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阪神タイガースを日本一に導いた岡田監督の戦略をデータでひも解いてみたらビジネスにも活用できることが判明した!!

2023年にJERAセ・リーグのペナントレース、クライマックスシリーズを制した阪神タイガースですが、2005年以来18年ぶりの優勝となりました。
その優勝に導いたのが、岡田 彰布監督ですが、奇しくも2005年時の監督も岡田氏でした。

また、オリックス・バファローズとの日本シリーズも制し、1985年以来38年ぶりの日本一にも輝きました。なお、岡田監督は1985年時には選手として日本一を経験しております。

そんな優勝請負人とも言える岡田監督について、野球界のOBはこぞって「2023年シーズンの阪神の最大の補強は岡田監督だった」と言います。
18年間優勝できなかったチームをどんな戦略で優勝に導いたのか、チームマネジメントの手法含めて、ビジネスにも転用できる部分がたくさんあります。

たとえば、前年まで遊撃手のレギュラーであり、2022年には遊撃手としてセ・リーグのベストナインにも選ばれている中野内野手の二塁手へのコンバートです。中野選手本人も世間も驚くコンバートでしたが、結果的にこれは適材適所の配置だったと言えます。

そういったビジネスにも繋がる岡田監督流の組織改革、戦略を各種データをもとにひも解いていきます。


■目次
1.データで見る近年の阪神タイガース
2.阪神タイガースの2023年キーワード
3.岡田監督が実施した3つの改革
4.まとめ

1.データで見る近年の阪神タイガース

まずは、近年の阪神タイガースについて振り返っていきます。
阪神タイガースの近年5年間の最終成績は以下の通りです。

▽直近5年間の最終成績

 ・2019年 3位 69勝 68敗 6分
 ・2020年 2位 60勝 53敗 7分(短縮シーズン)
 ・2021年 2位 77勝 56敗 10分(延長戦無し)
 ・2022年 3位 68勝 71敗 4分
 ・2023年 1位 85勝 53敗 5分

上記の成績を見ていただくとわかる通り、過去5年間は全てAクラス(3位以上)で終わっており、負け越しも2022年の一回のみです。

また、今年の阪神タイガースは、5部門で5選手が個人タイトルを手中に納めておりますが、実は2021年も2022年も5部門で個人タイトルを獲得しております。

▽個人タイトル

 ・2021年 4選手5部門(青柳2部門、スアレス、近本、中野 ※敬称略)
 ・2022年 3選手5部門(青柳3部門、湯浅、近本 ※敬称略)
 ・2023年 5選手5部門(村上、岩崎、中野、大山、近本 ※敬称略)

これらの結果を考えても、23年シーズンに選手の質が急激に上がったわけではなく、元々良いメンバーが揃っていたものの、優勝までには至らなかったということが事実です。

実際、21年シーズンの阪神はセ・リーグで最多の77勝(優勝したヤクルトが73勝だったものの、勝率で下回り2位)を積み上げながら目の前まで迫った優勝をさらわれてしまった形でした。

また、23年シーズンの阪神は積極的に選手を補強した訳ではありません。
現役ドラフトで獲得した大竹投手が10勝をあげたこと、ルーキーの森下選手が10本塁打と予想を上回る活躍をした一方で、活躍を期待されていた青柳投手や湯浅投手が怪我や不振で活躍できなかったなど想定外の事象も数多くありました。

では、何が変わったのでしょうか?
それは、岡田監督による優勝という目的を達成するために立てた戦略と選手による戦略の実行です。その戦略はチーム全体のスタッツをご確認頂ければ、ひも解くことが可能です。

▽阪神タイガース 年間チームスタッツ

阪神タイガース 年間チームスタッツ
上記のチームスタッツを見て頂き、特に注目して頂きたい部分は、本塁打の数が昨年と変わらずリーグ内順位が5位にも関わらず、年間の得点数が66点も増え、リーグ1位の総得点を獲得している点です。

直結している指標としては、四球数でしょう。
四球を選んで出塁数を増やしたことでチャンスが増え、合わせて得点圏打率も伸びたため得点数が増えたということです。

本塁打を量産できる選手が揃っているわけではなく、更に本拠地の甲子園球場が本塁打が出にくい球場ということも鑑みて、四球を増やしてチャンスの数を増やし、単打で得点を重ねていくという戦略は理にかなったものと言えます。

また、この戦略を実行するための仕組み作りを行った岡田監督と、戦略を着実に実行した選手がお見事と言えます。

2.阪神タイガースの2023年キーワード

そんな2023年の阪神タイガースですが、今年のチーム活動において、以下2つのキーワードがありました。
 ・普通
 ・ARE

「普通」

この「普通」という言葉は、岡田監督や選手がこぞってインタビューで発していた言葉です。以下のようなフレーズを目にし、耳にされた方も多いのではないでしょうか?
『普通にやれば勝てるからのー。おーん』
『普通にいつも通りやります!』

野球において「普通にやる」とは、攻撃面では先頭打者であれば、四球でも安打でも何でも良いから出塁してチャンスを作っていき、得点できる確率を高めていくことであり、守備面であれば、無駄な四球や失策を出さずに相手の得点確率を下げていくことを指します。
つまり、「当たり前のことを当たり前に行う」ということです。

実戦で当たり前のことを当たり前に行うためには、事前準備が肝となります。
また、監督も選手も「普通」というキーワードを口に出して言えるということは、事前準備の精度にチーム全体で自信を持っているということです。

「事前準備の精度をどれだけ高められるのか?」
これはビジネスの世界においても非常に重要なポイントと言えるでしょう。

「ARE」

二つ目のキーワードは「ARE」です。

岡田監督は就任から優勝を達成するまでの間、一貫して「優勝」の二文字を口にしませんでした。その代替として口にしていたのが「アレ」です。
チームのスローガンを「A.R.E」に設定したくらいです。

岡田監督としては「優勝」という言葉を発することで、選手に余計なプレッシャーがかかってしまい、「普通」のことができなくなってしまう可能性があるということでしょう。

一方で前監督の矢野氏は、就任当初から「優勝」を口にして、予祝をチームに浸透させたことでも有名です。

対局に位置していると思われる二人ですが、「言葉の力」を重要視しているという部分では似通っていると言えるでしょう。
その言葉に対するアプローチが対局にあるというだけです。

ビジネスマンには自身を奮い立たせるためにあえて高い目標を公言する方も多く、それ自体は否定するものではありませんが、チームを率いる立場の場合、メンバーに重圧がかかり、普段のパフォーマンスが出せなくなってしまう可能性もあるため、注意が必要です。

2023年の阪神タイガースは、この「普通」と「ARE」というキーワードをもとにペナントレースを戦い、優勝を果たしました。
そんな中で、岡田監督が実際に行ったチームの変革も効果を実を結んでいます。

3.岡田監督が実施した3つの改革

岡田監督が実施した改革は多岐に渡りますが、その中でも以下3点は非常に多くの効果をもたらしました。
岡田監督が実施した3つの改革

適材適所の配置

一点目は、適材適所の配置です。
まず岡田監督はセンターラインを中心とした守備面の改革に着手しました。

冒頭でも紹介した中野選手の二塁手コンバートは非常に多くの話題を生みましたが、中野選手は守備が非常に上手く、遊撃手としても良いプレーをしていたものの、肩がそこまで強くないため、送球面に不安を残していたのも事実です。

そこで守備のセンスを活かしつつ、肩力も遊撃手ほどは必要ない二塁手へのコンバートを敢行しました。2023年の中野選手は二塁手として印象に残るような活躍を残し、まさにコンバート大成功と言える活躍を残しました。

また空いた遊撃手のポジションは、2022年はほとんど出番の無かった肩の強い木浪選手と小幡選手で競争させて両者にライバル意識を持たせることでハイレベルに埋めることができ、センターラインの強化を行うことができました。

さらに、2022年は一塁手、三塁手、外野と多くのポジションで起用されていた大山選手を一塁手に完全固定しました。大山選手の持ち前の球際の強さによって、内野全体の守備力向上にもつながり、好循環を生むことができたと言えるでしょう。

こういった適材適所の人員配置は、野球などのスポーツだけではなく、ビジネスでも非常に役に立ちます。

『あの人はこのポジションの方が輝くのに…』
『あの人の能力を無駄遣いしてるよね…』

などは、どんな組織でもあることでしょう。

全員が輝くチーム作りのためには、個々の適性を見抜いてパズルのように組み替えて行く必要があるため、非常に難易度が高いです。
しかしながら適材適所の配置を行うことで、組織全体の生産性向上に大きく寄与します。

岡田監督のように個々の適性を正確に見極める力がリーダーには求められるでしょう。

目的に直結した仕組み作り

二点目は、目的に直結した仕組み作りです。
1章の阪神タイガース 年間チームスタッツでもご紹介しましたが、2023年の阪神タイガースの強さを図るにおいて欠かせない項目が、四球数の多さでした。
2022年と比較すると、136個多く四球を奪っています。

これは優勝するというチームの目的を果たすために、出塁数の多さが鍵になると考えた岡田監督の戦略によるものです。

「狙い球以外は初球から打ちにいかず、球数を投げさせる」
「根拠のある見逃し三振は許す」

といった方針を選手と共通認識を持った上で試合に臨んでいった部分に加え、オフシーズン時点で岡田監督が自ら球団に掛け合い、四球に対する査定を安打と同等にするといった取り決めを作ったことに起因します。

すなわち戦術面でのチーム内浸透率を高めるだけではなく、四球を取ることによる評価を公式に高める仕組みを作ったということです。

KGI、KPIを設定されている企業も非常に多くいらっしゃると思いますが、最終目的であるKGIを達成するために設定されるKPIの項目における評価点を高める、個々のKPIを達成しやすくするための行動基準を明確に定め、上位レイヤーが支援をしやすい仕組み作りを行うなどの対応はビジネス面にも転用できる考え方ではないでしょうか。

役割の固定化

三点目は役割の固定化です。
適材適所の配置で記載した主にセンターラインの固定化でも記載しましたが、岡田監督は守備位置だけではなく、打順も固定して1年間戦いました。

近代的な野球では、選手の調子の波によって流動的に打順を変えていく手法を取ることが一般的になっておりますが、岡田監督は打順の並びによる選手の役割を固定することに重きをおいておりました。

その根拠として、阪神タイガースの2023年のスタメンパターンは、143試合中、全球団で最少の69パターン(※投手を除く1番から8番のパターン)でした。
2番目に少なかったのが中日ドラゴンズの113パターンでした。

パ・リーグは投手が打席に立たないDH制を取っているため、単純比較はできないものの、最少パターンが福岡ソフトバンクホークスの118パターンだったため、いかに阪神タイガースのスタメンが固定されていたかを物語っているのではないでしょうか?

ちなみに、ドラゴンズはセ・リーグの6位、ソフトバンクホークスはパ・リーグの3位だったため、スタメンパターンと順位の因果関係はありません。
またスタメンパターンの固定化は、控え選手の調子がいくら良くても、出場機会が減ってしまうなどのデメリットもあります。

しかしながら、阪神タイガースは2023年セ・リーグで2位の広島東洋カープに11.5ゲーム差をつけた堂々の首位だったという事実があるため、一定以上の効果があったと言えるのではないでしょうか。

この役割の固定化は現代ビジネスで言うと、The Model型組織の構築などが当てはまるでしょう。ひと昔前の営業組織では、一人の営業マンが顧客リードの獲得から顧客開拓までの対応、継続的な顧客フォローまでを一貫して行っておりました。

The Model型の組織では、顧客リードの獲得はマーケティング、顧客開拓までの対応はインサイドセールスとフロント営業、顧客フォローはカスタマーサクセスをそれぞれ役割を分担して実施します。

つまり、それぞれがやることとやらないことを明確に定めて、それぞれの役割を全うすることで組織全体の生産性を向上させることを目指すということです。

4.まとめ

今回、2023年セ・リーグを制した阪神タイガースのデータをもとに岡田監督の戦略をひもとき、ビジネスに転用できる部分を考察してきました。

岡田監督が主導した戦略や改革は多岐に渡りますが、特に以下の3点はビジネスにも繋がります。
・適材適所の配置:個々の適性を見抜いた人員配置
・目的に直結した仕組み作り:戦術の浸透率向上と正当に評価される仕組み作り
・役割の固定化:個々の役割の遂行で生産性向上につながる組織構築

もちろん、上記含めた阪神タイガースの成功体験の全てをビジネスに転用して考えることは難しいものの、参考にできるポイントは多くあるのではないでしょうか。

もし、会社組織の変革を自社メンバーだけで実施するのが難しい場合、外部のプロフェッショナルに頼むのもひとつの選択肢となるでしょう。

なお、株式会社みらいワークスは
国内最大規模のプロフェッショナル人材データベースの運営企業です。
『組織変革の旗振りを行うことができる人が社内にいない…』
『組織の仕組み作りを行う上での壁打ち相手が欲しい』

と感じていらっしゃる企業様はお気軽にご相談下さいませ。


(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

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