に対応できない場合、プラットフォーム開発者として責任を問われるかもしれません。特に、医薬品、酒類、煙草、農薬など販売に際して免許が必要な商品や購入者の年齢を問うような商品をどう管理するか、などの課題も多いのが現状です。
その他、プラットフォームがマネーロンダリングに使われないよう細心の注意を払うなど、管理、監視やルールの明確化も求められます。
プラットフォームビジネスを成功させるためのポイント
ここでは、プラットフォームビジネスを成功させるためのポイントを解説します。以下の点に配慮しながらプラットフォームビジネスを始めれば、想像以上の効果が期待できるでしょう。
➀利用ユーザー数を常に意識する
プラットフォームビジネスの成功には、利用するユーザーが多いことが必須です。プラットフォームビジネスでは、ユーザー数が増えることでネットワーク効果が発揮され、サービスの価値が倍増します。反対に、ユーザー数が少ないと「盛り上がっていないプラットフォーム」として評価されてしまい、利用するメリットが半減してどんどん人が減ってしまう負のスパイラルに突入するでしょう。
ユーザーを引きつけるためには、効果的なマーケティング戦略が不可欠です。認知度を高め、ターゲットとなるユーザー層にアプローチしながらユーザーを拡大していきましょう。
➁キャッシュポイントをあらかじめ定める
キャッシュポイントが明確でないと運営が不安定になり、収益化が遅れる可能性があります。先の見通しを立てるためにも、キャッシュポイントを定めておくのがおすすめです。
プラットフォームビジネスでは手数料、サブスクリプション、広告、決済手数料、データ販売など、サービスによってさまざまなキャッシュポイントがあります。自社のサービスにとって、どのようなキャッシュポイントが適切か、よく検討してみると良いでしょう。
③利用するメリットをつくる
プラットフォームビジネスにおいて、ユーザーにとってのメリットを明確に提供することが重要です。メリットの多いプラットフォームには多数のユーザーが集まるため、自然とプラットフォーム内コミュニケーションが盛り上がり、口コミを中心にさらに人が集まる良いサイクルを構築できます。
たとえば、AIやアルゴリズムを活用して最適な商品、サービスをレコメンドする、直感的なインターフェースで使いやすさをアピールする、PCでもスマートフォンでもアクセスできるマルチデバイス対応のプラットフォームにするなど、工夫したいポイントは多いです。手数料を下げるクーポンや紹介インセンティブなども、代表的な手段と言えるでしょう。
プラットフォームビジネスの成功例
最後に、プラットフォームビジネスの成功例を紹介します。誰もが知る有名なプラットフォームを中心にピックアップしているので、それぞれの特徴を理解していきましょう。
LINE:SNS上で多様なサービスを提供
iTunes:音楽をメインとしたコンテンツ型サービス
ランサーズ:フリーランスと企業をつなぐサービス
楽天市場:日本で最大級のインターネットショッピングサービス
UberEats:店舗と注文者、配達者をつなぐサービスを提供
LINE:SNS上で多様なサービスを提供
LINEは無料で使えるメッセージングサービスとして台頭し、老若男女問わず広範囲のユーザーをカバーするツールとして定着しました。現在は広告収益としてのLINE広告、コンテンツ販売としてのLINEスタンプ、ゲームプラットフォームとしてのLINEゲームなど多数に有料サービスを提供することにより、収益化を図っています。
また、LINEはモバイルアプリにとどまらずPC版やWeb版を提供しており、異なるデバイス間でシームレスに利用できるようになっているのが特徴です。いつでもどこでも利用できるLINEは生活に欠かせない便利なツールであるという認知が広がり、以降は外部サービスやアプリとも連携できるようになりました。
iTunes:音楽をメインとしたコンテンツ型サービス
2001年に登場した「iTunes」は、音楽、エンターテインメント、デジタルコンテンツの提供方法を大きく変える存在となりました。当時はまだ珍しかった「音楽のデジタル販売」に着手し「アルバム単位ではなく曲単位で購入する」という新しい形を始めました。
レコード会社やアーティストと直接提携して音楽の配信権利を取得したことも目新しく、ユーザーの利便性を拡大しながらビジネスとして両立させることができました。その後はApple Musicとの連携や他メディアコンテンツの提供も始まり、カバー範囲の広いサービスとして確立しています。業界とのパートナーシップや独自のビジネスモデルが成功の秘訣となった事例と言えるでしょう。
ランサーズ:フリーランスと企業をつなぐサービス
ランサーズはフリーランスと企業をつなぐサービスであり、クラウドソーシングサービスの先駆け的な存在として広がりました。ランサーズの特徴は、企業とフリーランスがオンラインで簡単にマッチングできる点にあります。
ライティング、デザイン、プログラミング、動画制作、マーケティングなど、さまざまなカテゴリの仕事が掲載されていて「仕事を発注したい人」と「仕事を受注したい人」が手軽につながれるのが特徴です。
結果として、企業側には労務コストをかけることなく即戦力となる人材を探せるメリットを、フリーランサー側には確実な仕事による収益と安定したサポートが提供されるメリットを与えることとなり、利用者は年々拡大しています。契約金額に応じた手数料収入で収益化するビジネスモデルの代表的な事例となりました。
楽天市場:日本で最大級のインターネットショッピングサービス
楽天市場は、日本で最大級のインターネットショッピングサービスです。楽天グループ全体のポイントプログラムによるお得感を演出し、スーパーセールや買い回りポイントアップなどのメリットを訴求してユーザー数を増やしました。また、楽天市場では多数の事業者の参画を支援しており、自然な価格競争が起こっているのもユーザーにとってのメリットとなっています。
また、クレジットカードをはじめ、銀行振込、コンビニ払い、楽天ペイ、代引きなど、多彩な決済手段が用意されているのが特徴です。自分の好みに合わせた方法で簡単に支払いができる利便性も、老若男女問わず広く活用されるポイントとなりました。
UberEats:店舗と注文者、配達者をつなぐサービスを提供
UberEatsは店舗、注文者、配達者をつなぐテイクアウトメニューの配達サービスであり、新型コロナウイルス流行に伴う「ステイホーム需要」に合わせて爆発的に売上を伸ばしました。スマートフォンアプリを使って簡単に食事の注文と配達を依頼できるサービスで、ユーザーは好きなレストランから料理を選び、迅速に自宅やオフィスに届けてもらえるのが利点です。
当時は珍しかった「置き配」に対応することで非対面、非接触型の受け渡しを可能にするなど、時代に合ったサービスの提供を続けています。飲食店と配達員をつなげるプラットフォームとして飲食業界に革命を起こしたといえるサービスで、現在も多数のレストランや配達員が加盟しているのがポイントです。
まとめ
プラットフォームビジネスは、つくり方次第では安価に、かつ収益性の高いサービスを作れる手法です。一方、集客コストがかかることや法規制の遵守など、注意点も多いので意識しておきましょう。
「フリーコンサルタント.jp」では、プラットフォーム開発に強い開発担当者やプラットフォームビジネスに強いマーケターの紹介が可能です。プロジェクト単位での参画も、その後の運用、保守、点検も含めてオールインワンで依頼することもできるので、即戦力となる優秀なプロフェッショナル人材を活用したい場合、お気軽にご相談下さい。
(株式会社みらいワークス フリーコンサルタント.jp編集部)




