「グロースハック」は製品やサービスの品質向上に取り組み、さらなる成長を図るためのマーケティング手法です。低コストでの事業成長が見込めたり、商品やサービスの根拠のある改善ができたりすることがメリットと言えるでしょう。また、ニーズのある商品やサービス作りにも役立つため、世界中から注目を集めています。
そこで今回は、グロースハックの基本情報やメリットについて詳しく解説します。これまでのマーケティング手法との違いや実践方法も解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
■目次
1.グロースハックとは?
グロースハックとは、効果測定、改善を行うことで品質向上に取り組み、サービスや製品の成長を図っていくためのマーケティング手法です。プロダクト部門やマーケティング部門など各部門を横断的に担当し、データ解析や実験的なアプローチを展開していくことで、サービスや製品の成長につながっていきます。
基本的に、製品、サービスに関するユーザーの声やデータを収集、解析することで改善点を見つけ、改善に必要な施策を立案し実施するといった流れで行われることが多いです。
なお、昨今グロースハックが注目されている理由としては、IT技術の進歩や価値観の多様化によりサービス、製品のライフサイクルが短くなったことが挙げられます。
変化するユーザーのニーズに対応し、競合企業に対抗するためにも、短期間で効率的に製品、サービスの進化を図れるグロースハックが必要不可欠となっているのです。
グロースハックとこれまでのマーケティング手法との違い
グロースハックとこれまでのマーケティング手法との大きな違いは、成果を出すまでのアプローチに違いがあります。
これまでのマーケティング手法では、製品、サービスが売れる仕組みを施策し、さまざまな戦略とチャネルを利用しながら、長期的かつコストをかけて改善をおこなっていくことが通常でした。一方、グロースハックは最小限のコストやリソースにより、発展させていくことを重視しています。
また、予算中心ではなく、効率に重きをおいたマーケティング施策を実行するのもグロースハックとこれまでのマーケティング手法との違いとして挙げられます。
2.グロースハックの3つのメリット
グロースハックのメリットは主に以下の3つです。
自社にとってグロースハックが必要かどうか判断するためにも、メリットについて詳しく理解しておきましょう。
低コストでの事業成長が見込める
グロースハックは、低コストでの事業成長が見込めることが大きなメリットです。たとえば、SNSや招待制度などを利用して拡散したり、会員登録を促したりするなどの方法が挙げられます。
改善や分析を繰り返していくことで費用対効果も向上していくため、コスト削減を考えている企業はグロースハックを検討してみるのがおすすめです。
商品やサービスの根拠のある改善ができる
商品やサービスの根拠のある改善が期待できるのも、グロースハックの大きなメリットです。勘や経験のような不確かなものではなく、しっかりとデータという根拠をもとに改善をしていくため、より持続的な成長が見込めます。
グロースハックでは、ファネル分析やABテストなどを活用してデータ収集を行い、分析した結果をベースにして作った改善策を実行します。また、実行した改善策をデータとして保存しておくことで、長期的に見てどのくらい成果が出ているのかも把握できます。
ニーズのある商品やサービスが作れる
グロースハックは、SNSやWEBサイトのデータを収集、分析して課題を把握し、ユーザーのニーズを理解することで、ユーザーのニーズに合った商品、サービスを提供できるようになります。
ユーザーニーズに合った商品、サービスの提供は、リピーターやファンの獲得につながります。また、ユーザーのニーズを満たせるように試行錯誤していくことで、製品やサービスの質の向上も期待できるでしょう。
リピーターの獲得や製品、サービスの質の向上を図りたいなら、グロースハックを導入するのがおすすめです。
3.グロースハックの成功事例3選
ここからは、グロースハックの成功事例を3つ紹介します。
グロースハックをうまく取り入れるためにも、成功事例をチェックしておきましょう。
freee
「freee」は、主にtoBやtoC向けに提供しているクラウド会計ソフトです。
freeeでは、社内にグロースハックを専門とした「グロースチーム」というスペシャリストチームを設けています。サービスごとではなく、グロースチームが「会計freee」「給与計算freee」「会社設立freee」の3つのサービスを横断的にチェックし、LPの改善施策を検討したり、ユーザーに継続利用してもらうための施策立案、実装をしたりしています。
そして継続利用を促すための施策立案で実装されたのが、フリーミアムモデルです。フリーミアムモデルは、基本機能を無料で利用できるようにし、さらに高度な機能を使いたいユーザーを有料プランへ誘導する仕組みのことを言います。
freeeでは、無料会員登録者を有料プランへ誘導するためのサイト改善策としてA/Bテストの結果をもとに作られた料金表を導入しました。それにより、有料プランへの登録率が向上しました。
Drop Box
「Drop Box」は、全世界に利用者を抱えており、登録ユーザー数の多さからオンラインストレージのパイオニアとも言われています。Drop Boxでは、ユーザー登録者数を増やすための取り組みとして「友人招待施策」を行いました。
友人招待施策は、友人をDrop Boxに招待すると無料でオンラインストレージの追加容量がもらえるという施策です。新規ユーザーを分析してみると、新規ユーザーの30%以上が既存ユーザーの紹介により利用を初めていることから、この施策に至ったという経緯があり、これによりDrop Boxは、ユーザー登録者数を60%以上伸ばしました。
友人招待施策のポイントは、ユーザー登録によって得したことをユーザー自身が体感できる点です。ユーザーが自分自身で得を体験することで、友人や家族に対して積極的に勧めたくなる心理を利用しています。
また、そのほかにもサイト内の画像や共有方法などのABテストを行った上でシンプルなホームページを採用し、サインアップを簡単にしたり、共有が簡単にできるようにしています。これらのグロースハックを繰り返すことで、利便性の高さも相まって多くの注目を集め、現代においても根強い人気を保っています。
Jimmy Jazz
「Jimmy Jazz」は、スニーカーやストリートウェアを専門としたリテーラーです。Jimmy Jazzでは、ユーザー獲得を目的として「リファーラルプログラム」を行いました。
リファーラルプログラムとは、既存のユーザーが友人にJimmy Jazzを紹介することで割引を得られるというものです。Jimmy Jazzはリファーラルプログラムにより、新規ユーザーの獲得率を大幅に向上させることに成功しました。
また、リファーラルプログラムにより既存ユーザーの満足度が向上したことで、長期的なビジネスの成長にもつながっています。
4.グロースハックの流れ
グロースハックの主な流れは以下の通りです。
- 商品、サービスの開発
- データの収集、分析
- 仮説を行う
- テストを行う
- 結果をもとに改善する
グロースハックでは、収集したデータをもとに、現時点で製品やサービスにどのような課題があるのかを分析し、現状をしっかりと把握することが大切です。そのため「データの収集、分析」の過程でユーザーの年齢や性別などの基本情報はもちろん、ユーザーの行動を細かく分析しましょう。グロースハックの成功はこの過程にかかっているため、慎重かつ丁寧に行ってください。
なお、グロースハックは「結果をもとに改善する」過程で終わりではありません。製品、サービスの品質向上や既存ユーザーの満足度アップのためにも「商品、サービスの開発」から「結果をもとに改善する」までをできるだけ早く何度も繰り返すことが重要です。
できるだけ早く何度も繰り返すことで、常にユーザーの求めているものを提供できるようになり、継続的な利用につながります。
5.グロースハックを行う際のフレームワーク3選
ここからは、グロースハックを行う際のフレームワークを3つ紹介します。
グロースハックを効率的に進めるためにも、3つのワークフレームを押さえておきましょう。
AARRR
AARRRは、グロースに必要な「Acquisition(ユーザー獲得)」「Activation(ユーザー活性化)」「Retention(継続)」「Referral(紹介)」「Revenue(収益化)」の5つのフェーズの頭文字をとったものです。
AARRRの主な流れは以下の通りです。
- ユーザーを獲得する(Acquisition)
- ユーザーに製品、サービスを使ってもらう(Activation)
- ユーザーに継続的に使ってもらう(Retention)
- ユーザーに友人や家族へ紹介してもらう(Referral)
- 収益を最大化させる(Revenue)
まず、Acquisitionの段階で広告やSEOを活用してユーザーを獲得し、ある程度ユーザーを獲得できたらActivationの段階に移ります。一部機能を無料で使えるようにしたり、会員登録を促す特典を用意したりすることで、ユーザーに利用してもらいやすい仕組みを作りましょう。このときに注目すべき指標は、チュートリアル突破数や初回から一定期間内でのアプリの起動数などです。
そして、Retentionの段階ではメルマガやプッシュ通知などを活用し、ユーザーに対して継続利用を促します。たとえば、カスタマーサポートを用意して問い合わせが行いやすい体制を整えたり、プッシュ通知でサービスを思い出す機会を作ったりすることが挙げられます。
新しくユーザーを獲得しても1回使って終わりでは意味がないため、継続的に利用してもらうためにもRetentionの段階を挟むことが大切です。
継続利用を促した後は、ユーザーに友人や家族へ紹介してもらう「Referral」の段階に移りましょう。SNSのシェア機能や紹介のインセンティブを付与することで、新規ユーザーの獲得はもちろん、既存ユーザーの満足度向上につながります。
「Referral」の段階が終わったら、収入が発生した際のユーザーの特徴を分析し、収益を最大化させる方法を考えましょう。
ここまでの手順1〜手順5までをできるだけ早く繰り返すことで、製品、サービスの品質や企業全体の成長に効果が期待できます。
ARRRA
ARRRAの主な流れは以下の通りです。
- ユーザーに製品、サービスを使ってもらう(Activation)
- ユーザーに継続的に使ってもらう(Retention)
- ユーザーに友人や家族へ紹介してもらう(Referral)
- 収益を最大化させる(Revenue)
- ユーザーを獲得する(Acquisition)
ARRRAにおいて重要なのは、手順1の「Activation」と手順2の「Retention」です。
ユーザーに利用してもらい、ユーザー仮設、問題仮設、解決仮設の3つの仮説検証から、ユーザーにとって価値のある製品、サービスであるかどうかを見極めます。ARRRAは、手順1と手順2がうまくいけば自然と他者への紹介や収益が付いてくるという考え方となっています。
なお、ARRRAは、AARRRと異なり「ユーザーを獲得する(Acquisition)」段階が最後である点も大きな特徴です。手順1〜手順4までを実現させてから、企業全体を成長させるために集客施策を行います。このとき、収益モデルや価格提供が弱いと集客施策を行ってもうまく作用しなくなってしまうため、手順1の段階から丁寧に行っておくことが大切です。
ABテスト
ABテストとは、WEBページやLPなどにおいて2つ以上の複数パターンを準備し、それぞれの効果をチェックするためのテストのことです。
たとえば、2つの広告ページを準備してそれぞれのCVRやエンゲージメント率を計測し、どちらがよりユーザーにとって説得力があるのかを調べます。このテストにより、ユーザーにとって有益なページを導き出すことができれば、ページへの直帰率の改善が期待できます。
なお、ABテストを行うために使うページは、内容やデザインをガラッと変える必要はありません。たとえばページ全体は同じ内容でCTAのみを変更するなど、細かな違いを付けて改善を行うため、低コストでできるメリットがあります。できるだけ工数、労力をかけずに行いたい企業でも安心です。
6.グロースハックを成功させる4つのポイント
グロースハックを成功させる4つのポイントは以下の通りです。
グロースハックを成功させるためにも、4つのポイントをチェックしておきましょう。
①PDCAを繰り返す
グロースハックを成功させたいなら、PDCAを繰り返すことが重要です。PDCAとは「計画(Plan)」「実行(Do)」「評価(Check)」「改善(Action)」のサイクルを繰り返すことを指します。PDCAを繰り返すことで、課題の発見や課題の確実な改善に繋がるでしょう。
また、PDCAを行うことで、改善ポイントとその結果が明確になり、なぜ改善されたのか、反対に悪化したのかがよくわかります。つまり、自社に知見が溜まり、別事業やサービスを構築する際にも活用できます。余計なタスクに取り組む時間も減らすことにも繋がるため、PDCAのサイクルに当てはめて行うのがおすすめです。
②利益と支出のバランスを整える
グロースハックを成功させたいなら、利益とグロースハックにかかるコストのバランスを整えましょう。製品やサービスに対してかけられる費用をチェックしておくことで、グロースハックで無駄にコストをかけてしまうリスクを防げます。
③仮説の精度を上げる
グロースハックを成功させるためには、仮説の精度を上げることも必要です。仮説の精度を上げることで、利益の成長に繋がります。
効率的に改善していくためにも、ワークフレームを活用したうえで多方面から丁寧に分析を行いましょう。
④グロースハッカーを育成する
グロースハックを成功させたいなら、グロースハッカーの育成も欠かせません。有能なグロースハッカーを育成することで、より効率的にグロースハックを進めることができます。
なお、自社での育成が難しい場合は外部の人材に依頼するのも1つの手です。
7.グロースハッカーに必要な資質
グロースハッカーに必要な資質は主に以下の2つです。
有能なグロースハッカーを育成するためにも、2つの資質をチェックしておきましょう。
データドリブン思考
データドリブン思考とは、勘や経験だけでなく収集した売上データやWEB解析データなどの根拠をもとに、物事を決定する思考のことを指します。
かつては勘や経験から物事を決定することがよくありましたが、グロースハックを成功させるためには分析したデータをもとに仮説を立てて施策を考える必要があります。ユーザーの行動や価値観の多様化に対応するためにも、収集したデータを正しく分析し、その結果をもとに意思決定ができる思考を身につけておくことが重要です。
ラピッドイテレーション
ラピッドイテレーションとは、高速で施策を繰り返すことを指します。
グロースハックでは、高速で施策を繰り返しサービスの改善を行っていくことでユーザーのニーズを満たし、より良い製品、サービスの提供を目指すことが重要です。施策の結果から良かった点と改善点を洗い出し、新たな施策を立て、自律的な成長を図るためにもラピッドイテレーションを押さえておきましょう。
8.まとめ
今回は、グロースハックについて詳しく解説しました。
グロースハックのメリットは主に以下の3つです。
- 低コストでの事業成長が見込める
- 商品やサービスの根拠のある改善ができる
- ニーズのある商品やサービスが作れる
グロースハックは、製品やサービスの品質向上だけでなく、企業全体の大きな成長にも効果をもたらします。また、既存ユーザーの満足度向上にもつながります。グロースハックが気になっている企業は、ぜひ今回紹介した内容を参考にしてみてください。
なお株式会社みらいワークスでは、戦略考案の得意なプロマーケターのデータベースを保有している会社です。グロースハックをはじめ、自社の戦略を見直したいと考えている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)