マーケティング戦略を立てるうえで、他社の成功事例から学ぶことは非常に効果的です。「なぜその企業は成功したのか?」「どんな工夫が成果につながったのか?」を知ることで、自社の施策にも活かせるヒントが見つかります。
本記事では、国内外の代表的なマーケティング成功事例を13個厳選し、具体的な取り組み内容や得られた成果をわかりやすく紹介します。加えて、どの事例にも共通する「成功のポイント」もあわせて解説しますので、戦略立案、実行にご活用ください。
マーケティングとは?
マーケティングとは、商品やサービスを「効率的に売る仕組みをつくる」ための活動全般です。単に広告、宣伝、販売を意味するのではなく、顧客のニーズに応じた価値を提供するプロセス全体を含みます。
主に、市場調査でターゲットを明確にするほか、商品企画、価格設定、販路選び、プロモーション施策までを一貫して設計することがマーケティングです。企業が継続的に売上や利益を伸ばしていくためには、時代や顧客の変化に応じたマーケティング戦略が欠かせません。単発の販売施策ではなく、中長期的な視点で「なぜ欲しいと思わせるか」を考えることが重要です。
【BtoB】マーケティングの成功事例5選
BtoBにおけるマーケティングはBtoCと異なり「論理性」「専門性」「関係構築」が重視されます。商品やサービスをただアピールするだけでなく、相手企業の課題を的確に捉えた提案力や長期的な信頼関係の構築が成功の鍵となるので意識してみましょう。
ここでは、実際に成果を上げたBtoBマーケティングの成功事例を5つ厳選してご紹介します。
- 株式会社才流
- アドビ株式会社
- LINEヤフー株式会社
- 株式会社モンスターラボ
- ログリー株式会社
①株式会社才流
株式会社才流は、BtoB企業に特化したマーケティングを行うコンサルティング会社です。自社のマーケティングにも高度な戦略を取り入れており「問い合わせ数の最大化」や「商談化率の向上」に成功しています。
特に注目されたのは、メディアサイト運用によるホワイトペーパーや資料請求を軸としたリード獲得戦略です。ターゲット企業の課題に直結するようなテーマを設定し、実用的かつ読みやすい資料を多数公開することが意識されています。広告色の多いアピールより説得力が高く、リード獲得単価を抑えながら、質の高い見込み顧客を安定的に獲得できる体制づくりに貢献しているのがポイントです。
さらに、獲得したリードに対しては、インサイドセールスとの連携を強化し、スムーズに商談へとつなげる導線を整備しました。マーケティングと営業を分断せず、一体化させることで、CVR(成約率)の向上にもつなげています。
②アドビ株式会社
アドビ株式会社は、PhotoshopやIllustratorなどのクリエイティブツールの提供で知られる企業です。BtoBマーケティングの分野では、特に「Adobe Experience Cloud」を軸としたデジタルマーケティング施策で成果を上げています。
アドビの成功要因の一つは、コンテンツマーケティングの徹底です。業界ごとの課題やトレンドに応じたホワイトペーパー、レポート、セミナー動画などを豊富に用意し、企業の意思決定者にとって価値ある情報を発信しています。これにより、リード獲得だけでなく、リードナーチャリング(見込み顧客の育成)にも成功しました。
また、自社のマーケティングツールを活用して、パーソナライズされたWeb体験やメール施策を自動化しています。ユーザーの行動や属性に応じて最適なコンテンツを出し分けることで、エンゲージメントや商談化率の向上を実現したのがポイントです。
さらに、営業部門との連携も強化されており、マーケティング部門が獲得したリードがスムーズにインサイドセールス、フィールドセールスへと引き継がれる体制が整っています。アドビの事例は「自社プロダクトを活用して自らが顧客体験のモデルとなる」という点でも非常に参考になるでしょう。
③LINEヤフー株式会社
LINEヤフー株式会社は、BtoB領域でも法人向けマーケティングソリューションを展開しており、自社プロダクトの活用を通じた効果的なデジタルマーケティングを実践しています。
特に注目されるのは「LINE公式アカウント」や「Yahoo!広告」など、自社メディアを活かした統合型プロモーション戦略です。クライアント企業に対して、オンラインとオフラインを連携させたキャンペーンや、ユーザーの行動データをもとにした広告最適化を提案し、高い成果を出すようになりました。
また、自社でも積極的にウェビナーや資料ダウンロードを活用したリード獲得施策を展開しているのがポイントです。業界別、課題別に分けたコンテンツを用意し、マーケティング担当者の関心を引く工夫をしたことで顧客の獲得につながりました。
さらに、獲得したリードに対しては、LINEなどのコミュニケーションツールを活用したナーチャリング(顧客育成)を行っており、ユーザーとの接点を長期的に保ちながら商談、成約へとつなげています。
④株式会社モンスターラボ
株式会社モンスターラボは、国内外の企業向けにデジタルコンサルティングやシステム開発を提供するグローバル企業です。
マーケティングが成功したポイントは「オウンドメディアとナーチャリングの融合」にあります。自社ブログ、ホワイトペーパー、技術コラムを通じて、開発やDXに関心を持つ層に有益な情報を継続的に発信しました。SEO対策も徹底しており、結果的に検索経由のリード獲得に成功しています。
また、問い合わせや資料請求をきっかけに得たリードに対しては、MAツールを活用したシナリオ設計を行い、段階的に見込み顧客の温度感を高めていくナーチャリング施策を実施しているのがポイントです。短期的な売上ではなく、長期的な関係構築と商談化の精度向上を意識したことで、顧客満足度も高くなりました。
グローバルでの展開力を活かして多言語対応のコンテンツや地域別戦略も展開しているので、顧客の母数を拡大できていることも特徴です。
⑤ログリー株式会社
ログリー株式会社は、コンテンツレコメンド型の広告配信プラットフォーム「LOGLY lift」などを提供するアドテク企業です。BtoB領域では主に広告主やメディア企業を対象としたマーケティング施策を展開し、認知、リード獲得、商談化までのトータルプロセスをデジタル中心に設計しています。
特徴的な取り組みは、自社の強みであるコンテンツマーケティングを自ら実践している点です。業界の最新トレンドやデータをもとにしたホワイトペーパー、ブログ記事、事例紹介などを継続的に発信し、SEOやSNS経由で質の高いリードを獲得するようになりました。
また、広告主に対しては「顧客の成功」を前提とした提案型の営業体制を構築し、検討フェーズに合わせた情報提供を行っています。他社との共催ウェビナーやコラボコンテンツなど、ターゲット層との接点を増やす戦略も展開したことで、ブランド認知と顧客育成の両面で成果を出すこととなりました。
【BtoC】マーケティングの成功事例8選
BtoCのマーケティングでは、消費者の感情やライフスタイル、購買行動に寄り添った柔軟な戦略が求められます。商品やサービスの機能だけでなく「共感」や「体験」を通じてブランドの魅力を伝えることが、競争の激しい市場で生き残る鍵となるでしょう。
ここでは、消費者との接点を最大限に活かし、実際に成果を上げたBtoCマーケティングの成功事例を8つ厳選してご紹介します。「商品はあるのに売れない」「もっと多くの人に届く方法が知りたい」とお悩みの方は、ぜひチェックしてください。
- 株式会社クラシコム
- 株式会社エン・ジャパン
- コカ・コーラ
- アマゾン
- Apple
- ユアマイスター株式会社
- 旭化成ホームプロダクツ株式会社
- 株式会社サンギ
①株式会社クラシコム
株式会社クラシコムは、暮らしのECサイトを運営する企業で、BtoCマーケティングの成功事例として非常に注目されています。
「暮らしをちょっとよくするアイデア」をテーマに動画、読み物、ポッドキャストなど多様なコンテンツを自社で制作、発信し「その商品がある暮らしのイメージ」を伝えるマーケティングに踏み切りました。「売るための情報」ではなく「読みたくなる、見たくなる情報」を丁寧に届けたことで、メディア自体が「読む価値のあるもの」として進化しています。
また、広告に頼らず自然検索、SNS、メールマガジンを中心に集客を行い、リピーターや共感顧客を獲得しているのもポイントです。自社で蓄積した顧客データをもとに、無理な売り込みをせず心地良い購買体験を設計しています。
②株式会社エン・ジャパン
株式会社エン・ジャパンは、求人情報サービス「エン転職」や「ミドルの転職」などを運営し、求職者と企業のマッチングを支援している企業です。BtoCマーケティングの観点では、「求職者(個人)」をターゲットにした信頼性の高い情報提供と、使いやすさを重視したサービス設計が成功のポイントとなりました。
特に、ユーザーの声を反映したコンテンツ制作や、口コミ、体験談を充実させたことが特徴です。求人情報の見やすさや検索機能の利便性にもこだわり、ユーザー満足度と透明性の高さを上げたことで、結果的に安心してサービスを利用できる環境となりました。
さらに、メールマガジンやスマホアプリでのプッシュ通知を活用し、求職者の状況に応じたパーソナライズドな情報提供を実施しています。タイムリーな情報発信により、サービス利用の継続率と応募率を向上させている事例です。
③コカ・コーラ
コカ・コーラは世界的に知られる飲料ブランドで、消費者の感情に訴えるブランド戦略と、季節、イベントに合わせた多様なキャンペーンマーケティングを実施しています。「シェアする喜び」や「楽しい時間」というブランドメッセージを一貫して発信し、広告やプロモーションで消費者の心を掴みました。
たとえば「Share a Coke(シェア・ア・コーク)」キャンペーンでは、ペットボトルに名前やニックネームを印刷し、個人とのつながりを感じさせる体験型マーケティングを実現しました。クリスマスの時期にはボトルラベルを引っ張るだけでリボンラッピングができる仕組みを導入し、友人、家族やSNS上のフォロワーと共有したくなるような仕掛けが実施されています。
コカ・コーラのマーケティングは、単なる商品の販売を超え、消費者との強い感情的なつながりを築くことに成功した事例とも言えるでしょう。
④アマゾン
Amazonでは、膨大な顧客データを活用してパーソナライズされたレコメンド機能を充実させるマーケティング戦略を実施しています。
定期的なセールイベント「プライムデー」や「サイバーマンデー」などを開催し、話題性と購買促進を両立しているのもポイントで、多様なマーケティング手法を駆使して、顧客との長期的な関係構築を実現しているのです。
他にも、ユーザーが欲しい商品をすぐに見つけられるよう、豊富な商品ラインナップ、高性能な検索機能、レビューシステムを整備するなどUIにもこだわりました。圧倒的な利便性と顧客体験の追求で成功した事例であり、BtoC企業の成功モデルとして広く参考にされています。
⑤Apple
Appleは、革新的なデザインと高品質な製品で知られるグローバルブランドで、BtoCマーケティングの成功例として広く注目されています。Appleの強みは、ブランド価値の徹底的な構築と顧客体験です。
Appleは、シンプルで洗練された広告や店舗デザインを通じて、一貫したブランドイメージを消費者に届けました。製品発表イベントや体験型のApple Storeを活用し、顧客が実際に製品に触れて感動を得られる場を提供したことで「欲しい!」という気持ちを高めることに成功しています。
また、iPhone、iPad、Mac、Apple Watchなど複数の製品を組み合わせることで、ユーザーの囲い込みに成功した事例でもあります。Appleのマーケティングは、単なる販売促進に留まらずブランドそのものを生活の一部として感じさせることに成功した好例と言えるでしょう。
⑥ユアマイスター株式会社
ユアマイスター株式会社は、ハウスクリーニングやリペアなどの生活支援サービスを提供するオンラインプラットフォーム「ユアマイスター」を運営している企業です。ユアマイスターでは「モノを大切にする文化の復興」をテーマに、消費者との信頼関係を築くことに成功しました。
たとえば、ユーザーが条件を指定するだけで最適な業者を自動的にマッチングする仕組みを提供したことで、忙しい人でも手軽に業者選びができるよう工夫されています。登録業者に対して品質基準を設けて定期的なチェックをしたり、メッセージ機能に監視システムを組み込んだりと「安心して使えるプラットフォーム」としてのイメージを構築できたことは大きな強みと言えるでしょう。
単なるマッチングプラットフォームの提供だけにとどまらず「モノを大切にする」社風であることも訴求したことで、利便性と姿勢に高い共感を得ています。
⑦旭化成ホームプロダクツ株式会社
旭化成ホームプロダクツ株式会社は「サランラップ」など家庭用日用品や食品包装資材などを手掛ける企業です。製品の品質と使い勝手の良さを前面に出すマーケティングで成功しています。
たとえば「サランラップ」の場合、単なる食品用ラップフィルムとして売り出すだけでなく、耐久性、密封性、使いやすさなど機能面を強調しました。独自の「切り取りやすい」設計や「しっかり密封できる」点をわかりやすく伝え、消費者の日常的なストレスを軽減することを目指しているのがポイントです。広告では実際の使用シーンを丁寧に描き「食材の鮮度を守り、家庭の食卓を支える必需品」としての信頼感を醸成しました。
結果として、単身者から大家族まで幅広い消費者から支持されるようになり、日用品としての定番ポジションを確立しました。マーケティングが市場シェア率に大きく貢献するとわかる事例です。
⑧株式会社サンギ
株式会社サンギは、1974年に設立されたオーラルケア分野のリーディングカンパニーです。科学的根拠に基づく製品開発と消費者との信頼関係の構築を軸としたマーケティングを手がけており「アパガード」などのシリーズで話題となりました。1993年に旧厚生省からむし歯予防成分「薬用ハイドロキシアパタイト」のメリットを前面に出すなど「安心して使えて効果も高い製品」という印象を根付かせています。
また、近年は、オーラルケア分野での実績を武器に、スキンケア商品の販路拡大にも注力しています。自社ブランドのスキンケア製品を展開し、マーケティング、販促活動を通じて新たな市場への進出を果たしているので注目しておきましょう。
マーケティングを成功させるための4つのポイント
マーケティングは単に商品やサービスを宣伝するだけでなく、消費者のニーズを的確に捉えて競合との差別化を図ることが重要です。ここでは、マーケティングを成功に導くための4つの基本的なポイントをご紹介します。
- ターゲットに合わせた施策立案を行う
- 適切な目標を設定し、実行、振り返りを行う
- フォロー体制を整える
- マーケティングツールを利用する
①ターゲットに合わせた施策立案を行う
マーケティングの成功には、ターゲットとなる顧客層の特性、ニーズに合った施策を立てることが不可欠です。
- 年齢
- 性別
- 職業
- 趣味嗜好
- 購買行動
上記のように、ターゲットの具体的な特徴を把握することで、購買を促すための効果的なコミュニケーションが可能になるでしょう。
たとえば、若年層をターゲットにする場合は、SNSや動画コンテンツを活用したデジタルマーケティングが有効です。一方で、中高年層を狙うなら、テレビ広告や新聞広告、直接的な店舗体験を重視する施策が効果を発揮します。
また、ターゲットごとに異なる課題や悩みを理解し、それに応じたメッセージや価値提案を行うことも重要です。細やかな調整が、顧客の共感を得て購買行動を促進する秘訣と言えるでしょう。
②適切な目標を設定し、実行、振り返りを行う
マーケティング施策を成功させるためには、明確で具体的な目標設定が欠かせません。売上向上やブランド認知の拡大、新規顧客獲得など、達成したい成果を定量的に示すことでチーム全体の方向性を揃えられます。
目標は達成可能かつ挑戦的なものに設定し、達成度合いを測るための指標(KPI)も併せて決めましょう。たとえば「半年でWebサイトの訪問者数を20%増やす」といった具体的な数字を設定すると効果的です。
目標に沿って施策を実行したら、その結果を定期的に振り返ります。成功した点や課題を分析し、改善策を検討することで、次回以降の施策に活かしましょう。
③フォロー体制を整える
マーケティング施策を実行した後のフォロー体制の整備は、顧客との関係を長期的に築くうえで非常に重要です。商品やサービスの購入後、顧客が抱える疑問や問題に迅速かつ丁寧に対応することでリピート購入の促進につながります。
具体的には、以下のような対応があげられます。
- カスタマーサポートの充実
- アフターサービスの強化
- メールやSNSを使った定期的なコミュニケーション
また、顧客からの商品やサービスに関するフィードバックを収集し、改善に活かすことも大切です。フォロー体制が整うことで顧客は安心してブランドを利用できるようになり、ブランドロイヤルティの向上や口コミによる新規顧客の獲得も期待できるでしょう。
④マーケティングツールを利用する
現代のマーケティングでは、自社に合うマーケティングツールを活用することが成功のカギです。マーケティングツールは、データ分析、顧客管理、広告配信の効率化などを効率化し、施策の効果を最大化する役割を果たします。
たとえば、Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを使えば、ウェブサイトの訪問者動向を把握し、どの施策が効果的かを数値で確認できるのがポイントです。また、メール配信システムやSNS管理ツールは、顧客とのコミュニケーションを自動化、最適化し、適切なタイミングで情報を届けるのに役立ちます。さらに、CRM(顧客関係管理)ツールを導入すれば顧客データを一元管理でき、購買履歴や問い合わせ履歴を基にパーソナライズされた提案が可能です。
まとめ
本記事では、BtoBとBtoCそれぞれの分野から13のマーケティング成功事例をご紹介しました。ターゲットの明確化、顧客ニーズの深掘り、差別化ポイントの強調、継続的な改善という基本を押さえていけば、自社の強みを活かしたマーケティングとなるでしょう。
マーケティングは一度施策を打って終わりではなく、常に変化する市場環境や顧客の声に対応しながら改善を重ねていくものです。今回の成功事例とポイントを参考に、自社に合った戦略を立て、持続可能な成長を目指してみてはいかがでしょうか。