「競合よりも優れているはずなのに商品が売れない」「プロモーションを積極的に行っているのに認知度が低い」などの悩みはありませんか。商品のマーケティングに関わる方であれば、売り上げや認知度を上げることの難しさを痛感している方は多いのではないでしょうか。
上記のような課題を解決するには、複数のマーケティング戦略を組み合わせることで、ターゲットとする市場やユーザーへ適切なアプローチをする必要があります。そこで重要となるマーケティングフレームワークが「マーケティングミックス」を取り入れたマーケティング戦略です。実際に導入した企業では多くの成果が報告されています。
この記事では、マーケティング戦略に悩んでいる方に向けて「マーケティングミックスとは何か」「上手に活用すべきポイント」などを詳しくご紹介します。マーケティングミックスを理解することで、自社の売り上げに貢献できる可能性が高くなるため、ぜひ最後までご覧ください。
■目次
1.マーケティングミックスの意味とは?
マーケティングミックスとは、複数のマーケティング手法を組み合わせて、ターゲット市場への最適なアプローチを行う実行戦略です。新商品の開発や企画の立案、ビジネスモデルの戦術などを決定する上で重要な要素と言えるでしょう。
マーケティングミックスの重要な鍵となる考え方として、製品(Product)、価格(Price)、プロモーション(Promotion)、流通(Place)の頭文字をとった「4P」があります。
4Pは企業側の視点から考えるマーケティング手法として、長年活用されてきた代表的なフレームワークです。しかし、多様化した現代の価値観にマッチしなくなってきたことから、現在では消費者側の視点から考える「4C」と呼ばれるフレームワークも活用され始めています。
「4P」と「4C」については次項から詳しく解説していくため、是非チェックしてください。
2.マーケティングミックスの基本構成要素「4P」とは?
マーケティングミックスの基本的な構成要素として「4P」が一般的とされています。
*製品(Product)
製品やサービスの開発、改良、生産を通じて、ターゲットとしている市場にどのような価値提供ができるのかを考察する要素です。マーケティング戦略では最重要事項のひとつと言えます。
*価格(Price)
売上原価や競合他社の価格設定を考慮して、販売製品の価格や支払方法を決定することを指します。あえて高い価格を設定することでブランドイメージを植えつけたり、低価格で市場のシェア拡大を狙うなど、マーケティング戦略によっても大きく左右される要素です。
*流通(Place)
消費者に製品を届けるための流通チャネル(流通ルート)のことを指します。流通チャネルは多岐にわたり、直販や卸売り、小売など、製品のコンセプトやコストに合わせて選択することが重要です。
同時に、販売する場所を選択する販売チャネル(販売方法)を、ECサイトにするのか実店舗で行うのかなどを決定します。
*プロモーション(Promotion)
広告や宣伝など、販売促進の活動を検討します。製品やサービスの認知拡大が目的とされ、メディアやSNS、店頭でのキャンペーンなど販売を促進する方法は多岐にわたります。ターゲットの属性に合わせた最適な手法を取り入れることが重要です。
以上、4つの要素は企業側の視点からマーケティング戦略を考える上で、これまで重要な役割を果たしてきました。しかし、このようなプロダクトアウトの考え方は、時代の変化や多様性社会において顧客満足の視点から変化が求められています。
3.マーケティングミックスにおける4Cとは?
4Cとは、価値(Customer Value)、費用(Customer Cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)の頭文字をとった略称です。4Pが企業側の視点からマーケティング戦略を作り上げるのに対し、4Cは顧客視点に立って価値提供することを基本的な考え方としています。
4Cの各要素の詳細は、以下の通りです。
*価値(Customer Value)
顧客が製品やサービスを利用する上での適正な価値を指します。コスパが良い、高品質など、顧客満足度の高いサービスを提供することが求められており、近年では最重要とされている要素です。
*費用(Customer Cost)
提供される価値に対して顧客が支払う費用のことで、製品の購入費用や配送料なども含まれます。また、価値と費用が吊り合うかも重要な要素です。
*利便性(Convenience)
製品やサービスの利用のしやすさを指します。たとえば、お店までの距離が近い、サービスの申し込みが簡単、決済方法が楽など利便性の向上は顧客満足度の観点から重要な要素です。
*コミュニケーション(Communication)
顧客とのコミュニケーションにより、ユーザーのニーズを深掘りするマーケットインの考え方が基本です。メディアやSNS、販促キャンペーンなど、最適な販売促進の活動を通じて広告展開を検討します。
販売戦略が多様化する市場において、新商品やサービスをどのように展開するか、顧客視点に立った4Cの考え方は今後さらに必要になってくるでしょう。
4.マーケティングミックスにおける4Pと4Cの関連性
顧客が求めていることは、商品やサービス自体ではなく、それによってもたらされる価値や機能です。4Cを起点にして顧客のニーズを的確にとらえて、4Pにより製品やサービスに機能を落とし込むというフローのため2つの要素には密接な関連性があります。
*価値(Customer Value)×製品(Product)
顧客ニーズを満たした価値提供が重要になります。利益優先のプロダクトアウト的な考え方では、顧客ニーズにマッチしない可能性があり、購入に至らないでしょう。製品やサービスは顧客のメリットを最優先することが重要です。
*費用(Customer Cost)×価格(Price)
顧客が満足できる費用(製品価格や配送料など)になっているかがポイントです。どんなにすばらしい製品でも、購入までに手間がかかるようだと購買意欲が低下します。顧客が負担する費用を考慮した価格設定が重要と言えるでしょう。
*利便性(Convenience)×流通(Place)
顧客の利便性を考慮した上で、流通経路を最適化します。たとえば、時間のない人向けにECサイトを整備したり、高齢者向けの宅配サービスを提供したり、ターゲット層に適した利便性を追求する必要があります。
*コミュニケーション(Communication)×プロモーション(Promotion)
顧客と積極的なコミュニケーションを図り、プロモーションを展開することが望ましいです。以前は顧客への販促が主流でしたが、現在ではSNSやWeb広告などの多様なコミュニケーションツールを活用して、コミュニケーションを強化できます。顧客と企業の接点を増やすことでプロモーションの展開は大きく変わるでしょう。
以上のように、4Cと4Pを適切にミックスさせることでマーケティング戦略の幅は広がります。
5.マーケティングミックスで4Pを上手に活用する4つのポイント
マーケティングミックスで4Pを上手に活用するには、4つのポイントを押さえておく必要があります。
ここからは、各ポイントの詳細をご紹介します。
①ターゲットを明確にする
まず始めに重要なのは、ターゲットを明確にすることです。ユーザーの年齢や性別、職業、趣味などを明確にイメージできると、訴求すべきポイントが見えてきます。
具体的なメリットは、以下の通りです。
- 参入すべき市場の把握ができる
- 競合他社と比較して優位性が増す
- 経営資源(リソース)を集中投下できる
- 訴求力の高い広告を提供できる
- 関係者間の認識を共有することができる
リアルにターゲットを想像できれば、企業側にとって大きなメリットがあるでしょう。一方で、ターゲットの設定が曖昧だと、ユーザーが解決したい課題や要求が把握できません。また、成果につながる可能性も下がってしまうことから、商品に適したターゲットを明確にすることが重要と言えます。
②4Pは戦略に沿っているか
マーケティングミックスの4Pは、戦略に沿っていなければなりません。その理由は、製品、価格、流通、プロモーションに一貫性がなくなってしまい、市場や顧客への価値提供が難しくなるからです。
どんなにすばらしい製品であっても、誤った市場への投入や販売チャネルの選択ミスなどが起こってしまえば、そもそも集客を期待できない状態になってしまうことでしょう。まずは戦略に沿ったアプローチが行われているか、各要素のつながりを意識できているかを検証してみましょう。
③4Pのバランスはとれているか
相乗効果を発揮するためには、4Pの各要素をバランス良く組み合わせる必要があります。それにより、マーケティング戦略の効果を最大限に高めることができます。
仮に、競合他社に匹敵するような価格を実現できなくても、独自の流通チャネルや独創的なプロモーションを実行することで、市場シェアを獲得できるケースもあるでしょう。マーケティング戦略の全体のバランスを意識して、各要素がお互いにカバーできる状態にしておくことが重要です。
④4Pから相乗効果が期待できるか
4Pの各要素の相乗効果が期待できる代表的な手法は、プロモーション(Promotion)です。
日本人は「地域限定」「〇〇歳の方限定」(Place)など、対象を限定したキャッチコピーに弱く、通常よりも価格が高くても購入する傾向にあります。その特性を活かしプロモーションすることで、顧客の満足感を高めつつ売り上げも狙える効果が期待できます。
しかし、プロモーションに偏った戦略になってしまうと、製品やサービス本来の価値提供とかけ離れてしまい、継続的に顧客から評価を得るのは難しいです。
プロモーションはあくまでも手段であり、製品やサービスによって顧客の課題や問題を解決することが目的であることを忘れてはいけません。
6.【4ステップ】戦略策定に役立つマーケティングミックスの進め方
ここからは、戦略策定に役立つマーケティングミックスの進め方を、4つのステップに沿ってご説明します。
①環境の分析
まずは自社がどのような環境に置かれているのかを、外部環境、内部環境の両面から分析する必要があります。外部環境の視点から考えると、顧客の属性やニーズ、競合他社の商品ラインナップや市場シェアの割合、市場トレンドなどについて分析すると良いでしょう。
内部環境の視点では、自社の強みや弱点、ノウハウやリソース(社内資源)、顧客先や顧客数などを把握しておくことが先決です。
②基本戦略の作成
「誰に何を届けるのか」を明確にするため、さらに詳しく市場を分析し自社の方向性を決める基本戦略を作成します。
そこで活用される代表的なフレームワークがSTP分析です。セグメンテーション(市場細分化)、ターゲティング(狙うべき市場)、ポジショニング(競合他社との位置関係)の3つのプロセスを経て、競合他社との差別化を図り、カニバリを防ぎつつ需要の創出を見込みます。
③実行戦略(マーケティングミックス)の作成
勝負する市場や方向性が決まれば、実行戦略(マーケティングミックス)を行い、具体的な施策を決定するフェーズに移ります。これまでに説明した4P、4Cの観点から、最適な組み合わせの構成要素を掛け合わせて実行戦略を決定しましょう。
④施策実行、評価
決定した施策を実行し、その結果を評価する段階です。必ずしも期待した効果が得られるとは限らないため、戦略の練り直しや軌道修正が必要になることもあります。時代の変化や市場のニーズに合わせて、定期的なモニタリングも重要です。
マーケティングミックスは、上記4つのステップで行うことができます。内部環境や外部環境についてしっかりと把握し、ターゲットを定めたうえで施策を進めていきましょう。そのうえで実行した施策に対してフィードバックを行い、PDCAを回していくことが重要です。
7.マーケティングミックスを活用した成功事例と失敗事例3選
ここからは、大手企業のマーケティングミックスを活用した事例を紹介していきます。
成功事例だけではなく、4Cの分析が足りず失敗に終わってしまった事例も合わせて紹介するため、是非チェックしてください。
①スターバックスコーヒーの成功事例
アメリカで創業されたスターバックスは、店舗数が36,000店を誇る世界最大のコーヒー喫茶チェーンとして有名になりました。これほどまでに発展した理由は、スターバックスが取り入れたマーケティング手法にあります。
*スターバックスコーヒーの4P
製品(Product) | 快適な空間と時間の提供、お客様とのコミュニケーション強化 |
価格(Price) | 高価格帯(高品質)、低価格帯には与しない |
プロモーション(Promotion) | 街と調和した店舗展開、大都市の駅周辺や商業施設に出店 |
流通(Place) | SNS戦略による販売増(テレビCM以上の効果を発揮) |
4Pの観点から見てみると、製品(Products)では「快適な空間と時間の提供」「お客様とのコミュニケーションの強化」により、居心地の良さが顧客の高評価に繋がりました。価格(Price)は「高価格帯」で勝負し、高品質なものを提供することで、低価格競争に与しない姿勢を打ち出しています。流通(Place)では「街と調和した店舗展開」により、ブランドイメージの向上に成功しており、プロモーション(Promotion)では「SNS戦略」で、テレビCM以上のマーケティング効果を得ています。
以上のように、これまでの業界とは一線を隠す価値提供により、多くのファンを獲得、2023年10月期には売上高が350億ドルを突破し、過去最高を記録しています。
②Appleの成功事例
今では信じがたいですが、1990年代にAppleは経営が低迷していました。しかし、スティーブ・ジョブズがとった戦略によってV字回復し、2022年には過去最高益の3,900億ドルにも達しています。
なぜAppleがV字回復できたのか、iPhone普及の成功要因を考察することで見えてきます。
*Appleの4P
製品(Product) | シンプルなデザイン、感覚的な操作性によるインターフェース |
価格(Price) | 世界統一のプレミアム価格、価格競争はしない |
プロモーション(Promotion) | 資産としての位置付け、Apple製品を持つことがステータス |
流通(Place) | Appleストアによる優先販売、iTunesストアのコンテンツ販売 |
製品(Products)面では「シンプルなデザイン」や「感覚的な操作性」など、無駄な機能をそぎ落とした商品設計を追求しました。価格(Price)については、競合他社にはない革新的なテクノロジーにより「プレミアム価格」に設定し、流通(Place)では、Appleストアによる優先販売を行っています。プロモーション(Promotion)では、単なるスマホや携帯ではなく「資産」と位置付けることで、iPhoneを持つことがある種のステータスと思わせる戦略が成功しました。
競合他社との差別化により、コンセプトが明確になったことで、業界の雄にまで上り詰めた成功事例です。
③SKIPの失敗事例
マーケティングミックスを導入しても、必ず成功するとは限りません。失敗事例を学ぶことで自社のマーケティング戦略に活かしましょう。失敗事例として、ユニクロで有名なファーストリテイリングが手掛けた、SKIP(野菜販売事業)と呼ばれるサービスがあります。
サービス内容は、野菜の生産、流通、販売までを一気通貫で請け負うビジネスモデルです。ユニクロで展開しているオペレーションを野菜事業にも取り入れることで、高品質な野菜を低価格帯で提供することを目的としていました。
*SKIPの4P
製品(Product) | 栄養価などのクオリティが高い |
価格(Price) | 良いものを安い価格で提供 |
プロモーション(Promotion) | ユニクロ発の野菜事業参入 |
流通(Place) | インターネットを介した会員制宅配 |
マーケティングミックスの4P視点で考えると、製品は「栄養価などのクオリティが高い」価格は「良いものを安い価格で」プロモーションが「ユニクロ発の野菜事業参入」流通は「インターネットを介した会員制宅配」でスタートしました。
しかし、構想から約3年後には撤退しており、失敗要因は、顧客ニーズの調査不足による会員数の伸び悩みや、野菜の流通ノウハウ不足による安定供給がうまくいかなかったことにあります。
ユニクロのノウハウを横展開した4Pでしたが、顧客視点の4Cの深堀りができていない失敗事例と言えるでしょう。
8.まとめ
本記事では、マーケティングミックスの概要や進め方についてご紹介しました。
マーケティングミックスとは、4P(企業側視点)と4C(顧客側視点)を上手に組み合わせて、ターゲット市場へ的確なアプローチができる実行戦略を指します。
特に重要なのは、顧客視点で戦略を練ることです。SNSが発展した現代では、プロダクトアウトが通用しなくなりつつあります。しかし、マーケティングミックスを正しく理解できれば、より顧客視点に立った戦略を立案できるでしょう。
マーケティング戦略の方向性に悩んでいる方は、マーケティングミックスを取り入れて戦略立案をしてみることをオススメします。
なお、株式会社みらいワークスでは、マーケティングミックスを始めとした、戦略考案の得意なプロのマーケターを多数保有しています。自社の販売戦略を見直したいと考えている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)