【基本から刷新方法まで】コーポレートアイデンティティ(CI)とは?よくある失敗例と策定に向けた5ステップ - freeconsultant.jp for Business
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最終更新日:2026.06.28
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【基本から刷新方法まで】コーポレートアイデンティティ(CI)とは?よくある失敗例と策定に向けた5ステップ

コーポレートアイデンティティ(CI)について、「ロゴやスローガンを変えること」と理解している方も少なくありません。

しかし実際には、CIは企業の存在意義や価値観、社員の行動、顧客や社会から見た印象までを一貫させるための経営活動です。見た目だけを整えても、社内の行動や事業の方向性と結びついていなければ、企業ブランドとして定着しにくくなります。

自社の理念やブランドイメージを見直したいものの、何から始めればよいかわからない企業担当者の方は、まずCIの全体像を押さえることから始めてみてください。

コーポレートアイデンティティ(CI)とは?

コーポレートアイデンティティ(CI)とは単なるロゴ変更やデザイン刷新ではありません。企業が何を大切にし、どのような価値を社会に提供し、社員がどのように行動するのかを整理する経営戦略の一部です。

コーポレートアイデンティティの定義と目的

コーポレートアイデンティティとは、企業の「らしさ」を明確にし、社内外に一貫して伝えるための仕組みです。

具体的には、企業理念、ミッション、ビジョン、バリュー、行動指針、ロゴ、コーポレートカラー、スローガンなどを通じて、企業としての考え方や姿勢を統一します。

CIの目的は、企業の見た目を整えることではありません。企業の存在価値を明確にし、社員、顧客、取引先、株主、採用候補者などのステークホルダーに対して、企業としての一貫したメッセージを届けることにあります。

主な目的は次のとおりです。

  • 企業イメージを向上させる
  • 競合他社との差別化を図る
  • 社員の行動基準を統一する
  • 従業員エンゲージメントを高める
  • 採用活動で自社の魅力を伝えやすくする
  • M&Aや事業統合時に組織の方向性をそろえる
  • 中長期的な企業ブランドを形成する

たとえば、同じ商品やサービスを提供していても、「どのような理念で事業を行っているのか」「顧客にどのような価値を届けたいのか」が明確な企業は、顧客や社員から選ばれやすくなります。

そのためCIは、広報やデザイン部門だけで完結する取り組みではありません。経営層、人事、営業、マーケティング、開発、現場部門などを巻き込み、企業全体で整えるべきテーマです。

「ブランディング」との明確な違い

CIとブランディングは近い概念ですが、主語と目的が異なります。

CIは、企業そのものの在り方を整理し、社内外に一貫して伝える考え方です。主語は「企業」です。企業理念や行動指針、ロゴ、社風、顧客対応などを通じて、「この会社は何者なのか」を明確にします。

一方でブランディングは、企業、商品、サービスに対する望ましいイメージを市場や顧客の中に形成していく活動です。主語は「ブランド」であり、商品・サービス単位で行われることもあります。

コーポレートアイデンティティ(CI) ブランディング
主語 企業そのもの 企業、商品、サービス、ブランド
主な目的 企業の存在意義や価値観を明確にし、社内外に一貫して伝える 顧客や市場に望ましいイメージを形成し、選ばれる状態を作る
対象 社員、顧客、取引先、株主、採用候補者など 顧客、見込み顧客、市場、取引先など
含まれる要素 企業理念、行動指針、ロゴ、コーポレートカラー、社内文化など ブランドコンセプト、商品価値、広告、PR、顧客体験など
位置づけ 企業ブランドの土台 CIをもとに市場や顧客との関係を築く活動
具体例 企業理念やパーパスを再定義し、社員の行動やロゴに反映する 商品やサービスの価値を広告やWebサイトで訴求する

たとえば、企業全体として「社会課題の解決を通じて持続可能な社会に貢献する」というCIを掲げている場合、その考え方をもとに、各商品やサービスのブランディングが展開されます。

つまり、CIは企業ブランドの土台であり、ブランディングはその土台をもとに顧客や市場との関係を築く活動と整理できます。

コーポレートアイデンティティを構成する3つの要素(MI・BI・VI)

コーポレートアイデンティティは、主にMI・BI・VIの3要素で構成されます。

ここでは、CIを構成する3つの要素について順番に解説します。

MI(マインド・アイデンティティ)|理念の統一

MI(マインド・アイデンティティ)とは、企業の理念や価値観を言語化したものです。

CIの中でも最も重要な土台にあたります。企業理念、ミッション、ビジョン、バリュー、パーパスなどがMIに含まれます。

具体的には、次のような問いに答えるものです。

  • 自社は何のために存在しているのか
  • 社会にどのような価値を提供するのか
  • どのような未来を目指すのか
  • 事業活動で何を大切にするのか
  • 社員にどのような判断軸を持ってほしいのか

MIが曖昧なままでは、社員の行動や顧客へのメッセージに一貫性が生まれません。

たとえば、企業理念として「顧客第一」を掲げていても、現場では短期的な売上だけを重視している場合、社外からは矛盾した企業に見えます。理念と行動が結びついていなければ、CIは単なる言葉にとどまります。

そのため、CI策定ではまずMIを丁寧に見直すことが重要です。

BI(ビヘイビア・アイデンティティ)|行動の統一

BI(ビヘイビア・アイデンティティ)とは、MIで定めた理念や価値観を社員の行動に落とし込む考え方です。

どれだけ優れた理念を掲げても、日々の業務や顧客対応に反映されなければ、企業イメージは変わりません。BIは、理念を「現場でどう実践するか」に変換する役割を担います。

BIに含まれるものには、次のようなものがあります。

  • 社員の行動指針
  • 顧客対応ガイドライン
  • 営業活動の判断基準
  • 採用や評価の基準
  • 社内コミュニケーションのルール
  • マネジメント方針

たとえば、MIとして「顧客第一」を掲げる企業であれば、BIでは次のような行動に落とし込みます。

  • 顧客の要望を正確に聞き取る
  • 自社に不利な情報も誠実に伝える
  • 短期的な売上よりも長期的な信頼を重視する
  • 問い合わせには迅速に対応する
  • 顧客の課題解決につながらない提案は行わない

このように、BIは理念を社員の具体的な行動へ変えるための橋渡しです。CI刷新で社内浸透が重要とされるのは、BIが定着しなければ企業の印象は変わらないためです。

VI(ビジュアル・アイデンティティ)|視覚の統一

VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは、企業の理念や価値観を視覚的に表現する要素です。

ロゴ、コーポレートカラー、書体、名刺、Webサイト、会社案内、広告、オフィスデザイン、制服、資料テンプレートなどがVIに含まれます。

VIは顧客や取引先の目に触れやすいため、CIの中でも注目されやすい要素です。ただし、VIだけを先行して変更しても、企業の本質的な変化にはつながりにくくなります。そのため、MI・BI・VIを連動させることが重要です。

たとえば、MIで「革新性」を掲げているにもかかわらず、顧客対応や社内意思決定が旧来型のままであれば、VIを先進的なデザインに変えても違和感が生まれます。反対に、MIとBIが明確であれば、VIは企業の価値観をわかりやすく伝える強力な手段になります。

コーポレートアイデンティティの刷新を検討すべきタイミング

CIは一度策定すれば終わりではありません。企業の成長、事業環境の変化、組織再編、海外展開などにより、創業時の理念や企業イメージが現在の実態と合わなくなることがあります。

ここでは、CI刷新を検討すべき代表的なタイミングを紹介します。

「周年事業」の節目

周年事業は、CIを見直す代表的なタイミングです。

創業10周年、30周年、50周年などの節目は、過去の歩みを振り返るだけでなく、次の時代に向けた方向性を社内外へ示す機会になります。

周年のタイミングでCIを刷新することで、次のような効果が期待できます。

  • 創業から受け継いできた価値観を再確認できる
  • 次の10年に向けた経営方針を示せる
  • 社員が自社の存在意義を見直すきっかけになる
  • 顧客や取引先に新しい姿勢を伝えられる
  • 採用活動で企業の将来像を伝えやすくなる

ただし、周年に合わせてロゴや記念サイトだけを作ると、一過性のイベントで終わる場合があります。周年をCI刷新につなげるには、「これまで何を大切にしてきたのか」「今後どのような企業を目指すのか」を言語化することが重要です。

M&A・事業統合やグローバル展開

M&Aや事業統合のタイミングでも、CIの見直しが必要になります。

異なる企業文化を持つ組織が一つになる場合、理念や行動基準が統一されていないと、社員の判断や顧客対応にばらつきが生じやすくなります。特に、グループ会社の統合やブランド再編では、次のような課題が起こりやすくなります。

  • 各社の理念や行動基準が異なる
  • ロゴやブランド名が乱立している
  • 顧客から見てグループ全体の価値が伝わりにくい
  • 社員が新しい組織への帰属意識を持ちにくい
  • 統合後の事業方針が社内に浸透しにくい

このような場合、CIを統一することで、グループ全体の方向性を明確にし、組織間の一体感を高めやすくなります。

事業構造の転換やビジネスモデルの変革

事業内容が大きく変わったタイミングでも、CIの見直しが必要です。

創業当初は製造業だった企業がITサービスへ展開したり、単一事業から複数事業へ拡大したりすると、従来の企業イメージと現在の実態にズレが生じることがあります。

たとえば、次のようなケースです。

  • 既存事業から新規事業へ軸足を移している
  • DX推進により提供価値が変化している
  • 国内市場中心から海外市場へ展開している
  • BtoC中心からBtoB領域へ拡大している
  • 製品販売からソリューション提供へ転換している

このような変化があるにもかかわらず、社名、ロゴ、メッセージ、理念が以前のままだと、顧客や採用候補者に現在の企業価値が伝わりにくくなります。CI刷新は、事業の実態と企業イメージを一致させるための有効な手段です。

グローバル展開の本格化

海外市場への展開を本格化する場合も、CIを見直す重要なタイミングです。

国内では伝わっていた企業理念やブランドイメージも、言語や文化が異なる市場ではそのまま伝わらないことがあります。そのため、グローバルで共通して使える理念、ブランド名、ロゴ、メッセージを整える必要があります。

グローバル展開におけるCI刷新では、次の視点が重要です。

  • 海外の顧客にも伝わる企業メッセージになっているか
  • ブランド名やロゴが各国で使いやすいか
  • 社員の行動基準が国や地域を超えて共有できるか
  • 現地法人ごとの発信にばらつきがないか
  • グローバル全体で一貫した企業イメージを形成できるか

CIを統一することで、海外市場でも企業としての認知を高めやすくなります。

社長交代や代替わりによる「経営体制の変更」

社長交代や代替わりも、CI刷新を検討しやすいタイミングです。

経営トップが変わると、企業が目指す方向性や重視する価値観が変化することがあります。特に、創業者から次世代経営者へ引き継がれる場合、先代の理念を受け継ぎながら、新しい時代に合ったビジョンを示す必要があります。

CIを見直すことで、次のような効果が期待できます。

  • 新経営体制の方針を社内外に伝えられる
  • 先代から受け継ぐ価値観を整理できる
  • 新しいビジョンを社員に共有できる
  • 取引先や顧客に変化の方向性を説明しやすくなる
  • 採用市場に対して新しい企業像を示せる

ただし、トップの交代だけを理由に急いでCIを変えると、社員や顧客が戸惑う場合があります。変えるべきものと残すべきものを整理したうえで、慎重に進めることが重要です。

コーポレートアイデンティティ策定におけるよくある失敗例とリスク対策

CI策定では、理念、行動、デザイン、社内浸透を一貫して設計する必要があります。

ここでは、CI策定でよくある失敗例と、そのリスクを避けるための考え方を整理します。

失敗例①:ロゴだけ変える「表層的なCI(VI先行)」

CI策定でよくある失敗が、ロゴやコーポレートカラーだけを変更して終わってしまうケースです。

ロゴやデザインは目に見えるため、刷新の成果としてわかりやすい要素です。しかし、MIやBIを見直さずにVIだけを変更すると、社内外から「見た目だけ変わった」と受け止められる可能性があります。

たとえば、企業理念や行動指針が以前のままにもかかわらず、先進的なロゴやスローガンを掲げても、実際の顧客対応や社員の行動が変わらなければ、ブランドイメージは定着しません。

この失敗を避けるには、必ずMIから検討を始めることが重要です。

まず企業の存在意義や価値観を明確にし、それを社員の行動指針に落とし込み、最後にロゴやデザインとして表現する流れを守る必要があります。

失敗例②:現場に浸透しない「トップダウンすぎるCI」

経営層だけでCIを決定し、現場に共有するだけで終わるケースも失敗につながりやすくなります。

CIは経営戦略の一部であるため、経営層の関与は欠かせません。しかし、現場の理解や納得がないまま新しい理念や行動指針を伝えても、日々の業務には反映されにくくなります。

特にBtoB企業では、営業、開発、カスタマーサポート、管理部門など、職種ごとに顧客接点や業務内容が異なります。そのため、全社員に同じ言葉を一方的に伝えるだけでは、自分の業務とどう関係するのかが見えにくくなります。

この失敗を防ぐには、策定段階から全社横断のプロジェクトチームを組成することが有効です。

経営層だけでなく、各部門の管理職や若手社員、現場メンバーの声を取り入れることで、社員が自分ごととして受け止めやすいCIになります。また、策定後もワークショップ、社内説明会、マネージャー向け研修などを通じて、継続的に浸透させることが重要です。

失敗例③:広報やデザイン部門への「丸投げ」

CIを広報部門やデザイン部門だけに任せてしまうことも、失敗につながる要因です。

CIは、会社案内やWebサイトを整えるためだけの取り組みではありません。企業の存在意義、経営方針、社員の行動、顧客との関係性までを整理するテーマです。そのため、経営トップが関与しないまま一部門だけで進めると、表現としては整っていても、経営戦略との接続が弱くなる可能性があります。

CI策定では、経営トップがプロジェクトオーナーとなり、自らの言葉で新しいビジョンを語ることが重要です。経営層が本気で取り組んでいる姿勢を示すことで、社員もCIを単なるスローガンではなく、会社全体の方針として受け止めやすくなります。

失敗例④:目先のトレンドを追いすぎた「頻繁な変更」

流行のデザインや言葉を取り入れすぎると、CIが短命に終わる可能性があります。

CIは、企業の中長期的な方向性を示すものです。短期的なトレンドに合わせて頻繁に変更すると、顧客や取引先の中に定着していた企業イメージが損なわれる場合があります。

特にロゴやブランドメッセージは、社外の認知と強く結びつく要素です。短期間で何度も変更すると、企業としての一貫性が弱まり、顧客に混乱を与える可能性があります。

このリスクを避けるには、5年後、10年後を見据えて設計することが重要です。

変えてはならない普遍的な価値と、時代に合わせて変化させるべき表現を分けて考える必要があります。CI刷新では、流行を取り入れることよりも、自社の本質を長期的に伝えられるかを重視することが大切です。

コーポレートアイデンティティ刷新に成功した事例

CI刷新を具体的に理解するには、実際の企業事例を見ることが有効です。

ここでは、企業の存在意義、行動指針、ブランドメッセージ、社内浸透を一体で進めた事例として、富士通、LIXIL、NECを紹介します。

成功事例①:富士通

富士通は、社会課題の解決に向けた企業の存在意義を明確にするため、Fujitsu Wayを定めています。Fujitsu Wayは「パーパス」「大切にする価値観」「行動規範」の3つで構成されており、社員一人ひとりの行動の原理原則として位置づけられています。

また、富士通はパーパスの実現に向けて、サステナブルな世界の実現を目指す事業ブランド「Fujitsu Uvance」を展開しています。Fujitsu Uvanceは、社会課題の解決にフォーカスしたビジネスを推進するためのブランドとして発表されています。

この事例のポイントは、CIを外向きの見せ方だけで終わらせていない点です。

企業としての存在意義を示すパーパス、社員の価値観や行動規範、事業ブランドの方向性がつながっており、経営メッセージと事業活動を一つの流れとして設計しています。富士通の事例は、CIを経営方針、事業戦略、社員の行動指針まで連動させる重要性を示しています。

成功事例②:LIXIL

LIXILは、Purposeとして「MAKE BETTER HOMES A REALITY FOR EVERYONE, EVERYWHERE」を掲げています。日本語では「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」と表現されています。また、Purposeの実現に向けて、社員が日々の業務で実践するLIXIL Behaviorsを定めています。

LIXILの特徴は、Purposeを掲げるだけでなく、社員の行動につなげる取り組みを行っている点です。公式情報では、LIXIL Behaviorsを人事評価の項目にも設定していることや、ワークショップ、ポスターやステッカーの掲示、会議での活用などを通じて、日々の意識付けを行っていることが説明されています。

この事例からわかるのは、CI刷新では「正しい理念を作ること」だけでは不十分だという点です。

理念を社員が理解し、自分の業務と結びつけて行動できる状態を作ることが重要です。特にグローバル企業や大企業では、経営層が掲げたメッセージをそのまま共有するだけでは、現場に浸透しにくい場合があります。

LIXILの事例は、CIを社員の行動に結びつけるBIの重要性を示しています。

成功事例③:NEC

NECは、企業ブランドメッセージを「Orchestrating a brighter world」に変更しています。NECの発表によると、このメッセージは当初、社会ソリューション事業のブランドメッセージとして策定され、その後、企業ブランドメッセージとして幅広く展開されました。

また、NECは企業理念として「安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指します」というPurposeを掲げています。これは、NECグループの存在意義を表現したものと説明されています。

この事例で重要なのは、ブランドメッセージが単なるキャッチコピーではなく、社会価値創造型企業としての方向性と結びついている点です。

企業ブランドメッセージ、Purpose、事業活動がつながることで、社外に対しては企業の方向性を伝えやすくなり、社内に対しては社員が自分の業務と社会価値創造の関係を考えやすくなります。

NECの事例は、CI刷新を「発信の変更」ではなく、企業活動全体を一貫させる取り組みとして進める重要性を示しています。

コーポレートアイデンティティの策定・刷新5ステップ

CIの策定・刷新は、思いつきで進めるものではありません。企業の現状を把握し、理念を見直し、行動指針やデザインに落とし込み、社内外へ浸透させる流れが必要です。

ここでは、CI策定・刷新を進める基本的な5ステップを解説します。

ステップ1:MVVを客観的に見直す(現状分析とMI策定)

最初に行うべきことは、現在のMVVを客観的に見直すことです。MVVとは、ミッション、ビジョン、バリューのことです。企業が果たす使命、目指す未来、大切にする価値観を表します。

CI策定では、まず次のような観点で現状を分析します。

  • 現在の理念は社員に理解されているか
  • 事業の実態と理念にズレはないか
  • 顧客や取引先からどのように見られているか
  • 採用候補者に自社の魅力が伝わっているか
  • 競合他社と比較して自社らしさが明確か
  • 今後の事業方針と現在のCIが合っているか

この段階では、経営層だけでなく、社員、顧客、取引先などの声を集めることが重要です。社内ヒアリング、従業員アンケート、顧客インタビュー、ブランド調査などを通じて、自社の現状を客観的に把握します。

そのうえで、新しいMIを言語化します。MIが曖昧なまま次の工程に進むと、BIやVIにも一貫性が生まれません。CI刷新では、最初の現状分析とMI策定に十分な時間をかけることが重要です。

ステップ2:行動指針やロゴ・スローガンの設計(BI・VI策定)

MIを策定したら、次にBIとVIへ落とし込みます。

BIでは、理念を社員の行動に変換します。たとえば、ミッションに「顧客の課題解決に伴走する」と掲げる場合、営業、開発、カスタマーサポート、管理部門がそれぞれどのような行動を取るべきかを具体化します。

BI策定では、次のような項目を整理します。

  • 社員の行動指針
  • 顧客対応の基準
  • マネジメント方針
  • 評価制度との接続
  • 会議や意思決定のルール
  • 部門ごとの実践例

その後、VIを設計します。ロゴ、コーポレートカラー、スローガン、Webサイト、名刺、営業資料などを、MIやBIと一貫する形で整えます。

この順番が重要です。VIを先に決めると、見た目の印象に引っ張られ、企業の本質と合わないデザインになる可能性があります。MIとBIを明確にしたうえで、視覚表現に落とし込むことが大切です。

ステップ3:インナーブランディングによる社内浸透

CI刷新で特に重要なのが、インナーブランディングです。

インナーブランディングとは、企業理念やブランドの考え方を社員に浸透させるための活動です。CIは社外に発信する前に、まず社員が理解し、共感し、日々の行動に反映できる状態を作る必要があります。

具体的な施策には、次のようなものがあります。

  • 経営トップからのメッセージ発信
  • キックオフイベントの開催
  • 社内説明会の実施
  • 部門別ワークショップ ・マネージャー向け研修
  • 社内報やイントラネットでの継続発信
  • CIブックやブランドガイドラインの作成
  • 評価制度や表彰制度との連動

特に重要なのは、社員に一方的に説明するだけで終わらせないことです。社員が「自分の業務ではどう実践すればよいのか」を考える場を作ることで、CIは行動に結びつきやすくなります。

ステップ4:社外に向けたコーポレート広報

社内浸透の準備が整ったら、社外に向けてCIを発信します。

社外発信では、プレスリリース、Webサイト、会社案内、採用サイト、営業資料、広告、SNS、イベントなどの接点を通じて、新しい企業メッセージを伝えます。主な発信先は次のとおりです。

  • 顧客
  • 取引先
  • 株主、投資家
  • 採用候補者
  • 地域社会
  • メディア
  • パートナー企業

社外発信で重要なのは、「なぜCIを刷新したのか」を説明することです。単にロゴを変更したと伝えるだけでは、企業として何が変わるのかが伝わりません。背景にある事業方針、社会への提供価値、今後の方向性をあわせて発信することで、ステークホルダーの理解を得やすくなります。

ステップ5:定点的な評価と振り返り

CIは策定して終わりではありません。導入後は、社員や顧客にどの程度浸透しているかを定期的に確認し、必要に応じて改善することが重要です。

評価方法には、次のようなものがあります。

  • 社員エンゲージメント調査
  • 理念浸透度調査
  • ブランド認知度調査
  • 顧客満足度調査
  • 採用応募者へのアンケート
  • Webサイトや採用サイトの行動データ分析
  • 営業現場やカスタマーサポートからのフィードバック

たとえば、社員が新しい理念を認知していても、具体的な行動に落とし込めていない場合は、部門別のワークショップやマネージャー向け施策を強化する必要があります。

CI刷新は、中長期で企業ブランドを育てる取り組みです。定点的に振り返りながら、社内浸透と社外発信を継続していくことが大切です。

コーポレートアイデンティティ策定時の「内製」と「外部委託」の比較

CI策定を進める際は、自社のみで進めるのか、外部の専門家に依頼するのかを検討する必要があります。

内製には、社内事情を深く理解したうえで進めやすいメリットがあります。一方で、客観的な視点や専門的な知見が不足しやすい点には注意が必要です。外部委託にも、デザイン会社、ブランドコンサルティング会社、プロ人材など複数の選択肢があります。それぞれ得意領域が異なるため、自社の課題に合わせて選ぶことが重要です。

自社のみで内製 デザイン会社に依頼 プロ人材・コンサルタントを活用
主な強み 社内事情を理解して進めやすい ロゴやビジュアル表現の品質を高めやすい 経営戦略から社内浸透まで全体設計しやすい
戦略性 社内に知見があれば高められるが、客観性が不足しやすい VI中心になりやすく、MI・BIの深掘りは依頼範囲による MI・BI・VIを一貫して設計しやすい
デザイン品質 社内リソースに左右される 高い品質を期待しやすい 外部デザイナーとの連携も含めて設計しやすい
社内浸透 社内主導のため進めやすいが、設計力が必要 浸透施策までは対応範囲外になる場合がある ワークショップや行動指針化まで支援しやすい
コスト 比較的抑えやすい 制作範囲に応じて変動 必要な期間だけ専門性を活用しやすい
向いている企業 既に理念や方向性が明確で、社内に推進人材がいる企業 ロゴやWebサイトなどVI刷新が主目的の企業 経営戦略、理念策定、社内浸透まで一貫して見直したい企業

自社のみで進める場合、コストは抑えやすくなります。ただし、社内の力関係や既存の価値観に影響され、客観的な分析が難しくなる場合があります。また、CI策定の経験が少ない場合、理念の言語化や社内浸透の設計でつまずくこともあります。

デザイン会社に依頼する場合、ロゴやビジュアル表現の品質を高めやすい点がメリットです。一方で、依頼範囲がVI中心になると、MIやBIなど経営戦略面の深掘りが不足する可能性があります。

コンサルタントやプロ人材を活用する場合、経営戦略の視点からMIを整理し、BIやVI、社内浸透、外部発信まで全体を設計しやすくなります。必要な期間だけ専門人材を活用できるため、採用よりも柔軟に進めやすい点もメリットです。

CI策定では、ロゴ制作だけでなく、理念の言語化、行動指針の設計、社内浸透、広報戦略までを一貫して考える必要があります。そのため、社内だけで進めることに不安がある場合は、外部の専門家を活用することも有効です。

コーポレートアイデンティティの策定・導入支援は「フリーコンサルタント.jp」へご相談ください

コーポレートアイデンティティの策定・刷新では、企業の存在意義、事業戦略、社員の行動、ブランドメッセージを一貫して整理する必要があります。

しかし、実際に進めようとすると、次のような課題が生じやすくなります。

  • 自社の強みや存在意義を客観的に言語化できない
  • 経営層と現場で認識にズレがある
  • ロゴやデザイン変更だけで終わってしまいそう
  • 社員への浸透施策をどう設計すべきかわからない
  • CI刷新を推進できる専門人材が社内にいない
  • 広報、人事、営業、経営企画を横断して進める体制がない

CI導入時には、まず現状のMVV、事業方針、顧客から見た企業イメージ、社員の行動基準を整理することが重要です。そのうえで、MI・BI・VIをどの順番で策定し、どのように社内外へ浸透させるかを設計する必要があります。

フリーコンサルタント.jpでは、戦略立案、マーケティング、ブランディング、組織開発、広報、事業推進などに知見を持つプロ人材の活用をご相談いただけます。社内だけで進めることに不安がある場合は、ぜひ一度ご相談ください。

フリーコンサルタント.jpによる支援事例

CIやブランディング、プロモーション施策を推進する際は、戦略立案だけでなく、社内外の関係者を巻き込みながら実行まで進める体制が重要です。

ここでは支援事例として、ヘルスケア事業のプロモーション支援と、人事部門のデータ分析支援の2つを紹介します。

事例①

大手医療メーカー会社では、地域医療と介護を連携させる新しいプロダクトを開発し、地方の病院などの施設と住民や自治体に対するプロモーションを進めようとしていました。しかし、新規プロダクトの拡販に向けて、施設と地域住民の双方に対するプロモーション戦略を立案・実行できる体制が不足していました。

当時の課題 ・地域医療と介護を連携させる新しいプロダクトを、地方の病院などの施設と住民や自治体へ訴求する必要があった
・新規プロダクトの拡販に向けて、施設と地域住民の双方に対するプロモーション戦略を立案する必要があった
・マーケティング戦略の一環として、営業戦略と連動したプロモーション企画が求められていた
・患者プロセスを形式知化し、プロパー社員でも活用できる形に整備する必要があった
実施したこと ・マーケティングやブランディングに知見を持つプロ人材をアサインした
・医療機関、住民の双方に対するプロモーション戦略を立案した
・ToBとToCそれぞれのターゲットに対する戦略を明確化し、定期的なチーム体制を構築した
・プロモーションの考え方や戦略・戦術を社員と伴走しながら実施した
・患者プロセスを形式知化し、社内で継続活用できる形に整理した

その結果、医療機関と住民の双方に対するプロモーション戦略を立案・実行できる体制が整い、新規プロダクトのグロースに大きく貢献しました。また、プロモーションの考え方や戦略・戦術が社内に蓄積され、参画人材の離任後も社員のみで施策を推進できる状態につながっています。

事例②

大手決済サービス会社では、人事部門が従業員のモチベーションやエンゲージメントサーベイを実施していました。しかし、収集したデータを適切に分析・運用できておらず、組織改善や経営判断に活かしきれていない状態でした。

当時の課題 ・人事部門で従業員のモチベーションやエンゲージメントサーベイを実施していた
・収集したデータを適切に分析し、運用できる人材が不足していた
・各種サーベイデータを整備し、多様な手法で分析する必要があった
・分析手法やデータ整備の知見を、社内にスキルトランスファーする必要があった
実施したこと ・新規事業やデータアナリスト領域に知見を持つプロ人材をアサインした
・データ整備基盤の構築を支援した
・各種サーベイデータの分析を実施した
・分析結果をもとに、人事観点で適切な分析ができる状態を整えた
・分析手法やデータ整備の進め方を形式知化し、社内へスキルトランスファーした

その結果、これまでサーベイを実施するだけで終わっていた状態から、データを取りまとめる基盤を構築し、データ分析をスムーズに実行できる環境づくりが進みました。さらに、分析手法を形式知化したことで、誰もが活用できる仕組みづくりにもつながり、人事部門の組織強化に貢献しています。

まとめ

コーポレートアイデンティティ(CI)とは、企業の存在意義や価値観を明確にし、社内外に一貫した企業イメージとして伝えるための考え方です。

CIは、ロゴやデザインを変えるだけの取り組みではありません。企業理念やパーパスを示すMI、社員の行動を統一するBI、ロゴや色などで視覚的に伝えるVIを連動させることで、初めて企業ブランドとして機能します。

自社の理念、行動、ブランドイメージにズレを感じている場合は、まず現在のMVVや社員の行動、顧客から見た印象を整理することから始めてみてください。

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