「業務委託とフリーランスは何が違うのか?」と考えている方も多いのではないでしょうか。簡単に説明すると、業務委託は「契約方法」のことを指し、自社のリソースだけでは達成できない成果を期待できます。
一方でフリーランスは「働き方」のことを指します。フリーランスのプロフェッショナル人材(以下フリーランス)に仕事を委託することで、人件費の抑制や短期的人員の増員など、多くの効果を期待できるでしょう。
この記事では、以下の点についてご紹介します。
人材が足りず、業務が回らない状態を今すぐ解決したい方や、これまでに業務委託の経験がない方は、ぜひ最後までお読みください。
■目次
業務委託とフリーランスの違い
業務委託とフリーランスは、同じような趣旨で理解されることが多いです。しかし、両者には根本的な違いがあり、業務委託は「契約方法」フリーランスは「働き方を」を意味しています。それぞれの特性を知るとより鮮明に違いを理解できるので、次の章から解説していきます。
業務委託とは?
業務委託とは、仕事の依頼者が雇用契約を結ばずに、受注側のフリーランスや企業に対して仕事の全部もしくは一部を委託する「契約方法」です。両者には使用者、労働者のような雇用関係が存在せず、対等な関係で取引するのが特徴と言えます。
そのため、仕事の仕方や進捗管理については受注側に裁量権があり、期日や契約内容を遵守した上で成果物を提供さえできれば問題は発生しません。
業務委託契約を結ぶ際は業務委託契約書で契約を交わすか、場合によっては口頭でのやりとりでも契約は成立します。また、業務委託には「請負契約」と「準委任契約」の契約方法に分かれます。
それぞれの特徴は以下の通りです。
- 請負契約:成果物を納品すれば報酬がもられる契約
- 準委任契約:作業するば報酬がもらえる契約
フリーランスとは?
フリーランスとは、企業に属さず個人事業主として、案件を受注し業務を行う「働き方」です。フリーランスは「働き方」、業務委託は「契約方法」なので、混同しないようにしましょう。
近年、フリーランスとして働く人は増加傾向にあります。2018年に厚生労働省が働き方改革の一環として、副業を推奨したことが影響しているようです。企業に属していないことで働き方の自由度が高くなり、仕事量や成果に応じて報酬が発生するため給与のように報酬の上限額がないのが魅力と言えます。
一方でフリーランスは労働基準法が適用されないため、最低賃金や有給休暇、雇用手当などはありません。
正社員採用とフリーランスに業務委託を行うのはどちらがいい?
正社員採用か業務委託どちらがいいかは、発注者が何を求めるかで大きく変わります。正社員採用が有効な場合とフリーランスに業務委託を行う方が有効な場合、それぞれの特徴を見てみましょう。
正社員採用が有効な場合
企業にとって正社員採用が有効なケースは主に以下の2つが挙げられます。
- 企業の根幹を担う人材を確保したい
長期的に企業を成長させるためには、経営の根幹を担う正社員の採用が必須です。また、昨今は人手不足が深刻化しているため、最初から高い報酬を支払って積極的に人材を採用する企業も増えています。 - 幅広い業務を任せられる
正社員を採用する場合、企業には指揮監督権が認められるため、より幅広い業務を任せられます。そのため、スポット的な人材不足ではなく、多様な業務の人材が不足している場合におすすめと言えるでしょう。
フリーランスに業務委託を行う方が有効な場合
続いて、フリーランスに業務委託を行うのが有効なケースについて見ていきましょう。
- 採用コストを抑えたい
高いスキルやノウハウを持った正社員を育てるには時間を要します。一方フリーランスであれば、仕事に応じてスキルを所有している即戦力の人材を採用できるので、費用対効果が高いと言えます。また、フリーランスは必要な稼働時間での契約もでき、稼働した分だけ報酬を支払えば良いため、人件費の抑制にもなります。 - 短期で即戦力となる人材が必要
スポットで人材が必要な場合には、フリーランスがおすすめです。業務委託であれば、成果物の納品、報酬の支払いをもって契約は終了するため、以後のコストはかかりません。継続的なコストがかからない分、最小限の費用で必要な業務を消化できると言えるでしょう。 - 社会保険料を抑えたい
正社員だと社会保険料(健康保険、年金など)を労働者と企業で折半しますが、フリーランスの場合、労働者が全額負担します。つまり、企業側に保険料の負担がないため、コストを少しでも抑えたい企業にとって有効です。
業務委託の契約類型
業務委託の契約類型は3つにわかれます。それぞれの特徴を理解して、業務委託契約を締結しましょう。
委任契約
業務委託契約における委任契約とは、発注者が法律行為を受注者に委託し、受注者が依頼された業務を行うことで、報酬を受け取ることができる契約を意味しています。
※法律行為とは、当事者が意思表示することで、法律上の効果を発生させる目的の行為のこと
また、請負契約のように成果物の納品を目的とせず、委託された法律行為に対して報酬を支払います。そのため、工数(人員)や作業時間の増減により、報酬が変動するのが特徴です。
民法では以下のように規定されています。
(委任)
第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
引用:e-GOV法令検索
委任契約の事例は、以下の通りです。
- 税理士に確定申告の申請書作成を依頼する行為
- 相続における土地や建物の所有権登記の手続きを依頼する行為
- 弁護士に訴訟や法的手続き、法廷の代理などを依頼する行為
どの事例も、法律行為を行う対価として報酬を支払います。
準委任契約
業務委託における準委任契約とは、法律行為以外の事実行為(事務処理)を委託し、受注者が業務を行い、その対価として報酬を受け取る契約を意味しています。
また、委任契約と準委任契約の違いは、委任契約が法律行為を委託しているのに対し、準委任契約は法律行為ではない事務の委託をしていることです。法律行為ではないため、成果物が求めるレベルに達しない場合や不具合があった場合でも、契約不適合責任が生じません。
※契約不適合責任とは、契約とは適合しない成果物と判断されたときに、受注者が負う責任
民法では以下のように規定されています。
(準委任)
第六百五十六条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
引用:e-GOV法令検索
また、準委任契約は2つに分類することができます。
- 履行割合型
委託事務を行うのに要した工数や時間を基準として報酬が支払われます。成果物の納品や成果目標の達成は報酬の発生要件ではありません。 - 成果完成型
委任事務の履行により得られる成果に対して報酬が支払われる契約です。成果物の納品や成果目標の達成などを条件に報酬が支払われる契約を意味しています。
どちらも法律行為ではない事務の委託という点では同じですが、報酬の発生要件が違うので注意が必要です。
請負契約
業務委託における請負契約とは、発注者が受注者へ仕事を委託、受注者は完成させることを約束し、完成すれば仕事の対価として報酬が支払われる契約です。
発注者が要求する成果物を納品する必要があるため、準委任契約よりも受注者側から見ると難易度は高くなります。また、発注者側としては成果物の不具合や異常が認められた場合に、契約不適合責任を追及でき、一定の期間を定めて追完を請求できるため、安心と言えるでしょう。
民法では以下のように規定されています。
業務委託を利用する3つのメリット
業務委託を利用すると、自社のリソースだけでは達成できない成果を上げられる可能性があります。
ここからは3つのメリットについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
①生産性が向上する
フリーランスに業務委託をすることで、生産性を向上させる効果があります。なぜなら、直接利益につながらないノンコア業務を業務委託することで、自社の人材は、利益に直結するコア業務にリソースを集中できるためです。
特に作業が煩雑になりがちな経理業務や、専門性が高く社内完結が難しいIT関連の仕事などを、外部に業務委託すると一定の効果を見込めます。その結果、企業全体で業務量が増大しても、仕事が回らない状態を解消することができます。
②即戦力になる専門性が高い人材を採用できる
即戦力になる専門性の高い人材を自社で育成するには、多くの時間が必要です。また、ハイレベルな人材を中途採用する際には、転職エージェントなどを活用することになり、多大な費用がかかることも企業にとっても重荷になります。
しかし、業務委託を利用することで、既に高度なスキルを保有する人材に業務を任せることができ、時間短縮にも繋がるでしょう。業務委託の後、双方の同意のもと中途採用することも可能で、採用コストを抑えられることもメリットと言えます。
なお、業務委託で支払われる報酬自体は安いものではありませんが、長期的にかかる人材育成や採用活動の費用と比較した時に、費用対効果が高いと判断できれば、ぜひ活用してみましょう。
③変動費化できる
フリーランスへの業務委託によって、固定費を変動費化できることもメリットのひとつです。企業では従業員を採用した場合、多くの固定費が新たに発生します。
たとえば、以下のとおりです。
- 人件費(給与、賞与、社会保険料など)
- 採用、教育コスト
- 交通費(通勤手当)
- 通信費
- 備品代(パソコン、携帯電話など)
これらの固定費が企業の収益を圧迫します。しかし、業務委託すれば固定費はフリーランス持ちになり、企業が支払うのは業務委託にかかる報酬だけです。すなわち、継続的に支払う固定費が変動費化するため、コストを安く抑えることが可能となります。
業務委託を利用するデメリットと誤解されていること2つ
業務委託を利用する場合、デメリットと誤解されているケースが2つあります。
以下から詳しく説明しますが、結論を言うと、デメリットと誤解されないためには「コミュニケーション」が鍵を握ります。
誤解①社内に知見やノウハウがたまらない
業務委託すると、社内に知見やノウハウがたまらないため、専門的なスキルを持った人材が育たないと言われています。委託する業務は自社内で知見のない範囲であるため、フリーランスへ丸投げとする企業も多々あるのです。
しかし、業務を全て丸投げするだけでなく、定期的なミーティングによって社員教育も同時に意識しながらコミュニケーションが取れれば、効率よく知見をためることも可能です。
知見やノウハウがたまらない理由は、業務委託に依存し過ぎた結果、社員教育がおろそかになったことの方が大きいでしょう。業務委託先とコミュニケーションを密に取りながら、情報を共有することが大切です。
誤解②指揮命令権がないため、管理が難しい
業務委託はフリーランスに業務を委託しているため、指揮命令権がありません。そのため、管理が難しいと感じる企業が多いのが現状です。
しかし、指揮命令権がなくとも、コミュニケーションを強化するだけで、管理を成功させることができます。
管理を成功させるポイントは、以下の通りです。
- 受注者の課題を共有化する
- エージェントを通じて相談する(エージェント経由での提供の場合に限る)
- 進捗管理を明確化する(稼働状況の可視化など)
企業側は直接的に指示ができないものの、相互で情報を共有化して信頼関係を築くことができれば、管理を円滑に行うことができるでしょう。
フリーランスに業務委託をお願いする方法
フリーランスに業務委託をお願いするには、直接契約を行う方法とエージェントサービスを利用する方法があります。契約をスムーズに行うためにも、事前に確認しておきましょう。
直接契約を行う
直接契約とは、発注元の企業とフリーランスが業務委託契約を直接行うやり方です。直接契約を結ぶには、まず人材を募集する必要があります。
フリーランスを募集する方法は、以下のとおりです。
- SNS(XやInstagramなど)で募集
- 人脈を活かして募集(知人や業者からの紹介)
- クラウドソーシングで募集(クラウドワークスやランサーズなど)
SNSや人脈を活かしての募集は、エージェントサービスと比較して、仲介者がいないので手数料がかからない点がメリットです。しかし、個々のフリーランスと業務委託契約を直接行うため、事務的な手続きが煩雑になったり、スキルの低いフリーランスに当たってしまうことも少なくありません。
また、想定していた期日までに人材が集まらないリスクもあります。このように、一見コストを抑えてフリーランスを採用できるように見えても、課題となる点は山積みです。
そのため、コストパフォーマンスを意識するのであれば、結果的にフリーランスエージェントでの採用が最も良いと言えるでしょう。
エージェントサービスを利用する
直接契約では、企業が独自に募集をかける必要があるので、業務委託を締結できるまで時間がかかります。また、本当にスキルのある人材なのか、信用できる人材なのか、見極めることが難しいと言えるでしょう。
しかし、エージェントサービスであれば、人材の募集から契約の締結までを行ってくれるため、時間を無駄にすることもなく、企業に適した人材を紹介してもらえます。
採用が決まった場合に、仲介手数料や成功報酬がかかることは難点ですが、事業成功に向けて必要な人材を確保するのに必要なコストです。費用を出し渋るあまり直接契約を結ぶと、信用のならないフリーランスと契約してしまい、事業が滞ってしまうこともあるため、必要経費と認識してエージェントサービスを利用することをおすすめします。
なお、一般的な相場として、採用者の年収の3割程度をエージェントサービスに支払うことになります。基本的には業務を遂行した後に成功報酬として支払うため、悪質なフリーランスを紹介され、業務が滞った上に膨大な金額を支払わなくてはいけないという事態にはならないでしょう。
フリーランスに業務委託をお願いする流れ
フリーランスに業務委託をお願いする流れは、下記の通りです。
それぞれ詳しく解説します。
①委託先の選定する
委託先の選定次第で、仕事の成果が左右されるため、最も重要なプロセスと言えます。信頼性の高い委託先を選定するためには、事前に「委託先選定基準」を定めておくことをおすすめします。
委託先選定基準の主な項目は、以下のとおりです。
- 実績や能力は十分か
- 高いスキルやノウハウを持っているか
- 信頼できる取引先か
- 費用対効果
- セキュリティは万全か
上記の項目を考慮して、適切な委託先を選択しましょう。
②契約条件の交渉を行う
業務委託をお願いする案件について、事前に発注元とフリーランス双方で契約条件の交渉を行います。お互いの認識に齟齬がないように、丁寧な交渉が必要です。
主な交渉内容は、以下が挙げられます。
- 業務内容や業務範囲
- 作業の流れ
- 納期
- 報酬(支払時期や経費の支給など)
- 禁止事項、秘密保持
- 損賠賠償に関する事項
双方とも不利になる契約を避けるためにも、疑問点が残らないように交渉しましょう。
③業務委託契約書を締結する
契約条件に問題が無く、案件を発注および受注することが決まれば、合意した契約条件について業務委託契約書を締結します。業務委託誓約書とは、発注元が受注側(フリーランスなど)に対して、業務の全部または一部を委託する際の、契約条件を明確にする契約書です。
前述したように、業務委託契約書は委任契約、準委任契約、請負契約に分類されます。業務内容にあわせて、適切な業務委託契約を締結してください。
業務委託契約書に必要な項目と作成する際の注意点
業務委託契約書に必要な項目は、委託する業務内容によって異なります。
一般的な記載内容は、以下の通りです。
契約事項について不安があれば、弁護士に相談してみましょう。
また、業務委託契約書を作成する際の注意点が2点あります。
次の章で注意点について詳しく解説します。
①収入印紙が必要になる場合もある
業務委託契約書では、契約内容によって収入印紙を貼る必要があります。
収入印紙が必要な場合は、以下の通りです。
- 請負契約(2号文書)
契約金額別に必要な収入印紙代が異なる(200円~60万円まで)※1 - 請負契約(7号文書)
3ヶ月以上の継続的取引がある場合(一律4,000円)※2
※1引用:国税庁|印紙税額の一覧表
※2引用:国税庁|継続的取引の基本となる契約書
尚、電子契約による業務委託契約書であれば、収入印紙が必要ないため無駄なコストを削減できます。
②偽装請負とならないようにする
偽装請負とは、請負契約しているように偽り、実態は派遣労働させている状態を言います。派遣労働を請負契約と偽った場合、雇用関係がないので法定労働時間が適用されず、残業代も支払われません。
受注者にとっては過度の長時間労働を強いられる可能性が高く、明らかな違法行為に該当します。偽装請負と認定されると刑事罰の対象となり、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金※」に処されます。
※引用:e-GOV法令検索
尚、偽装請負の種類は3つに分類されます。
- 代表型
発注側は受注者(請負人)に対して業務の指示を出し、業務時間や休日の管理も行っている状態。偽装請負の典型パターンとして有名です。 - 形式だけ責任型
現場に受注者側の責任者を配置しているが、責任者を通じて発注者の指示を伝えているだけで、発注者が直接指示しているのと変わらない状態。 - 使用者不明型
受注者がさらに他の受注者へ発注しているので、誰に雇われているのかわからない状態。
いずれも偽装請負に該当するため、現場での指示や勤務時間の管理には、最新の注意を払いましょう。
まとめ
今回は、業務委託とフリーランスの違い、業務委託の概要やポイントなど、幅広く解説しました。業務委託は「契約方法」、フリーランスは「働き方」を意味しているので、間違って混同しないように注意しましょう。
また、業務委託を利用することで、「人材が足りない」「業務が回らない」といった悩みを解決することができます。しかし、契約方法の取り決めや業務委託契約書の作成など、法令が絡む事項が多く、難しく感じる場面も多いでしょう。
契約締結後にトラブルへ発展することを防止するためにも、疑問点や不明な点があれば弁護士などの第三者に相談することをおすすめします。
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