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最終更新日:2026.06.02
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0からわかる、エージェンティックAIとは?業界別のユースケースと日本企業の成功事例、導入手順を紹介


エージェンティックAIという言葉を聞く機会は増えているものの、「生成AIと何が違うのか」「自社の業務にどう活用できるのか」がわかりにくいと感じている企業担当者も多いのではないでしょうか。特に、ChatGPTのような生成AIや、定型業務を自動化するRPAとの違いが見えにくいと、導入すべき領域や検討の進め方を判断しづらくなります。

エージェンティックAIは、単に文章を作るAIではなく、目標に向けて計画を立て、必要な情報を集め、外部ツールと連携しながら業務を進める自律型AIです。AI活用を「一部業務の効率化」から「業務プロセス全体の変革」へ広げたい企業担当者の方は、まず全体像を押さえることが重要です。

エージェンティックAIとは

エージェンティックAIとは、事前に設定された目標を達成するために、人間が逐一指示しなくても、自律的に計画・実行・評価を行うAIシステムです。

従来の生成AIは、ユーザーがプロンプトを入力すると、その内容に応じて文章や回答を生成する「指示待ち型」の仕組みが中心でした。一方、エージェンティックAIは、与えられた目標をもとに状況を分析し、必要なタスクを分解し、外部ツールや社内システムを使いながら業務を進める点に特徴があります。

例えば、従来の生成AIに「顧客対応メールを作成して」と依頼すると、AIはメール文案を作成します。しかし、エージェンティックAIでは「問い合わせ対応を完了する」という目標に対して、過去の問い合わせ履歴を確認し、必要な社内情報を検索し、回答案を作成し、必要に応じて担当者へ確認を促すといった一連の流れを担うことができます。

つまり、エージェンティックAIは「回答を返すAI」ではなく、「目標達成に向けて行動するAI」と捉えると理解しやすくなります。

エージェンティックAIの特徴は、主に次の3点です。

  • 目標をもとにタスクを自ら分解する
  • 必要な情報やツールを選択して実行する
  • 実行結果を確認し、必要に応じて計画を修正する

IBMでは、agentic AIを「限定的な監督のもとで特定の目標を達成できるAIシステム」と説明しています。また、Microsoftも自律型AIについて、人間の入力なしに意思決定や行動を行えるAIと説明しています。こうした定義からも、エージェンティックAIの本質は「自律的に判断し、行動すること」にあるといえます。

エージェンティックAIを構成する5つのコア技術

エージェンティックAIは、1つの技術だけで成り立っているわけではありません。

ここでは、エージェンティックAIを理解するうえで重要な5つの技術要素を解説します。

  • 大規模言語モデル(LLM)
  • メモリ機能
  • 計画・実行能力
  • 外部ツール連携機能
  • 自己学習・改善ループ

大規模言語モデル(LLM)

大規模言語モデル(LLM)は、エージェンティックAIの「頭脳」にあたる技術です。LLMとは、大量のテキストデータをもとに学習し、人間の言葉を理解したり、文章を生成したりするAIモデルを指します。

エージェンティックAIでは、LLMがユーザーの指示や業務上の目標を理解し、何を行うべきかを判断する土台になります。

例えば、「今月の営業活動を分析し、受注確度の高い顧客にフォロー施策を提案して」と依頼された場合、LLMは次のような内容を読み取ります。

  • 分析対象は今月の営業活動である
  • 目的は受注確度の高い顧客を見つけることである
  • 最終的に必要なのはフォロー施策の提案である

このように、曖昧な自然文の指示を業務タスクに変換する役割を担うのがLLMです。

ただし、LLM単体では社内システムを操作したり、最新の顧客データを自動で取得したりすることはできません。そのため、エージェンティックAIではLLMを中心に、メモリや外部ツール連携などの仕組みを組み合わせて活用します。

メモリ機能(短期・長期記憶)

メモリ機能とは、会話履歴や過去のタスク実行結果を記憶し、次の判断に活かす仕組みです。

エージェンティックAIが継続的な業務を担うためには、毎回ゼロから判断するのではなく、過去の経緯を踏まえて対応する必要があります。そこで重要になるのが、短期記憶と長期記憶です。

短期記憶は、現在進行中の会話やタスクの文脈を保持するために使われます。例えば、問い合わせ対応中に顧客の要望や直前の回答内容を覚えておくことで、一貫した対応が可能になります。

長期記憶は、過去のタスクログやユーザーの傾向、過去にうまくいった対応などを蓄積するために使われます。これにより、同じ失敗を繰り返しにくくなり、運用を重ねるほど業務に合った対応へ近づけやすくなります。

ただし、企業利用では、どの情報を記憶させるのか、どの情報は保存しないのかを明確にする必要があります。顧客情報や機密情報を扱う場合は、メモリ機能の利便性だけでなく、情報管理のルールもあわせて設計することが重要です。

計画・実行能力

計画・実行能力とは、与えられた目標を達成するために、必要な作業を分解し、優先順位をつけて進める能力です。

エージェンティックAIは、単に1回の回答を返すだけでなく、目標に対して「何を、どの順番で行うべきか」を判断します。例えば、「競合サービスを調査して、自社サービスの改善案をまとめる」という目標がある場合、次のような流れに分解できます。

  • 競合サービスをリストアップする
  • 各社の機能や価格、導入事例を調べる
  • 自社サービスとの違いを整理する
  • 差別化できるポイントを抽出する
  • 改善案としてまとめる

このように、複数の手順が必要な業務を自律的に整理できる点が、エージェンティックAIの大きな特徴です。

さらに、実行途中で必要な情報が不足している場合には追加で情報を取得したり、想定と異なる結果が出た場合には手順を修正したりすることも可能です。こうした柔軟性により、事前に決められたルールだけでは対応しにくい業務にも活用しやすくなります。

外部ツール連携機能

外部ツール連携機能とは、AIが社内システムや外部サービスと接続し、情報取得や処理を行う仕組みです。

LLMだけでは、CRMの顧客情報を確認したり、ERPの在庫データを取得したり、社内ナレッジベースを検索したりすることはできません。エージェンティックAIでは、APIなどを通じて外部ツールと連携することで、実際の業務に必要なアクションを実行できるようになります。

連携対象としては、次のようなシステムが考えられます。

  • CRM
  • SFA
  • ERP
  • 社内ナレッジベース
  • チャットツール
  • メールシステム
  • データベース
  • RPAツール

例えば、営業支援の場面では、エージェンティックAIがCRMから商談履歴を取得し、過去のメール内容を確認し、次に送るべきフォロー文案を作成する流れが考えられます。

このように、外部ツール連携は、エージェンティックAIを「考えるだけのAI」から「業務を進めるAI」へ発展させる重要な要素です。

自己学習・改善ループ

自己学習・改善ループとは、実行結果やユーザーからのフィードバックをもとに、次回以降の行動を改善する仕組みです。エージェンティックAIは、タスクを実行したあとに結果を振り返り、期待どおりの成果が出たかを評価します。このプロセスは「内省(reflection)」と呼ばれることもあります。

例えば、AIが作成した回答案に対して担当者が修正を加えた場合、その修正内容を参考にすることで、次回以降はより適切な回答を生成しやすくなります。改善ループが機能すると、次のような効果が期待できます。

  • 回答や提案の精度が向上する
  • 業務ルールに沿った判断をしやすくなる
  • 過去の失敗を踏まえた対応が可能になる
  • 担当者ごとの確認負荷を下げやすくなる

ただし、AIが自動的に改善する仕組みを過信するのは避けるべきです。企業利用では、AIの実行ログを確認し、誤った学習や不適切な判断が起きていないかを人間が定期的に確認する体制が欠かせません。

エージェンティックAIと生成AI・RPAとの違いと関係性

エージェンティックAIを理解するには、生成AIやRPAとの違いを整理することが重要です。

ここでは、生成AI、RPA、エージェンティックAIの役割を分けて解説します。

生成AIとは

生成AIとは、テキスト、画像、音声、動画などの新しいコンテンツを生成するAIです。企業では、次のような用途で活用されています。

  • メール文案の作成
  • 記事や資料のたたき台作成
  • 議事録の要約
  • FAQ回答の作成
  • 画像やバナー案の生成

生成AIの強みは、人間が入力したプロンプトに応じて、短時間でアウトプットを作成できる点です。そのため、文章作成やアイデア出し、要約などの業務では高い効果が期待できます。

一方で、一般的な生成AIはユーザーからの入力があって初めて動作します。自ら業務全体を把握し、必要な手順を考え、外部システムを操作して処理を完了するわけではありません。

つまり、生成AIは「コンテンツを作るAI」であり、エージェンティックAIは「目標達成に向けて行動するAI」と整理できます。

RPAとは

RPAとは、Robotic Process Automationの略で、事前に決められた手順に沿ってパソコン上の操作を自動化するソフトウェアロボットです。

UiPathでは、RPAを「データ入力やシステム連携のような反復的でルールベースのタスクを自動化するソフトウェアロボット」と説明しています。RPAは、次のような業務に向いています。

  • 定型データの入力
  • 帳票の転記
  • 決まった条件でのファイル出力
  • 複数システム間の単純なデータ連携
  • 定期レポートの作成

RPAの強みは、手順が明確な反復業務を正確かつ高速に処理できる点です。人間が毎回同じ操作を繰り返している業務では、RPAによる効率化が期待できます。

一方で、RPAは基本的に決められたルールに沿って動作します。そのため、例外処理が多い業務や、状況に応じた判断が必要な業務には向かない場合があります。

各テクノロジーの比較表と関係性

エージェンティックAIは、生成AIやRPAを置き換える技術というより、それらを組み合わせて業務全体を高度化する仕組みとして捉えることが重要です。

生成AIは文章や回答を作ることに強みがあります。RPAは決められた作業を正確に実行することに強みがあります。エージェンティックAIは、これらの技術を活用しながら、目標達成に必要な判断や手順設計を担います。

エージェンティックAI 生成AI RPA
動作の起点 人間が目標を与えると、AIが自律的に計画・実行する 人間がプロンプトを入力すると回答を生成する 人間が事前に設定したルールや手順に沿って動作する
主な役割 目標達成に向けた判断・計画・実行支援 文章、画像、要約、回答などの生成 定型作業や反復作業の自動実行
得意な業務 複数システムをまたぐ業務、状況判断が必要な業務 メール作成、資料作成、要約、アイデア出し データ入力、転記、帳票作成、定型処理
適応力・柔軟性 状況に応じて手順を修正しやすい 入力内容に応じて出力を変えられる ルール外の変化には弱い
外部システム連携 APIやツール連携により実行まで担える 単体では外部操作は限定的 画面操作や決められた処理の自動化が中心
人間の関与 目標設定、承認、監視が重要 指示入力と出力確認が中心 指示入力と出力確認が中心

例えば、営業部門で見込み顧客へのフォローを自動化する場合、次のような役割分担が考えられます。

  • 人間が「商談化しそうな顧客にフォローする」という目標を設定する
  • エージェンティックAIが顧客データや行動履歴を確認する
  • 生成AIがメール文案を作成する
  • RPAやAPIがCRMへの記録やメール配信を実行する
  • 人間が重要な判断や最終承認を行う

このように、エージェンティックAIは生成AIやRPAの上位に位置し、業務全体の判断やオーケストレーションを担う存在といえます。

企業がエージェンティックAIを導入する4つのメリット

エージェンティックAIの導入により、企業は単純な作業効率化にとどまらず、複数部門や複数システムをまたぐ業務プロセスの改善を進めやすくなります。

ここでは、企業がエージェンティックAIを導入する主なメリットを4つに分けて解説します。

複数システムをまたぐ複雑な業務の自動化

エージェンティックAIの大きなメリットは、複数システムをまたぐ業務を自動化しやすくなる点です。

企業の業務は、1つのシステムだけで完結しないことが多くあります。例えば、顧客対応では、CRM、問い合わせ管理システム、契約管理システム、社内ナレッジベースなどを横断して確認する必要があります。

従来は、人間が複数の画面を開き、必要な情報を探し、判断し、次の処理を行っていました。エージェンティックAIを活用すれば、AIが必要な情報を自律的に探し、判断材料を整理し、次のアクションまで提案できます。

これにより、次のような効果が期待できます。

  • 情報収集にかかる時間の削減
  • システム間の確認漏れ防止
  • 担当者ごとの対応品質のばらつき低減
  • 部門間の引き継ぎ負荷の軽減

特に、営業、カスタマーサポート、バックオフィス、サプライチェーン管理など、複数のデータソースを参照する業務で効果を発揮しやすいと考えられます。

リアルタイムな意思決定と実行支援

エージェンティックAIは、リアルタイムの状況に応じて判断し、次のアクションを提案・実行できる点も強みです。

従来の自動化では、あらかじめ決めたルールに沿って処理を行うケースが中心でした。しかし、実際の業務では、顧客の状況、在庫の変化、問い合わせ内容、障害の発生状況などが常に変化します。

エージェンティックAIは、こうした変化を踏まえて、次に取るべき対応を動的に組み立てられます

例えば、カスタマーサポートでは、問い合わせ内容を読み取り、顧客情報や過去の対応履歴を確認し、適切な回答候補を提示できます。ITインシデント対応では、エラー内容を分析し、関連ログを確認し、初期対応の手順を提案することも考えられます。

このように、エージェンティックAIは「定型処理の自動化」だけでなく、「状況に応じた判断支援」にも活用できます。

顧客・従業員体験の高度なパーソナライズ

エージェンティックAIは、顧客や従業員ごとの状況に応じた対応を行いやすい点もメリットです。

従来の自動応答では、あらかじめ用意されたFAQやテンプレートに沿って回答するケースが中心でした。一方、エージェンティックAIは、過去の履歴や現在の状況を踏まえて、より個別性の高い提案を行うことができます。

例えば、顧客対応では次のような活用が考えられます。

  • 過去の購入履歴を踏まえた提案
  • 問い合わせ履歴を踏まえた回答
  • 契約状況に応じた案内
  • 顧客の文脈に合わせたトーンの調整

また、社内向けには、従業員の職種や業務内容に応じたナレッジ提供、研修コンテンツの提案、業務手順の案内などにも活用できます。

画一的な自動化ではなく、相手の状況に合わせた対応ができるため、顧客満足度や従業員体験の向上につながる可能性があります。

人間とAIの協働による戦略的業務への注力

エージェンティックAIは、人間の仕事をすべて置き換えるものではありません。むしろ、人間がより重要な判断や創造的な業務に集中するための支援役として活用することが重要です。

日常業務には、情報収集、資料の下調べ、システム入力、定型的な確認作業など、多くの時間を使う作業があります。これらをエージェンティックAIが支援することで、人間は次のような業務に時間を使いやすくなります。

  • 顧客との関係構築
  • 新規施策の企画
  • 複雑な課題の意思決定
  • 部門間の調整
  • 事業戦略の検討

特にBtoB領域では、顧客ごとの課題理解や提案設計など、人間の判断が重要な業務が多くあります。エージェンティックAIを導入することで、担当者が本来注力すべき業務に時間を振り向けやすくなります。

【業界別】エージェンティックAIのユースケース

エージェンティックAIは、特定の業界だけでなく、幅広い業界で活用が進むと考えられます。特に、データ量が多く、判断が複雑で、複数のシステムや部門をまたぐ業務が多い業界では導入効果が期待できます。

ここでは、金融、ヘルスケア・医療、物流・サプライチェーンの3領域を例に、具体的なユースケースを紹介します。

金融業界

金融業界では、膨大な取引データや顧客情報をもとに、異常を早期に検知したり、顧客に合った提案を行ったりする用途でエージェンティックAIを活用できる可能性があります。

例えば、不正検知では、AIが取引履歴や利用パターンを継続的に監視し、通常とは異なる動きを検出します。異常な支出パターンや不自然なログインが見つかった場合、エージェンティックAIがリスクを判定し、担当者への通知や追加確認の提案を行う流れが考えられます。

また、資産運用の領域では、市場データ、顧客のリスク許容度、過去の取引履歴などをもとに、ポートフォリオの見直し案を提示する活用も考えられます。

ただし、金融業界では規制対応や説明責任が重要です。AIが判断を支援する場合でも、最終的な意思決定や顧客への説明は人間が確認する体制を設ける必要があります。

ヘルスケア・医療業界

ヘルスケア・医療業界では、患者ごとの情報を踏まえた支援や、研究開発プロセスの効率化にエージェンティックAIを活用できる可能性があります。

例えば、患者の診療履歴、検査結果、服薬情報などをもとに、医療チームが確認すべき情報を整理したり、フォローアップの候補を提示したりする活用が考えられます。複数の医療職が関わる場面では、情報整理や確認漏れ防止の支援として有効です。

創薬領域では、論文、臨床データ、化合物データなど膨大な情報を分析し、新薬候補の探索や研究仮説の整理を支援する用途が考えられます。

ただし、医療分野では安全性や倫理面への配慮が欠かせません。エージェンティックAIは診断や治療方針を自動で決定するものではなく、医師や専門家の判断を支援する仕組みとして設計することが重要です。

物流・サプライチェーン業界|需要予測やルート変更の自律的最適化

物流・サプライチェーン業界では、需要変動、在庫状況、気象情報、交通状況、調達リスクなど、多くの変数を同時に扱う必要があります。エージェンティックAIは、こうした複雑な情報をもとに、状況に応じた対応を支援できます。

例えば、在庫レベルを継続的に監視し、需要増加や出荷遅延の兆候を検知した場合、AIが代替ルートや追加発注の必要性を提案する流れが考えられます。

また、自然災害や交通障害が発生した場合には、影響を受ける拠点や配送ルートを特定し、代替案を提示することも可能です。

Google Cloudは、AIエージェントが代替サプライヤーの検索、費用対効果のシミュレーション、人間による承認後の発注実行といった流れを担う例を示しています。ビジネス上重要な処理では、人間の承認を挟む設計が重要です。

エージェンティックAIを活用した日本の成功事例

国内でも、エージェンティックAIやAIエージェントを活用した取り組みが広がっています。

ここでは、商品企画、サプライチェーン、コールセンター、研究開発・ナレッジ共有の4つの観点から、日本企業の事例を紹介します。

NEC×コエドブルワリー

NECとコエドブルワリーは、NECのAgentic AIとビール職人が協働し、20代から50代までの各世代の特徴や価値観を分析して、味や香りで表現した4種のクラフトビール「人生醸造craft」を開発しました。

NECの公式情報では、NEC開発のAIコア技術「cotomi」に蓄積された現代日本人の各世代が持つ価値観や特徴を用い、AIエージェントが約140万字のレシピ情報を照らし合わせ、ビール職人との対話を通じて商品を完成させたと説明されています。

この事例のポイントは、AIが単に文章やアイデアを出すだけでなく、世代ごとの価値観分析、レシピ情報との照合、職人との対話を通じて商品開発を支援している点です。

富士通

富士通は、特化型AIエージェントを活用してグローバルサプライチェーンを最適化するソリューションを発表しています。

同社の発表によると、調達、在庫、生産、販売などのタスクに特化した複数のAIエージェントが、在庫不足や過剰在庫などのアラートをもとに対応策を立案します。そのうえで、オーケストレーターエージェントがコスト、リードタイム、リスクを考慮し、最適な対応策を選定する仕組みです。

同社は、年間売上高約100億米ドルクラスの大手企業を想定したデータに基づくシミュレーションで、年間在庫コスト約1,500万米ドルの削減、在庫約2,000万米ドル分の削減、約50%以上の工数削減が見込まれると発表しています。

ソフトバンク

ソフトバンクは、日本マイクロソフトとの共同開発により、生成AIを活用したコールセンター業務の自動化に取り組んでいます。

同社の発表では、Azure OpenAI Serviceを中心としたインテリジェントプラットフォームにより、「LLM自律思考型のシステム」を実装し、コールセンター業務の最適化を目指すとされています。

従来のチャットボットでは、あらかじめ用意されたFAQやシナリオに沿って回答する仕組みが中心でした。一方、LLM自律思考型のシステムでは、顧客の問い合わせ内容をAIが解釈し、必要な情報やデータソースを参照しながら回答を導き出す点が特徴です。

トヨタ自動車

トヨタ自動車では、パワートレーン領域において、熟練エンジニアの知見共有や新車開発のスピード向上を目的に、生成AIエージェントシステム「O-Beya」を活用しています。

Microsoftの事例記事では、トヨタが社内の専門知識を保存・共有するために生成AIエージェントの仕組みを構築していることが紹介されています。O-Beyaは、エンジンやバッテリーなどの専門領域に対応するAIエージェントを通じて、エンジニアの質問対応や知識共有を支援する取り組みです。

この事例は、エージェンティックAIが製造業や研究開発部門における暗黙知の活用、技術継承、開発スピード向上に役立つ可能性を示しています。

エージェンティックAIの導入4ステップ

エージェンティックAIを導入する際は、いきなりツールを選ぶのではなく、業務の整理から始めることが重要です。自律的に動作するAIだからこそ、どの業務を任せるのか、どこで人間が確認するのかを事前に設計する必要があります。

ここでは、企業がエージェンティックAIを導入する際の基本ステップを4つに分けて解説します。

①対象業務の可視化とプロセス再設計

最初に行うべきことは、現在の業務フローを可視化することです。

エージェンティックAIは、業務プロセスが整理されていない状態で導入しても効果を発揮しにくくなります。まずは、どの業務に時間がかかっているのか、どこで確認漏れが起きやすいのか、どの作業が属人化しているのかを洗い出す必要があります。

具体的には、次のような観点で整理します。

  • 業務の開始条件
  • 関係する部署や担当者
  • 利用しているシステム
  • 判断が必要なポイント
  • 手作業が多い工程
  • ミスや手戻りが発生しやすい箇所

そのうえで、AIに任せる業務と人間が担う業務を切り分けます。例えば、情報収集や一次整理はAIに任せ、最終判断や顧客への重要な回答は人間が確認する、といった設計が考えられます。

②最適なプラットフォームの選定とシステム連携

次に、自社の要件に合ったプラットフォームやツールを選定します。

エージェンティックAIでは、LLMの性能だけでなく、既存システムとの連携性やセキュリティ要件が重要です。特に、CRM、ERP、社内ナレッジ、チャットツールなどと接続する場合は、API連携や権限管理のしやすさを確認する必要があります。

選定時には、次の観点を確認します。

  • 既存システムと連携できるか
  • 権限管理を細かく設定できるか
  • 操作ログを取得できるか
  • 機密情報を安全に扱えるか
  • ノーコードまたはローコードで構築できるか
  • 将来的な拡張に対応できるか

③スモールスタートでの試験運用と評価

エージェンティックAIは、最初から全社展開するのではなく、影響範囲の小さい業務で試験運用を行うことが重要です。

例えば、社内問い合わせ対応、営業資料の下調べ、FAQ回答案の作成、定型レポートの作成支援などから始めると、リスクを抑えながら効果を検証しやすくなります。

試験運用では、次のような項目を評価します。

  • 回答や判断の精度
  • 業務時間の削減効果
  • 担当者の確認負荷
  • 予期しない挙動の有無
  • 既存システムとの連携状況
  • セキュリティ上の懸念

重要なのは、単に「AIが使えるか」を確認するのではなく、「実際の業務成果につながるか」を評価することです。PoCの段階から、削減時間、対応件数、確認工数、エラー率などの指標を設定しておくと、本格導入の判断がしやすくなります。

④本格運用と継続的な学習サイクルの構築

試験運用で効果が確認できたら、本格運用に向けて対象業務を広げます。

ただし、エージェンティックAIは導入して終わりではありません。運用開始後も、AIの実行ログや担当者からのフィードバックを継続的に確認し、プロンプト、参照データ、ワークフロー、権限設定を見直す必要があります。

本格運用では、次のような仕組みを整えることが重要です。

  • AIの実行ログを確認する
  • 誤回答や不適切な判断を記録する
  • 人間が承認すべき範囲を定期的に見直す
  • 参照データを最新状態に保つ
  • 現場からのフィードバックを改善に反映する

特に、業務ルールや社内データは時間とともに変化します。AIが古い情報を参照し続けると、誤った判断につながる可能性があります。そのため、継続的な改善サイクルを前提に導入することが重要です。

エージェンティックAI導入時の3つのリスクと対策

エージェンティックAIは大きな業務効果が期待できる一方で、自律的に行動するからこそ注意すべきリスクもあります。

ここでは、企業が導入前に確認すべき3つのリスクと対策を解説します。

データプライバシーとセキュリティ要件の担保

エージェンティックAIは、CRM、社内ナレッジ、契約情報、顧客情報などにアクセスする場合があります。そのため、情報漏えいや不正アクセスのリスクを考慮する必要があります。

特に注意すべきなのは、AIが自律的に外部ツールと連携する点です。権限設定が不十分な場合、本来アクセスすべきではない情報を取得したり、意図しない処理を実行したりする可能性があります。

対策としては、次のような仕組みが必要です。

  • ユーザーやAIエージェントごとのアクセス権限を制御する
  • 機密情報を扱う範囲を明確にする
  • 通信や保存データを暗号化する
  • ログを取得し、後から確認できるようにする
  • 外部クラウドに送信するデータ範囲を管理する

OWASPはLLMアプリケーションのリスクとして、プロンプトインジェクションや不適切な出力処理などを挙げています。AIが業務システムと接続する場合、こうしたリスクは情報漏えいや不正な意思決定につながる可能性があります。

ハルシネーション(誤情報)の拡大と業務影響

ハルシネーションとは、AIが事実と異なる情報をもっともらしく生成してしまう現象です。

通常のチャット型AIであれば、誤回答はその場の回答ミスにとどまることもあります。しかし、エージェンティックAIが誤った情報をもとに次のアクションまで実行すると、業務全体に影響が広がる可能性があります。

例えば、誤った顧客情報をもとにメールを送信したり、誤った在庫情報をもとに発注判断を行ったりすると、顧客対応や業務運用に支障が出る可能性があります。

対策として有効なのが、RAG(検索拡張生成)の活用です。RAGとは、AIが回答を作成する際に、社内文書やデータベースなどの外部情報を検索し、その情報をもとに回答する仕組みです。Google Cloudも、RAGをLLMと外部ナレッジベースを組み合わせて出力を改善する方法として説明しています。

ただし、RAGを使えばすべての誤回答がなくなるわけではありません。参照データの品質管理、回答根拠の表示、ログ確認、重要処理前の人間確認を組み合わせることが重要です。

自律性と人間の監視(ヒューマンインザループ)のバランス

エージェンティックAIを導入する際は、どこまでAIに任せ、どこから人間が確認するのかを明確にする必要があります。

AIの自律性を高めるほど、業務効率化の効果は大きくなります。一方で、重要な判断や外部への影響が大きい処理まで完全にAIへ任せると、責任の所在が曖昧になり、誤判断時のリスクも高まります。

そこで重要になるのが、ヒューマンインザループです。ヒューマンインザループとは、AIの処理の途中や最終段階で人間が確認・承認する仕組みです。

Google Cloudは、ビジネス上重要なエージェントシステムでは、人間の監督者がAIを監視、上書き、停止できるヒューマンインザループの仕組みを組み込むことを説明しています。

具体的には、次のような設計が考えられます。

  • 顧客への送信前に人間が確認する
  • 高額取引や契約変更は人間の承認を必須にする
  • AIが参照した情報や判断理由をログに残す
  • 不審な挙動があれば処理を停止できるようにする
  • AIが実行できる操作範囲を制限する

エージェンティックAIを安全に活用するには、「完全自動化」を急ぐのではなく、リスクの大きさに応じて人間の関与度を調整することが重要です。

エージェンティックAIの導入支援は「フリーコンサルタント.jp」へご相談ください

エージェンティックAIの導入を検討する企業では、「どの業務から始めるべきか」「既存システムとどう連携すべきか」「セキュリティやガバナンスをどう設計すべきか」といった悩みが生じやすくなります。

特に、エージェンティックAIは単なるツール導入ではなく、業務プロセスの見直しやデータ活用基盤の整備とセットで進める必要があります。そのため、技術面だけでなく、業務設計やプロジェクト推進の観点も欠かせません。

導入時には、少なくとも次の論点を整理する必要があります。

  • AIに任せる業務範囲
  • 人間が確認・承認すべきポイント
  • 連携する社内システム
  • 利用するデータの範囲
  • セキュリティ要件
  • PoCで検証する成果指標
  • 本格運用後の改善体制

フリーコンサルタント.jpでは、AI導入、DX推進、業務改革、データ活用、システム連携などに知見を持つプロフェッショナル人材の活用を通じて、企業の課題に応じたプロジェクト推進を支援できます。

自社だけで要件整理や推進体制の構築が難しい場合は、外部の専門人材を活用することで、検討段階からPoC、本格運用までを進めやすくなります。

フリーコンサルタント.jpによるAI関連の事例

ここでは、AI活用や業務改革の文脈で、フリーコンサルタント.jpを通じた支援イメージを紹介します。

事例①

大手車載機器メーカー会社では、AIを活用した車載プロダクトとクラウドを通信で連携させ、画像解析やリアルタイムデータ連携を行う新製品開発プロジェクトを進めていました。しかし、AI、エッジコンピューティング、プロダクト開発に関する知見が求められる一方で、複数ベンダーや社内チームを横断してプロジェクトを推進できる体制に課題がありました。

当時の課題 ・AIを活用した車載プロダクトとクラウドを通信で連携させ、画像解析やリアルタイムでのデータ連携を行う新製品の開発を進めていた
・AIやエッジコンピューティングなどの知見に加え、プロダクト開発におけるプロジェクトマネジメント経験を持つ人材が不足していた
・先進技術に関する知見と、プロダクト開発におけるプロジェクトマネジメント経験をあわせ持つ人材が必要だった
・多岐に渡るプロジェクト対応をフロントで実行し、業務推進やスキルトランスファーまで担える人材が求められていた
実施したこと ・AIを活用した新規事業企画や立案経験を持つプロ人材をアサインした
・AIの中でも画像認識領域に強みを持つ人材が、事業提案やAI導入プロジェクト管理を推進した
・プロダクトマネージャーとして、上層部へのサービス提案や開発パートナーのコントロールを支援した
・各種ドキュメント作成やプロジェクト進行管理を行い、関係者間の認識合わせを推進した
・大規模プロジェクトを進めるうえで、多岐に渡る業務を可視化・明文化しながらプロジェクトマネジメントを実行した

その結果、プロダクトローンチまでのプロジェクトにおける業務支援を遂行し、AIプロダクトを活用したサービス開発にも寄与しました。また、大規模プロジェクトを推進するうえでのノウハウが蓄積され、多岐に渡る業務を可視化・明文化することで、プロジェクトマネジメントを担えるプロパー人材の育成にもつながりました。

事例②

大手保険代理店会社では、Azure OpenAIやPythonを用いた生成AIボットのプロトタイプ開発を進めていました。しかし、プロトタイプは開発済みだったものの、社内展開や顧客向けサービスとしての製品化に向けて、生成AIの知見と業務改善の視点を持ちながら推進できる人材が不足していました。

当時の課題 ・Azure OpenAIやPythonを用いた生成AIボットのプロトタイプは開発済みだったが、今後の社内展開や顧客向けサービス化に向けた推進体制に課題があった
・生成AIボットを社内展開し、全社で活用できる状態に整備する必要があった
・顧客向けサービスとして製品化するため、業務要件の整理や仕様検討が求められていた
・最新の生成AIツールの分析や活用方針の検討、実装支援を行える人材が必要だった
・将来的な生成AI CoE組織の立ち上げを見据えた伴走支援が求められていた
実施したこと ・AIコンサルティング会社出身で、アルゴリズム研究者としての知見を持つプロ人材をアサインした
・クライアント折衝、業務改善提案、プロダクト開発の経験を活かし、生成AIボットの社内展開を支援した
・最新生成AIツールの分析と社内実装に向けた検討を進めた
・事業部からの要望を踏まえ、生成AIソリューションの仕様設計や開発支援を行った
・伴走支援とスキルトランスファーを通じて、生成AI CoE組織の組成にも貢献した

その結果、生成AIボットの社内展開が全社で進み、問い合わせ対応工数を60%削減することに寄与しました。また、最新生成AIツールの分析と社内実装顧客向け事業化も実現し、伴走支援やスキルトランスファーを通じて生成AI CoE組織の組成にもつながりました。

まとめ

エージェンティックAIは、従来の生成AIのように「指示を受けて回答する」だけでなく、自らタスクを計画し、外部ツールや社内システムと連携しながら、目標達成に向けて行動する自律型AIです。

企業がエージェンティックAIを導入することで、複数システムをまたぐ業務の自動化、リアルタイムな意思決定支援、顧客・従業員体験のパーソナライズ、人間の戦略業務への集中といった効果が期待できます。

一方で、情報漏えい、ハルシネーション、AIの判断根拠の不透明さといったリスクもあります。そのため、導入時にはセキュリティ設計、RAGの活用、人間による確認、ログ管理などを組み合わせることが重要です。

エージェンティックAIは、単なるAIツールの導入ではなく、業務プロセスそのものを見直す取り組みです。自社だけで推進が難しい場合は、AI導入や業務改革に知見を持つ外部プロフェッショナルの活用も検討するとよいでしょう。

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