
近年、企業を取り巻く環境は大きく変化し、環境問題や社会問題への関心が高まるようになりました。このような状況の中で企業はESG(環境、社会、ガバナンス)経営を推進することが求められるようになり、ESG投資の拡大やステークホルダーからの高い評価も続いています。ただし、ESG経営を成功させるためには高度な知識とノウハウが必要になるため、専門的な知識と経験を持つESGコンサルタントの支援が不可欠となるでしょう。
本記事では、ESGコンサルタントの役割やコンサルティング会社を選ぶ際のポイントについて解説しています。なぜESGコンサルティングが求められているのか、理由にも触れるのでご参考ください。
■目次
ESGコンサルタントとは
ESGコンサルタントとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの側面から、持続可能な経営を実現するための支援を行う専門家です。ESGコンサルタントはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)など、国際的な基準への対応を包括的に支援してくれることも多く、専門的な知見でサポートしてくれる強力な存在となるでしょう。
ESGは専門性の高い分野であり、企業単独で取り組むにはハードルが高いと感じられることが少なくありません。そのため、ベンチャー企業から大企業まで、ESGコンサルタントの力を借りる企業は増えています。ESGコンサルタントを活用することで、豊富な実績をもとに具体的な解決策の提案を受けることが可能です。
ESGコンサルタントとSDGs(サステナビリティ)コンサルタントの違い
SDGs(サステナビリティ)とは、2015年に国連サミットで採択された、2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットからなる国際目標です。ESGコンサルタントとSDGs(サステナビリティ)コンサルタントは一見するとよく似ていますが、対象範囲や主な業務に違いがあるので注意しましょう。
まずESGコンサルタントの場合、業務の対象範囲は「環境、社会、ガバナンスの3つの側面」とすることが多いです。ESG評価、戦略策定、情報開示などを主な業務としており、企業の持続可能性を高めるための総合的な支援を行います。
一方、SDGsコンサルタントの場合、対象範囲は「SDGsの17の目標」とすることが多いです。目標設定、KPI設定、サプライチェーン管理などの実業務に携わるのが一般的で、具体的な目標達成に向けてより実践的な支援を行います。
ESGコンサルタントに依頼できる内容4つ
ここでは、ESGコンサルタントに依頼できる内容を解説します。具体的にどんな業務を依頼できるか知りたいときにチェックしてみましょう。
①ESG施策の策定
ESGコンサルタントは、企業が抱えるESGに関する課題を解決し、持続可能な成長を実現するための施策決定をサポートします。
まずは、企業の事業内容やサプライチェーン、ステークホルダーなどを分析し、現状を把握するのが一般的です。クライアントごとに「何が重要なESGか」を見極め、現状のESGに関する取り組みを評価しながら改善手法をリストアップしてくれます。
また、具体的な施策案として、責任者、担当部署、スケジュール、予算などを決めてプロジェクトを立ち上げてくれるESGコンサルタントもいます。従業員への意識啓発活動を行い、全社一丸となってESGに取り組める環境を構築していきましょう。
②ESG評価と企業活動の分析
ESG評価は、企業の環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に関する取り組みを評価するもので、近年特に投資家やステークホルダーの間でますます重要視されています。ESGコンサルタントは、主に財務データや環境データなど、数値化された指標を用いて客観的に評価します。企業の取り組みや情報開示の内容を定量的に評価してくれるので「やったつもり」「やっただけ」になりにくくなるでしょう。
また、自社の課題に気づくきっかけとしても役立つので「何から手をつければいいかわからない」「何が悪くてESG施策に失敗しているか見えてこない」という場合に相談するのもおすすめです。
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③リスク管理
ESG施策は、企業の持続可能性を確保して長期的な成長を実現する取り組みですが、リスクもあるので注意が必要です。たとえば、不適切な行為や情報開示が原因で企業の評判が損なわれる「レピュテーションリスク」が挙げられます。ESGに関する情報開示の不透明さや不適切な行動は、却って大きなリスクとなってしまうため、ESGコンサルタントのような専門家を頼るのが良いでしょう。
ESGコンサルタントであれば、リスクを事前に特定し、適切な対策を講じることでリスク対策をしてくれます。ESGに伴うレピュテーションリスクや財務リスクなどのリスクを徹底的に排除することがESG経営成功の近道です。
④報告書の作成
ESGコンサルタントは、企業のESGに関する取り組みを評価し、結果をまとめた報告書を作成してくれます。企業のESGパフォーマンスを可視化し、ステークホルダーに対して透明性を高めることにつながるので、専門的な知見から報告書を作成してもらうと良いでしょう。
また、投資家に響きやすい報告書にすることで、新たな資金調達の可能性が拓けるケースも珍しくありません。自社のMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)や企業風土も含めた報告書にしてもらうことで、自社らしさを出すことも可能です。
企業にESGコンサルタントの導入が求められる3つの背景
ここでは、企業にESGコンサルタントの導入が求められる背景を解説します。なぜESGコンサルタントの導入が注目されているのか、理由を探ってみましょう。
①環境、社会問題の意識向上
ESGへの関心が世界的に高まった背景には、地球温暖化をはじめとする環境問題の深刻化や社会的不平等、企業の不祥事などさまざまな要因が含まれています。「経済成長と社会的な責任を両立させなくてはいけない」「自社利益だけを考える利益第一主義ではいつか破綻する」という危機感から、ESGへのニーズが高くなりました。
とはいえ急激にESGのかじ取りをするのは難しく、現在ではESGコンサルタントなど専門家のノウハウを借りてリスクヘッジするのが一般的になっています。ESGに関するリスクや対処法を事前に把握することで、企業の安定的な成長につながるからこそ、ESGコンサルタントへの導入が推奨されているのです。
②ESG経営の広がり
ESG経営は社会にとって良い動きになるだけでなく、投資家からの評価を高められるなど自社にとってのメリットにもつながるのが特徴です。そのためESG経営が急速に広がり、イノベーションの創出、ブランドイメージの向上、リスク管理の徹底に注力する企業が増えました。
実際に、ESG評価が高い企業が、投資家から高い評価を得て理想的な資金調達をする事例も増えていて、金銭的にもメリットのある取り組みであると言えます。新しいビジネスモデルや製品の創出にもつながるので、思わぬところで事業のヒントが得られるかもしれません。
③人的資本に関する情報開示義務化
2023年3月期決算より、日本でも人的資本の情報開示が義務化されました。人的資本とは、企業が持つ人材の能力、知識、経験、ナレッジなどの無形資産を表す言葉です。特に従業員の教育、育成、多様性、包容性、エンゲージメントなどが人的資本の指標となっており、理想的な数値を記録する企業は、投資家やステークホルダーから良い印象を持たれるようになりました。
現在は有価証券報告書を提出する必要がある上場企業などが情報開示義務の対象となっていますが、ゆくゆくは範囲が拡大する可能性もあります。ESGコンサルタントに情報開示対策を依頼することにより、開示情報が少ないことによるイメージダウンや投資撤退などのリスクマネジメントと、イメージ向上を同時に狙える施策となるでしょう。
ESG経営を行う上で会社が抱える課題
ESG経営を行う際、多くの企業が躓く理由として「定量化の困難さ」が挙げられます。環境や社会への貢献度をどのように数値化して目標を設定すれば良いか、迷ってしまう企業が多いのです。また、ESG経営は長期的な視点に基づく必要があり、短期的には結果が出づらいからこそ「本当にこの施策で良いのか」「なかなか結果が出ないが自社の方針のままで良いのか」という迷いも生まれます。
ESGコンサルタントは専門的な立場からESG施策の評価、可視化、改善提案ができるので、困ったときこそ頼ってみると良いでしょう。ESGに関するデータを収集して分析することは時間とコストがかかり、本業を圧迫しかねないため、外部のプロを頼るのが近道です。
ESGコンサルタントを選ぶ時のポイント3つ
次に、ESGコンサルタントを選ぶ時のポイントを解説します。どのようなESGコンサルタントに依頼すれば良いか迷ったときは、以下をご参考ください。
①ESG経営に関するこれまでの実績は豊富か
まずはESGコンサルタントが過去「どのような企業と」「どのようなプロジェクトに携わってきたか」を確認し、ESG経営に関する実績が豊富かチェックしましょう。特に、自社の業界や規模に類似した事例があると、より具体的な提案を受けやすくなります。
また、契約内容によっても異なりますが、ESG経営は一過性のプロジェクトではなく長期的な戦略を伴うのが一般的です。ESGに特化したコンサルタントであれば、プロジェクトの長期化をあらかじめ視野に入れているため、長い期間パートナーとして伴走してくれます。
②コンサルタントの得意分野が自社のニーズにマッチしているか
自社が取り組みたいESG課題と、ESGコンサルタントの得意分野が一致しているかも確認しておきましょう。たとえば、環境面での取り組みを強化したい場合、環境戦略やカーボンニュートラル推進に強みを持つコンサルタントを探すのが理想です。業界ごとに特有のESG課題が存在するため、その業界特有の規制や動向に詳しいコンサルタントを探すのが良いでしょう。
また、自社がESG報告や開示に力を入れたい場合、国際的な報告基準(GRI、SASB、TCFDなど)に精通しているコンサルタントが役立ちます。自社の課題に合わせてコンサルタントを選べば、大きなミスマッチに悩まされることもありません。
③取り組み実施後のサポートが受けられるか
「①ESG経営に関するこれまでの実績は豊富か」でも解説したとおり、ESG戦略は長期化することが多いです。そのため、施策実施後も定期的なフォローアップや評価、改善策の提案を行ってくれるコンサルタントを選ぶことで、目標達成までのスピードを上げることができるでしょう。
取り組み実施後のサポートを得るためには、プロジェクトの長期化を見込んだ契約期間にすることが大切です。契約前に、施策実施後の考え方やプロジェクトの進行スケジュール、サポート内容を確認しておくことで、自社を持続的に成長させることができるでしょう。
また、ESGに関連する規制や市場のトレンドは急速に進化しています。コンサルタントが業界の最新動向や規制変更を追い、必要に応じてアドバイスやアップデートを提供してくれるのであれば、より信頼できるコンサルタントと言えるでしょう。
ESGコンサルタントを活用する3つのメリット
ここでは、ESGコンサルタントを活用するメリットを解説します。改めてESGコンサルタントならではのメリットを知り、自社の課題解決に役立ちそうかシミュレーションしてみましょう。
①資金調達がしやすくなる
今や、ESGに配慮した企業活動は、投資家や金融機関にとって重要な評価基準となりつつあります。ESG投資家は企業の社会的責任や持続可能性に注目して投資先を選定するため、ESGコンサルタントの活用に成功すればESG投資家からの資金調達がしやすくなるでしょう。
また、グリーンボンドやサステナビリティボンドなど、特定の目的に沿った資金調達手段へのアクセスが容易になるのもメリットと言えます。金融機関や投資家との信頼関係を構築するきっかけとして、ESGコンサルタントを活用するのがおすすめです。
②ESG経営に関するノウハウが得られる
ESGコンサルタントは企業の現状に合わせたESG戦略を立案する専門知識を持っているため、活用することでESG経営に関するノウハウが得られます。どの分野を重点的に強化すべきか、具体的な目標をどう設定するか、どのように実行に移すかといった点で、実践的なノウハウを提供してくれるのがメリットです。
また、戦略の実行に向けたロードマップを作成し、ステップごとのアクションプランも提案してくれます。投資家やステークホルダー向けに分かりやすく透明性のある情報を提供する方法を指導してくれることもあり、自社にはない知見を広げやすくなるでしょう。
③ESG経営が素早く実現できる
ESGコンサルタントの知見を活用すれば、ESG経営を素早く実現させることも可能です。コンサルタントならではの専門知識を活用することで、ESG経営の導入における時間や労力を大幅に削減できます。特に、ESG戦略、目標設定、報告基準の選定について、すでに確立された方法を基に迅速に進めることが可能です。
本来ESG経営の実現にはコストも時間もかかるものですが、それを最短化できればメリットが得られるタイミングも早くなります。短期間でESG経営を実現したいときにこそ、専門家を頼りましょう。
ESGコンサルタントを活用する際の注意点
ESGコンサルタントを活用する際の注意点として、自社のニーズを明確にしてから依頼することが挙げられます。
企業によって、強化すべきESG領域は大幅に異なります。たとえば環境面での改善が必要な企業もあれば、ガバナンス体制の強化が重要な企業もあり、課題の内容は千差万別です。自社がどの領域に特に注力したいのかを明確にし、そのニーズに合ったコンサルタントを選ばないと、ミスマッチばかりになってコストも時間も無駄にしてしまうかもしれません。
ESG経営を成功させるには、企業の規模や業種に合った経験を持つコンサルタントを選ぶことがカギとなります。まずは自社のニーズを明確にして、目指すべき方向性を確立させておきましょう。
ESGコンサルタントの費用相場
ESGコンサルタントの費用は「何をどこまで依頼するか」によって大きく変動しますが、月額性の顧問契約であれば月30~80万円が相場となります。企業規模が大きくなると月額200万円以上になることもあるので、事前の見積りが欠かせません。
また、追加で業務を依頼したくなったときやコンサルティング範囲を拡大することになったときを想定し、予算にスケーラビリティを持たせておくことも大切です。レポートの作成など実務については単価もしくは時間制での課金となることもあります。
ESGコンサルタントの活用事例
最後に、ESGコンサルタントの活用事例を紹介します。以下の事例を参考に、自社でESGコンサルタントを導入するか検討してみましょう。
日清食品ホールディングス
日清食品ホールディングスでは、コンサルタントティングファーム独自の分析手法のひとつである「Digital ESG Data Analytics」を採用しています。ESG指標間の関係性やESG活動が企業価値に与える影響を定量的に評価し、企業価値向上への道筋を実証しました。
継続的な実施でCSV経営をさらに高度化する狙いがあり、今でも社内の各部門と協力してデータ収集や分析を進めています。CO2排出量の削減や従業員1人当たりの労働時間短縮がESG施策として効果的なこともわかり、戦略立案のヒントとなりました。自社の課題を明確化し、解決に導いた事例と言えるでしょう。
KDDI株式会社
KDDI株式会社では、企業価値向上に直結するESG活動を数値化し、開示する方法を模索していました。そこで、コンサルティングファームをパートナーに迎え入れ、ESG関連指標と企業価値の関連性を数値化する取り組みを実施しています。実際にESGデータを過去10年分収集し、20部署以上から215の指標を分析することで、企業価値に影響を与える45の指標特定に成功しました。分析結果は2021年3月期の決算説明会で発表され、投資家から高評価を受けたことでさらにESG経営が加速化しています。
ESG施策の実現方法に迷ったとき、分析の力を借りて自社に最適な施策をピックアップできた事例と言えるでしょう。
ESG経営なら「フリーコンサルタント.jp」にお任せください
ESG経営に着手したいときは「フリーコンサルタント.jp」にご相談ください。「フリーコンサルタント.jp」は、企業が抱える様々な課題に対して最適な人材を迅速にマッチングさせるフリーランスプラットフォームです。特定の分野に特化したコンサルタントを探せるので、ESGコンサルタントとマッチングしたい方にも向いています。
また、企業の規模や業種を問わず利用できるのもポイントです。実績豊富なコンサルタントとの出会いが期待でき、より質の高いサービスを受けることが可能です。なお、業務の範囲やプロジェクトへの参画時期も自由に相談でき、自社にとってロスのないESGコンサルタント活用が実現します。
まとめ
ESGコンサルタントは、企業が環境、社会、ガバナンスに関連する課題に対応し、持続可能な成長を促進するための専門的な支援を提供します。ESG戦略の策定、データ分析、レポーティング支援、ステークホルダーとの対話など多岐にわたる実務を担当してくれるので、ESG施策にお困りの方はぜひ活用してみましょう。
「フリーコンサルタント.jp」でも、ESGコンサルタントのご紹介を実施しています。柔軟で高い専門性を提供できるフリーランスのコンサルタントが多数登録しているので、お気軽にご相談ください。



