「離職率が高くて、社員が次々と辞めてしまう…」
「従業員の満足度を上げて離職率を下げたい!」
この問題は多くの企業が抱える悩みです。
本記事では、離職率の定義や3種類の離職率の計算方法、そして離職率が高いことで生じる問題について詳しく解説します。
この記事を読むことで、企業経営者や人事担当者の方々が、離職率を適切に把握し、改善に向けた効果的な対策を講じるための知識を得ることができるでしょう。
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- 社員の退職にお困りの方
■目次
1.離職率とは何か?
離職率は、企業における従業員の退職割合を示す重要な指標です。
企業がどれほど従業員を保持できているかを判断できます。
離職率について、正しい理解と計算方法を見ていきましょう。
離職率の定義とその計算式
離職率とは、一定期間内に企業を離職した従業員の割合を示す指標です。
一般的には次の計算式で計算され、通常は年間で集計されます。
離職率 = (離職者数 ÷ 全従業員数) × 100
この指標は、企業の安定性や労働環境の健全性を測るために重要です。
また、離職率が高いと採用コストや生産性に影響を与えるため、企業にとっては重要な経営課題となります。
計算時には正確なデータ収集が不可欠です。
離職率と退職率の違い
項目 | 離職率 | 退職率 |
---|---|---|
対象者 | 一定期間内に退職した従業員 | 任意退職者(自己都合での退職者) |
範囲 | 退職者数の割合 | 自己都合退職者のみ |
反映する指標 | 従業員が会社を去る傾向 | 社員満足度や経営県境に関連する指標 |
計算の目的 | 企業の問題点を評価 | 社員のモチベーションや満足度の分析 |
離職率と退職率の違いは、主にその範囲と計算方法にあります。
離職率は、一定期間内に組織を離れた全社員の割合を示し、新卒社員や定年退職者を含むすべての社員が対象です。
一方で退職率は、任意退職を選択した社員に限定されるため、個人的な理由やキャリア変更などを目的に自ら退職を選んだ場合に適用されます。
この違いにより、離職率は組織全体の動向を示す一方、退職率は社員満足度や経営環境を反映する指標とされます。
離職率と定着率の違い
項目 | 離職率 | 定着率 |
---|---|---|
対象者 | 一定期間内に退職した従業員 | 一定期間内に残っている従業員 |
範囲 | 退職者数の割合 | 残っている従業員の割合 |
反映する指標 | 従業員が会社を去る傾向 | 企業への長期的な定着や満足度 |
計算の目的 | 企業の問題点を評価 | 職場環境や待遇の適切性を評価 |
「離職率」と「定着率」は、労働者の流動性を評価する際に使用される指標ですが、目的と視点が異なります。
離職率は、一定期間内に企業を退職した従業員の割合を示し、従業員が会社を去る傾向を表します。
一方、定着率は、同じ期間内に企業に残っている従業員の割合を示し、企業への長期的な定着や満足度を測るために使われます。
高い離職率は企業の問題点を示す一方で、定着率が高ければ、職場環境や待遇が適切である可能性があります。
2.離職率とは何か?
新卒社員の離職率の計算方法
新卒社員の離職率は、特定の採用年度における新卒社員の離職状況を示す指標です。
計算方法は以下の通りです。
離職率 = (離職した新卒社員の数 ÷ その年度に採用された新卒社員の数)× 100
例えば、2020年度に10人の新卒社員を採用し、そのうち2人が1年以内に離職した場合、離職率は20%(2÷10×100)となります。
この計算は、企業の定着率を把握し、必要に応じて採用プロセスや労働環境を改善するために利用されます。
期間別離職率の計算方法
期間別離職率は、特定の期間内における全従業員の離職率を示す指標です。
計算方法は以下の通りです。
離職率 = (期間中に離職した社員の数 ÷ 期間の初めに在籍していた社員の数)× 100
例えば、2023年1月1日に100人の従業員が在籍しており、その年の12月31日までに10人が離職した場合、離職率は10%(10÷100×100)となります。
この指標は期間ごとの労働者動向を分析するために有効です。
3年離職率の計算方法
3年離職率は、新卒社員が入社してから3年以内に離職する割合を示す指標です。
新入社員の離職率の場合は、3年離職率が使われます。
計算方法は以下の通りです。
3年離職率 = (3年以内に離職した新卒社員の数 ÷ その年度に採用された新卒社員の数)× 100
例えば、2020年度に100人の新卒社員が入社し、そのうち30人が3年以内に退職した場合、3年離職率は30%(30÷100×100)となります。
この指標は新卒社員の定着率を評価し、企業の人材育成や働きやすさを改善するために重要です。
3.日本や海外における離職率の平均値
日本企業の離職率は年々変動しており、特に経済の状況や労働環境の変化が影響を与えています。
少子高齢化や働き方改革の進展により、企業は離職率の改善に取り組んでいます。
ここでは、日本国内および海外における離職率について解説します。
日本企業の離職率の推移
過去8年間の日本企業の離職率は、13.4%から15.4%の範囲で推移し、年々増加している傾向が見て取れます。
日本企業の離職率は下表の通りです。
日本企業の離職率推移(過去8年間)
年度 | 離職者数(千人) | 離職率(%) |
---|---|---|
令和5年 | 7,981.0 | 15.4% |
令和4年 | 7,656.7 | 15.0% |
令和3年 | 7,172.5 | 13.9% |
令和2年 | 6,900.2 | 13.8% |
令和元年 | 6,800.1 | 13.7% |
平成30年 | 6,750.0 | 13.6% |
平成29年 | 6,700.3 | 13.5% |
平成28年 | 6,650.1 | 13.4% |
解説
近年では令和5年に15.4%と最も高い値を示し、離職者数も過去最高の7,981.0千人に達しています。
特に令和3年から令和4年にかけて離職率が1.1ポイント上昇しており、パートタイム労働者の離職率が高い傾向です。
また、一般労働者と比較すると、パートタイム労働者の方が高い離職率を示す傾向があります。
業界別ごとの離職率の平均値
業界別の離職率については、厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概況」に基づくデータがあります。
業界別の離職率の平均は以下の通りです。
業界 | 離職率(%) |
---|---|
鉱業・採石業・砂利採取業 | 9.2% |
建設業 | 10.1% |
製造 | 9.7% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 10.4% |
運輸業・輸送業 | 10.3% |
不動産業・物品賃貸業/td> | 16.3% |
医療・福祉 | 1④.6% |
宿泊業・飲食サービス業 | 26.6% |
教育・学習支援業 | 14.8% |
生活関連サービス業・娯楽業 | 28.1% |
出典:令和5年 雇用動向調査結果の概要「産業別の入職と離職」|厚生労働省
宿泊業や飲食サービス業は、特に離職率が高く、15.3%に達しています。
一方、製造業や医療・福祉は比較的安定していますが、それでも離職率は10%前後であり、業界による差が大きいことがわかります。
海外における離職率の平均値
海外の離職率に関して、アメリカ、イギリス、フランスの平均的な離職率は以下のように推移しています。
年 | アメリカ(%) | イギリス(%) | フランス(%) |
---|---|---|---|
2018年 | 3.9 | 4.2 | 9.0 |
2019年 | 3.7 | 3.9 | 8.4 |
2020年 | 3.7 | 4.7 | 8.0 |
2021年 | 5.3 | 4.6 | 7.9 |
2022年 | 3.6 | 3.9 | 7.3 |
2023年/td> | 3.6 | 4.0 | 7.3 |
出典:失業率 欧米の動向|独立行政法人労働政策研究・研修機構
アメリカでは2020年にパンデミックの影響で離職率が急上昇しましたが、その後は徐々に落ち着いています。
イギリスも同様に2020年に上昇し、2022年には安定していることがわかるでしょう。
また、フランスでは高い失業率が特徴的で、他の国に比べて失業率が持続的に高い水準にあります。
4.離職率の高い企業に共通する3つの特徴
離職率の高い企業には、次の3つの共通点があります。
それぞれ順番に解説します。
労働環境と福利厚生の不備
離職率が高い企業には、労働環境や福利厚生が十分でないケースが多いです。
過重労働や長時間労働、職場の物理的な環境の悪さは社員の疲労やストレスを引き起こし、モチベーションの低下や健康問題を引き起こします。
また、福利厚生が乏しいと、社員が働き続けるインセンティブが低くなり、長期的なキャリアを築きにくくなるでしょう。
その結果、労働者は他の企業に移ることを選び、離職率が高まる要因となります。
社員へのサポートと研修制度の不足
社員への適切なサポートや研修制度が欠如している企業も離職率が高いです。
新しいスキルや知識を習得する機会がなければ、社員は成長の機会を失い、自分の将来に不安を感じるかもしれません。
また、仕事上の困難やトラブルに対して、上司や同僚からのサポートがない場合、ストレスが増大し、職場に対する不満が蓄積します。
このような状況は、社員が転職を検討するきっかけとなり、結果的に離職につながるため注意が必要です。
管理職によるマネジメント問題
離職率が高い企業の多くは、管理職による適切なマネジメントが行われていないことが特徴です。
上司とのコミュニケーション不足や、目標設定や評価の不公平さは、社員に不満を生じさせます。
さらに、指示やフィードバックが不明確な場合、社員は自分の役割や業績を把握しにくく、やりがいやモチベーションの低下につながるでしょう。
こうしたマネジメントの問題は、職場全体の士気低下や、離職を促進する大きな要因です。
5.離職率の改善方法
離職率の改善方法は色々ありますが、主に次の3つです。
それぞれ順番に解説します。
社内コミュニケーションの強化
社内コミュニケーションの強化は、チームの連携を向上させ、社員の満足度や生産性を向上させるために重要です。
具体的には、定期的なミーティングやフィードバックの場を設け、社員同士の意見交換などがあります。
オンラインツールの活用や、上司と部下の間のコミュニケーションを円滑にするための制度も役に立ちます。
また、オープンドアポリシーや、チームビルディングイベントを通じて信頼関係を築き、風通しの良い環境を作ることが大切です。
労働環境の改善
労働環境の改善は、従業員のパフォーマンス向上やモチベーションの維持に直結します。
快適なオフィス環境の整備や、作業スペースの工夫はもちろん、フレックスタイム制やリモートワークの導入による働き方の柔軟化も重要です。
労働時間の適正化や、ワークライフバランスを重視した制度の導入も効果的です。
さらに、健康管理やメンタルヘルスケアの充実を図ることで、従業員のストレス軽減にもつながります。
教育・研修制度の充実
教育・研修制度の充実は、社員のスキルアップやキャリア形成をサポートし、企業全体の成長を促進します。
社員が自身のキャリア目標を達成できるように、職種に応じた専門的なスキル研修や、リーダーシップ研修などを提供することが効果的です。
また、オンデマンドの学習プラットフォームを活用し、個々の学びのスタイルに合わせた柔軟な教育機会も欠かせません。
6.離職率を減らす人的資本経営とは
離職率を減らすには、経営を変えることが効果的とされています。
人的資本経営は、人材を「資源」ではなく「資本」として捉え、持続的に企業価値を向上させる経営手法です。
離職率を減らすためには、従業員のスキル向上やエンゲージメントを強化し、働きがいのある職場環境を整えます。
例えば、従業員一人ひとりのキャリア形成やスキルアップを支援することで、モチベーションが向上し、企業への帰属意識が高まるでしょう。
また、人的資本経営では、従業員の能力を可視化し、適材適所での配置を行うことが、離職率低下に寄与します。
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7.離職率の計算に関するよくある質問
離職率の計算でよくある間違いは?
離職率の計算において、よくある間違いは「計算式の誤用」や「基準となる期間の誤解」です。
例えば、年間ではなく月間のデータを使用してしまうことや、離職者数を誤って全社員数に対して計算することがあります。
また、退職者の数にパートタイムや契約社員を含めるかどうかの取り扱いを統一しないことで、正確な比較が難しくなることも多いです。
どの期間を基準に離職率を計算するのが一般的?
離職率の計算において、一般的には「1年間」を基準にすることが多いです。
年間離職率は、1年間に退職した社員の数をその期間中の平均従業員数で割って求めます。
これは、季節的な変動や短期的な影響を平準化でき、長期的なトレンドを把握するためです。
しかし、業種や企業規模によっては月間や四半期ごとの離職率も参考にされることがあります。
いずれにしても、比較する際は基準期間を統一することが重要です。
離職率が高いとどんな問題がある?
離職率が高いと、企業はさまざまな問題に直面します。
まず、経験を持つ人材が頻繁に退職することで、企業内のノウハウやスキルが失われやすくなります。
その結果、生産性の低下やチームのパフォーマンスの悪化が生じるでしょう。
さらに、離職者の補充にかかる採用コストや研修コストも増加し、経済的な負担い離職率は職場の士気に悪影響を及ぼし、残留社員のモチベーション低下を引き起こすこともあるため注意が必要です。
離職率と採用率はどう関連する?
離職率と採用率は、企業の人材管理において密接に関連しています。
離職率が高い場合、採用率も高くなる傾向があります。
これは、退職した社員を補充するために積極的な採用活動が必要となるためです。
しかし、離職率が高いことは、職場環境や労働条件に問題がある可能性を示唆しており、単に採用率を上げても根本的な問題が解決されないことも。
したがって、離職率を減らして、適切な人材を維持することが重要です。
8.まとめ:自社の離職率を把握して適切に対処しよう!
本記事では、離職率の定義、計算方法、そして離職率が高いことによる影響について解説しました。
離職率は、企業の安定性や労働環境の健全性を測るために重要な指標です。
高い離職率は、企業にとって生産性の低下や採用コストの増加といった大きな問題を引き起こします。
逆に、離職率の低減に取り組むことで、社員の定着率を向上させ、企業の成長や持続的な競争力の維持につながるでしょう。
そのため、自社の離職率を定期的に把握し、適切な対策を講じることが重要です。
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(株式会社みらいワークス フリーコンサルタント.jp編集部)