
『自社製品の市場シェアを拡大したい』
『新規事業を成功させたい』
など、自社の成長戦略の方向性でお悩みの方は多いのではないでしょうか。
「アンゾフ成長マトリクス」を活用することで、自社にとって必要な成長戦略を洗い出すことができます。アンゾフ成長マトリクスは、成長の方向性を明確化させ、より効率的な戦略を選定できるため、企業経営には欠かせないフレームワークのひとつです。
この記事を読むことで、アンゾフ成長マトリクスの成長戦略や戦略を採用する際の注意点を知ることができます。自社の事業や製品をどのように展開していけば良いか悩んでいる方は、ぜひチェックしてください。

■目次
1.アンゾフの成長マトリクスとは
引用:「アンゾフの成長マトリクス」 | 経済産業省 中小企業庁
アンゾフの成長マトリクスとは、企業の成長戦略を「製品」と「市場」とに分けて効果的に問題を解決していくフレームワークのことです。さらに「製品」「市場」の軸をさらに「既存」と「新規」の計4つに細分化することで、企業の新しい戦略を見出すことができます。
2.企業がアンゾフ成長マトリクスを戦略として活用する理由
各企業がアンゾフ成長マトリクスを活用する理由は、下記の通りです。
自社にあった成長戦略を洗い出すことができる
アンゾフ成長マトリクスを活用し、自社が保有しているノウハウや強み、弱みを再確認することで、成長戦略の方向性を洗い出すことができます。海外情勢や市場の環境変化に対応した商品やサービスを展開していくためにも、まずは己を知ることが重要です。
それと同時に、競合他社の動向や市場ニーズなどの外部環境を把握することが欠かせません。自社のみならず、企業を取り巻く外部環境へのリサーチも十分に行いましょう。
経営資源を有効的に利用することができる
アンゾフ成長マトリクスを利用することで、最適な市場や製品、サービスへ、既存の経営資源を活かした上で戦略を立案することが可能です。
手当たり次第に経営資源を投入すると、投資対効果の低い結果しか得られない恐れもあります。しかし、アンゾフ成長マトリクスを利用することで、自社にとって最適な経営資源を洗い出し、経営に投入することが可能です。このように、不要なコストや労力を浪費しないためにも、アンゾフ成長マトリクスは企業の成長にとって非常に役立つのです。
3.アンゾフの成長マトリクスから分かる4つの成長戦略

アンゾフ成長マトリクスは、2×2の4象限からなる成長戦略に区分されます。
以下では、各成長戦略の詳細を解説します。
市場浸透戦略(既存製品×既存市場)

市場浸透戦略(既存製品×既存市場)は、既に存在する市場に、既にある製品をリリースする手法です。市場シェア拡大を狙う手法であり「業界最大手」のポジションを獲得することで「あの商品といえばこの会社」という認知が定着し、顧客数、顧客単価、購買数を全て大幅に伸ばすことができます。
市場浸透戦略(既存製品×既存市場)における最大のメリットは、新規製品の開発や市場開拓のコストがかからない点です。市場が未成熟でライバルの少ないブルーオーシャン市場では特に有効な手法となりやすく、競合が少ないうちに業界のパイオニアとして活動するのが理想です。
一方、既に市場が飽和気味であるレッドオーシャン市場に乗り出すのは難しく、既存の大手企業を超える実績を作るのは至難の業となります。競合が多いからこそ継続的な成長も難しく、労力、コストをかけても期待通りの効果が得られない可能性があるのです。
市場開発戦略(既存製品×新規市場)

市場開発戦略(既存製品×新規市場)は、新しい市場に、既にある製品をリリースする手法です。ある程度顧客満足度が高い製品であれば、市場を変えても支持してもらえる可能性があります。たとえば国内で販売実績を作った商品を海外で販売したり、製品に少しだけアレンジを加えて全く異なる年齢層をターゲットにしたり、さまざまな形態で実行可能です。
市場開発戦略(既存製品×新規市場)を採用するメリットは、新たな販路を拡大できる点にあります。ターゲット層を拡大するからこそ新規顧客が増え、顧客数を大きく伸ばせるのがポイントです。期待以上の製品クオリティがあれば「ファン」を増やすことができ、継続的な収益獲得に繋げられるでしょう。
反対に、文化、政治、習慣の違いによるカントリーリスクに配慮して市場選定を行わない場合、高クオリティな製品でも顧客に受け入れられないことがあるため、注意が必要です。日本で大ヒットしている地震対策グッズであっても、地震がほとんどない国ではあまり売れないように、国ごと、地域ごとのニーズ差を考えることで、市場開発は成功するでしょう。
製品開発戦略(新製品×既存市場)

製品開発戦略(新製品×既存市場)は、既にある市場に、新しい製品をリリースする手法です。既にある市場だからこそマーケティング分析やニーズの把握が進みやすく、消費者の期待に応える形でピンポイントな製品開発ができます。たとえば、既存技術を活かした新商品の開発や、既存商品に新機能を追加したリニューアル商品の開発などが挙げられます。
製品開発戦略(新製品×既存市場)のメリットは、既存商品のシリーズ化がしやすい点にあります。旧作と新作とで差別化しながら少しずつ顧客単価を上げたり、継続的な購買が期待できる製品であればファンの育成に繋がったりすることもあるでしょう。拡大している市場で販売が伸びやすい手法であるため、成長産業での導入にも向いています。
一方、新製品の開発に大きなコストがかかるため、失敗したときのコスト回収が難しく、企業が受けるダメージが大きいのがデメリットです。市場が縮小している場合はニーズが伸びにくく、クオリティの高い新商品を開発しても顧客数全体の減少が影響して、思うように販売数が伸びない可能性も出てきます。
多角化戦略(新製品×新規市場)

多角化戦略(新製品×新規市場)は、新しい市場に、新しい製品をリリースする手法です。これまでにない新しいニーズを開拓する手法であり、潜在的なニーズにぴったりハマれば爆発的な売上をもたらします。その他、業界のパイオニアとして注目される機会も増え、成功すれば会社に大きな名声が集まるのも特徴です。
多角化戦略(新製品×新規市場)のメリットは、新規事業によるリスクヘッジができる点にあります。これまでメインであった事業だけに依存することがなくなり、ひとつの事業部門の売上が落ち込んでも別の事業で収益を確保するなど、リスク分散が叶います。また、生産ラインや流通網を共有すれば異なる事業間で相乗効果が生まれる可能性も高く、コストパフォーマンス良く収益を上げられるようになるのです。
ただし、新製品の開発にも新規上場の開拓にもコストと手間がかかります。即時に効果が出ることは珍しく、長期的な取り組みとなることを覚悟しなくてはいけないのもポイントです。単一事業と比べて、大量発注ができないなど経営の非効率につながるリスクがあることも念頭においておきましょう。
4.多角化戦略の4つの方向性
アンゾフの成長マトリクスは、特にポストコロナ時代の成長戦略立案に必要な考え方とされました。
コロナ発生前と後とでは、市場動向や消費者ニーズが大きく変化したと感じている事業者は多いでしょう。サブスク型サービスが増えていること、オンライン接客やオンライン営業など対面を絶対としないコミュニケーションスタイルが定着したこと、セルフレジやセルフサービスなど非接触型のソリューションが台頭していることなど、実生活の範囲でも大きな違いが生じています。
コロナをきっかけに変化した市場活動が定着したことにより、企業の生存戦略も大きく変化しました。今後多角的な戦略を講じ、自社の競争力を上げていくためにも、以下4つの多角化戦略を活用することが必要です。
それでは4つのパターンを詳しく解説します。
【類似市場へ参入】水平多角化

水平的多角化とは、既に企業が保有している技術を活用し、これまでに主戦場としてきた市場と類似した市場へ新製品を投入する手法です。
たとえば、自動車販売メーカーがレンタカー業界に進出した場合、既存の自動車をそのままレンタカーへ応用できます。また、自動車販売メーカーがバイクを生産しているケースもあります。
上記のように関連のある市場を結びつけることで、製造ラインや流通網を共有化でき、大幅なコスト削減につなげることもできます。
【既存商品で既存市場へ参入】垂直的多角化

垂直的多角化とは、既存製品と関連性の高い製品を開発し、既存製品を展開している市場へ製品を投入する戦略です。たとえば、ワークスーツやアウトドア製品の制作、販売を行っている企業が、ファミリーや女性層をターゲットに商品を販売するケースが該当します。
既存の市場を利用するため、事業同士の相乗効果を生むメリットはありますが、既存技術やノウハウが通用しないため、コストやリスクが高くなる傾向があります。
【技術を生かして新市場へ参入】集中的多角化

これまでに培ってきた技術やノウハウから、関連性のある製品を開発し、新しい市場へ進出する戦略が集中的多角化です。
たとえば、カメラ製造メーカーが既存技術を活かし、他分野の医療用レンズの製造を手がけているケースが該当します。両者の市場には関連性が低いのがお分かりいただけるのではないでしょうか。
ただ、新規市場で優位性を得るには、一定以上の品質が求められるため、想定していないコストが発生する可能性も考慮する必要があります。
【まったく異なる分野へ参戦】集積的多角化

集積的多角化とは、コングロマリット型とも呼ばれ、既存製品、既存市場と全く異なる分野へ参入する戦略です。わかりやすい例としては、コンビニエンスストアが店内にATMを設置して、銀行業務を行うことなどが該当します。
既存の技術やノウハウが通用せず、多額の初期投資が必要になりますが、成功すれば事業拡大の可能性があるため、ハイリスクハイリターンの戦略と言えるでしょう。
5.アンゾフの成長マトリクスを活用するべき3つの場面
ビジネスの成長戦略を考えるとき、どの方向に進むべきか迷うことは少なくありません。アンゾフの成長マトリクスは、既存市場・新規市場・既存製品・新規製品の4つの視点から戦略を整理できるフレームワークです。以下では、特にどんな場面でこのマトリクスを活用すると効果的か、3つの典型的なケースをご紹介します。
①既存事業が停滞気味のとき
既存事業が思うように成長しないとき、多くの企業は「今のやり方で何とかしよう」「新規事業をスタートさせなければ」と焦りがちですが、単純な改善だけでは限界があります。そんなときに役立つのが、アンゾフの成長マトリクスです。
アンゾフの成長マトリクスは、既存市場での製品改良や販売チャネルの拡大など方向性を整理するのに最適で、現状の資産を活かしながら成長の糸口を見つけられます。例えば、既存製品の新しいバリエーションを開発したり、既存顧客に向けたプロモーション施策を見直したりすることで、市場シェアの拡大や売上回復を図ることが可能です。
また、マトリクスを使って戦略を俯瞰することで、単発の施策に偏らず、リスクを抑えながら段階的に成長を目指せます。
停滞感を感じたときこそ、整理された視点で次の一手を考えることが重要であり、アンゾフのマトリクスはその強力な道具となるのです。
②ビジネスモデルを刷新したいとき
既存のビジネスモデルが成熟し、成長の余地が限られている場合、新しい戦略や方向性を模索する必要があります。マトリクスを活用することで、単なる改善ではなく、事業の構造そのものを見直し、競争力を高める道筋を描きやすくなるのがポイントです。
例えば、既存市場で新しいサービスを提供する「製品開発戦略」や、新しい市場に既存製品を投入する「市場開拓戦略」など、さまざまな選択肢を視覚的に比較できます。
ビジネスモデルを刷新する際には、感覚や経験だけに頼らず、整理された視点から戦略を検討していきましょう。
③新規事業のプランを考えるとき
新しい事業に挑戦するときは、アイデアがあふれる一方で、どの方向に注力すべきか迷いやすくなります。アンゾフの成長マトリクスは、既存市場・新規市場・既存製品・新規製品の4つの視点から事業の可能性を整理できるため、新規事業のプランニングに非常に役立つでしょう。
例えば、既存顧客に対して新しいサービスを提供する「製品開発戦略」や、新市場に新製品を投入する「多角化戦略」など、どの方向がリスクとリターンのバランスに適しているかを客観的に比較できます。
マトリクスを活用することで戦略的に優先順位をつけたプランを描くことができ、資源の投入や実行計画も効率よく進められるでしょう。
6.企業がアンゾフの成長マトリクスを活用する5つのメリット
次に、企業が多角化戦略を活用する理由を解説します。単一事業には単一事業ならではのメリットがあるなか、なぜ多くの企業が多角化を目指しているのか、理由を探っていきましょう。
①自社にあった成長戦略を洗い出すことができる
アンゾフ成長マトリクスを活用し、自社が保有しているノウハウや強み、弱みを再確認することで、成長戦略の方向性を洗い出すことができます。海外情勢や市場の環境変化に対応した商品やサービスを展開していくためにも、まずは己を知ることが重要です。
それと同時に、競合他社の動向や市場ニーズなどの外部環境を把握することが欠かせません。自社のみならず、企業を取り巻く外部環境へのリサーチも十分に行いましょう。
②経営資源を有効的に利用することができる
アンゾフの成長マトリクスを活用すると、企業が保有する経営資源をより効率的に使えるようになります。普段あまり活用されていない設備や人材、ノウハウを新しい戦略に組み込むことで、無駄のないリソース活用が実現するのがポイントです。また、既存の資源を異なる事業や市場に応用することで、相乗効果を生み出せます。
例えば、既存製品の製造ラインや営業ネットワークを新規製品や新市場に展開すれば、追加投資を抑えつつ新たな収益機会を創出できるでしょう。マトリクスを戦略の指針として活用することで経営資源を最大限に生かし、効率的かつ持続的な成長を目指すことができます。
③範囲の経済が見込める
アンゾフの成長戦略においては、既存の販売チャネルや顧客基盤、技術・ノウハウなどを活用しながら新たな製品の開発や、市場への展開をすることで相乗効果が働きます。単なるコスト削減にとどまらず、ブランド価値の向上や顧客ロイヤルティの強化、クロスセル機会の拡大といったシナジー効果を生み出す点が大きなメリットです。
たとえば、既存顧客に対して関連商品を提供すれば、顧客単価の向上やLTV(顧客生涯価値)の最大化が期待できます。また、複数事業を展開することで市場環境の変化に対するリスク分散にもつながるでしょう。
しかし、事業間の関連性が弱い場合はシナジーが生まれにくく、組織の複雑化や経営資源の分散を招く恐れもあります。アンゾフ戦略を実行する際は、自社の強みと戦略の整合性を十分に見極めることが重要です。
マトリクスを戦略の指針として使うと、リスクを分散しながらも経営の効率を高め、持続的な成長につなげやすくなるので活用してみましょう。
④新たな事業分野へ挑戦できる
アンゾフの成長マトリクスを活用すると、既存製品を異なる市場に展開したり、既存市場向けに新しい製品を開発したりなど、新たな市場や製品領域への挑戦が可能になります。こうした挑戦は企業にとって新たな収益源を創出するだけでなく、市場環境や顧客ニーズの変化に柔軟に対応する力を養うことにもつながるでしょう。
アンゾフのマトリクスを戦略立案のツールとして活用し、リスクを整理しつつ段階的に新分野へ展開していきましょう。
⑤リスク分散ができる
アンゾフの成長マトリクスを活用すると、事業や製品、マーケットの組み合わせを戦略的に検討できるため、1つの事業や市場での不振が全体に与える影響を抑えられるのがポイントです。また、複数の戦略オプションを並行して計画することで、成長機会を逃さずにリスク管理も同時に行えます。
つまり、アンゾフのマトリクスは単なる成長戦略の整理だけでなく、企業の安定性を高めるためのリスク分散ツールとしても有効なのです。
7.アンゾフの成長マトリクスを活用した成長企業事例4選
アンゾフ成長マトリクスを活用し、成功した事業事例を4つご紹介します。
日本を代表する大手企業が、アンゾフ成長マトリクスを上手に利用している事例です。
イオン株式会社
イオン株式会社は2つの戦略を併用しています。イオンモールなどのモール型ショッピングセンターを世界11カ国に展開する市場開拓戦略と、新規出店やM&Aによる企業買収で国内シェア拡大を狙う市場浸透戦略です。
その結果、イオングループ全体では、2023年2月に売上総収入が約9兆円に達しました。
また、プライベートブランド「トップバリュ」では、低価格ブランドから付加価値型へのブランド転換を図っており、新製品開発戦略にも抜かりはありません。たとえば、サッポロビール製造のもと、プレミアム生ビールを展開したり、卵をまるごと使ったマヨネーズを作ったりと様々な食品でプライベートブランド商品の製造を行っています。年々値上げが続く中、良心的な価格設定により、トップバリュシリーズの売上高は小売り業において日本1位の座を誇り、業界の雄としての地位を確立しています。
富士フィルム
富士フィルムはアンゾフ成長マトリクスを活用し、最も成功した事例と言えます。1990年代後半からのデジタルカメラの急速な普及に伴い、カメラ用フィルムの売り上げが激減したことから、事業の多角化を行い次のような事業成長を遂げることに成功しています。
- 画像処理技術をCTなどの医療機器事業に転用
- フィルムの薄膜技術や製造技術を医薬品や化粧品に転用
これまで培ってきた技術を応用することで、新たな技術を生み出し、新しい市場での地位を確立しました。一方で、富士フィルムと同じ業態で世界シェアを奪い合っていたアメリカのコダック社は、企業買収により事業の多角化を図りましたが、フィルム事業の衰退により2012年に経営破綻しています。
富士フィルムは、大胆な事業の多角化(医療や化粧品分野への事業転換)を行ったことで、危機的状況を乗り切ったのです。
株式会社吉野家
株式会社吉野家は、国内牛丼チェーン店で店舗数第2位を誇る老舗企業です。海外ではアジアに新規出店する市場開拓戦略、国内では業態の異なる「はなまるうどん」や「京樽」などの水平的多角化戦略を使い分けています。
なお、コロナ渦では営業利益が赤字へ転落しましたが、2024年2月第1四半期決算によると、前年度の同期に比べて6.9%の売上利益上昇が見られています。海外への出店や都心を中心とした出店により、業績は黒字転換いたしました。
日清食品
日清食品は、即席めん市場において国内のリーディングカンパニーです。しかし国内市場は人口減少による影響で縮小傾向にあるため、販路を海外に求め、市場開拓戦略に力を入れています。
2020年度営業利益における海外事業の比率は約30%までに達しました。さらに2030年度までに比率を約45%まで引き上げ、国内即席めんを追い抜き、海外事業が成長ドライバーとして牽引することを目指しています。
8.アンゾフの成長マトリクスを実行する際の4つのポイント
アンゾフ成長マトリクスを実行する際の4つのポイントは、以下の通りです。
上記のポイントを意識することで、より効果的な戦略を構築できるでしょう。
①施策を洗い出す
1つ目のポイントは、ブレインストーミングなどを使い、施策やアイディアをできるだけ洗い出すことです。
その際に重要なのは、コストやリソース面など企業の事情を考慮せず、自由に意見を出すことです。企業の事情を考慮して施策を考えた場合、色々な条件に板挟みにされてしまい、良いアイデアが浮かばないということもあります。そのため、まずは条件や事情を考慮せずに施策を洗い出し、情報を精査することが必要なのです。
②費用対効果を重視する
新規事業や製品開発に取り組む際は、多くの場合で多額のコストがかかります。アンゾフの成長マトリクスを活用する際も、戦略の選択肢ごとに必要な投資額と見込まれるリターンを慎重に比較していきましょう。必要なコストは将来の成長のための投資として積極的に投入すべきですが、期待される成果が不明確だったりリターンが見込めなかったりする場合には、無理な投資は避けるべきです。
マトリクスを使って戦略を整理すると、どの方向にどれだけのリソースを投入すれば効率よく成果を上げられるかを可視化でき、経営判断の精度を高められます。
③複数部署で連携して取り組む
アンゾフの成長マトリクスを実行する際は、単一の部署だけで戦略を進めるよりも、複数の部署が連携して取り組むことが成功の鍵です。
例えば、マーケティング部と営業部が情報を共有して市場ニーズを分析したり、開発部と生産部が製品改良や新製品の開発計画を協働で進めたりすることで、各部署の専門知識やノウハウを最大限に活用できます。
また、定期的な進捗会議や共有プラットフォームの活用を通じて、戦略の方向性や成果指標を全員で確認することも重要です。部署間の連携を強化できれば意思決定のスピードが上がり、リソースの重複や無駄を減らせるなど、マトリクスに基づいた戦略の実行力を高められます。
④市場の変化を見逃さない
VUCA時代においては市場や顧客のニーズが急速に変化するため、企業は変化を見逃さず柔軟に対応することが求められます。
アンゾフの成長マトリクスを活用して戦略を立てても、一度計画を作っただけでは不十分です。市場環境や競合状況を常にモニタリングし、PDCAサイクルを高速で回しながら戦略を適宜見直すなど、変化に適応していく仕組みを作りましょう。
具体的には、販売データや顧客のフィードバックを定期的に分析し、新しいニーズやトレンドに基づいて製品改良や市場アプローチを調整するなどの施策が求められます。柔軟な対応を組み込むことで戦略の有効性を高め、成長機会を逃さずに持続的な成果を実現していきましょう。
9.アンゾフの成長マトリクスと同時に活用できるフレームワーク
アンゾフ成長マトリクスは、全てのビジネスモデルを網羅できるわけではないため、同時に活用できるフレームワークを組み合わせることが重要です。
それぞれの分析方法を詳しく紹介します。
ファイブフォース分析

ファイブフォース分析とは、市場の競争構造を5つの要素に分解して分析するフレームワークのことです。新たな市場への参入判断や、競合企業への対応策など、業界の収益構造を明確化できます。
業界の収益構造を分析する際の要素として、次の5つが挙げられます。
- 新規参入の脅威
- 仕入れ元の影響力
- 顧客の影響力
- 競合他社との競争
- 代替品の脅威
これらの要素を分析することで、利益を増減させている原因を掘り下げることができるため、自社が取るべき対策やポジションを把握することができるでしょう。
SWOT分析

SWOT分析とは、企業の内部環境と外部環境からプラス面とマイナス面を洗い出し、企業の現状を把握することができるフレームワークです。
SWOT分析を4つの要素に分解すると、次の通りになります。
| プラス面 | マイナス面 | |
|---|---|---|
| 内部環境(社内) | 強み(Strength) | 弱み(Weakness) |
| 外部環境(競合他社市場) | 機会(Opportunity) | 脅威(Threat) |
各要素の内容は以下の通りです。
- 強み(Strength)とは、競合他社には負けない要素
- 弱み(Weakness)とは、競合他社に劣っている要素
- 機会(Opportunity)とは、市場での優位性を担保できる要素
- 脅威(Threat)とは、競合他社が強く、自力では対応できない要素
これら4つの要素を分析することで、情報整理に役立ちます。また、各要素を掛け合わせるクロスSWOT分析を行うことで、具体的な戦略や事業計画策定に応用できるでしょう。
バリューチェーン分析
原材料の確保から顧客への商品提供まで、一連の企業活動を連鎖として捉えたものがバリューチェーン分析です。各工程ごとに細分化して分析することで、業務の効率化や事業戦略策定に役立ちます。
バリューチェーン分析は、5つの主活動と4つの支援活動から構成され、主活動が直接的な価値創出を目的とし、支援活動は主活動の補助的活動を目的とします。

購買流動からサービスまでの主活動は支援活動に紐づいており、全ての活動が関連しているのが見て取れます。
また、バリューチェーン分析のメリットは、次の3つです。
- 自社の長所や短所を把握できる
- 競合他社の戦略予測が可能
- 非効率な工程見直しによるコスト削減
自社及び競合他社を分析でき、コスト削減にもつながるため、さらなる収益化を目指せます。
実際にバリューチェーン分析を導入している事例として、ニトリホールディングスが挙げられます。世界各国に生産拠点を構え、製造から販売までをニトリが一括管理することで、低価格の商品を提供し、10%以上もの高い利益率を継続しています。
10.企業の成長戦略を考えるなら「フリーコンサルタント.jp」へご相談ください
企業の成長戦略を具体的に描くには、社内での検討だけでは限界があるでしょう。「フリーコンサルタント.jp」では、アンゾフの成長マトリクスをはじめとする各種戦略フレームワークを活用し、御社の現状に最適な成長プランを整理・提案します。市場分析や競合調査、事業ポートフォリオの見直しなど多角的な視点でサポートすることで、リスクを抑えつつ実行可能な戦略を描くことが可能です。
また「フリーコンサルタント.jp」は、初めての戦略立案や新規事業の検討、既存事業の拡大など、さまざまなフェーズに対応しているのが特徴です。経験豊富なコンサルタントと一緒に成長を加速させたいときは、お気軽にお問い合わせください。
11.フリーコンサルタント.jpによる新規事業の支援事例3選
フリーコンサルタント.jpでは、これまで多くの企業の新規事業立ち上げを支援してきました。
以下では、実際にどのような課題に対してどのようなアプローチを行い、どのような成果を実現したのかを具体的に紹介します。新規事業のアイデア検証から市場調査、事業計画の策定、社内調整まで幅広くサポートした事例を通して、戦略立案や実行支援の具体的なイメージをつかんでいきましょう。
事例①大手総合建設会社
大手総合建設会社のエネルギー事業本部では、カーボンクレジットに関連する新規事業の推進を目指しプロジェクトが発足しました。しかし、事業の大枠方針は決まっていたものの具体的な調査や施策は未着手で、タスクが多く何から手をつけるべきか不明瞭な状態でした。また、プロジェクトを牽引するための体制やKGI・KPIの設定も十分ではないことから、フリーコンサルタント.jpのプロ人材を活用しています。
プロ人材がプロパー担当者と並走しながら課題の整理・解決に取り組んだ結果、実際の事業アイデアを形にする体制が整い、サービスローンチまで挑戦できる環境が構築されていました。事業構想の整理と具体的なアイデアの形作りも支援し、部署横断での新たな取り組みやアイデアが創出され、社内の協力体制が強化されたことも特徴です。
事例②大手コンサルティングファーム会社
大手コンサルティングファーム会社では、自社の教育サービスを海外展開する構想が持ち上がりました。プロジェクトの陣頭指揮を担うコンサルタントは決定したものの、東南アジア市場に精通しプロジェクトをリードできる人材の社内アサインが難しく、外部人材の活用が必要でした。また、調査会社からのレポートを活かした事業仮説の設計や、若手コンサルタントへのスキルトランスファーも課題となっていました。
そこでフリーコンサルタント.jpのプロ人材は、調査会社とのディレクションを含むプロジェクト全体の管理を担当し、収集したデータや現地視察の結果をもとに高精度な事業仮説を設計しています。その後、仮説に基づきサービスの具体的な設計や展開方針を策定し、プロジェクトをスムーズに推進しました。
また、若手コンサルタントへのスキルトランスファーも行い、調査会社とのやり取りや海外プロジェクトの運営ノウハウを共有することで、次回以降の海外展開にも対応できる体制を整えています。
事例③大手ネット証券銀行会社
大手ネット証券銀行会社では、自社のプラットフォームを活用した新サービスを開発するプロジェクトが立ち上がりました。CTOや社内エンジニア、広報部門など複数の部署が参画することが決まっていましたが、社内プロパーは全て兼務対応のため、専任のプロジェクトマネージャーが不在の状況でした。
フリーコンサルタント.jpのプロ人材は、プロジェクト全体の調整役として介入し、関係部署間のコミュニケーションを円滑に進めるとともに、若手幹部候補社員へのプロジェクトマネジメント教育も実施しています。結果、多くの関係部署が参画する中でもプロジェクトは順調に進行し、プラットフォームを十分に活用した新サービスのローンチに成功しました。また、プロジェクトマネジメントの経験がなかった若手社員がスキルを身につけ、一人称でプロジェクトを運営できるまでに成長させています。
12.まとめ
「アンゾフ成長マトリクス」とは、企業が成長するための戦略を市場分析できるフレームワークです。自社に必要な成長戦略を洗い出し、戦略の方向性を明確化することが企業経営には欠かせません。
なお、アンゾフ成長マトリクスを2×2の4象限に区分すると、次の4つの戦略に分けられます。
- 既存製品×既存市場→市場浸透戦略
- 新規製品×既存市場→新製品開発戦略
- 既存製品×新規市場→新市場開拓戦略
- 新規製品×新規市場→多角化戦略
企業が事業を続けていくために選ぶべき道は、既存製品の売り上げを伸ばすか、新規製品を生み出すか、新規市場を開拓するかのいずれかです。どの成長戦略が自社のニーズにマッチしているか分析するためにも、アンゾフ成長マトリクスは取り入れてみましょう。
万が一、アンゾフ成長マトリクスを有効的に行えるかわからない、具体的にどのように進めていけば良いか不安であると感じる場合は、外部のプロフェッショナルを頼るのも1つの手段です。
なお、みらいワークスは、19,000名以上のプロフェッショナル人材データベースを運営している企業です。外部のプロフェッショナル人材をお探しの方はお気軽にご相談ください。




