予知保全とは?AI・IoTを活用した予兆検知で実現する次世代の保全とそのメリット・事例を徹底解説 - freeconsultant.jp for Business
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最終更新日:2025.12.02
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予知保全とは?AI・IoTを活用した予兆検知で実現する次世代の保全とそのメリット・事例を徹底解説


製造業において、設備の突発的な故障は生産ラインの停止やコストの増加につながる経営課題です。上記の課題を解決し、生産性の向上やコスト削減を実現する手法として「予知保全」が注目されています。予知保全を行い、AIやIoTを活用して設備の異常を事前に察知することで、安定稼働を実現できます。

しかし、予知保全に関心はあるものの「導入コストが高そう」「何から始めればいいかわからない」など、導入に後ろ向きな企業も多いのではないでしょうか。

本記事では、予知保全の概要から導入のメリットや注意点、具体的な導入の手順、実際に導入した企業の成功事例や今後の展望までを解説します。


1.予知保全とは?

予知保全とは、設備や機械に取り付けたセンサーのデータを基に、故障や異常の兆候を事前に検知し、最適なタイミングでメンテナンスを行う保全方法です。本当に必要なときだけメンテナンスを実施するため、無駄を減らしながら突発的なトラブルを未然に防げるでしょう。

ここからは、従来の保全方法との違いや、なぜ今、予知保全が注目されているのかを解説します。

予防保全との違い

予防保全と予知保全は、どちらも設備のトラブルを未然に防ぐ目的は同じですが、保全を実施する基準が異なります。予防保全は「時間」を基準に定期的なメンテナンスを行いますが、予知保全は「設備の状態」を基準に必要なタイミングでメンテナンスを実施します。

両者の主な違いは、以下のとおりです。

比較項目 予防保全 予知保全
保全の基準 時間 設備の状態
実施タイミング 事前に決めたスケジュールで実施 設備の状態や故障の兆候を検知したとき実施
コスト面の課題 オーバーメンテナンスによる無駄なコストが発生しやすい 導入時に初期投資が必要になる

予防保全は計画的に実施できますが、時間を基準にメンテナンスを行うため使用可能な部品まで交換してしまい、無駄なコストが発生する場合があります。

一方、予知保全は設備の劣化状態を確認してから対応するため、部品を最大限に活用でき、コスト削減と生産性向上を実現できる保全方法と言えるでしょう。

IoTやAIの発展で予知保全が注目される背景

IoTやAIの進化によって、設備の故障を未然に防ぐ「予知保全」が実現可能になり、保全業務のあり方が大きく変わりました。これまで熟練作業員の経験に頼っていた現場でも、IoT技術によるリアルタイムなデータ収集やAIによる自動異常予測が進み、効率的で精度の高い保全体制が整いつつあります。

その結果、以下のような効果が期待できます。

  • 生産ラインの安定稼働の実現
  • メンテナンス作業の効率化
  • 部品交換や人件費の最適化

IoTやAIの技術を組み合わせれば、さらに高精度な故障予測も可能になるでしょう。

2.予知保全システムの仕組み

予知保全システムは、主に以下3つの仕組みで成り立っており、各要素が連動することで高精度な故障予測と安定稼働が実現できます。

以下からは、それぞれの仕組みがどのように機能しているのかを解説します。

センサーによるデータ収集

センサーによるデータ収集は、予知保全で最初に行う工程です。設備や機械に、温度、振動、圧力、電流、音などを検知するIoTセンサーを取り付け、稼働中の些細な変化や異常値を常時モニタリングします。

センサーから集められたデータは、IoT技術を通じてネットワーク経由でクラウドや社内サーバーに送信され、一元的に管理されます。

この仕組みにより、現場から離れた場所でも設備の状態を常に監視できる環境が整うでしょう。

データ分析と異常検知

データ分析と異常検知は、センサーが収集したデータをAIや機械学習のアルゴリズムによって解析する工程です。AIは、正常に稼働している状態のデータパターンを基準として学習します。

もし、学習した正常パターンから逸脱する変化があれば、異常の兆候として検出しましょう。

AIは、モーターの振動が平常時よりもわずかに大きくなったり、温度がゆっくりと上昇し始めたりするなどの、人間の五感では捉えにくい微細な変化もキャッチします。これまで熟練作業員の経験に頼っていた判断を、データに基づいた分析に置き換えることで、誰でも安定した精度で異常を発見できる体制を整えることが可能です。

最適なタイミングでメンテナンス

最適なタイミングでメンテナンスを実施することが、予知保全では最も重要です。AIが異常の兆候を検知すると、システムがどの部品をいつ交換するべきか自動的に提案し、担当者にアラートで通知します。その結果、不要なメンテナンスの削減と突発的な設備停止を防止できるのです。

なお、メンテナンスは以下の流れで行われます。

  1. システムから担当者へアラートが通知される
  2. 生産計画と調整しメンテナンス計画を立てる
  3. 交換部品の発注や作業員の配置を事前に行う

通知を受けてから計画的に準備を進められるため、故障してから慌てて対応する事後保全とは異なり、生産ラインへの影響を最小限に抑えられるでしょう。

3.予知保全を支える技術

予知保全は、複数の先進的なデジタル技術を連携させることで機能します。具体的には、以下の技術が欠かせません。

以下からは、予知保全システムを支える4つの主要な技術について解説します。

loTセンサー

IoTセンサーは、設備の状態をリアルタイムでデータ化する役割を担います。モーターの微細な振動や温度上昇などを数値化し、客観的に可視化することで、異常の兆候を早期に発見できるでしょう。

代表的なIOTセンサーには、以下のようなものがあります。

センサーの種類 主な収集データ 検知可能な異常
振動センサー 設備の振動、振幅 ベアリングの摩耗、部品の緩み
温度センサー モーターや部品の表面温度 過熱、潤滑油の劣化
圧力センサー 油圧や空圧システムの圧力 圧力の異常、漏れの発生
電流センサー 稼働中の電流値 モーターの過負荷、電気系統の異常
音響センサー 稼働音、異音 部品の摩耗、内部の損傷

センサーによって集められた客観的なデータが、次のAIによる分析工程へと送られます。

AI機械学習

AI機械学習は、IoTセンサーで集めた膨大なデータを解析し、故障の兆候を予測する予知保全システムの要です。まず、正常に稼働している状態のデータパターンをAIに学習させ、正常な状態の基準を定義します。

次に、リアルタイムで送られてくるデータと比較し、基準から外れるわずかな変化から、設備の劣化傾向を自動で検知します。上記の仕組みによって、従来は熟練技術者の経験と勘に頼っていた判断を、データに基づいた客観的で高精度な予測に置き換えることが可能です。

AIは学習を重ねるほど予測精度が向上するため、運用を続けることで、より信頼性の高い予知保全システムへと進化していく点も特徴と言えるでしょう。

クラウド基盤

クラウド基盤は、膨大な設備データを安全かつ効率的に保存、分析するための中核を担う技術です。各工場のIoTセンサーから収集される膨大なデータを安全に保管し、AIが分析するために必要な高い計算能力を提供します。

大規模なサーバーを自社で保有や運用する必要がなく、必要に応じてリソースを柔軟に増減できる点が魅力です。

また、インターネット経由でどこからでもデータにアクセスできるため、複数の拠点の設備情報を一元管理したり、遠隔地からリアルタイムで状態を監視したりする運用も可能になります。

デジタルツイン

デジタルツインは、現実世界の設備や生産ラインを、仮想空間上にリアルタイムで再現する仕組みです。IoTセンサーから収集したデータを仮想空間のモデルに反映させ、現実世界で起きている状況を正確に可視化します。

デジタルツインの主な機能は、以下のとおりです。

  • 収集したデータに基づき、設備の劣化進行を仮想空間でシミュレーションする
  • 特定の部品が故障した場合の生産ラインへの影響を事前に検証する
  • 複数のメンテナンス計画を試し、最も効率のよい手順を事前に見つけ出す

デジタルツインの活用で、現状を把握するだけでなく、将来起こりうる変化のシミュレーションも可能です。

実際の設備に影響を与えることなく、複数の計画を試せるため、より効果的でリスクの少ないメンテナンス計画を立案できます。

4.予知保全を導入する4つのメリット

予知保全の導入は、突発的な故障による生産停止を防ぐだけでなく、コストの最適化や生産効率を向上させます。

予知保全がもたらすメリットは、主に以下の4つです。

  1. ダウンタイムの回避
  2. コスト削減
  3. 生産効率を高める
  4. 安全性、品質向上

それぞれのメリットが、製造現場の課題解決と企業の競争力強化に繋がっているため、詳しく見ていきましょう。

①ダウンタイムの回避

1つ目のメリットは、ダウンタイムの回避です。

従来の事後保全では、修復までの間、生産ラインが止まり大きな損失が出ていました。予知保全を導入することで、センサーが収集したデータから異常の兆候を早期に検知し、故障が発生する前に対処が可能です。

その結果、生産計画の乱れや納期遅延を防ぎ、安定した生産体制を維持できます。

さらに、事前にメンテナンス計画を立てられるため、部品の手配や人員の確保も進めやすくなり、顧客からの評価にもつながるでしょう。

②コスト削減

2つ目のメリットは、コストの削減です。予防保全は、まだ使える部品も定期的に交換するため、無駄なコストが発生していました。一方で予知保全は、必要なときに必要な箇所だけのメンテナンスを行うため、部品代や人件費を抑制できます。

削減できる主なコストは、以下の通りです。

  • まだ使える部品の交換費用をなくす
  • 不要な定期点検にかかる人件費を減らす
  • 突発の故障による緊急の修理費用を抑制する
  • 過剰な交換部品の在庫を圧縮する

突発的な故障による生産停止の損失も回避できるため、保全活動全体の費用対効果が向上します。

必要なものに必要な分だけ投資する合理的な保全活動が、企業の収益改善につながるでしょう。

③生産効率を高める

3つ目のメリットは、生産効率が高まることです。予知保全により設備の突発的な停止がなくなると、生産ライン全体の稼働率が向上し、最適な生産スケジュールや管理が可能になります。特に、短時間の停止が頻発する現場では、効果が顕著に現れるでしょう。

メンテナンスが必要な場合でも、事前に計画を立てて短時間で作業を終えられるため、生産への影響を最小限に抑えられます。

設備の安定稼働は、生産量だけでなく製品の品質安定にもつながり、工場全体の生産性を底上げするでしょう。

④安全性、品質向上

安全性と品質の向上も、予知保全がもたらす大きなメリットです。設備の異常動作を早期に検知することで、重大な事故につながるリスクを未然に回避できます。また、設備の不具合による製品の品質低下や労働災害のリスクも抑制できるでしょう。

設備を健全な状態に維持することで、現場の安全性が高まり、安定した品質の製品を継続的に生産できるようになります。

5.予知保全を導入する際の4つの注意点

予知保全を導入すると多くのメリットを受けられますが、事前に把握しておくべき注意点もあります。特に、コストや人材、成果の可視化などの課題は計画段階で対策を取っていないと、プロジェクトが停滞する原因になります。

予知保全の導入を検討する際は、特に以下の4つの点に注意が必要です。

  1. 初期導入コストが高い
  2. データを活用できる人材・体制の不足
  3. 成果がすぐに見えにくい
  4. 投資対効果をどう測るのか

課題をあらかじめ理解し、現実的な計画を立てることが、導入と運用の定着につながります。

①初期導入コストが高い

予知保全を導入するにあたり、初期導入コストの高さには注意しなければなりません。予知保全システムを構築するには、センサー、IoTデバイス、AI分析ツール、クラウド環境など、複数のシステムや機器が必要です。

特に、既存の設備が古くアナログな場合、データを取得するための改造や追加機器の設置で、想定以上の費用が発生するケースもあります。

導入時に発生する主なコストは、以下のとおりです。

  • センサーやIoT機器の購入や設置費用
  • データを送受信するためのネットワーク構築費用
  • AI解析システムのライセンス料や開発費用
  • 導入支援を外部に依頼する場合のコンサルティング費用

上記のコストは、対象設備の数や種類によって変動するため、導入前に費用対効果を検証しておく必要があるでしょう。

②データを活用できる人材や体制の不足

予知保全を導入する際には、データを活用できる人材や体制が必要な点も注意しておきましょう。予知保全は、センサーでデータを収集するだけでなく、データを新しく分析、運用する必要があるため、人材や体制が不足しているとシステムを十分に活かせません。

予知保全の運用に必要な役割と求められるスキルは、以下のとおりです。

役割 求められるスキル
データ分析担当 ・統計学や機械学習の知識

・データ解析ツールの操作技術

保全担当者 ・従来の設備知識

・システムの分析結果を理解し、判断する能力

システム管理者 ・センサーやネットワークの知識

・クラウド基盤の安定運用を管理する技術

データを活用できるスキルを持つ人材を確保するためには、専門企業と連携するか、自社内でデータ分析担当を育成する必要があります。

また、外部の専門家の支援を受けながら、社内にノウハウを蓄積していく体制づくりが重要になってくるでしょう。

③成果がすぐに見えにくい

予知保全は、成果がすぐに見えにくい点にも注意しておく必要があります。予知保全などのAIを活用したシステムは、精度を高めるために一定期間のデータ蓄積と学習が必要です。そのため、導入直後は十分なデータが揃わず、予測が外れたり、期待したほどの効果が実感できなかったりする場合があります。

また、短期間で成果だけを求めると、効果を過小評価してしまう危険性もあります。

予知保全は、中長期的な視点でじっくりと指標を追いかける取り組みであることを、関係者全員で共有しましょう。

④投資対効果をどう測るのか

投資対効果をどう測るのか、という点も導入前に明確にしておく必要があります。予知保全は長期的な運用で効果を発揮するため、ROI(投資対効果)の測定が難しいです。そのため、導入前に評価指標(KPI)を具体的に設定しておきましょう。

たとえば、設備のダウンタイム削減時間やメンテナンスコストの削減額、緊急修理の発生件数の減少、製品の不良率の低下などが評価指標として考えられます。

設定した指標を定点観測し、導入前後の数値を比較することで、投資の妥当性を定量的に評価できるでしょう。

6.予知保全の導入事例3選

予知保全は多くの産業で導入が進んでおり、実際に成果を上げています。現場でどのように活用されているのかを知ることで、自社への導入効果をイメージできるようになり、今後の取り組みの方向性を検討する手がかりとなるでしょう。

ここからは、3つの分野の導入事例をご紹介します。

  1. 製造業
  2. 自動車産業
  3. インフラ

予知保全の事例を、自社へ導入する際の参考にしてみてはいかがでしょうか。

①製造業

生活用品大手の花王株式会社では、製造現場の保全業務にオンライン異常予兆検知システムを導入しています。従来の異常検知方法では、アラートが鳴った時にはすでにトラブルが発生しており、対応に多くの時間と手間がかかっていました。

以下のシステムを導入したことで時間の余裕が生まれ、担当者の負担軽減にもつながっています。

項目 導入前 導入後
異常検知のタイミング トラブル発生後(アラート時点) トラブル発生前(予兆段階)
担当者の負担 時間と手間がかかり、心理的負担が大きい 時間的な余裕が生まれ、心身の負担が軽減される
技術継承 属人化しがち プロセス確認の余裕ができ、若手への技術伝承が進む

予知保全はトラブル発生を未然に防ぐだけでなく、担当者の負担を軽減できます。また、対応に余裕が生まれることで若手への技術継承が進み、組織全体の成長にも繋がった事例です。

②自動車産業

自動車産業においても、予知保全は生産ラインの安定化に欠かせない技術となっています。

トヨタ自動車株式会社では、生産設備の1つであるプレス機に、コマツ産機株式会社が開発したAI活用の予知保全システムを導入しました。システムの導入により、以下のような成果が出ています。

  • プレス機の異常の兆候を事前に検知
  • 最適なタイミングで保全業務を実施
  • 部品の寿命を最適化
  • メンテナンスに関わる労働力を最小化

その結果、自動車生産における予知保全が、ダウンタイムの削減とコスト効率の向上に直接的な影響を与えました。予知保全により、生産業務のムダを削減できた事例です。

③インフラ

社会インフラの分野でも、予知保全は安全な運用を支えるために活用されています。

東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)では、広大な営業エリアの線路や架線などの設備の点検、保全に予知保全の技術を応用しています。同社は、検測車両「East-i」を導入し、人力では困難な広範囲の点検を効率化しました。

「East-i」による予知保全の主な役割は、以下のとおりです。

  • 時速275kmでの高速データ収集
  • 0.1mm単位での高精度な設備測定
  • 収集データの分析による劣化状態の把握
  • 適切なタイミングでの補修計画の策定

収集された膨大なデータは、設備の劣化状態を正確に把握するために使われている点がポイントす。適切なタイミングでの補修計画を策定できるので、鉄道インフラの安全運行と安定稼働に繋がっています。

7.予知保全導入の方法

予知保全を導入することで、設備の突発的な故障を防ぎ、生産計画の安定化やメンテナンスコストの削減が期待できます。予知保全の効果を最大限に発揮するためには、段階的なアプローチが重要です。

予知保全の導入は、以下のステップで進めていきましょう。

  1. 現状の課題整理と目標設定
  2. センサーやloT環境の整備
  3. データ収集と分析基盤の構築
  4. AI・機械学習モデルの活用
  5. 小規模な試験導入
  6. 効果検証と改善

自社の状況に合った効果的な予知保全システムを構築するためにも、各ステップの詳細をご覧ください。

①現状の課題整理と目標設定

まずは、過去の故障履歴やメンテナンス記録を分析し、設備ごとの故障頻度や故障原因を洗い出しましょう。上記を把握することで、設備ごとの故障頻度や原因、ダウンタイムの長さ、修理コスト、不良品の発生数といった具体的な課題を把握することが可能です。

課題が明確になったら、課題を解決するための目的を設定します。たとえば「設備停止による生産ロスを減らしたい」「品質のばらつきを抑えたい」といった具体的な目標を定めることで、予防保全の導入効果をより正確に評価できるでしょう。

最後に、設定した目的に対して測定可能な目標(KPI)を設定してください。

この目標がプロジェクト全体の方向性を決める指針となり、後の効果検証の基準にもなります。

②センサーやloT環境の整備

次に、必要なデータを収集するため、センサーやIoT環境の整備を進めます。どの設備の、どのような状態を監視すべきかを検討し、最適なセンサーを選定して設置してください。既存設備への後付けが可能なワイヤレスセンサーを選ぶと、大掛かりな工事が不要で導入コストを抑えられます。

センサーやloT環境の整備の流れは、以下のとおりです。

  • 監視対象の設備を選定する
  • 取得したいデータ項目(振動、温度など)を決める
  • データ項目に適したセンサーを選定し設置する
  • データを送信するためのネットワーク環境を構築する

また、センサーをどこに取り付けるか、どのような通信方法(有線LAN、Wi-Fiなど)を選ぶかによって、収集できるデータの質が変わります。

自社に適したセンサーがわからない場合には、専門家の手を借りるのも一つの手です。

③データ収集と分析基盤の構築

センサーやIoT環境の整備と並行して、データ収集と分析基盤の構築も進めましょう。分析基盤は、センサーから送られてくる時系列データを蓄積し、データの質を維持する上で非常に重要です。

分析基盤を構築する際は、ただデータを貯めるだけでなく、意味を理解しやすくするために、可視化する環境の整備も欠かせません。たとえば、グラフやダッシュボードでデータの推移を視覚的に確認できるBIツールなどを導入すると、異常の兆候を直感的に把握しやすくなります。

また、データの保管場所や管理方法、セキュリティ対策などの拡張性の高い分析基盤を設計しておくことで、自社に適した環境を構築することが可能です。

④AI機械学習モデルの活用

データ収集と分析の基盤が整ったら、AI機械学習モデルを活用して故障予測の仕組みを構築します。

AI機械学習の主な活用方法には、以下のようなものがあります。

活用方法 役割
異常検知 ・正常な状態から逸脱したデータパターンを検知する

・異常初期の兆候をとらえる

故障予測 ・過去のデータから、特定部品の残存寿命(RUL)を予測する
要因分析 ・異常検知の際に、どのデータが影響しているかを分析する

・原因究明を支援する

AIモデルの精度は、学習させるデータの質と量によって変動します。そのため、専門知識を持つデータサイエンティストに協力を依頼したり、実績のあるAIツールを導入したりすることで、高精度の予測モデルを構築することが可能です。

⑤小規模な試験導入

AI機械学習モデルを構築したら、まずは小規模な試験導入(PoC:概念実証)から始めましょう。試験導入の目的は、実際の現場環境で構築したシステムが、想定通りに機能するかを検証することです。

試験導入では、過去に故障が頻発した設備や、生産ラインへの影響が大きい設備など、対象を1〜2台に絞って実際に運用します。事前にデータ取得の安定性やAIモデルの精度、現場での運用のしやすさなどを確認しておくことで、実運用に向けた課題を特定、改善していくことが可能です。その結果、本格導入へのリスクを低減し、成功の確率を高められるでしょう。

⑥効果検証と改善

試験導入や本格導入の後は、定期的な効果検証と改善を行います。最初に設定した目標(KPI)がどの程度達成できたかを、データに基づいて定量的に評価しましょう。

効果検証では、以下のような指標を導入前後で比較します。

  • 設備のダウンタイムはどれくらい削減できたか
  • メンテナンスコスト(部品代や人件費)は削減できたか
  • 緊急修理の発生件数は減少したか
  • 製品の不良率は低下したか

検証の結果、予測精度が低い場合はAIモデルにデータを追加して再学習させたり、アラートが多すぎる場合は通知の閾値を見直したりしましょう。

また、現場からのフィードバックを取り入れ、PDCAサイクルを回し続けることで、自社の状況に最適化されたシステムへと成長させられます。

8.予知保全と今後の展望

予知保全は、AIやIoT技術の進化とともにさらに発展し、スマートファクトリーや完全自動化工場の実現を支える中核技術になると考えられています。

なぜなら、AIとIoTがより高精度化することで、以下の仕組みを実現できるからです。

  • 故障の予測だけでなく「最適な運転制御」まで自動化する
  • 全設備の状態をリアルタイムに最適化する「自律型保全」を実現する
  • サプライチェーン全体でのデータ連携による全体最適化を図る

今後は工場内の設備だけではなく、生産プロセス全体や取引先を含めたサプライチェーン全体と連携していくでしょう。

9.まとめ

予知保全とは、IoTセンサーやAIを活用して設備の故障を事前に予測し、最適なタイミングでメンテナンスを行う保全手法です。従来の事後保全や予防保全では対応が難しかった、突発的なダウンタイムによる生産ロス、過剰なメンテナンスコストなどの課題を解決できます。

ただし、予知保全の効果を最大限に発揮するためには、初期コストや専門人材の確保などの課題を解決し、計画的に導入を進める必要があります。

まずは解決したい課題と目標を明確にし、小規模な試験導入から始めてみましょう。

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